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北村薫のミステリびっくり箱 北村薫 |
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評論・エッセイ | 出版月: 2007年11月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
角川書店 2007年11月 |
角川書店(角川グループパブリッシング) 2010年09月 |
No.1 | 7点 | Tetchy | 2021/02/28 23:42 |
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≪日本推理作家協会≫の前身≪探偵作家クラブ≫の頃から会報は継続して発行されており、昭和35年までの185号までの記事を読むと当時の作家たちは他の業界の方々を交えて色んなイベントをしていたことが判明した。それを見つけた北村薫氏が今ではそれほど活況ではなくなった異文化交流とも云うべき他業界の人々を交えて座談会を行うことを企画した。まさにミステリに耽溺して止まない北村氏ならではの企画である。昔の会報を読んで自分も同じことをやってみたいなんて、ほとんど子供の好奇心と変わらないが、それをまた実現させるのも北村氏のネームバリューゆえか。
さて過去の会報の中から選ばれたのはまさに千差万別。それぞれの題材はミステリとは縁浅からぬもので構成されており、将棋や手品、映画、落語などはまあ、ごく普通の題材だが、変わり種では忍者、女探偵、嘘発見機といったものもあり、これらは非常に興味深く読んだ。 やはりその道の専門家の話は含蓄に溢れていると気付かされた。ミステリを含む小説や物語を読むことで我々読者はそこで語られていることをその道の人々が実際にやっているものだと思い込んでしまうものだが、実際は違うことがはっきりと判った。特に嘘発見機の使い方や女探偵の本来の探偵の仕事が全く小説と異なっているのは蒙が啓かれる思いがした。 あとやはりこのような記録は電子化してアーカイヴするべきである。この故きを温ねて新しきを知る企画本そのものも現在絶版の状態である。しかも電子書籍化もされていないらしい。 こうやって歴史は廃れ、やがて忘れられていくのだ。しかも昭和よりも平成の創作物の方がそのペースが速い。極端な話をすれば昨年刊行された書物が翌年手に入るかさえも怪しいほど、出版界は変化が速くなってきている。それは出版界や書店自体が今大きな局面を迎えており、余剰在庫を抱える経費を十分に取れない状況にあるからだ。 しかしこのように隠れざる歴史を掘り起こすのはやはり大事だ。本書はいわば大人のごっこ遊びと最初は思ったが、その業界に触れることで日本のミステリ界が知見を広め、そして刺激をお互いに与えあい、高めあった蜜月の日々があったことを教えてくれた。 ミステリをとことん愉しむ、体験する。北村氏の好奇心こそが今我々に必要な稚気なのかもしれない。 |