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ミステリアーナ 長沼弘毅 |
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評論・エッセイ | 出版月: 1964年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
講談社 1964年01月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2020/01/03 22:21 |
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長沼弘毅というと、創元のクリスティの翻訳とか、シャーロキアンの草分けとか、このギョーカイのオールドネームの一人なんだけど、大蔵官僚としても実のところ相当の大物だったわけで、ミステリ関連がまったくの余技だったのを見るとスゴイものがある。で本作はとくにシャーロキアンなものではなくて、広くミステリ全般を一種の「ミステリアーナ=ミステリ学」として捉えた短い雑学的エッセイ集である。古い人だから、パズラー中心か、というとそうでもなくて、作品としてはハメットやらチャンドラーやらガードナーも触れていれば、Dr.No を「短い題名」の例に挙げるくらい、1964年の本書で広くミステリ全般に目配りした内容になっている。
「作家の名前」はペンネーム・別名などの話、「探偵の名前」だったら偶然探偵の名前がかぶったマイナー作品の例、「動物犯人」ならそのいろいろな例、「連続題名」なら作家ごとの国名シリーズやら悲劇やら殺人事件やらオベリストやらで揃える例の一覧、「短い題名」「数字入り題名」「色の題名」「動物題名」などなど、どうでもいい話が満載である。このどうでも良さに遊び心を見なきゃね。 ただ、今読んで感心するのは、この長沼氏などの世代が「海外翻訳ミステリ」を読んでた世代じゃない、ということなのだ。海外ミステリは、丸善とかで取り寄せて、原書を読んでるのがアタリマエ、な世代なんだね。戦後の読者が戦前からの翻訳紹介の流れの中で、翻訳紹介された作品ベースにミステリの「流れ」を把握しているのとは全くの別枠で、そんな制限に縛られない海外リアルタイムな視野の広さがあるのである。それこそ最近までなかなかちゃんと紹介されなかったジョン・ロードだってフィリップ・マクドナルドだってセイヤーズだって、この人リアルタイムでちゃんと読んでいるわけである。昔のマニアの「凄さ」と教養の深み、というものだ。 あと、本人が役人というのもあってか、現実の事件や法律の話などを、フィクションと並んで紹介しているのも見逃せないあたりだ。フィクションと現実の微妙な関係性について、さまざまな切り口で考察しているのも、一種の創作論として読むべきなんだろう。 大昔古本で買った本だけど、amazonとか見ると古本出品が多少あるみたいだね。とりあえずご紹介まで。ただし昔のことでネタバレ多数。初心者は避けた方がいいだろう。 |