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斎藤栄 
評論・エッセイ 出版月: 1991年03月 平均: 4.00点 書評数: 1件

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文藝春秋
1991年03月

No.1 4点 斎藤警部 2025/09/28 09:54
‘新’ 新本格(いわゆる新本格)ムーヴメント発動夜明け前、トリック枯渇危機が本気で論じられていた時代の、朝日カルチャーセンター講義を起こしたものです。

“また再び本格志向ではないか、という言葉も言われているんです。 これはちょうどスカートの長さと同じ(以下略)”

滑り出しから面白く快調、軽い気持ちで読むのに良好。 影響された五人の作家(だーれだ?)を取っ掛かりに、戦前戦後の日本ミステリ史を愉しくサラリとおさらい。 乱歩賞やらSFやら。 ハードボイルド、冒険小説への言及はちょいと鼻ムズ、それも良し。

“ミステリーの場合、多重視点にすることによって、非常に誤魔化しが利くんで”  ← ムフフフ..

構想メモの秘めたポテンシャル、その効能と使いよう。
“読者として見た場合、グーンと筆が伸びているようなところが、もしあるとすれば、そこはあまりメモに詳しく書いてなかった部分だ、と逆に言えるかと思うんですね。”
世に知られぬ新奇な/秘められたネタをトリックに使うなら、前もってくどいくらいの叙述が必須、その上で読者を堂々出し抜く “捻り” が肝腎。
犯人のみならず “探偵の動機” の重要性について要所でピシリと念押ししているのも良きと思いました。
うむ、大なり小なり作家志望さんが混じっているであろう聴衆相手に、なかなか有用な公開オーサーズハックを披露してくれています、斎藤さん。

ところがですね、いいこともいっぱい言ってくれてるんだけど、全体通してみると意外と、心のムズムズ、膝下グラグラの悪い振動(バッド・ヴァイブレーションズ)で語る内容がフラフラする傾向が見られます。 いつの間にやらけぇ~っこうピッピロピーのペッペロペーな話題で右往左往、何気に失礼味のある言葉遣いが目立ったり、語弊、思い込み、何気なセコみ、ブツクサ、大人の舌たらず、言葉のおちょぼ口、どうにもおネガティヴなアレコレが大小レベルでソコカシコに見られるのであります。 そんなわけで、なかなか役に立つ内容を含んではおりますが、一冊の本としては安っぽい感触を拭うこと能わずと言ったところになっちまいます。
(おそらく書き言葉として整理し直していない)講演のそのまんま書き起こしならではの特殊な文体に、諸々の弱さが必要以上に表出しちゃっている、という側面もあるのかも知れません。 よくは分かりません。

“(今後の密室トリックについて) まァ心理的なトリックはそんなにないと思うんですけれども”
↑ そんな淋しいこと言わないでくださいよう・・

‘さいとう・さかえ’ の漢字表記使い分けに関するくだり、肝腎の所で愚かしい誤植がありました。 本作編集の緩いスタンスが象徴されているようで侘しかったなあ、自分も斎藤を名乗るだけにナオサラポテサラ。 その後修正入ったんだろうか。

まー、私の評価は低め抑圧ですけれど、パラパラ読むにはじゅうぶん有効ちょっぴり有益な本です。 安価な古本で見つけたら、一に立ち読み二に購買の価値はありと思います。(私も遠からず売りに出します)
そう! 出遭い頭突然の有名作や自作ネタバレが、特にトリックの章、潜んでおりますので、覚悟の上でご留意ください。

“近所の本屋に行ってみますと、上巻と下巻しか置いてないんです。 (中 略) 「あ、中巻があるんですか」 って書店のおやじさんが言うんですね。”  
↑  これには大笑いでした


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