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パパイラスの舟 小鷹信光 |
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| 評論・エッセイ | 出版月: 2025年12月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 東京創元社 2025年12月 |
| No.1 | 7点 | kanamori | 2026/03/06 09:12 |
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| 著者の小鷹信光(1936年ー2015年)に対する一般的な認識は、ハードボイルド原理主義者とか、テレビドラマ「探偵物語」(主演の松田優作がアドリブでテレビ越しに小鷹に語りかけたエピソードが有名)の原案者ということになるかと思いますが、ミステリ分野で結構広範囲の業績が有ります。
「ハードボイル小説を中心としたミステリ評論家」が一般的ですが、小説家であり、翻訳家、アメリカの短編を中心としたアンソロジスト、ペイパーバックのヘビィな収集家でもあります。とくに、ビブリオグラファー(書誌学者)としての側面が多く見れるのが本書です。 本書は、1970年から早川の「ミステリマガジン」に同タイトルで連載されたエッセイをまとめて、1975年に出した単行本を50年ぶりに文庫化したものです。(著者没後10周年ということもあるのでしょう) 海外ミステリという未知の大海を、海図も無い自由気ままに漂う航海は、軽い語り口ながらも、ディープな内容に溢れていて、読み終えるのに時間を要しましたが、多くの示唆に富むものでした。 やはりハードボイルド御三家への言及が多いですが、途中チャンドラーの「プレイバック」の項で、例の「優しくなければ……」を小鷹がダメ出しする所で、大昔に図書館で借りて読んでいたことを思い出しました。ハードボイルド派では、御三家の次世代のスピレイン、ブレッド・ハリデイの言及が多いが、まだ翻訳がほとんど出ていなかった、クェンティンのダルース夫妻シリーズを詳しく言及しているが印象的だった。 ひとつ留意すべき点は、本作が書かれた70年代は、インターネットが無い時代ということです。それはネットでなく紙(パパイラス)を相手ということで、作家や作品に関する資料を集める作業が現代とはケタ違いに大変なことだったと想像出来ます。「幻影城」の編集長でもあった島崎博氏のエピソードが書かれていますが、書誌学的な話も面白いです。 巻末に、小山正氏の解説と読書ガイドが掲載されていますが、初出から50年経っているので、資料としては大幅なアップデートが必要な訳なので、その気の遠くなるような捕遺の作業の大変さが分かります。この功績も大きい。 因みに、小山氏のパートナーは若竹七海女史ですが、葉村晶シリーズの中の「店長」が巻末に載せるビブリオ・ネタとは大変さはだいぶ違いますw |
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