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[ 警察小説 ]
黄色い犬
メグレ警視
ジョルジュ・シムノン 出版月: 1950年05月 平均: 6.12点 書評数: 8件

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雄鶏社


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1959年09月

東京創元社
1960年01月

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1963年07月

東京創元社
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グーテンベルク21
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No.8 6点 虫暮部 2021/01/08 14:23
 捜査官の個性を尊重したゆとりある捜査、って感じで不思議。更に、事件関係者や舞台の描写が妙に直線的かつ戯画的な印象で、不条理劇を見ているような感覚だった。いえ、適正な読み方じゃないのは判ってますとも! そしたら結末で不意にミステリっぽくなってびっくり。

No.7 7点 斎藤警部 2020/09/08 11:32
本格の薄皮を上手く被った人情サスペンス。 心に残る景観は、陰鬱な天候なのにとても鮮やか。 連続傷害及び殺人事件そして未遂。。。。 本作には面白い二重逆説趣向がある(これのせいで本格っぽいのかも、最後の容疑者集合との合わせ技で)。 惨めで哀れな人でありながら、ちっとも同情を誘わない真犯人像の趣深さ。 あと、これは微かにネタバレ掠るかも知れないが、、 犬の成長がちょっとしたポイントになってるのがニクい、並びに感動的。 そして本作のこの、情景豊かな名オープニング。。

No.6 7点 クリスティ再読 2019/09/15 17:50
さて「黄色い犬」で評者の手持ちシムノンが尽きる。何となく手持ちがあるうちは図書館本とか借りづらくてね....初電子書籍で「港の酒場で」とかもチャレンジしたいな。
ジャンルが何となく「本格」になってるようだ。最後で関係者全部集めてメグレが謎解きするから、かもしれないが、論理的な...とは言えない解決というか、一般的な「推理」じゃないから「本格」はムチャだと思う。
というか、評者に言わせると「シムノンらしい」のは、短い小説なのに、登場人物の「行動原理が変わる」ところにあるように思うんだ。本作だとある人物「復讐」がベースにあるんだけども、結局復讐する意味がなくて復讐を止めてしまうし、いろいろな事件が必ずしも犯人の狙い通りの結果、というわけでもない。だから実質「推理不能」な部類の事件だし、シムノンの狙いもそんなところにはない。
じゃあ本作で何が印象的か?というと、それはやはりホテルの酒場の女給エンマ、

エンマは、もどって来ると、その場のようすにはいっこうに無頓着に、勘定台のうえへ顔を出した。目にくまのある面長な顔だ。くちびるはうすく、ろくに櫛もいれていない髪のうえから、ブルターニュふうの頭巾をかぶっているが、それが絶えず左のほうに落ちかかり、そのたびごとにかぶりなおしている

と描写される「幸薄さ」満開のもう若いとは言えない女性の肖像だったりする...田舎町の有力者たちのお手軽な愛人として無残な年を重ねていく、希望のない女。そしてホテルに腰を据えてエンマを召使みたいに扱う、自堕落で心気症な非開業の医者であるドクトル。うらぶれた行き場のない中年男女の運命が、「黄色い犬」を象徴とする事件によって変わっていくさまが見どころなわけだ。実際初登場で

メグレは、勘定台の下にねそべっている黄色い犬に目をとめた。さらに目をあげると黒いスカートにつやのない顔がみえた。

とエンマと黄色い犬は内密に結託しているかのようなのである。この黄色い犬が媒介するささやかな運命の時を、メグレと共に目撃することにしよう。

No.5 6点 tider-tiger 2017/07/02 13:59
メグレ警視シリーズの初期作では、最初に読んだのはこれでした。
創元から出ていた『男の首』と本作がカップリングになっている入手し易いやつです。
なんとなく導かれて収録順を無視し『黄色い犬』から先に読んだのですが、ちょっと面喰らいました。
それまで読んできた作品はメグレの身辺の描写から始まるものばかりでしたが、本作は港町の寂寥とした風景の描写から入り、いきなり事件です。
この後も町の外れで暮らす浮浪者、そちこちに現れる不気味な犬、失踪する新聞記者と思わせぶりな材料が並び、あれ、今回のメグレはミステリなんだなと変な感じでした。
メグレシリーズはミステリの基準では測りにくい作品ばかりなんですが、本作は否応なくミステリの土俵に上げられてしまう。そうなってしまうと、まあそれほどのものではないという評価で6点くらいに落ち着く作品でしょうか。
チム・チム・チェリーと化したメグレにはポカーン。どのような思考過程を経てそんなことをしたのかさっぱりわかりませんでした。

メグレシリーズを真剣に読みはじめた頃は中期以降の作品を手にすることが多かったので(なぜか初期作品は手に入りにくかった)、初めての初期作品はある意味新鮮でした。
自分はメグレ警視が人情家とは思っておりませんでした。いや、人情はあるのですが、それは眼差しに集約され、行動で示したりはしない。職務に忠実で私情は排し、為すべきことをなす人物だと考えていました。ところが、本作ではメグレは情に掉さし具体的な行動を起こします。なぜあの人物にそこまで肩入れするのか。今まで読んだ作品に出て来た可哀想な人たちとどこかが違うのか。よくわかりませんでした。
そして、ハッピーエンド!!!
これまた珍しい。個人的にはちょっと不思議に思う作品です。
もちろん嫌いではありません。

No.4 5点 蟷螂の斧 2016/02/05 13:22
メグレ警部の言葉に「推論はしない」とあります。事件が次々と起こるのですが、主人公が推論をしないので、読者も推論の余地がありません。他の方も言っているように、メグレ警部の行動が突飛であり、その根拠が説明されません。よって、何か置いてきぼりを食ったような感じです。全体の雰囲気はいいのですが、ミステリー部分だけに限って言えば、作風は肌に合わないのかも。

No.3 5点 りゅう 2011/05/28 22:30
 シムノンの作品を始めて読みました。5つの事件が起こるのですが、それぞれの事件に意味を持たせて、複雑化した謎の造形は面白いと思いました。本格作品ではないので、論理的にこの真相を推理できるとは思いませんが。物語の進行に釈然としないところが何箇所かありました。市長が事件の鎮静化のために誰でもいいから逮捕しろと言ったり(実際に容疑不十分な人物を保護という目的はあるにせよ、逮捕してしまうのですが)、タイトルにもなっている黄色い犬が事件の現場に居合わせたと言うだけで群衆から石を投げつけられたり....。また、メグレ警部は、2人の人物が空家で密会することがどうしてわかったのでしょうか。
 メグレ警部(警視)シリーズは謎解きを重視したものではなく、捜査の過程や犯罪心理の描写に重点を置いているようなので、個人的好みからは外れており、ちょっと辛い採点となりました。

No.2 7点 2010/11/24 10:06
主要な登場人物が出そろった段階で、なんとなく想像がつきました。既読感があったのでしょうか。というよりもむしろ、本作が国内のこの種の作品の原点なのかもしれません。真相や動機は意外に俗っぽく、国内作品ではよく見られますし、2時間ドラマのお得意パターンでもあります。でも、終始うら寂しげな雰囲気が出ていて、しかも「男の首」とセットで読めば、フランスの重厚な文学作品に触れたような気にさせてくれます。フランス文学なんてまったく知らないのですが(笑)。

「男の首」と比較すると本書のほうが楽しめたので、1点プラス。

No.1 6点 2009/12/11 22:25
港町の風吹きすさぶ晩秋の夜に事件が始まるという冒頭だけで、もういかにもシムノンらしい雰囲気が感じられます。しかし終ってみると、意外にもメグレものにしては謎解き度がまあまあ高い作品でした。事件の顛末は最後メグレに説明されるとなるほどという感じですし、犯人の意外性もそれなりにあります。一般的なミステリ・ファンからは受け入れられやすい作品でしょうが、逆にシムノンには意外性など求めない、という人向きではないかもしれません。
タイトルの犬(実際の毛色は黄褐色といったところでしょうか)は、最初の事件の時から事件現場付近をうろついています。容疑者と見なされる大男が飼っているわけで、町の人々を不安にさせるのですが、もちろんバスカーヴィル家の犬みたいな役割ではありません。


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