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[ サスペンス ] メグレを射った男 メグレ警視 |
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ジョルジュ・シムノン | 出版月: 1979年09月 | 平均: 4.00点 | 書評数: 2件 |
河出書房新社 1979年09月 |
No.2 | 4点 | クリスティ再読 | 2023/03/25 09:07 |
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「死んだギャレ氏」「国境の町」は入手を諦め気味だから、評者的には第一期メグレの最後の残り。駄作というか、第一期の終盤でシムノンがヤル気なくしていた作品という評価が多いもの。
いやね、それでもツカミとかいいんだ。公用をひっかけてバカンス気分で旧友を訪れようとメグレはボルドーに向かった。寝台列車の上寝台の男の落ち着かない様子に迷惑したメグレは、その男が急に列車から飛び降りたのを目撃した!後を追うメグレは、その男に銃で撃たれる。負傷したメグレは田舎町ベルジェラックのホテルで、呼び寄せたメグレ夫人と旧友を手足にベッドの上で、猟奇殺人鬼の事件の捜査を始める.... 面白そうでしょ!列車内でのイライラ感やら興味を持ったメグレが単独行動でムチャやるあたり「サンフォリアン寺院」みたいだし、田舎町アウェイ事件で旧友と対立するのは「死体刑事」やら「途中下車」やら第二期以降によく出るパターンだし、それに珍しいベッド・ディティクティヴが絡む。モチーフ的には大変興味深い..... 原題は「ベルジェラックの狂人」。アウェイのメグレが被害者でベッドに釘付けなせいもあって、街の有力者からは「(内心)妄想を育んでいて、おかしいのでは?」と思われるのともかけてあるが、行きずりの女とSMプレイの果てに心臓に針を刺して殺す猟奇殺人鬼やら、街の有力者の秘密の趣味やら、メグレらしからぬ派手でサイコな話。でもこれが全然、物語として効いていない。何かリアリティのない背後事情と、シムノンらしいといえばらしい家庭悲劇で話がアチラの方向に逸れていって行ったきり。 瀬名氏は本作を「浮ついている」とバッサリ。らしからぬといえば、らしからぬ作品。 |
No.1 | 4点 | 空 | 2010/02/15 22:13 |
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原題直訳は『ベルジュラックの狂人』、その地の近くに気楽な出張に行ったメグレが撃たれて、大けがを負ってしまうところから始まる事件です。
メグレが連続殺人の犯人と誤解されてしまったり、ホテルのベッドに寝たままのメグレが、退職してその地に住んでいる元同僚やメグレ夫人をこきつかって事件の情報を収集したりと、普段の落ち着いたメグレとは一味違う皮肉めいたユーモアがある作品です。訳文のせいもあるでしょうが、同時期の他の作品より文章も軽い感じがします。 軽いのはいいのですが、最後の解決まで普段の落ち着きを欠いているように思われるところは不満です。メグレの推理は裏づけにとぼしく、説得力があまりありません。1979年に河出書房から出版されるまで、初期メグレものの中では唯一翻訳が出ていなかった理由も理解できる失敗作だと思います。 |