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[ 警察小説 ]
メグレ警視と生死不明の男
メグレ警視 別題「メグレと無愛想な刑事と殺し屋たち」
ジョルジュ・シムノン 出版月: 1981年01月 平均: 6.33点 書評数: 3件

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講談社
1981年01月

グーテンベルク21
2015年03月

No.3 6点 クリスティ再読 2022/08/27 22:37
中期メグレで一番脂が乗った時期の長編だから、なんやかんや言って面白い。でも河出でもハヤカワでも創元でもなくて、講談社から出たこともあるのか、Wikipedia のシムノンの著作リストが本作を落としていたりする。ギャバン主演で「メグレ赤い灯を見る」として映画化されたことで別途版権を取得したとかそういう事情があるんだろうね。アメリカから来てパリで傍若無人に振る舞うマフィアと、メグレ率いる司法警察の面々が対決する話だから、極めて映画向きな話。映画のあらすじを読むと、ベースは同じだけど背景をやや膨らませているような印象がある。原作の方が駆け足。

前半は評者もご贔屓ロニョンくんが活躍する。悪妻ロニョン夫人もしっかり登場。でもロニョンくん、ギャングたちに拉致されて...と刑事とは知らなかったにせよ、そこまでするの?というアメリカのギャングのやり口に、さすがのメグレも激怒。事情を少し知るらしいイタリア料理店主に「あいつらプロだから」と、見下されたような忠告をされたりするから、メグレも収まらないよ。

ストーリーラインはこの時期にしてはシンプルで、とくに紆余曲折はないんだけども、逆にアメリカンなスピード感が良く出ていて、リーダビリティの良さではメグレの中でも随分高いのでは。文庫は入手難なこともあって電子書籍で今回読んだわけだけど、全然気にならないくらいに話に引き込まれた。

クライマックスなんてね、メグレとリュカとトランスの三人でギャングのアジトに押し入るなんて荒事もあり。アメリカン・テイストのメグレ。

No.2 6点 2018/11/06 06:05
 "無愛想な刑事"と呼ばれるロニョン刑事の妻から、メグレ警視に電話がかかってきた。アメリカ人とおぼしきギャング達に、二度に渡って家捜しをされたのだという。家を空けていたロニョンとは連絡が取れたが、彼はフレシィエ通りで停車した車から投げ捨てられた怪我人の謎を追っていたのだ。だが、生死不明の男は第二の車に拾われ、既に消えてしまっていた。
 メグレはロニョンの独走を責めるが、片意地を張ったロニョンは捜査を続け、やがて彼の消息は途絶えてしまう・・・。
 1951年発表のメグレ警視シリーズ第67作。「メグレと消えた死体」と、「メグレの拳銃」の間に入る作品です。
 "無愛想な刑事"ロニョンの良心的な勤務ぶりはメグレも認めるところで、なにくれとなく気にかけているのは他の作品でも触れられているのですが、本作ではもう少し突っ込んだ描写が為されています。
 いわく、彼のひがみっぷり、独走傾向、いつまでも抜けない子供っぽさ・・・。それに加え、彼がメグレの配慮に薄々気付いていながらそれに甘えていることも指摘されます。
 メグレは言います。「自分を被害者扱いにするのはいいかげんにやめないか?」「一人前の男として私に話したまえ」
 ロニョンの方は共依存関係を求めているのかもしれませんが、メグレの方は配慮はしても、彼をオルフェーブル河岸に迎え入れるつもりは無いようです。
 肝心の物語では、メグレは散々忠告されます。「この件に関わらない方がいい」「アメリカの犯罪者はプロだ。それに比べればフランスの連中なんか子どもみたいなものだ」
 それに対してメグレは、刑事部屋のメンバーと共に珍しくスタンドプレーでギャング達と対決します。彼らの隠れ家に踏み込むシーンは緊迫感がありましたが、その割にはあっさり決着が付いたなと。この辺りは実際にアメリカ住まいだったシムノンの皮肉も入っているかもしれません。
 「勝負ははじまっている。はじまっている以上、最後までやる」
アクションを中心に、全体的に引き締まった雰囲気の漂う作品です。7点には及ばないものの、6.5点。

No.1 7点 2011/01/20 21:27
メグレものの中でも、今回は相手がアメリカの殺し屋たちということで、解説にもいつにないスピードとアクションのことが書かれています。確かにそうなのですが、それでも作者の独特な語り口のせいでしょうか、やはりいかにもメグレらしいところが感じられます。
メグレが何人もの人から、アメリカの殺し屋に比べるとフランスの犯罪者はアマチュアに過ぎないと言われ、不機嫌にぶつくさ言っているようなところも楽しめます。「無愛想な刑事」ロニョンの活躍と愚痴もいい感じです。
ただし後から考えてみると、プロの殺し屋にしては、基本的なところに不手際があるのが少々気になりました。また最後は完全にすっきり解決とまでならないのが、このシリーズでは時々あることなので特に不満というわけでもないのですが、今回のような派手なタイプの場合にはどうなのかな、と思えます。
なお、メグレがアメリカに行ったことがある話を『メグレ、ニューヨークへ行く』だと注釈してありますが(p.60)、これは間違いで、メグレがアメリカに研修旅行に行くのは『メグレ保安官になる』です。


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