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[ その他 ] マンハッタンの哀愁 シムノン本格小説選 |
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ジョルジュ・シムノン | 出版月: 2010年02月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 河出書房新社 2010年02月 |
No.1 | 5点 | クリスティ再読 | 2025/04/24 18:17 |
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シムノンのメグレ物以外の小説って、本当にバラエティ豊かだからバルザックとかになぞらえられるくらいでもある。河出の「シムノン本格小説集」もその「一端」くらいが覗けるくらいのものと捉えるべきなんだろうけども、結構ミステリ的手法とか趣向があったりもするのだが....本作はどうみてもミステリじゃない。自伝的な恋愛小説(苦笑)ごめん。
シムノンは戦争中に対独協力者の疑惑を持たれて、それもあって戦後すぐにアメリカに渡っている。アメリカで書いた最初の小説の一つが本作だ。だから舞台はタイトルどおりニューヨークのマンハッタン。主人公はシムノン自身を投影した一流半の俳優フランソワ。女優志望の妻を業界に紹介したら妻の方がスーパースターに出世。妻の不倫から結婚を解消し、フランソワは失意の中ハリウッドで一旗あげようとするが、どうもうまくいかずにニューヨークで役探しの日々。こんな中でバーで出会った女、ケイ。 午前三時の女なのだ、ベッドに入る決心がつかず、どんな犠牲を払っても刺激を求める必要があるので、酒を飲み、たばこを吸い、しゃべりまくり、しまいには極度に興奮して、男の腕の中に身を投げるのだ と形容される30過ぎ、離婚歴のある女性。そのままフランソワはケイと同棲を始める....しかし、ケイが前夫との間に儲けた娘の重病の知らせを受け、ケイはメキシコへ旅立つ。ケイは戻ってくるのか? 全体的には虚無的、といえばそうだけど、ほのかな明るさがある。シムノンがアメリカで出会った女性デニーズと恋愛関係になり、妻とも離婚してという自伝的な内容が反映しているといえばそうだろう。夜の街をケイと共にさまようのが何ともムードがある。原題は「マンハッタンの三つの部屋」という意味だそうだが「マンハッタンの哀愁」でマルセル・カルネが監督して映画になっている。1965年の作品で、主演がヌーヴェルバーグの代名詞みたいなモーリス・ロネ。晩年のカルネがヌーヴェルバーグに対抗意識を燃やして作ったそうだ。この映画の評がまさに小説の評としてもふさわしいかもしれない。 ほとんどがバーや安宿にいる2人が登場するシーンばかりかな。 酒と煙草燻らすばかりで、かなり退屈なのが正直な感想。 こんな小説。 |