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[ サスペンス ] アルザスの宿 別題『山の十字路』『山峡の夜』 |
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ジョルジュ・シムノン | 出版月: 1960年11月 | 平均: 6.33点 | 書評数: 3件 |
![]() 東京創元社 1960年11月 |
No.3 | 6点 | クリスティ再読 | 2023/06/26 15:07 |
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さて評者は国会図書館デジタルコレクションで本作。
創元で出たが、メグレ物ではない単発のエンタメ。メグレ夫人の出身地がアルザスの設定で、よく「妹の出産」だなんだで帰省するし、名物シュクルート(ザウアークラウトだな)はメグレも好物。そんなアルザスの観光地ミュンスター(仏語だとマンステールと発音した方がいいようだ)の、シケた宿屋に寄宿する冴えない中年男、セルジュ氏。 セルジュ氏はぶらぶらしているくせに金欠のようで、宿の女主人に下宿代を請求されて「待ってくれ」とお願いする始末。でも、宿の雑用を気よく手伝って...と「居残り左平次」みたいなキャラでなかなか、いい。向かいのホテルに投宿したオランダ人銀行家の手元から、金が盗まれる事件が起き、容疑が身元不詳のセルジュ氏にかかった! セルジュ氏はその容疑を晴らすが、銀行家夫人がセルジュ氏を謎の詐欺師ル・コモドールだと指摘する....ル・コモドールと対決するパリ警視庁ラベ警部がこのセルジュ氏に貼り付いて監視するが、セルジュ氏は詐欺師か?盗難事件の真相は? というような話。セルジュ氏のキャラとその謎、それから宿の奥にある別荘に住む未亡人とその娘との間のロマンス含みの関係など、「セルジュ氏の謎」として小ぶりながらうまくまとまった作品。 考えてみたら、ホテル探偵居残り左平次って、結構いいネタだと思う。「幕末太陽伝」のフランキー堺のイメージでミステリだったら素敵だな。 シムノン版ルパンみたいな味わいがあって、フランス人のルパン好きと、シムノンらしさとがうまく拮抗して補いあっている。結構な珍味作。 (あ、マンステールって地名、何で聞き覚えがあるんだろう?って思ってたが、ウォッシュタイプのチーズで有名なのがある) |
No.2 | 6点 | 人並由真 | 2016/07/13 04:12 |
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(ネタバレなし)
シムノンの非メグレもの。普通小説に近い内容のものを予期していたが、山荘のホテルからの現金盗難事件、国際的詐欺師を追うパリ警視庁の警部、そしてレストラン兼宿泊宿「アルザス亭」の謎の長期宿泊客セルジュ・モローの正体…!? とちゃんとミステリ要素も盛り込まれている。 ホテルでの盗難事件、逆境の未亡人とその娘とセルジュ氏のからみ…と物語が分断されていく中盤はちょっとだけかったるかったが、終盤には、ある登場人物の人生からもうひとつの顔が覗く、いつものシムノンのロマンと小説を読む快感がある。 主人公はシリーズ化してほしかった気もするが、そうなるとこの作品のような魅力はもう出なかったろうなぁ。シムノンファン、メグレファンなら一読はお勧めする佳作~秀作。 |
No.1 | 7点 | 空 | 2009/06/09 21:31 |
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「アルザスの宿」という名前の宿に半年も滞在している謎の紳士セルジュ氏の正体は?
初期10年間に書きまくったらしい通俗小説(すべて未訳)を除くと、シムノンが初めてメグレものから離れた長編ですが、この風光明媚な田舎で繰り広げられる話は、メグレもの以上にサスペンス・ミステリ的と言えるのではないでしょうか。盗まれた大金の謎と推理もありますし、セルジュ氏とパリから出張してきたラベ警視との対決は、ルパン対ガニマールを思わせる感じさえあります。 と言っても、やはりそこはシムノン。最後セルジュ氏に自分の過去と現在を語らせるところは、簡潔な文章で的確にこの主人公の苦い心情を描き出して見事です。 |