皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ サスペンス ] ベルの死 |
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ジョルジュ・シムノン | 出版月: 1957年05月 | 平均: 6.50点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1957年05月 |
No.2 | 6点 | クリスティ再読 | 2017/04/17 17:00 |
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犯人や真相が不明のまま終わるミステリの例としてよく挙がる作品である。まあアイデアとしては誰でも思いつくようなネタなんだけど、真相不明のままで小説を終わらせて次回作を読んでもらえるか?というとこれが極めて怪しいために、なかなか作例がない。何か仕掛けとか犯人なしで終わらせるための説得力のある説明とか工夫がいる上に、小説的充実によって納得させる筆力も必須である。評者なぜか真相不明系作品をよく当サイトで評している傾向があるようだ...
・「ここにも不幸なものがいる」ジャック・ザ・リッパー物なので、現実の事件が真相不明だから不明でイイ。 ・「インターコムの陰謀」国際スパイなので、背後関係が全部わかるわけじゃない。 ・「寝ぼけ署長」所収の「中央銀行三十万円紛失事件(短編)」人情解決 で...本作である。ホームステイ中の妻の友人の娘ベルが、家の主人で教師のスペンサーがいたにも関わらず、自室で絞殺されていた...真面目な娘に見えたのだが、陰では派手な交友があったようで、真相が不明のまま、スペンサーへの容疑が完全に晴れるというわけでもなく、重苦しい雰囲気が続いていく、という話。家の中に突然置かれたSEXと死に戸惑う中年男が、徐々「ベルの死」の謎の圧力に憑りつかれて変貌してくのが主眼なので、実は主人公が犯人でした、では話のポイントを外してしまう。主人公の心理を丁寧に追っていく、当然スッキリした解決がない鬱小説なので、面白いが読むのが結構心理的にツラいものがある。犯罪よりもその罪を犯す人間の方に関心が強いシムノンらしい小説だ。なので犯人不明でも小説としてはアリ。 |
No.1 | 7点 | 空 | 2009/01/17 21:50 |
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早川ポケットミステリで初出版された当時、読者から怒りの手紙が何通も届いたそうです。理由は、冒頭で起こった殺人事件の真犯人が最後まで全く不明なままだからで、実は解説には、普通の意味の推理小説ではないことがちゃっかり書かれているのです。
その解説に先に目を通した後、じっくり読めば、この小説の終わり方はなかなかすごいと思えるのですが、小説(純文学)としての満足度は高くても、ミステリのシリーズから出すべき作品であったかどうかはまた別問題でしょう。 |