皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 警察小説 ] メグレの退職旅行 メグレ警視 |
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ジョルジュ・シムノン | 出版月: 1981年07月 | 平均: 6.33点 | 書評数: 3件 |
角川書店 1981年07月 |
グーテンベルク21 2015年03月 |
No.3 | 7点 | クリスティ再読 | 2024/05/19 12:31 |
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実は意外なくらいにメグレ物短編って本数が少ないようだ。雑誌に載っただけで未収録の作品やら雑誌掲載時に訳題がバラバラなこともあって混乱することが多いようだが、基本的には第二期短編集としてフランスで出た「メグレの新たな事件簿」が底本であり、これの訳本が角川文庫の「メグレ夫人の恋人」「メグレの退職旅行」に相当する。しかし、底本には収録でもなぜか訳書からは収録が漏れた「メグレと消えたミニアチュア」があり、また同時期執筆作でこの短編集に収録されなかったものが「メグレと消えたオーエン氏」「メグレとグラン・カフェの常連」の2作。
この一連の短編に続いて書かれたが戦後の「しっぽのない小豚」に収録されたメグレ物が「街を行く男」「愚かな取引」、「メグレ激怒する」と合本で収録された「メグレのパイプ」が戦前に出た第二期の短編になる。 そして戦後のメグレ物短編集で完訳されている「メグレと無愛想な刑事」収録の4作、そして単発のクリスマスストーリーとして後年に書かれた「メグレのクリスマス」があるだけだ。そうしてみるとシムノンの短編小説はかなり多いのだが、メグレ物短編は数が少ない。 なので特にこの角川の2冊は読み逃せない短編集になる。「メグレ夫人の恋人」も良い短編集だったが、初期仕様のパズラー風のものもあって、魅力十分とまではいかない。2冊目のこの短編集はパズラー的な「月曜日の男」でも、絶妙のキャラ設定があって興味深い(毒物がヘンテコだがw)。リアルなトリックがあるといえばあってコンパニオンの女性が女主人の謀殺を訴える「バイユーの老婦人」、娼婦のフリをする良家の子女とメグレが対決する「ホテル北極星」、お針子が引退後のメグレを振り回す「マドモアゼル・ベルトの恋人」、そしてメグレ夫人の魅力が全開する「メグレの退職旅行」と、女性キャラにリアルと生彩ががあるのがいいあたり。 確かに第二期のカラーである上出来なエンタメらしさをシンプルに出した短編集だと感じる。キャラに魅力を与えることにシムノンの腕力が発揮されて、それをメグレの父性と呼ぶべき個性が支えて趣きが深くなっている。粒揃い。 |
No.2 | 6点 | 雪 | 2018/06/14 13:56 |
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見落としがちな角川文庫のメグレ短編集の二冊目。一冊目の「メグレ夫人の恋人」よりもこちらの方が好きです。 三期に分かれたメグレ物の一期と二期の合間に書かれた十数編の短編を二冊に分け、長めの作品を集めたのがこちらという事になります。 ミステリとしてよろしいのは「バイユーの老婦人」ですかねえ。 メグレ物とは思えない大胆なトリックを弄しておりまして、形を変えて後年のメグレ長編に流用されております。
ピカイチなのは最も長い「ホテル"北極星"」。 退官間際のメグレが殺人現場のホテルで、かたくなに身元を隠すヤンチャ娘にいいように引っ掻き回されるという、たいへん楽しいお話です。 この娘さんのキャラが非常によろしい。 この二編に次ぐのは英仏海峡に臨む港町での、嵐の夜の殺人を扱った表題作かな。 降り込められた宿の中に犯人が…という、一種のクローズドサークル物です。雰囲気たっぷりな以外はたいしたもんじゃありませんが。 中短編メグレはキッチリオチが着いてるのが良いですね。後期に行くに従ってどんどん薄味になっちゃいますから。文章が枯れてなければそれでも読めるんですけど。 |
No.1 | 6点 | 空 | 2013/05/15 22:44 |
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『メグレ夫人の恋人』に続き『メグレの新捜査録』からの6編を収録した短編集です。その上巻とは逆に、かなり長い作品が4編あり、その前に短い2編が置かれています。
短い『月曜日の男』と『ピガール通り』は、たいしたことはないかな、といったところ。次の『バイユーの老婦人』はメグレものには珍しいハウダニットの佳作になっています。後の3編は本のタイトルにもあるメグレの退職がらみで、まず『ホテル”北極星”』は退職2日前の事件です。ホテルで起こった殺人事件で、司法警察に連行された若い女セリーヌがなかなか印象的。『マドモワゼル・ベルトとその恋人』は退職後田舎で暮らしているメグレに宛てられた手紙から始まります。なんとこの作品では、常連リュカ部長刑事が殉職したという設定になっています。最後が『メグレの退職旅行』で、英仏海峡に臨む港町で嵐の夜という、シムノンお得意の雰囲気がたっぷり楽しめる作品でした。 |