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[ その他 ] ベベ・ドンジュの真相 |
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ジョルジュ・シムノン | 出版月: 1961年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1961年01月 |
No.2 | 7点 | クリスティ再読 | 2018/02/25 23:28 |
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本作読んでの感想は、やはり空さんと同じく「テレーズ・デスケールー」のシムノン版、というところ。フランス文学には「女の一生」とか「ボヴァリー夫人」とか「人妻話の伝統」みたいなものがあるわけで、そういうもののシムノン流、ということになるのだが、人妻話としてもシムノン一般小説としても、かなりミステリ寄りの作品だ。しかし、シムノンらしい夫婦の心理の綾(他人同士が一緒に暮らすことになる不思議と恐ろしさ...)が主眼なので、分かりやすさみたいなものはない。シムノンで言えば「ベルの死」のような説明不能な「こころ」の話だが、テレーズや「ベルの死」とは違って、妻ペペによって毒殺されかけた被害者の夫が、あくまでもその行為に及んだ妻の、孤独なこころと漠然とした殺意を理解し赦そうとする話である。なので、テレーズや「ベルの死」のような鬱屈感はなくて、突き抜けたような清澄な雰囲気がある。罪を犯すことによる逆説的な救いみたいなものを感じるのがいいのだろう。
シムノンという作家が「人を殺す」という究極の行為について、いろいろと解釈を試みるヴァリエーションの広さは、本当に敬服に値する。逆にカトリック文学らしく「罪と罰」の視点がシムノンよりも強い、モーリアックの「テレーズ・デスケールー」も久々に読んでみたくなったなぁ。 |
No.1 | 7点 | 空 | 2012/04/22 19:59 |
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ある夏の日曜日、夫を砒素で毒殺しようとしたベベ・ドンジュ。企ては未遂に終わり、彼女は犯行を自供し、すぐさま逮捕されます。
過去の生活を通して探求される動機を扱ったホワイダニットの一種と捉えることもできます。本作では殺されかかった夫の視点から、その探求はなされます。しかし彼に「おわかりでしょう!」と言われても、一般的なミステリのように動機が明瞭に示されるわけではありません。夫婦関係の微妙な心理的すれ違い、「蚊が、ときには、大きな石が水溜りに投げ込まれた時よりも、もっとはげしく水面をかき乱す」という冒頭部分の意味は、読者によって感じ取られなければなりません。殺人未遂を契機に、夫が妻を理解しようと努めるところは、似た素材を扱ったモーリアックの『テレーズ・デスケルウ』と異なる点だと言えます。 なお、ちょっとだけ登場する刑事の名前はジャンヴィエとなっていますが、舞台はパリでもありませんし、メグレの部下とは別人ですね。 |