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[ 警察小説 ]
メグレ、ニューヨークへ行く
メグレ警視、別題「メグレ氏ニューヨークへ行く」
ジョルジュ・シムノン 出版月: 1977年04月 平均: 6.67点 書評数: 3件

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河出書房新社
1977年04月

河出書房新社
1983年02月

河出書房新社
2001年03月

グーテンベルク21
2015年04月

No.3 6点 クリスティ再読 2020/01/18 21:17
退職後のメグレ。父に対する漠然とした危機の雰囲気を捉えた息子の依頼で、メグレはニューヨークに旅することになった。ニューヨークに到着したら、息子は姿を消すし、その父と面会したメグレはけんもほろろの扱いを受ける...依頼主をなくしたメグレは、ニューヨークという「場違いな場所」を漂流する...そんな雰囲気の話。
まあとはいえ、この父というのもフランスからの移民で、過去の事件が蔭を落としている背景もある。だから必ずしも場違い、というほどでもないのだが、なかなか話の焦点が絞れてこないので、五里霧中の中を、それでもメグレは動揺せずに歩み続ける。
キャラとしては泣き上戸の探偵デクスターとか、老芸人たち、不良新聞記者など、ニューヨークにもシムノンっぽい登場人物はいるものである。最後にメグレが国際電話を一本かけて事件の真相を暴く、なんて演出も結構。この電話にもなかなかの味がある。

No.2 7点 tider-tiger 2019/07/29 23:48
~ニューヨークにいる父の身になにか悪いことが起きているらしいので、一緒に様子を見に行っては貰えないだろうか。
大富豪ジョン・モーラの息子ジーンは父親の身を案じている。退官して片田舎でカードや家庭菜園に興じていたメグレだったが、重い腰を上げて船でニューヨークへ旅立った。ところが、下船直後にジーンはいずこかへ消え去り、やむなくメグレは一人でジョン・モーラ氏を訪ねる。若い秘書に居留守を使われた挙句、どうにか面会は叶ったが、ジョン・モーラ氏はメグレの話をまともに取り合おうとしない。フランスからはるばるやって来てのこの扱いは不愉快極まりなかったが、小男の大富豪ジョン・モーラはただのイヤな奴ではなく、なぜかメグレに強烈な印象を残した。
そう。彼は冷たい眼をしていた。~

1946年フランス作品。あとがきにもあるとおり、メグレものなのに舞台がニューヨークなんてと思う方は多いでしょう。自分もそう思いました。が、本作は他人さまにお薦めしやすいメグレです。いい作品だと思います。
(個人的には前作『メグレ激怒する』の方が好きですが)
前作に続いて本作も退職後のメグレです。メグレットは前作でも遠出をさせられましたが、今回は海を越えてのニューヨーク。そんなわけで部下はいないし、土地鑑もないし、狐につままれたような成り行きや無礼な扱い、苦手な英語、お互いをファーストネームで呼び合うアメリカ人と小さなものから大きなものまでメグレを苛立たせます。
なにが起きているのかさっぱりわからない序盤。今回のメグレの役回りは私立探偵的であります。前作でもそんな立ち位置でしたが、本作はより捜査している感があり、筋立てにはハードボイルドっぽさも少しあります。
また、ユーモラスな味付けも濃厚な作品です。シムノンのユーモアって基本的には狙っている感じではなく(もしかしたら作者はユーモアのつもりですらないのかもしれませんが)、微妙なくすぐりなのですが、本作でメグレの助手となるデクスターに関してはちょっと狙った感があります。アル中になって自尊心を失くしてしまったロニョンといった風でなんともいえない滑稽な人物です。
ミステリとしては突飛に感じる点もありますが、個人的な嗜好として動機が人物描写によって強化されている作品は好印象です。
※状況(弱みを握られた、身内を殺されたなど)だけではなく、人物(こういう人間だからこそ、その行動を起こした)もしっかり描くことにより、重層的に事件発生の必然性が描かれているということです。
職務ではなく私人として捜査しているせいなのか、メグレがかなり感情を露にしております。前作より本作こそ『メグレ激怒する』だったのではないかなあと感じます。
変化球気味だしミステリとして特に優れているわけではなく、メグレものの醍醐味がいくつか損なわれてもいる作品でもありますが、メグレものならではの特徴というか良さが非常にわかりやすく出ている作品のように思います。

No.1 7点 2010/05/31 23:22
タイトルどおりの発端から始まる作品。シムノン自身アメリカに移住してすぐ、1946年に書かれた作品ですから、ニューヨークに対するメグレの感想は、シムノン自身の意見とも重なるのでしょう。英語があまりできないというだけでなく、習慣の違いなどにいらいらさせられる様子が鮮やかに伝わってきます。
事件は、ニューヨークに住む父親が心配なので、メグレに一緒についてきてくれと依頼した青年が、アメリカに入国するなり姿を消してしまう、というあいまいなものです。さらに轢き逃げによる老人殺しが起こり、どうやら事件の裏はジュークボックスの製造販売で大成功した父親の過去にありそうだ、ということになりますが、真相自体はシムノンにしてもまあまあといったところです。しかしその結末まで持って行く過程、登場人物たちの造形描写がさすがにうまく、かなり楽しめました。


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