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[ その他 ] モンド氏の失踪 |
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ジョルジュ・シムノン | 出版月: 2011年08月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 河出書房新社 2011年08月 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2025/02/16 12:45 |
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シムノンらしさは全開だけど、ミステリ色はかなり薄い。でも話は結構シムノンの定番話。パリに住む富裕な中年の商人、モンド氏が突然失踪し、身なりを変えて南仏に逃亡する話。蒸発話といえばそう。乱歩も「二重生活」とか変身願望が強く現れた話が好きだけど、本作気に入るんじゃないかな(苦笑)だったらミステリ周辺という見方もできるかも。
シムノンのミステリと本格小説の違いって何か、と考えたら、「理由を説明する」か「しない」かの違いのようにも感じる。メグレという最高の説明役がいて事件を解明し説明するからこそ、「メグレ警視もの」というミステリが存在する。「シムノン本格小説」と銘打ってもも実は「メグレのいないメグレもの」なのかもしれない。だから、本作ではモンド氏がとくにきっかけもなく失踪した理由も丁寧に説明するわけではない。まあこれ多くのメグレ物を含むシムノンの登場人物の行動そのものだから、シムノン読者には目新しいわけではない。 しかし本作だと、南仏に逃れてホテル隣室で棄てら自殺しかけた女ジュリーと同棲。自ら望んだ委細承知の没落。一緒にダンスホールと賭博が売り物の店に就職し、とある意外な事件に出くわして、再度の「モンド氏の変貌」起きる。これがなかなかの見もの。しかもこの理由をちゃんと説明しない、でもそれが腑に落ちる。意外な再変貌が興味深いのは別にして、この理屈もへったくれもなく「腑に落ちる」あたりが、高評価の理由。 この「説明のしなさ」がハードボイルドのようにも感じられてしまう。 それは「説明しない」潔さのようなものが窺われるからだろうか。「理由が説明できるか」は、実は「人間の自由」ともかかわっている。モンド氏の変貌はこのような「自由」に向き合い、それをモンド氏が主体的に「自由」を解釈し、受け入れることから起きているのだろう。 たしかに「シムノン本格小説」は、しっかりした現代文学なのだと思う。 |