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[ 警察小説 ]
メグレと若い女の死
メグレ警視
ジョルジュ・シムノン 出版月: 1972年11月 平均: 7.00点 書評数: 3件

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早川書房
1972年11月

グーテンベルク21
2015年03月

早川書房
2023年02月

No.3 7点 クリスティ再読 2017/07/30 22:17
小説というものに何を求めるか、というと人それぞれなんだろうけども、そこに描かれた「不器用な生き方をする人々」に対する共感みたいなものを「愉しむ」というのはやはり評者も年老いたからなのかね...で本作、パリに憧れて上京した被害者も、捜査陣でもとりわけ印象深い「無愛想な刑事」ロニョンも、生きることの下手くそな人々だというあたりに、感慨深いものがある。
被害者は賭博狂いの毒母から逃れて、花のパリへ上京しても、若い女子でも美人でもなく要領悪く取柄もないと、パリは広いというけれど、身をおくスキマもないものだ..上京するときに知り合った元ルームメイトは御曹司をゲットして時めくが、自分は借り物のドレスでルームメイトの結婚式に現れてお金を借りる惨めさよ。
現場所轄の刑事ロニョンは、愚直なまでの足の捜査の達人なのだが、要領悪く昇進試験にも受かる見込みもない。いつも手柄はメグレが要領よくかっさらい、オレはいつもくたびれ儲け...(実はメグレはロニョンを買っていて、敬意を持っていたりするのだが、それにロニョンは気がつかない。これがロニョンの一番気の毒なところ)
この二人の像が付かず離れずで重なるのが本作の秀逸。被害者も本当は幸運とニアミスしているのだがそれに気づかず短い生涯を終えるし、ロニョンもメグレが温かく見ていることに気が付かない。そういう「不幸」の話である。嗚呼情けなしの世の中よ。

No.2 7点 tider-tiger 2014/05/26 16:17
パリで若い女性が殺害されます。この女性はどこの誰なんだろう?
こんな風に物語は始まります。
正直なところ、ミステリとして評価するのならこの作品は5点くらいではないかと思っています。ただし、小説としての評価は9点です。なので中間をとって7点とさせて貰いました。
この作品は被害者がどんな人物なのかをメグレ警視が探っていく物語です。犯人はまったく重要視されない奇妙なミステリです。
都会に出てきた若い女性が非業の死を遂げるまでの人生が複数の視点から断片的に語られ、メグレ警視はそれらを取捨選択しながら彼女の人物像を組み立てていきます。そうした作業を一緒に楽しめる方なら、この小説に深い感銘を受けるのではないかと思います。
これは警察小説という枠を利用して描かれた人間の物語です。哀切極まりない物語です。

No.1 7点 2011/05/11 23:07
タイトルどおり、パリの街角で若い女の死体が発見されるところから始まる本作。
3/4ぐらいまで読んだところで犯人は誰かなどと考えてみても、答は絶対に出ません。というのも、犯人はまだ登場していないからです。その犯人は最初の証言を終えるや否や、メグレに嘘を見破られてそのまま警察に連行されてしまうのです。
本作では事件の主役は被害者の方であって、犯人は誰でもかまわないのです。思い込みに捉われず普通に読み進んでいけば、シムノンが描こうとしたのは殺人犯やその動機ではなく、田舎からパリに出てきた若い女の行く末であることは、はっきりとわかるように描かれています。「無愛想な刑事」ロニョンの出番が多く、彼の生活などについてかなり筆が費やされているのも、本作のテーマとからんできます。しみじみした哀しみが伝わってくる作品です。最終ページのメグレと犯人の会話もしゃれています。


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