海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ サスペンス ]
港の酒場で
メグレ警視 別題「ニュー・ファウンドランドで逢おう」
ジョルジュ・シムノン 出版月: 1961年04月 平均: 6.00点 書評数: 2件

書評を見る | 採点するジャンル投票


東京創元社
1961年04月

旺文社
1977年09月

グーテンベルク21
2015年04月

No.2 6点 クリスティ再読 2019/11/19 01:58
シムノンの港好き、船好きは頻繁に作品舞台になることからもうかがわれるのだけど、本作はタラ漁船の船長殺しを扱って、プロレタリア文学風の味わいさえあるような作品だ。
出港時に水夫がマストから落ちてケガをするわ、途中で見習い水夫が波に攫われるわ、ベテラン船長はらしくもなく自室に閉じこもりっきりで、高級船員たちと険悪な情勢になり、一匹もタラのいない漁場でムダな漁をするわ、一転タラがたくさん獲れたが塩が足りなくて傷んでしまうわ..と散々な出漁だった「大西洋号」がフェカンの港に帰ってきた。その帰港の夜、船長が港に投げ込まれて殺された...この漁の間船長と険悪な仲になっていた電信技士に容疑がかかる。メグレは幼馴染の教師に頼まれて、この技士の容疑を晴らそうと非公式に事件に介入した。メグレ夫人と技士の婚約者とともに、海辺のホテルに滞在するメグレの捜査は...
という話。なので3か月間船に閉じ込められる船員たちの間での人間関係をメグレが探っていくことになる。この頃の古典ミステリっていうと、テンプレ的なブルジョア家庭で、リアリティ皆無の「お仕事」な小説がフツーだったわけだけど、シムノンのリアリズムは地に足がついてて他の作家とは隔絶しているとさえ思うよ。

ぼくらのまわりには、明けても暮れても灰色の水と冷たい霧ばかり。そして、いたるところに、タラのうろこと、はらわた。口のなかには、いつもタラを漬ける塩水の、胸のむかむかするような味があります。

こういう小説。ミステリとしての真相はどうこういうものでもないが、最後真相を掴んだメグレは、婚約者の父の小商人根性がうっとおしくなって逃げだすのがご愛敬。
初期の創元から今は亡き旺文社文庫でなぜか出てたレア本だったけど、今は電子書籍があるみたいだ。けど、旺文社文庫で手に入ったので、電子書籍デビューはお預け。残念。

No.1 6点 2009/01/08 21:34
シムノンの描く世界は、雨や霧、運河や海など、水が関係することが特に1930年代には多いのですが、今回の舞台は港町です。原題を直訳すれば「ニューファウンドランドでの出会い」ですが、これは酒場の名前で、メグレ警視は開幕早々、そこで酔って大騒ぎしている船乗りたちから事情聴取をすることになります。
メグレ式捜査法は、事件関係者たちの立場になりきることによって、事件がどのように起こったのかを理解するというのが基本ですが、その方法が最もわかりやすい形ではっきり描かれている作品ではないでしょうか。被害者と第一容疑者、それに第一容疑者の婚約者に焦点が当てられているため、真犯人の影が薄くなっているのが、なんとなく不満な気もしますが、まあそれは作者も承知の上なのでしょう。


キーワードから探す
ジョルジュ・シムノン
2024年03月
ロニョン刑事とネズミ
平均:7.00 / 書評数:1
2023年10月
メグレとマジェスティック・ホテルの地階
平均:6.60 / 書評数:5
2022年04月
運河の家 人殺し
平均:8.00 / 書評数:4
2018年11月
十三の謎と十三人の被告
平均:6.00 / 書評数:1
2015年02月
紺碧海岸のメグレ
平均:6.75 / 書評数:4
2011年02月
青の寝室 激情に憑かれた愛人たち
平均:7.00 / 書評数:1
2010年12月
ブーベ氏の埋葬
平均:7.00 / 書評数:2
2009年10月
倫敦から来た男
平均:6.50 / 書評数:4
2008年07月
ちびの聖者
平均:8.00 / 書評数:1
2008年04月
証人たち
平均:7.00 / 書評数:1
2007年07月
Les rescapés du Télémaque
平均:6.00 / 書評数:1
2005年12月
Les sept minutes
平均:6.00 / 書評数:1
2000年04月
Le rapport du gendarme
平均:6.00 / 書評数:1
1999年12月
Les complices
平均:6.00 / 書評数:1
1998年12月
Le suspect
平均:7.00 / 書評数:1
1998年10月
O探偵事務所の恐喝
平均:6.00 / 書評数:1
丸裸の男
平均:5.00 / 書評数:1
1998年08月
老婦人クラブ
平均:6.00 / 書評数:1
ドーヴィルの花売り娘
平均:6.00 / 書評数:1
1997年07月
メグレ警視
平均:6.00 / 書評数:2
1992年10月
ベティー
平均:5.00 / 書評数:1
1992年05月
仕立て屋の恋
平均:6.00 / 書評数:4
1988年08月
メグレ激怒する
平均:6.00 / 書評数:3
1986年08月
メグレと死体刑事
平均:5.67 / 書評数:3
1985年08月
妻は二度死ぬ
平均:6.00 / 書評数:2
1985年01月
平均:7.67 / 書評数:3
1984年04月
メグレとワイン商
平均:5.33 / 書評数:3
1983年12月
メグレと善良な人たち
平均:5.50 / 書評数:2
1983年04月
メグレと殺された容疑者
平均:5.50 / 書評数:2
1982年12月
メグレと幽霊
平均:6.50 / 書評数:2
1981年07月
メグレの退職旅行
平均:6.00 / 書評数:2
1981年01月
メグレ警視と生死不明の男
平均:6.33 / 書評数:3
1980年03月
メグレ再出馬
平均:5.75 / 書評数:4
1980年01月
メグレと老外交官の死
平均:5.00 / 書評数:2
ゲー・ムーランの踊子/三文酒場
平均:6.50 / 書評数:2
1979年11月
メグレの失態
平均:4.00 / 書評数:1
1979年10月
メグレ推理を楽しむ
平均:6.00 / 書評数:2
1979年09月
メグレを射った男
平均:4.00 / 書評数:2
1979年08月
メグレとかわいい伯爵夫人
平均:5.67 / 書評数:3
1979年07月
メグレ保安官になる
平均:5.33 / 書評数:3
1979年06月
メグレの拳銃
平均:6.25 / 書評数:4
1979年05月
メグレとルンペン
平均:5.50 / 書評数:4
1979年04月
メグレと賭博師の死
平均:6.00 / 書評数:2
1978年11月
メグレ警視のクリスマス
平均:6.00 / 書評数:5
1978年10月
メグレの幼な友達
平均:5.00 / 書評数:1
1978年09月
メグレと匿名の密告者
平均:4.00 / 書評数:2
メグレ最後の事件
平均:5.50 / 書評数:2
1978年08月
メグレと殺人予告状
平均:6.25 / 書評数:4
1978年07月
メグレと老婦人の謎
平均:6.00 / 書評数:4
メグレとリラの女
平均:6.00 / 書評数:3
1978年06月
メグレ夫人の恋人
平均:6.50 / 書評数:2
メグレと録音マニア
平均:5.00 / 書評数:4
メグレとひとりぼっちの男
平均:5.50 / 書評数:2
1978年05月
メグレの財布を掏った男
平均:6.00 / 書評数:1
メグレと田舎教師
平均:6.00 / 書評数:3
1978年04月
メグレの打明け話
平均:5.50 / 書評数:2
メグレ夫人のいない夜
平均:6.00 / 書評数:4
1978年03月
メグレと妻を寝とられた男
平均:5.75 / 書評数:4
1978年02月
メグレと宝石泥棒
平均:5.75 / 書評数:4
1977年12月
メグレと優雅な泥棒
平均:5.67 / 書評数:3
メグレとベンチの男
平均:5.75 / 書評数:4
1977年10月
重罪裁判所のメグレ
平均:5.00 / 書評数:2
1977年09月
メグレと政府高官
平均:6.00 / 書評数:3
1977年08月
メグレと消えた死体
平均:6.00 / 書評数:3
1977年07月
メグレ式捜査法
平均:5.00 / 書評数:3
1977年06月
メグレ夫人と公園の女
平均:6.50 / 書評数:2
1977年05月
メグレの初捜査
平均:6.50 / 書評数:2
1977年04月
メグレ、ニューヨークへ行く
平均:6.67 / 書評数:3
1977年03月
メグレたてつく
平均:7.00 / 書評数:2
1977年02月
メグレと首無し死体
平均:6.25 / 書評数:4
1977年01月
モンマルトルのメグレ
平均:6.75 / 書評数:4
1976年12月
メグレと口の固い証人たち
平均:5.33 / 書評数:3
1976年10月
メグレと火曜の朝の訪問者
平均:6.00 / 書評数:5
メグレの途中下車
平均:5.00 / 書評数:3
1976年09月
メグレ間違う
平均:5.67 / 書評数:3
メグレと殺人者たち
平均:7.00 / 書評数:4
1975年01月
Chez Krull
平均:5.00 / 書評数:1
1973年04月
メグレの回想録
平均:5.67 / 書評数:3
1972年11月
メグレと若い女の死
平均:7.00 / 書評数:3
1970年06月
ビセートルの環
平均:6.00 / 書評数:1
1970年05月
フェルショー家の兄
平均:5.00 / 書評数:1
妻のための嘘
平均:6.00 / 書評数:1
1970年04月
ドナデュの遺書
平均:5.00 / 書評数:1
1970年03月
日曜日
平均:6.00 / 書評数:2
1970年02月
港のマリー
平均:6.00 / 書評数:1
1969年11月
新しい人生
平均:8.00 / 書評数:1
1969年10月
片道切符
平均:6.00 / 書評数:1
1969年08月
ストリップ・ティーズ
平均:6.00 / 書評数:1
1963年08月
13の秘密
平均:6.50 / 書評数:4
1961年11月
娼婦の時
平均:6.50 / 書評数:2
1961年08月
メグレと死者の影
平均:6.00 / 書評数:3
1961年07月
死んだギャレ氏
平均:6.00 / 書評数:1
1961年04月
港の酒場で
平均:6.00 / 書評数:2
1961年01月
メグレ警部と国境の町
平均:6.00 / 書評数:2
ベベ・ドンジュの真相
平均:7.00 / 書評数:2
メグレと老婦人
平均:6.00 / 書評数:3
1960年11月
アルザスの宿
平均:6.33 / 書評数:3
1960年09月
オランダの犯罪
平均:6.50 / 書評数:4
1960年05月
怪盗レトン
平均:6.00 / 書評数:3
1960年04月
サン・フィアクル殺人事件
平均:5.25 / 書評数:4
1958年11月
上靴にほれた男
平均:5.50 / 書評数:2
1958年10月
可愛い悪魔
平均:6.50 / 書評数:2
1958年07月
死体が空から降ってくる
平均:6.50 / 書評数:2
1958年05月
メグレ罠を張る
平均:7.33 / 書評数:6
1957年10月
カルディノーの息子
平均:6.00 / 書評数:2
1957年05月
ベルの死
平均:6.50 / 書評数:2
1957年01月
メグレと無愛想な刑事
平均:6.00 / 書評数:4
1956年12月
リコ兄弟
平均:7.33 / 書評数:3
1956年06月
帽子屋の幻影
平均:6.33 / 書評数:3
1955年11月
メグレのバカンス
平均:6.67 / 書評数:3
1955年07月
判事への手紙
平均:5.00 / 書評数:1
1955年03月
家の中の見知らぬ者たち
平均:7.00 / 書評数:2
1955年02月
雪は汚れていた
平均:8.40 / 書評数:5
1955年01月
メグレとしっぽのない小豚
平均:7.00 / 書評数:2
1954年12月
霧の港のメグレ
平均:6.00 / 書評数:2
1954年03月
汽車を見送る男
平均:8.00 / 書評数:2
1953年10月
メグレと深夜の十字路
平均:6.60 / 書評数:5
1952年09月
北氷洋逃避行
平均:6.00 / 書評数:2
メグレと運河の殺人
平均:5.33 / 書評数:3
1950年08月
サン・フォリアン寺院の首吊人
平均:7.20 / 書評数:5
1950年05月
男の首
平均:6.29 / 書評数:7
黄色い犬
平均:6.12 / 書評数:8
不明
死の脅迫状
平均:3.00 / 書評数:1
メグレと奇妙な女中の謎
平均:7.00 / 書評数:2
メグレと謎のピクピュス
平均:7.50 / 書評数:2
猶太人ジリウク
平均:7.00 / 書評数:1
ダンケルクの悲劇
平均:6.00 / 書評数:1
下宿人
平均:8.00 / 書評数:1