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[ サスペンス ] カルディノーの息子 |
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ジョルジュ・シムノン | 出版月: 1957年10月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1957年10月 |
No.2 | 6点 | クリスティ再読 | 2022/04/29 14:54 |
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ハヤカワの世界ミステリ全集の座談会で、都筑道夫が「シムノンは紹介しても売れない..」ってボヤいた回想をしてたんだけど、この本も都筑主導でポケミスで出したもの。本書のあとがきだと「ベルの死」で文句付いたのがコタえた様子で、主客の対話仕立てで
客「それを探偵小説として出すのは、おかしいんじゃないかな?」 主「これはやっぱり探偵小説の土壌から生まれた文学なんだよ」 と釈明しているあたりに弱気が見える(苦笑)。まあ、実際、評者もポケミスのシムノンの未読はあとチビ医者モノの「死体が空から降ってくる」だけになってきた。意外なくらいに、出てないんだよ。 で、本作は妻を寝取られた男が、その妻の行方を捜す話。いやはや、何とも不名誉な話のうえに、主人公のカルディノーがまた微妙な立場にいる男なのだ。タイトルの「カルディノーの息子」が、この主人公に対する町の人々の呼び名、なのである。労働者階級の出身だが、小才が効くことで保険会社で出世して主人のお気に入り、と自分の家族や昔馴染みからはヤッカミの目で見られるタイプの小市民なのだ。だから妻に逃げられた話、というのも誰もが喜劇的な感想を持ちがちで、そんな状況下でも誠心誠意、妻を追う....いや、笑っていいのか、いけないのか? 集英社のシムノン選集の解説にあるんだけど、シムノンは、労働者階級も、小市民も、ブルジョアも、まるで書けない、なんて言ってるフランスの評論家がいるようだ。シムノンが得意とするのは、まさに本書の主人公のようなキャラなのである。労働者階級から這い上がりながらも、旦那衆からは疎外され、負い目を持ちながらも、社会階級の転落に怯える男....まさに、本書の主人公のピンチはそれを強烈に戯画化したようなものである。 (ちなみに本書、打ってある最終のノンブルは p.122。92ページの「明日よ、さらば」には及ばないがね..ページ以上の読みごたえは、あります) |
No.1 | 6点 | 空 | 2010/07/16 21:11 |
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ハヤカワ・ミステリのシリーズから出ている作品。最初に起こる事件は、主人公の妻の家出、それも明らかに昔の男と一緒にというものです。日曜日のミサから帰ってきてみると、消えていた妻。さてカルディノーの息子(ジュニアと訳した方がよさそうです)と呼ばれる主人公はどうするのか。
要するに失踪人探しの話ということになるわけで、その意味ではそれなりにミステリ的です。さらに最後には殺人まで起こります。 全体的には、後の『リコ兄弟』と共通する筋立てですが、それほどずっしりした深みは感じられません。それでも、「妻を寝取られた男」がその事件をきっかけにして自分や周囲の人々を再認識していくところはやはり読ませてくれます。解説で都筑道夫がシムノンを「主観的な作品」と評しているのもなるほどと思えます。 |