皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 警察小説 ] 怪盗レトン メグレ警視 別題「メグレ対怪盗」 |
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| ジョルジュ・シムノン | 出版月: 1960年05月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 4件 |
![]() 東京創元社 1960年05月 |
![]() 東都書房 1963年01月 |
![]() 角川書店 1978年01月 |
![]() 旺文社 1978年04月 |
![]() グーテンベルク21 2012年12月 |
| No.4 | 6点 | 斎藤警部 | 2026/01/20 23:09 |
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| レトンは怪盗ではない。 国際詐欺組織の長だ。
レトンは名前ではない。 詐欺犯罪界の大物 「ピートル・ル・レトン」 の 「レトン」 とは、 「清水の次郎長」 の 「清水」 や 「レオナルド・ダ・ヴィンチ」 の 「ヴィンチ」 同様、出身地を表す固有名詞である。 季節は冬。 いくつもの国境を越え、パリに到着した列車の中で、タイトル・ロール 「レトン」 の射殺死体がいきなり発見される。 ところがもう一人、同じ列車から降り立った青年が、やはり 「レトン」 と違わぬ容姿を持っていた。 タクシーを拾った青年は近くの豪奢なホテルに入り込み、そこには著名な米国人富豪夫妻が滞在している。 青年は夫婦と繋がりがあるらしい。 ホテルではいっぱしの紳士然と振る舞う青年だったが、外出して場末の酒場に入ると突如として下卑たロシア風の酔っ払いに豹変した。 そして二人の女性との、大いに謎を含む関わりが検知された。 尾行、対決、冒険が続く。 仕事中も酒を飲み、決して飲まれないメグレ。 海が苦手なメグレ。 帽子を飛ばされたメグレ。 間一髪で死を逃れたメグレ。 昏い大過去への旅。 閃光放つ近過去の発掘。 真相追究の炎はじわじわと追い上げ、やがて暗闇の中で燃え盛る。 いやあ、この小説は思いのほか深い。 反転角度の控えめさなど問題にならない。 何だか軽そうな邦題に騙されてはいかんのです! 「火酒(グロッグ)でやしょうな? …… それにご馳走をたっぷりとね」 「それから巻たばこだ。 ゴロワーズ・ブルーをな!」 夥しく挿入される、様々な酒のシーンが良い。 安い酒の肴に食い物がまた良い。 凍える空気の中、何かとストーヴにあたるメグレが良い。 味わいと癒しと柔らかな光を含んだ最終章は最高だ。 メグレ長篇第一作。 小説世界に後年作とのギャップは感じます(特に前半)。 ですがメグレには違和感ありません。 メグレは不変で、周りの小説世界が変わった、あるいは著者シムノンがメグレに振り回される形で変わったのでしょうか。 |
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| No.3 | 5点 | クリスティ再読 | 2018/09/01 23:11 |
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| メグレ物第1作で有名なのだが、メグレは本作が初登場ではなくて、それ以前の犯罪小説の脇役で出ていたキャラだ、という話を読んだことがある。なるほど、本作でのキャラは後のメグレとはズレていない。やや語り過ぎな描写とか、トランスが殉職するなどのキャラ周辺の事情はズレているし、作品内容もとくに前半は直球のスリラーという感覚もあって、テイストは結構違うけども、それでもメグレのキャラだけはガッチリと固まってる印象。スピンオフ説も頷ける。これがちょっと不思議で興味深い点のように感じた。
けど作品的にはどうかなあ、短いわりにいろいろごちゃごちゃと詰め込まれた感じで、まだ小説としては「メグレ物読んだ!」という充実感には不足しているように思う。前半は展開が派手でいろいろ目まぐるしく事件がおきるけど、場面切り替えがやや唐突で「何で?」となるところもたまにある。打って変わって後半はルトンの反応待ちみたいなことで、話が停滞する(まあこっちが後のメグレものらしいのだが)。と、構成がまだ上手くいってない印象。シムノン、そもそもプロットを予め計算して立てて書く人でもない話を聞いてるけど、真相はどうなんだろう? |
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| No.2 | 7点 | tider-tiger | 2017/09/24 22:21 |
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| 国際刑事警察委員会より暗号化された電報が届く。それには国際犯罪組織の長と目されているピートル・ル・レトンがブレーメンからアムス、ブリュッセルを経由してパリへとやって来たことが記され、さらにレトンの人相風体がこと細かく記載されている。
レトンが乗っている北極星号をお迎えすべく停車場へ馳せ参じるメグレ。メグレは自分の客と思しき人物をホームで視認するも、その直後、北極星号で騒ぎが起きた。洗面所で男が死んでいる。その男も電報に記載されたレトンの人相風体と一致する。 メグレシリーズの記念すべき第一作目。冒頭からストーブやパイプといったメグレお好みの小道具が登場する。 レトンをお迎えするにあたって、メグレはなぜ部下を連れていかなかったのか? まあそんなことはいいとして、本作はまっとうなエンタメ作品でありながらメグレシリーズとしては異色作である。 シムノンは後年「ストーリーには興味がない」と発言しているが、本作ではストーリーを意識してエンタメ小説を書こうとしているように感じられた。 オチはメグレらしからぬものであるように思えた。が、悪くない。 写真を見ての推測、そんなことまでわかるのか、メグレにはわかるのだ。 空さん御指摘のとおり説明的な文章、シムノンらしからぬ文章が散見される。 自分が特に違和感のあった一文↓ ~メグレの顔はこわばっていた。が、泣きはしなかった。泣くことのできぬ男であった。~ 原題は『ラトヴィアのピエトル(人名だが、道化の意もある。含みありそう)』うーん、こっちの方がいいな。レトンは怪盗ではないように思えるが、日本での発売当時だったら怪盗にしておいた方が売れそうではある。 クリスティ精読さんが言及されていたが、数年前から作家の瀬名秀明氏がネット上でシムノン作品の書評を順々に発表している。瀬名氏はメグレシリーズは一作目から順番通りに読んでいくのが正しい読み方のように思えると述べていた。順番通りに読むべきなのかはともかくとして、最初に本作を読むのはいいと思う。 シムノンの試行錯誤が感じられるが、良作だと思うし、なにより自分は本作が好きだ。 |
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| No.1 | 6点 | 空 | 2009/10/13 21:40 |
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| このメグレ・シリーズ第1作は、やはり後の作品とは微妙に違うところが感じられます。
まず目につくのは章立て。次作からは初期にはたいてい11章、その後は8~10章ぐらいなのですが、本作では19章と細かく分かれています。メグレの風貌が特に詳しく書かれているのも、最初の作品だからこそでしょう。部下のレギュラーメンバーの内では、リュカがちらっと登場するだけです。途中で殺し屋に殺される刑事はトランスという名前ですが、後の作品でも登場する同名の刑事は別人(親族?)と言うより、クイーンのニッキー・ボーターみたいに作品相互間の矛盾を気にしていないだけのように思えます。説明的な文章が所々あるのも、後の作品には見られない特徴です。 違いばかり強調しましたが、台風の中、港町での張り込みの描写など、やはりいかにもシムノンです。 |
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