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[ 警察小説 ]
メグレ式捜査法
メグレ警視
ジョルジュ・シムノン 出版月: 1977年07月 平均: 5.00点 書評数: 3件

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1977年07月

河出書房新社
1983年01月

No.3 5点 クリスティ再読 2022/10/26 21:43
邦題はスコットランドヤードから派遣されて「メグレ式捜査法」を学ぶ目的で派遣された刑事パイクが、メグレに同道することから来ているんだけども....いや、この仕掛けが全然効いてない。まあ「メグレ式捜査法なんて、ない!」というのがメグレの持論でもあるわけで、だったらうまくいくわけないじゃん...という懸念が残念ながら中る作品。
舞台はコートダジュール沖に浮かぶポルクロール島。「なんらかの理由で人生のレールを脱線した人たちが、みんなここに集まる」吹き溜まりのような保養地。「ポルクロールぼけ」という言葉があるくらいの、時間が止まったようなリゾートである。というとね、舞台柄からして戦前の「紺碧海岸のメグレ」を連想する。そうしてみるとリゾート客たちが集まる宿屋兼バーの「ノアの箱舟」は「リバティ・バー」に相当するし、だとすればパイク刑事も遊び人風の地元刑事に相当するのかしら。いや「紺碧海岸のメグレ」も焦点がはっきりしない作品だったけども、この作品の焦点もはっきりしない。

「メグレは友人だ」とこの「ノアの箱舟」で啖呵を切った元ヤクザが、その晩に殺された....こんな事件なので、研修中のパイク刑事を引き連れてメグレがこの島を訪れる。確かにメグレの「お世話になった」ご縁のある男だが、実際には半グレくらいの小物。一番いいキャラはこの男の愛人で結核を病んでいたジネット。男の逮捕をきっかけにメグレが手配してサナトリウムに入れて、今では元気になって娼家の経営補佐をしている女。ちょっとした再会、同窓会効果みたいなものがある...けどもあまり本筋に絡んでこないや。

ボート生活者とか、確かにシムノンお得意の設定をいろいろ投入した作品なのだけども、それがために逆に散漫になってしまったのかな。こんな失敗のしかたもあるものだ。

No.2 5点 2018/06/11 09:57
 ユトリロの絵のような煤けたイメージのあるメグレ警視シリーズですが、今回の舞台は南仏の楽園ポルクロール島。メグレ青春の物語「メグレの初捜査」と並んで、一気に華やいだイメージを持つ作品です。所々の風景描写も素晴らしい。普段が辛気臭いだけに期待も高まります。
 ・・・なのですが、どうも芳しくない。スコットランド・ヤードからの研修生パイク刑事の注視を受けながらいつもとは勝手の違う捜査に当たるメグレなど、様々な要素を含んで意欲的に始まりながら最終的に無難なところに着地してしまった感じです。
 初期作「メグレと死者の影(創元邦題「影絵のように」)もそうでした。「これならもっと面白くなる筈でしょう」と読み終わった後に言いたくなります。最盛期と言える40年代の作品なので余計にそう思うのかもしれませんが。
 ボアロー&ナルスジャックの評論に取り上げられたり、欧米ベストに採られたりする本作ですが、この年代の作品としては一枚落ちると感じました。文章のノリとか入れればメグレシリーズの標準よりやや上ではあるんですけどね。

No.1 5点 2010/06/30 22:39
原題直訳だと『わが友メグレ』。メグレ警視は自分の友だちだと酒場で吹聴した男がその夜殺されたという事件です。舞台となる南仏のポルクロール島は、現在観光名所になっているそうです。その島へ、メグレはちょうどメグレ式捜査法を研修に来ていたスコットランド・ヤードのパイク刑事と一緒に出かけていくことになります。
メグレものにしては登場人物がかなり多く、ちょっとごたついた印象があります。最後に事件が解決されてみると、結局不要ではなかったかと思われる人物が何人もいるのです。容疑者をちりばめるフーダニットでないだけに、少々不満なところです。
今回再読して、第8章で教会の鐘の音が輪のように広がっていく描写は、後にシムノンが書いた純文学の傑作『ビセートルの環』の冒頭につながるものであることに気づきました。


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