皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 警察小説 ] メグレと殺人者たち メグレ警視 |
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ジョルジュ・シムノン | 出版月: 1976年09月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 4件 |
河出書房新社 1976年09月 |
河出書房新社 1982年06月 |
河出書房新社 2000年04月 |
グーテンベルク21 2013年03月 |
No.4 | 6点 | 臣 | 2019/07/29 09:59 |
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このストレートすぎる邦題よりも、「メグレと彼の死人」のほうがしっくりきます。
前半部分で、この字句を連発していたこともあり、著者の意図が伝わってきます。 結局、この原題は、その死体本人へこだわりがあることを示唆しているのでしょう。 こういうところは上手い。 かなり評判のいいメグレ物で、しかもパターンがいつもと違う。 そもそもメグレ物は、種々雑多なスタイルとは言えますが。 男からの電話と、その男の死が、メグレにとってはなぜか重要なのです。 そこから重大な事件の真相につながっていくなんて、思いもよりません。 聞き込みも多く、メグレの推理も多い。 国際的ということもあって、サスペンス性は豊富。 と、ここまでは絶賛。 ただそのわりに、平坦に感じるのはなぜ? 変な言い方ですが、サスペンスがあるわりに緊張感に乏しく、意外にゆったりとしている印象も受けます。 せっかく200ページぐらいに収めるのだから、もっとすっ飛ばしながら、ビシッ、バシッと変化をつけて決めてほしいような気もします。 ということで、ベスト・オブ・メグレとまではいきませんでした。 |
No.3 | 7点 | クリスティ再読 | 2018/06/24 16:42 |
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最近は新たなシムノン読み、雪さんが本サイトに参戦されているようである。シムノン好きが増えるのは、評者も大歓迎である。どうせシムノン全作品の書評なんてそれこそシムノン自身でもできるのかしら?な超多作家だし、本当に書き手が増えるだけでも意味があるくらいなんだが、雪さんは意欲的に書いていらっしゃる。喜ばしい。
で本作、その昔の河出の50巻のシリーズのNo.1 である。なつかしい。シリーズ第1回配本になるんだから、面白い作品を選ぶよね。ホームグランドの事件、展開も派手でメグレ夫人とのやりとりも面白く、メグレもたっぷり飲食する、という「戦後のメグレもののエッセンス」的な作品だ。 執務中のメグレに電話がかかった...生命が危ういとメグレの助けを求める見知らぬ男からの電話である。追跡者を振り切るためにカフェを点々とする男と保護のために向かわせた刑事はうまくコンタクトできないようだ。連絡が途絶えた男は、果たしてその夜、コンコルド広場で死体になって見つかった! というのが導入。本作メグレの推理がなかなか冴えている。ちょっとした手がかりから男の身元、逃走の経緯、殺されるきっかけになった出来事など、気管支炎で寝込んだり、反面全然眠れなかったり、ベストコンディションとは言い難いメグレがなかなかの名探偵ぶりをみせる。この事件の背景が「メグレ夫人の恋人」に入っている短編と共通する設定があって、獰猛なマリアの姿が印象的だったりする。あとやっぱりねえ捜査の過程のなかでメグレが「ビストロを経営する」のが本当に素敵。こういう「ゆるさ」がメグレらしい。 あと邦題がやや意味不明かな。原題直訳は「メグレと彼の死体」で、電話男の死体をメグレが「自分のもの」と奇妙な所有権を感じるのがタイトルなのだが、これだと「メグレ死んだの?」と誤解されかねない。「メグレと武装強盗団」だと面白くない上にネタを割りすぎている。やっぱりね「メグレ、ビストロを経営する」が一番いいと思う(苦笑)。 |
No.2 | 8点 | tider-tiger | 2016/06/19 10:26 |
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メグレに電話をかけてきた男は何者かに尾行されていると切羽詰まった口調で助けを求めてきます。メグレは手を差し伸べようとしますが、結局……。彼は誰なのか、どこで殺されたのか、男の正体を明らかにしていく過程はいかにもメグレですが、メグレのちょっとした推理が披露されてミステリっぽさもあります。
被害者の身元や殺害現場が明らかになると、メグレは犯人をおびき寄せるため?にとあることを部下に命じます。日本の警察では、ちょっと考えられないような作戦です(メグレの行動に犯罪行為が含まれているような)。だがしかし、とても楽しそうであります。そして、事件は急展開を見せます。 これ、全体としては少々いびつな感じもありますが(作品の色合いが見えにくい)、個人的にはかなりいい作品だと思っています。メグレものの良さとエンタメ小説の楽しさが同居しております。序盤はいつもの通りゆったり進みますが、事件の構図が見えてくるにつれて展開が早まり、見せ場の多い作品。 派手も地味も含めていい場面がたくさんあるのですが、個人的には犯人が犯行現場に戻って探そうとしていた品物の正体が、なんというか、印象深かった。 また、被害者と妻の関係、夢物語ではなく、妙に現実的で切ない関係が心に残りました。こういうところがメグレものの良さだと自分は思っています。 加害者側、被害者側ともに印象深い人物がいて、宿屋のおっさんのすっとぼけぶりは笑え、ラストも感慨深い(メグレのとある提案に引っかかりを覚える方もいるかも)。 |
No.1 | 7点 | 空 | 2009/08/17 22:14 |
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パリ警視庁(司法警察と訳されることもあります)のメグレ警視が、国家警察総局の同僚と協力して、無軌道な犯罪者グループを追いつめていく話です。フランスの2つの警察組織については、小説を読んだだけでもなんとなくわかるようには書かれていますが、訳者あとがきにくわしく説明されています(少なくとも河出のポケットブック版では)。
謎の人物からの数回の電話に始まり、国家警察総局が扱っていた重大事件へとつながっていく本作は、このシリーズ中でも特にサスペンス豊かで派手な展開で、おもしろく読ませてくれます。メグレが新聞を利用してオフィスではなく自宅に重要な証人を呼ぶというシーンもあったりする等、いろいろな意味でメグレものの中でも意外な感じのする作品です。 |