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[ 本格 ]
ドーヴィルの花売り娘
名探偵エミールの冒険
ジョルジュ・シムノン 出版月: 1998年08月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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読売新聞社
1998年08月

No.2 6点 クリスティ再読 2026/02/03 15:41
さてシムノン再開。まずは「O探偵事務所」シリーズから。空さんが「こんなに分巻しなくても」とおっしゃっていたので、そのアドバイスに従って2冊づつ書いていこう。読売新聞社では副題で「名探偵エミールの冒険」とついているので、実は評者はジュブナイルと誤解していて後回しになっていた。ケストナーの「エミールと探偵たち」と混同していたんだ(苦笑)そんなことはなくて、メグレ物第二期長編を書く前に、リュカも登場する「チビ医者」とか、ロニョンが活躍する「ネズミ氏」と同じようなタイミングで書かれた、メグレ退職後のスピンオフ短編集ということになる。
本シリーズでは、「肥った」トランス刑事が退職して始めた探偵事務所が舞台だが、実はその探偵事務所は赤毛のエミールという青年が影のボス。トランスはややコミカルな狂言回しに近く、秘書のベルト嬢、スリ上がりのバルベ犬の四人組で、事件を受ける。もちろんリュカ警視ともトランスを通じて仲良し。

というわけでエンタメに振り切ったシリーズである。ちゃんとミステリミステリしている。確かにメグレ物って、形式的にはエンタメの形を取りながらも、日本で言えば「中間小説」といった感覚なんだよね。第二期メグレはややエンタメに重心を戻したけども、戦後だとエンタメ要素が徐々に抜けていくような印象がある。だから、こういうシリーズしたくなるのもなんか腑に落ちる。

読売新聞社の4巻本では、時系列がかなり動いていているようなので、例の瀬名氏などは元の順序で紹介しているくらい。読売第一巻の「ドーヴィルの花売り娘」は、連載開始の「エミールの小さなオフィス」と第二弾の「掘立て小屋の首吊り人」と、連載中盤でエミール君の南仏出張編で話が続いている「入り江の三艘の船」「ドーヴィルの花売り娘」を収録。

「エミールの小さなオフィス」はエミール君の人物紹介編。メグレの部下として名声を博したトランスの名前が宣伝力絶大なこともあって、トランスに依頼人が訪れるけども、事務所の頭脳はエミール君。というわけでカメラマンとか助手とか適当に自称しつつ、依頼人との応接はトランスに任せながら、エミール君は別室で依頼人を観察。若い女性の依頼人はなんとトランスのポケットから、その朝に宝石強盗現場で拾ったハンカチを掏り取った!なんて楽しい導入。尾行の上手なバルベ犬に尾行を任せ、エミール君はその女性とレストランで...
このヒロインに峰不二子とかそういう楽しさがある。紹介編としては上々。

「掘立て小屋の首吊り人」トランスとエミールが、首つり死体を小屋で発見したという女性からの依頼でその現場に出張。でもその小屋からは死体が消えていた。女性は夫に監禁されているのか、会うことができない。どうやらその死体は夫人の不倫相手のようなのだ..ちょっとした観察眼で推理をするのだが、真相が今一つぼんやりしているな。

「入り江の三艘の船」南仏の海水浴場ル・ラヴァンドゥーで起きた、海水浴中の女性が殺された事件の解決を、夫からエミール君が依頼される。相棒として事務所の秘書&タイピストのベルト嬢が呼びよせられる。いわゆる「水着回」wwとある道具からエミール君は真犯人を推理して、なかなか冴えてる。でもそれ以上にダイナマイト密漁をする老漁師とペタンク(ボーリングとかカーリングに近い球技)で仲良くなるあたりが楽しい。

「ドーヴィルの花売り娘」前作の続きで、トランスのドーヴィル出張の事件が手におえなくて、エミール君が緊急でヘルプに入る。カジノの花売り娘と高級ホテルのドアマンの連続殺人。トランスが夫からの依頼で監視する女性がその容疑者に...という事件。「メグレとマジェスティック・ホテルの地階」でもホテル内幕が描かれて興味深いけども、本作ではドアマン仁義といったものが面白い。偶然因縁ある人々が出会ってしまう場としてのホテル、というものの恐ろしさ。

というわけで、なかなかハイレベルな面白さがある。

No.1 6点 2014/02/18 23:37
4分冊になった14の短編からなるO(オー)探偵事務所の事件簿シリーズその1で、4編が収録されています。全部まとめたずいぶん分厚い原書が、Amazonで売られていたのを見た記憶もあります。しかしこんなに小分けにしなくてもという気もします。
探偵事務所の所長は元刑事のトランス。メグレ警視の部下だった人で、そのことは作中で何度も繰り返されます。ただし翻訳版のシリーズ・タイトルからもわかるように、名探偵役はエミール(姓は不明)という赤毛の男で、彼が実質的な探偵事務所長。
最初の『エミールの小さなオフィス』は主要登場人物紹介にかなり筆を費やしています。ストーリーは全く違いますが、シリーズの最初に持ってくる作品としては、ドイルの『ボヘミアの醜聞』と共通するものがあります。続く3編ともあっさりめのパズラー系で、特に『入り江の三艘の船』はシムノンと思えないほど動機は付け足し程度でした。


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