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[ その他 ] フールネの市長 シムノン ロマン・デュール選集 |
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| ジョルジュ・シムノン | 出版月: 2026年06月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 東宣出版 2026年06月 |
| No.1 | 8点 | クリスティ再読 | 2026/10/21 18:57 |
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| この東宣出版の「ロマン・デュール選集」もヘビイな作品が紹介されて「シムノンの別な顔」が窺われて興味深いのだが、本作はやや長め、二部構成。
主人公はシムノンお得意の「下層から成り上がった男」であり、その主人公の自罰的破滅という構図はもう飽きるくらいに描かれきた「シムノン必勝パターン」でもある。その中でも「強さ」という面では最強の主人公だろうなあ。海沿いの海老漁撈夫妻の子に生まれ、煙草商の女性に取り入り葉巻工場を経営するまでに成り上がり、それを背景に地方都市の市長として君臨する男ヨーリス。家庭には病身の名家出身の妻テレサ、家政婦ながらヨーリスとの間に男子を儲けたマリアがいる。ヨーリスは「厳しい」男、合理主義者として周囲を恐れさせていたが、その家庭でも「圧の強さ」から妻も家政婦も自らの思い通りにしないと収まらない....ある夜、ヨーリスの元を葉巻工場従業員の若者イェフが、女を妊娠させた後始末のためにお金を借りたいと訪れる。自他共に厳しいヨーリスはそれを拒む。そして無理心中しようとその娘を窓の外から狙撃して自殺する。その娘はヨーリス最大の政敵の娘だった...ヨーリスはこのスキャンダルをきっかけに町への支配権を強める。 だからこの男の「強さ」と、その「強い男」が自ら求めるような破滅願望、ならば話が類型的になる。そうじゃない。ラデックじゃないんだ。シムノンの通例でわかりやすい心理描写なんてしないんだ。ある意味強い責任感というか、テリトリー意識というか、そういうものが暴走する、と評者は見ていた。そしてそれはやはり「変わらないもの・手に入ったもの」への強い執着でもある。 ヨーリスの死命を制したのは、ヨーリス自身の精薄の娘エミリアである。家の恥でもあるが、ヨーリスは獣同然の生活しかできない自分の娘のケアを不十分ながら独占して妻にも家政婦にも手を出させようとしない。この歪んだ領土意識の根底にあるのは、得られなかった「家庭の幸せ」への執着にしか見えない。 そして第二部ではヨーリスは「外」の世界で意外な女性との関係を取り結ぼうとするが、それもやはり「家庭の幸せ」を破壊した責任を(筋違いながら)自分が背負い込もうとする虚しい試みに見える。 いやなんか身に染みる話でした。ロマン・デュールの中期の傑作と言われるのが納得するけど、いやシムノンだからねえ、評者の読み方が外れているかもしれないよ(苦笑)そのくらい決定的な心理描写なんてまったくしない小説だから、ヨーリスの心のうちが全然理解できない、という人が多数いても少しもおかしくない。 「犯罪事件なしで作品として書き切った」ということで記念碑的に扱われているようだ。そういう意味じゃ事件を解決してくれるメグレ警視って、親切なんだなあ(笑) (さて、この東宣出版のシリーズもあと一冊「マランパン」で終わりなのかな?そろそろ観光予告が出てもいいかも、という時期なんだがなあ。「マランパン」やったら評者のシムノン評もフィナーレとするか) |
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