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[ 本格 ]
死が最後にやってくる
アガサ・クリスティー 出版月: 1958年01月 平均: 6.00点 書評数: 9件

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早川書房
1958年01月

早川書房
1976年02月

早川書房
1978年07月

早川書房
2004年04月

No.9 5点 虫暮部 2022/07/02 15:36
 もっと変な話を期待していたんだけどなぁ。

 その意味で “死者への歎願文” は素敵なガジェット。なのにその後の展開には絡まず勿体無い。
 使い慣れた駒に目新しい背景を切り貼りしたところ、ギャップが悪目立ちしてしまった。違和感は最後まで消えず、不器用だなぁと思った(褒めてない)。

No.8 6点 蟷螂の斧 2020/07/10 20:33
ロマンスの行方は予想できましたが、犯人は分からずじまい。古代エジプトが舞台なので、犯人にはそんなに悪知恵はないだろうとの思い込みが敗因でした(笑)。ラストはほのぼの感に満たされています。こういうのに弱いんです。なお、裏表紙にある重要事件がすぐ起きるものと思ったら、全頁の五分の二まで起こりませんでした。よって、かなり無神経なネタバレであると思います。

No.7 4点 レッドキング 2020/06/16 21:06
なんと四千年(400年でなく)昔の古代エジプトが舞台。そこまで昔むかし大昔なら、もうSFレベルの異次元コード設定もありだろうに、そこはアガサ・クリスティー、遺産相続も絡んだ家族連続殺人ミステリに仕上げてる。「被害者候補=憎まれ役」濃度の高い順に家族が殺されて行き、犯人は現代「古典」ミステリの極めて分かりやすい王道だった。

No.6 7点 ことは 2019/11/04 00:39
これは評価が書きづらい。
まずこれを読もうと思ったのは、「クリスティー攻略作戦」で「ないないづくし」と否定されていて、どんなものでしょうと思ったからだった。
ところが、これが面白かった。「クリスティー攻略作戦」での否定的な部分に反論する形で感想を書いてみよう。
(クリスティー再読さんも「コスプレ」と書いているが)「クリスティー攻略作戦」では、そうとう否定的なニュアンスで「コスプレ」と書いている。うん、確かにそうだ。登場人物の考え方は現代人で、当時の人はこんな風には考えないに違いない。「コスプレ」だ。
でも、霜月さんには「それでいいでしょう!?」と言いたい。そんなことをいったら劇団四季なんかみれませんよ。「コスプレ」と思ってみればいいのだ。舞台設定は風味付けに過ぎない。それを求めるのはもっとリアルな作品群でしょう。(情報調略小説みたいな?)
霜月さんは「情景描写がない」というが、クリスティーにしては少しはある方だと感じる。これも舞台設定に応じた描写がないといっているのだと思うが、そこは「コスプレ」だからいいのだ。
プロットも人物もいつものクリスティーで、霜月さんは特別なものがないと否定しているが、私としては安定した内容と受け取れた。
安定以上に、人物描写については、他作品より鮮明に感じられたし、物語の最初と最後で人物の立ち位置が変わっていくさまは、なかなかスリリングに思えた。
最初の事件の「ある気づき」については、後年の有名作にも似た味わいがあるし、ミステリ的にも美点があると思う。
個人的に好みなのは(風味付けに過ぎないかもしれないが)舞台設定だ。大家族の確執が、より切実に感じられる気がするし、舞台設定を利用した、事件解決後のエピローグ的なラストがいい。主人公の決断が不思議な味わいがあって、この感覚なんといったらいいかと少し考えて「あぁ」と思ったのは「センス・オブ・ワンダー」だった。クリスティーで「センス・オブ・ワンダー」を感じるとは!
ここ最近よんだクリスティー作では、一番よかった。典型的クリスティー作でなく、こういう異色が好きなところが、私はよいクリスティー読者ではないなぁと思う。

No.5 7点 YMY 2019/04/24 19:12
再読です。
数あるアガサ・クリスティーの作品で、最初にこの作品を選んで読んだのは自分だけではないだろうか?何故この作品を最初に読んだかというと・・・。特に意味はなくその当時、アガサ・クリスティーという名前は知っていたが、どの作品が有名で知られているかの知識はなく、適当に選んでしまったからです。
古代エジプトを舞台にした作者唯一の歴史ミステリー?(違っていたらすみません)で、謎解きと家族ドラマが融合された本格派推理小説。前半は地味で退屈ですが、後半に入ると一気にサスペンスフルな展開になり楽しめました。

No.4 7点 クリスティ再読 2015/12/13 21:22
う~ん、困った。本作、家物で派手な連続殺人が起きるけど、読みどころは全然ミステリじゃないよ。しかも、古代エジプトが舞台って言いながら、登場人物の心理はほとんど現代人的だから、早い話がコスプレである(ちなみに本作と偶然にも同年に古代エジプトを舞台とした波乱万丈の歴史小説、ミカ・ワルタリの「エジプト人」(ミイラ医師シヌヘ)が出てるから、そういう面でもちょいと不利だ...)。だから本作、ハーレクインとか読むくらいのつもりで読めば、ミステリとしてはともかく、ロマンス小説としては結構手堅くまとまっていて飽きずに面白く読める(7点はミステリの点じゃないからね)。
要するに「夫と死別したヒロインは実家に戻るが、父の再婚をきっかけに大農園を経営する一家は崩壊していく。農園管理人をしている幼馴染はヒロインと共に事件の解決を目指すが、それを通じてヒロインと幼馴染は....」ね、こういうこと! 実に王道。心理描写も細かく、いろいろキャラは立っているだけでなく、事件を通じていろいろ変貌していくのがなかなか読み応えあり。子供がすべての愚かな母親に見えて実はしたたかな兄嫁(ホロー荘のあの人に似てるな)とか、卑屈なおべっか使いの侍女だが本音は..とか、濃いキャラが満載の中で、ヒロインの祖母が暗黒面に堕ちたミス・マープルといった強面な雰囲気で実にイイ。連続殺人で家族内に死者続出のためミイラ作りが足元を見て値上げを要求したときに、「数が多いんだから割引すべきだよ」とジョークを飛ばす傑物! このバアサンのためだけにも読む価値アリ。だけどミステリだけは期待しないでね。

No.3 7点 nukkam 2015/03/20 11:38
(ネタバレなしです) 歴史ミステリーを語る時にクリスティーが引き合いに出されることはまずないと思いますが、1945年発表の本書は古代エジプトを舞台にした唯一の歴史ミステリーです(非ミステリー作品には「アクナーテン」(1973年)という戯曲もありますが(私は未読です))。注目すべきは発表時期の早さで、歴史ミステリーの先駆的作品では他にジョン・ディクスン・カーの「エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件」(1936年)やリリアン・デ・ラ・トーレの「消えたエリザベス」(1945年)が知られていますがこの2作は実際に起こった事件の研究論文的な作品で、小説として楽しめる内容ではありません。その点本書は謎解きと家族ドラマが融合された堂々たる本格派推理小説です。外面的な時代描写もありますが、登場人物が生と死についていろいろ考えている場面にこそ古代エジプトを舞台に選んだ意義があるように思います。考古学者の夫の助言を得られたから完成できたのでしょうね。前半は地味でゆったりした展開ですが後半はサスペンスに富む急展開が待っています。弱点とまでは言いませんが、意外と死ぬ人が多くて犯人当てが容易になってしまったようなところがあります。

No.2 4点 mini 2012/08/03 10:02
今年は1年間に渡って”ツタンカーメン展”が開催される、皆様ご存知でした?
上半期は大阪が会場だったが、明日4日からは会場を東京”上野の森美術館”に移して開催される
あれ?同じ上野公園内でも国立博物館じゃないの?、と思ったら後援がフジテレビか、上野の森美術館ってフジサンケイ・グループが設立したという裏事情なわけね
東日本在住の皆様、黄金のマスクを見るのは今がチャンスですよぉ~
さらに六本木ヒルズでは9月17日まで”大英博物館 古代エジプト展”も開催されている
ロンドン五輪の男子サッカー決勝トーナメントの初戦もエジプト戦だし、今年の日本はエジプト・イヤー、ってのは大袈裟か(苦笑)

中近東ものをいくつも書いているクリスティだが、その中でも最も異色作なのがこの「死が最後にやってくる」だろう
古代ローマよりさらに前、古代エジプトが舞台という、おそらくは最も古い時代設定の1つと言える
時代性もあって、”妻”と”妹”を同義語的に使用したりでちょっとその辺がややこしいが、当時は近親結婚も普通だったりという事情なんだろうね
こんな設定で書けるのは、夫が考古学者のクリスティならではだ

しかしなんである、内容は案外とオーソドックス
ロマンス小説風なヒロインに訳知りな老婆といった人物設定、話の展開、謎の解明など、いつものクリスティの定番に沿っていて、あまり異色性が無いのだ
舞台設定をこのまま現代に置き換えても通用するような話で、舞台が超異色で有る事がかえって浮いている感すらある
また謎めいた後妻の若い女性の過去について謎のまま放ったらかしなのもどうかと思うし
タイプとしては館もの一族ものに順ずるような話なのも私の好みではなかった

No.1 7点 2011/01/27 21:37
歴史(時代劇)ミステリを書く作家はかなりいます。しかし、古代エジプトが舞台のフーダニットとなると、考古学者マローワン教授の夫人であるこの人をおいて他にないでしょう。冒頭に置かれた「作者のことば」の中で、古代エジプトの農事歴を説明したりして、本格的に時代考証しています。ただ"兄"、"妹"という言葉の意味についての説明は、ひょっとして叙述トリックで混乱させるつもりかと思っていたら、そうではありませんでした。
それにしても、全体の1/3ぐらい過ぎてやっと殺人が起こったと思ったら、後は次から次へと立て続けの連続殺人。登場人物はあっという間に減っていきます。犯人の設定はいかにもクリスティーらしいので、意外性があると言うべきかないと言うべきか迷うところです。ただ、家族全体を襲う悲惨な事件に、これでどう最後をまとめるのかと思っていたら、これもこの作者らしい恋愛感情をからめて、ラスト2~3ページはうまく決着をつけてくれていました。
ポアロの時代だったら通用しないトリックや無理のある殺意も使われていますが、古代なら問題ありません。


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アガサ・クリスティー
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1955年07月
愛国殺人
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1955年06月
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ポケットにライ麦を
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オリエント急行の殺人
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