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[ 本格 ]
復讐の女神
ミス・マープル
アガサ・クリスティー 出版月: 1972年01月 平均: 5.75点 書評数: 8件

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早川書房
1972年01月

早川書房
1980年01月

早川書房
2004年01月

No.8 6点 虫暮部 2023/10/20 12:45
 何が起きているのか良く判らず、水面から顔を出した岩の頭を見て岩場の全体像を想像せよ、との命題。現れた深層/真相は人の思いが絡まり合った、なかなか読み応えのあるもの。
 しかし、これは犯人サイドを掘り下げて書けば、もっと深みを出せたのではないか。例えば犯人が某に注いだ思いの深さ等が、単に言葉による説明にしかなっていない。
 と考えると、“ミス・マープルに謎のミッション” と言う間接話法みたいな設定に使うにはちょっと勿体無いかな。

 過去をほじくり返したせいで新たな死者が出たことについて、もう少し何か言及があっても良い。
 また、“丘の斜面に丸石を転落させて歩行者にぶつける”――これに関して作中では “故意にやったのでなければ成功するわけがない” とされているが、私は逆に、狙ってもそうそう命中するものではないだろうと思う。

No.7 6点 レッドキング 2020/09/16 18:25
この犯人を「愛しすぎたが故の悲劇」の主役として、もっともっと美的劇的に描くことができたかもしれない。だが、クリスティは老女探偵を、「美」を「悪」として冷眼視するネメシスとして描き、主役の座を犯人に明け渡させることを拒否した。

No.6 6点 りゅうぐうのつかい 2016/03/28 17:55
本作品では、マープルと犯人が直接対決する危機一髪の場面があり、興味深い(しかし、あの場面で登場する二人も真相に気づいていたのではないだろうか)。
マープルの推理は、ロジックではなく、人間観察と直観に基づくものであり、本格的な妙味は薄い。
人間の持つ複雑な感情に根差した犯行動機や、殺人偽装とそれを行った理由は面白い。
しかし、なぜ、依頼者のラフィール氏は、マープルに依頼目的を具体的に示さなかったのだろうか。バス旅行に参加し、旧領主邸に宿泊するように指示したのはなぜか。ラフィール氏は真相がどこまでわかっていたのだろうか。最後まで読んでもわからなかった。

No.5 5点 了然和尚 2016/02/02 11:06
構成としてバスツアーの内容が、本格ものとしての要素も、旅情ものの雰囲気としても物足りないのが残念で、イマイチでした。犯人については姉か妹かというところなのですが、当然郵便物を出した妹に疑いはかかるのですが、ただのお使いだったとは。明らかに燻製にしんとして誘導している分、真犯人の方の動機や内容が、ちょっと取ってつけた感がありました。
ラストではマープルが遠慮なく報酬の2万ポンド受け取ってますが、使い道が気になりますね。
本作は3部作の2作目ということで、完成しなかったマープルのラスト作では、この2万ポンドがどうなったか描かれているんでしょうね。マープル最後の事件とタイトルされていれば当然犯人も〇ー〇〇なんでしょうが。
読みたかった。。。

No.4 8点 クリスティ再読 2015/11/22 22:43
クリスティとしては最後から三番目の作品になるだけど、最晩年の作品では「終りなき夜に生まれつく」の次に好きだ。「カリブ海の秘密」で見せた「老人だけどハードボイルド」がいい具合に仕上がっていて、とっても80過ぎの老人が書いた作品に見えない覇気がある。
本作のイイところは犯人像。荒廃した屋敷の描写とか、結構サイコな真相とか、舞台装置と合わせて浪漫的な雰囲気が強くある(「ゼロの焦点」とか連想してたが、要するに廃墟趣味ってやつだよね)。よく考えるとマープル、すごく冒険していたりするなぁ....能動的なあたりがまさにハードボイルド。実はクリスティ特有のひやりとした即物性が評者は好きなんだが、それがこういうオリジナルなハードボイルド性とうまく合致して、とても雰囲気がイイ。
本作の最後でマープルは報酬を全部現金払い並みの当座預金に入れて「外に出ていく」。なんて見事な退場(物語世界からのexodus)だろう! さらにのネメシス物語を読みたいと評者は惜しむけども、この晴れやかなオープンエンドでマープルの物語が閉じられるのは奇蹟のようだ...

あと、これはクリスティが言っていないことだが注記(まあほとんどネタバレ)。ラフィール氏のファーストネームが本作でジェースンだと明かされるわけだが、イアソンがネメシス=エウメニデスに依頼するのならば、犯人はクライティムネストラではない別なあの人だよ....(あの人が昔やった肉親の情愛を利用したトリックと、本作のトリックは通じるものがあるな)

No.3 6点 makomako 2012/10/08 07:32
 最初の出だしはナカナカですが、皆さんが述べているように話のテンポが遅くやや退屈なところがあるのは否めない。さすがのクリスティーも年をとるとなかなか切れ味の良い話を作り出すのは難しいのかとも思ってしまう。
 だいたいミスマープルシリーズはあまり奇抜なトリックなどは少なく全体として退屈になりそうな話を、意外な犯人と巧みな筆で興味深く読ませるものと思っているが、本作品は若干テンポが悪い。
 さらにこの話だと、旅を依頼した死せる大富豪はほとんど真相をつかんでいた?さらに被害者となった女性は真相に気づいていたのにどうして黙っていたのだろうかなどと、若干矛盾を感じるところもあるのでちょっと評価が低い。
 皆さんより多少評価がよいのは多分自分が年をとり、何となくマープルさんに共感できるようになってきたせいかもしれない。

No.2 4点 あびびび 2011/04/23 11:00
久しぶりにクリスティを読んだ。さて、どんなどんでん返しが…と期待していたが、「この人が犯人では…」と、想像したままであり、動機も物語の流れそのままだった。

あるお金持ちから遺言書が届き、旅行が手配され、なんのヒントも与えられず、事件に対処するといった設定はさすがだと思ったが、それほど深い謎はなかった。

No.1 5点 江守森江 2010/10/23 19:09
ミス・マープル一括吹替版放送時に観ていたが、今週の字幕版放送を観たついでにおさらいした。
登場人物の関係から「カリブ海の秘密」の続編らしいがドラマ放送順(制作順)が逆転しているので、ドラマでの処理は再来週放送の「カリブ海の秘密」字幕版で確認する予定。
さて、本作は過去の事件を探偵するのだが、マープルに謎が提示されるのが遅く謎解きに至るまでのテンポが非常にノロくドラマ版ですら睡魔に襲われる程だった。
謎解き自体も平凡で、クリスティーにしては数少ない凡作(4点)として逆の意味で必読かもしれない。
タイトルがマープルを示す通りに謎を暴き「名探偵は斯くあるべき」を実践する事を賞賛して+1点。


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アガサ・クリスティー
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メソポタミヤの殺人
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1955年04月
チムニーズ館の秘密
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1954年10月
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1952年01月
シタフォードの秘密
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1951年01月
ゼロ時間へ
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白昼の悪魔
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1950年01月
アクロイド殺し
平均:7.78 / 書評数:76