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[ 本格 ]
象は忘れない
エルキュール・ポアロ
アガサ・クリスティー 出版月: 1973年01月 平均: 5.25点 書評数: 12件

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早川書房
1973年01月

早川書房
1979年01月

早川書房
2003年12月

No.12 4点 レッドキング 2021/08/21 12:30
十二年後に掘り返される元軍人夫婦の心中事件。「あれ一体何だった」Whatダニット。双子とカツラときたら「あれ」で、当然そのまんまのはずなく驚きのツイスト予想するが・・・まんま「あれ」で逆に驚かされた。象は忘れない、でなく、犬は忘れなかった、のオチであった。クリスティー長編最後の採点で1点オマケ。
 
  てことで、アガサ・クリスティーの全長編ミステリ66作(メアリなんたらロマンス除く)の採点修了したので
  大変に僭越ながら、私的アガサ・クリスティーベスト15
     
     第一位:「ポワロのクリスマス」
     第二位:「シタフォードの秘密」
     第三位:「ゼロ時間へ」
     第四位:「ゴルフ場殺人事件」
     第五位:「メソポタミヤの殺人」
     第六位:「書斎の死体」
     第七位:「忘れられぬ死」
     第八位:「予告殺人」
     第九位:「葬儀を終えて」
     第十位:「 アクロイド殺し」
     第十一位:「ホロー荘の殺人」
     第十二位:「そして誰もいなくなった」
     第十三位:「死との約束」
     第十四位:「終わりなき夜に生れつく」
     第十五位:「五匹の子豚」

No.11 5点 tider-tiger 2018/10/11 01:31
~1972年イギリス
いつだったか『象は忘れない』というタイトルに魅かれて購入したものです。当時はまったく聞いたことなく、クリスティ最晩年の作品ということも知りませんでした。そんな状態で読んでの感想は「真相が陳腐だし強引だしでミステリとしては凡作だけど、リーダビリティはそこそこ高く、読み心地はよい。読んでよかった」でした。採点はこの感想に基づいたものとします。
クリスティが八十代になって書いた作品だと知って、驚いたのと同時に納得できました。ある程度の知識を入れた状態で再読すると、オリヴァが象たちを訪ねる旅は、そのままクリスティ自身が古くからの友人たちを訪ねて最後の挨拶をしているような気がしてしまいます。どうしてもクリスティとオリヴァが被ります。
ドロシー・セイヤーズはラス前の作品『学寮祭の夜』で筆を折ることをほのめかしていました。クリスティにはそういう気配は感じられませんね。年を取ってミステリを生み出す力は衰えたかもしれませんが、筆力そのものはそれほど衰えていないように思えます。強引で御都合主義に過ぎるところがたくさん目に付く作品です。それがどうでもよく思えてしまう不思議な魅力と感動があります。
高得点はつけませんが、好きな作品です。

象の中に一人キーパーソンがいて、その象がすべてを知っていたという点がどうにも不細工に見えてしまいます。『象は忘れない』ではなく、『象は知っていた』になってしまっているようで違和感ありました。
作中で少しネタバレされている『五匹の子豚』は誰かが嘘を吐く、もしくは事実を隠さなければ成立しない話でしたが、本作は全員が事実(だと信じていること)だけを話し、その断片を組み合わせることによって真相が明らかになるという結構にもできたように思えます。

以下ネタバレ



夫は妻を大切にはしていたが、本当に愛していたのは実は精神障害を患っていた姉の方だったという結末を予想しておりました。読後感は悪くなりますが、こちらの方が整合性は取れるのではないかと感じたのです。妻だけを愛していたとすると、どうしても夫の最後の一連の行動に無理がでてきます。
クリスティは両方を愛していたとしました。正直なところ、なんじゃそりゃと思う気持ちもいくばくかありました。これはバランス感覚なのか、最初からこういうオチにするつもりだったのか、あるいは私がひねくれているのか。

No.10 5点 ALFA 2017/04/07 09:14
(ネタバレします)




数あるミステリのおきての一つに「双子を登場させないこと」というのがある。この場合の登場とは終盤になっていきなり、という意味だろうから本作品はルール違反とは言えない。しかし「双子」が決定的な意味を持つことに変わりはない。その意味でトリックの半分以上は最初からバレている。
あとはフ―&ホワイダニットを追って読むことになるが、真相は解き明かされるというよりは、告白によって最後に開示される。したがってミステリとしての緊張感はあまりない。
一方ミステリ風味の悲しい愛の物語として、あるいは「罪とは何か」を問う物語として読むと味わい深い。この視点から見ると評点7。

No.9 6点 青い車 2017/03/09 13:17
 同じ回想の殺人をめぐる『五匹の子豚』より話題にならない本作ですが、解決編の反転の見事さはそれに劣らない質を維持しています。夫婦の心中事件と若い男女のロマンスを、雑多な感じは全くなくまとめ上げているプロットが実に巧みです。現在進行中の事件がない、しかも過去の事件は一応解決済み、という派手さのない題材を好んで使用するあたりがアガサ・クリスティーならではと言えるでしょう。また、ポアロの結びの一言が爽快で、そこも作者らしさが滲み出ています。

No.8 5点 makomako 2016/11/11 19:42
 最近クリスティーの作品をよく読むようになりましたが、これは本当に最晩年の作品で、やはり年寄りが書いたの作品といった感じは拭い去れませんでした。
 悪くはないのです。
 作家がファンからあまりに称賛されると気恥ずかしくていやだといったところは、多分作者自身の感慨からのものであろうと思います。クリスティーは謙虚な人だったようですから。
 高齢になっても筆力が衰えないことをある意味証明したような作品ではありますが、うまくまとめてはいるが若いパワーがないなあとしみじみ感じるところもあります。
 私だけかもしれませんが、ことに前半ではセリフのうけとりの場面が長く続き、誰がしゃべっているのかよくわからなくなるところが多くありました。ひょっとしたら翻訳のせいかもしれませんが、これが重なってくるとかなり読みにくい。原文はどうなのかな。

No.7 6点 りゅうぐうのつかい 2016/05/02 19:22
ポアロとオリヴァが、過去の出来事を忘れない"象"を探し出して聴き取り調査を行い、過去の事件の真相を追求する話。
私は普段、ミステリーを読んでいて、ほとんど真相がわからないのだが、この作品に関しては、マーガレットとドロシアの関係がわかった時点である疑いを持ち、それ以降、それを補強してくれる事実が次々と出てきたので、最終章の手前では真相の大部分を予想できていた。
ヒントがわかりやすく、真相が予想しやすい作品ではないだろうか。
事件の背景にあるもの、時間的拡がり、人物配置、真相のまとまりなど、よくできた作品だと思う。

No.6 7点 クリスティ再読 2015/09/22 00:17
晩年のポアロというと「クラシックな私立探偵」のイメージにクリスティ自身がリアリティを感じなくなっていったことに加え、クリスティの作家的成熟を通じてどんどんとサタスウェイト氏に近づいていくわけだが、評者は晩年の方が初期のエキセントリックな空威張りの外国人よりもずっとイイと思うのだ。

でこれはそういう晩年の典型作。これの次が筆力が衰えてしまって何が書きたいのか判然としない最終作の「運命の裏木戸」だから、「最後の読みがいのある作品」になる。結局のところ「真相を知っている人を探し出してその人に真相を語ってもらう」作品なので、ほとんど本格ミステリ的な興味はないが、さまざまな噂話から徐々に浮かんでくる手がかりを追っていく、捜査小説としては面白い上に、いろいろなデテールの妙もあって小説としてはちゃんと成立している。実際大詰めで最後の「象」がポアロの推理を聞くにあたっての会話で評者は結構感動していたりする...さりげない文学的明澄さがあっていいんだよね。

で真相は少しホロー荘風味。でもこっちのがずっと自然で悲劇的。だから小説として読むんだったら文句なし。
でだが、本作はたぶん今のネット環境に合わせて書き直したら凄い作品になるのでは...と思う。互いに矛盾しあう書き込みから、真実を語ってくれそうな「象」を探す電脳の旅...よさそうでしょ!

No.5 5点 了然和尚 2015/06/20 09:14
またもや過去の事件についての真相解明でした。「五匹の子豚」の方が生々しい感じがあり、本作は少しもの足りない感じでした。推理のピースは細かく、模様も不鮮明で、いかようにも結果が推理できる展開で楽しめましたが、結果は平凡すぎました。特に、話を持ち込んだ義母が、小悪党(にもなってないか)で途中で消滅したのは残念でした。「息子が殺害され、血筋から問題の婚約者の娘が疑われる」などという展開の伏線は存在するのですが。

No.4 5点 ボナンザ 2015/05/03 13:56
晩年の佳作。過去の事件に対する言及など、シリーズを振り返るポアロもしみじみしてます。

No.3 5点 あびびび 2014/02/15 20:05
女流推理小説家とポアロ…。クリスティーが82歳の時の作品と言う。エルキュール・ポアロの最後の作品で、小説家とポアロとのやりとりは、ある意味クリスティーが楽しんでいるような部分も垣間見られた。

昔、ゾウの鼻を裁縫の時に針山として使っていた(ひどい!)男が、何年も経ったある日、横を通り過ぎた労役の像に鼻から水を浴びせられたと言う…像はその男を忘れていなかったのだ。

人間もそんな記憶が多々ある。心の奥に閉じ込められているその記憶を徐々に呼び起こして、昔の未解決事件を解決するーそんな物語だが、さすがに82歳となれば、切れ味不足のような気がした。

No.2 4点 nukkam 2011/01/25 11:39
(ネタバレなしです) 1972年発表のポアロシリーズ第32作となる本格派推理小説です。この後シリーズ最終作として「カーテン」(1975年)が出版されましたがそれは死後発表用として(結果的には存命中に発表しましたが)ずっと以前に書かれており、執筆順としては本書が最後に書かれたシリーズ作品です。後期の作者が得意とする「回想の殺人」を扱っていますが沢山の容疑者の中から犯人を探す通常タイプのミステリーではありません。12年前に崖の上で撃たれた死体となって発見された夫婦のどちらが相手を殺したのかという風変わりな謎解きになっています。謎解きに関しては不満点が多く、特にコナン・ドイルの某作品のネタをそっくりそのまま使っているのはいかがなものかと。とはいえ本書で作者が試みたのは人間ドラマとしてどう決着させるかであり、そのために真相がご都合主義的になったのも納得できました。ルース・レンデルの「死が二人を別つまで」(1967年)をちょっと連想しました。

No.1 6点 2009/12/23 10:23
このクリスティーが最後に「書いた」ポアロものは、ミステリ作家オリヴァ夫人が今までになく大活躍する作品でもあります。彼女の生活や心情がユーモラスに書き綴られていて、晩年になって私小説的なところが出てきていると思えなくもありません。
ストーリーは、本作の中でも言及されている『五匹の子豚』のようにずいぶん昔の事件の再調査、しかも最初に提示されるのは、「夫が妻を殺したのか、妻が夫を殺したのか」という奇妙な問題です。
終盤近くなって、雰囲気はユーモラスなタッチから悲劇的に転調します。謎解きの意外性はどうということはありません。それよりも、途中でポアロが、真相はショックなものかもしれないが、それでも真相を知りたいですか、と事件関係者に聞くところがありますが、まさにそれが本作のテーマという感じです。


アガサ・クリスティー
2018年07月
十人の小さなインディアン
平均:4.00 / 書評数:1
2015年01月
ポアロとグリーンショアの阿房宮
2002年02月
アクナーテン
平均:3.00 / 書評数:1
2000年09月
そして誰もいなくなった(戯曲版)
平均:6.50 / 書評数:4
1998年09月
マン島の黄金
平均:6.00 / 書評数:2
1988年05月
殺人をもう一度
平均:5.50 / 書評数:2
1985年03月
海浜の午後
平均:5.00 / 書評数:1
1984年05月
ブラック・コーヒー
平均:4.33 / 書評数:3
1982年12月
教会で死んだ男
平均:5.25 / 書評数:4
1981年10月
リスタデール卿の謎
平均:5.00 / 書評数:2
1980年10月
蜘蛛の巣
平均:6.50 / 書評数:2
1980年09月
ねずみとり
平均:5.00 / 書評数:5
1980年08月
黄色いアイリス
平均:5.33 / 書評数:3
1980年06月
愛の探偵たち
平均:5.33 / 書評数:3
1980年05月
招かれざる客
平均:6.75 / 書評数:4
検察側の証人
平均:7.26 / 書評数:19
1977年01月
ベツレヘムの星
平均:5.00 / 書評数:1
スリーピング・マーダー
平均:5.82 / 書評数:11
1976年10月
未完の肖像
平均:3.00 / 書評数:1
1976年04月
ひらいたトランプ
平均:6.15 / 書評数:13
葬儀を終えて
平均:7.15 / 書評数:26
1975年01月
愛の旋律
平均:5.00 / 書評数:1
カーテン
平均:6.78 / 書評数:18
1974年01月
暗い抱擁
平均:7.00 / 書評数:1
運命の裏木戸
平均:3.33 / 書評数:3
第三の女
平均:4.50 / 書評数:6
1973年12月
娘は娘
平均:6.00 / 書評数:1
1973年06月
愛の重さ
平均:6.00 / 書評数:1
1973年01月
春にして君を離れ
平均:7.00 / 書評数:10
象は忘れない
平均:5.25 / 書評数:12
1972年01月
フランクフルトへの乗客
平均:1.50 / 書評数:2
復讐の女神
平均:5.71 / 書評数:7
1971年01月
死の猟犬
平均:5.50 / 書評数:6
ハロウィーン・パーティー
平均:5.33 / 書評数:9
カリブ海の秘密
平均:5.89 / 書評数:9
1970年12月
親指のうずき
平均:5.50 / 書評数:4
1969年01月
バートラム・ホテルにて
平均:4.88 / 書評数:8
1968年01月
終わりなき夜に生れつく
平均:6.73 / 書評数:15
1965年01月
複数の時計
平均:3.83 / 書評数:6
1964年01月
鏡は横にひび割れて
平均:6.62 / 書評数:16
1963年01月
謎のクィン氏
平均:7.56 / 書評数:9
1962年01月
蒼ざめた馬
平均:5.11 / 書評数:9
1961年01月
クリスマス・プディングの冒険
平均:6.12 / 書評数:8
1960年09月
死人の鏡
平均:6.00 / 書評数:4
1960年01月
ポワロの事件簿1
平均:5.00 / 書評数:1
ポワロの事件簿2
平均:5.00 / 書評数:1
おしどり探偵
平均:4.88 / 書評数:8
鳩のなかの猫
平均:4.71 / 書評数:7
パディントン発4時50分
平均:4.36 / 書評数:11
無実はさいなむ
平均:6.31 / 書評数:13
秘密機関
平均:4.12 / 書評数:8
1959年11月
パーカー・パイン登場
平均:6.40 / 書評数:5
1959年01月
火曜クラブ
平均:6.42 / 書評数:12
ポアロ登場
平均:5.00 / 書評数:11
なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?
平均:5.33 / 書評数:9
邪悪の家
平均:5.74 / 書評数:19
ゴルフ場殺人事件
平均:5.39 / 書評数:18
青列車の秘密
平均:4.75 / 書評数:12
雲をつかむ死
平均:5.23 / 書評数:13
1958年04月
マギンティ夫人は死んだ
平均:6.22 / 書評数:9
1958年01月
死が最後にやってくる
平均:6.12 / 書評数:8
動く指
平均:5.64 / 書評数:11
魔術の殺人
平均:4.25 / 書評数:8
死者のあやまち
平均:6.00 / 書評数:12
1957年01月
杉の柩
平均:6.79 / 書評数:14
NかMか
平均:5.86 / 書評数:7
満潮に乗って
平均:6.55 / 書評数:11
ねじれた家
平均:6.14 / 書評数:14
殺人は容易だ
平均:6.11 / 書評数:9
もの言えぬ証人
平均:5.33 / 書評数:9
死との約束
平均:6.71 / 書評数:14
スタイルズ荘の怪事件
平均:5.92 / 書評数:37
五匹の子豚
平均:7.29 / 書評数:21
ナイルに死す
平均:7.90 / 書評数:41
ポアロのクリスマス
平均:6.55 / 書評数:22
メソポタミヤの殺人
平均:5.78 / 書評数:18
ABC殺人事件
平均:6.80 / 書評数:41
1956年01月
バグダッドの秘密
平均:5.00 / 書評数:3
ビッグ4
平均:3.80 / 書評数:15
茶色の服の男
平均:5.17 / 書評数:6
七つの時計
平均:5.29 / 書評数:7
ヒッコリー・ロードの殺人
平均:5.22 / 書評数:9
シタフォードの秘密
平均:5.42 / 書評数:12
書斎の死体
平均:5.50 / 書評数:12
1955年12月
ヘラクレスの冒険
平均:7.17 / 書評数:6
1955年11月
死への旅
平均:4.33 / 書評数:3
1955年10月
アクロイド殺し
平均:7.80 / 書評数:75
1955年07月
愛国殺人
平均:5.75 / 書評数:16
1955年06月
そして誰もいなくなった
平均:8.69 / 書評数:91
1955年04月
チムニーズ館の秘密
平均:5.43 / 書評数:7
1955年01月
エッジウェア卿の死
平均:6.22 / 書評数:18
1954年12月
ポケットにライ麦を
平均:5.93 / 書評数:14
1954年11月
アリバイ
平均:5.00 / 書評数:2
牧師館の殺人
平均:6.00 / 書評数:12
1954年10月
ホロー荘の殺人
平均:6.13 / 書評数:15
1954年03月
オリエント急行の殺人
平均:7.62 / 書評数:48
1954年01月
忘られぬ死
平均:6.00 / 書評数:9
1951年01月
ゼロ時間へ
平均:6.38 / 書評数:16
三幕の殺人
平均:6.24 / 書評数:21
白昼の悪魔
平均:7.08 / 書評数:24
予告殺人
平均:5.81 / 書評数:21