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[ 本格 ]
死人の鏡
中短編集
アガサ・クリスティー 出版月: 1960年09月 平均: 6.00点 書評数: 4件

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早川書房
1960年09月

早川書房
1979年06月

東京創元社
1992年01月

早川書房
2004年05月

No.4 6点 クリスティ再読 2016/12/18 23:50
本質が短編作家ではないクリスティの場合、その短編の存在意義は..ということになると、難しいものがある。短編の作品というのは、じゃあ「長編になれなかったネタ」なのか、というと、長編でトリックもロジックもロクにないとりとめのない真相の作品だってあるわけで、そういうわけでもない...けど、本短編集で「死人の鏡」と「砂にかかれた三角形」を続けて読むと、なんとなくクリスティのモチベーションみたいなものが感じると思う。
「死人の鏡」は、本当に「本格推理小説」を書いてやろうとして書いている作品である。ポアロへの依頼があって、到着を待たずに殺人があり、順に関係者を尋問して、最後に関係者全員を集めて謎解きをする...という「推理小説らしさ」全開の作品である。本作は150ページくらいの長編1/2くらいの作品だから、長編から「本格推理小説の骨格」だけを抽出したようなことになっている..でこれ、よく出来てはいるとは思うけど、小説としては面白くないというか小説としての面白さを狙ってないし、そのうえにクリスティらしさみたいなもの(クリスティ一流のミスディレクションを含め)を感じないんだよね...
クリスティの短編の一覧を見てもパズラーは実は少ないし、長編でも形式的なクラシックな探偵小説らしい探偵小説って実は「ゴルフ場」「オリエント急行」「ABC」あたりが典型で、他の作品はずっと崩れた形式になっているというあたりが、クリスティのそもそもの志向のように感じる。
そう見てみると「砂にかかれた三角形」なんて実にクリスティそのものの作品だ。「ナイルに死す」や「白昼の悪魔」を思わせるリゾートでの、人間関係の錯綜から飛び出た死と、その反転による真相..とクリスティらしさをぎゅっと凝縮したようなミステリ短編である。
初出を見ると「死人の鏡」は 1931年で、「シタフォード」とか「邪悪の家」を書いていた頃、「砂にかかれた」は1936年で「ナイルに死す」の前年、となるとやはり「死人の鏡」は「本格推理小説を書かなきゃ!」と妙に肩に力が入った修行期で、「砂にかかれた」は「いいやもう自分流で」と自分の資質をちゃんと理解した開花期の作品と見ることができると思う。
意外なことにクリスティはヴァン・ダインを形式基準とする古典パズラーの苦手な作家だった、というのが真相であり、だからこそ他の黄金期作家とは一線を画すポピュラリティを備えたように評者は思うのだよ...

No.3 6点 nukkam 2015/06/22 00:29
(ネタバレなしです) 1937年出版のポアロシリーズの中短編集です(中編3作と短編1作)。中編は3作とも過去に発表された短編をリメイクしたものです。オリジナル短編は純然たる犯人当てミステリーですが、中編化によって登場人物の描写を充実させています。それが最も成功したのが「厩舎街(ミューズ)の殺人」でしょう。「謎の盗難事件」と「死人の鏡」は対照的な作品ですね。前者は中編化する必要性を感じない軽いテーマだし、後者は長編ネタでもおかしくないぐらい複雑なプロットです。唯一の短編「砂にかかれた三角形」は短編らしく小ぢんまりとまとまっていますがポアロの警告はなかなか印象的です。

No.2 6点 あびびび 2012/01/30 16:34
短編4作になるシリーズ。表題の「死人の鏡」が特に優れているわけではないが、どれも味のある佳作だと思う。

個人的には、「厩舎街の殺人」が読後、波紋のように広がりを見せて印象的だった。いくつもの伏線が解明される様は、自分自身の無能ぶりを改めて思い知るような感じだった。しかし、頭の回転のいい読者はすぐに察知できたと思う。

最後の「砂に書かれた三角形」もクリスティの術中にはまってしまった?これまた自分の視点の甘さを突かれたようなラストだった。

No.1 6点 2012/01/08 11:34
本サイトに登録されている他の短編集に合わせて、ハヤカワ版を対象にしていますが、実際には収録4編どれも創元版で読んでいます。どちらの版もすべてポアロもの。違いは、ハヤカワ版『砂にかかれた三角形』の代わりに創元版には『負け犬』が入っていることです。
その長めの短編『~三角形』は、某長編の人間関係・動機の元ネタです。その長編とは違い、アイディアをこの動機の意外性だけに絞り、ポアロの人間観察が冴えるきれいにまとまった秀作です。
他の3編はすべて、逆に以前に書かれた短編を引き伸ばした中編です。『厩舎街(ミューズ)の殺人』は、被害者の性別を変え、新たな手がかりを加えているぐらいですが、中編化が最もうまくいっていると思えました。『謎の盗難事件』はもっと短くてもいいでしょう。
表題作はトリックはそのままで、犯人の設定と動機を変更しています。これは短編の方が、冒頭部分と事件依頼内容の点でうまくまとまっている感じで、ひょっとしたらこの中編の方が先に書かれたのかもしれません。


アガサ・クリスティー
2018年07月
十人の小さなインディアン
平均:4.00 / 書評数:1
2015年01月
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1984年05月
ブラック・コーヒー
平均:4.33 / 書評数:3
1982年12月
教会で死んだ男
平均:5.25 / 書評数:4
1981年10月
リスタデール卿の謎
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1980年09月
ねずみとり
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1980年08月
黄色いアイリス
平均:5.33 / 書評数:3
1980年06月
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平均:5.33 / 書評数:3
1980年05月
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1977年01月
ベツレヘムの星
平均:5.00 / 書評数:1
スリーピング・マーダー
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1976年10月
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平均:3.00 / 書評数:1
1976年04月
ひらいたトランプ
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1975年01月
愛の旋律
平均:5.00 / 書評数:1
カーテン
平均:6.78 / 書評数:18
1974年01月
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平均:7.00 / 書評数:1
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平均:3.33 / 書評数:3
第三の女
平均:4.50 / 書評数:6
1973年12月
娘は娘
平均:6.00 / 書評数:1
1973年06月
愛の重さ
平均:6.00 / 書評数:1
1973年01月
春にして君を離れ
平均:7.00 / 書評数:10
象は忘れない
平均:5.25 / 書評数:12
1972年01月
フランクフルトへの乗客
平均:1.50 / 書評数:2
復讐の女神
平均:5.71 / 書評数:7
1971年01月
死の猟犬
平均:5.50 / 書評数:6
ハロウィーン・パーティー
平均:5.38 / 書評数:8
カリブ海の秘密
平均:5.89 / 書評数:9
1970年12月
親指のうずき
平均:5.50 / 書評数:4
1969年01月
バートラム・ホテルにて
平均:4.88 / 書評数:8
1968年01月
終わりなき夜に生れつく
平均:6.73 / 書評数:15
1965年01月
複数の時計
平均:3.83 / 書評数:6
1964年01月
鏡は横にひび割れて
平均:6.62 / 書評数:16
1963年01月
謎のクィン氏
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1962年01月
蒼ざめた馬
平均:5.11 / 書評数:9
1961年01月
クリスマス・プディングの冒険
平均:6.12 / 書評数:8
1960年09月
死人の鏡
平均:6.00 / 書評数:4
1960年01月
ポワロの事件簿1
平均:5.00 / 書評数:1
ポワロの事件簿2
平均:5.00 / 書評数:1
おしどり探偵
平均:4.88 / 書評数:8
鳩のなかの猫
平均:4.71 / 書評数:7
パディントン発4時50分
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無実はさいなむ
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秘密機関
平均:4.00 / 書評数:7
1959年11月
パーカー・パイン登場
平均:6.40 / 書評数:5
1959年01月
火曜クラブ
平均:6.42 / 書評数:12
ポアロ登場
平均:5.00 / 書評数:11
なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?
平均:5.33 / 書評数:9
邪悪の家
平均:5.74 / 書評数:19
ゴルフ場殺人事件
平均:5.39 / 書評数:18
青列車の秘密
平均:4.75 / 書評数:12
雲をつかむ死
平均:5.23 / 書評数:13
1958年04月
マギンティ夫人は死んだ
平均:6.22 / 書評数:9
1958年01月
死が最後にやってくる
平均:6.12 / 書評数:8
動く指
平均:5.64 / 書評数:11
魔術の殺人
平均:4.25 / 書評数:8
死者のあやまち
平均:6.00 / 書評数:12
1957年01月
杉の柩
平均:6.77 / 書評数:13
NかMか
平均:5.86 / 書評数:7
満潮に乗って
平均:6.55 / 書評数:11
ねじれた家
平均:6.14 / 書評数:14
殺人は容易だ
平均:6.11 / 書評数:9
もの言えぬ証人
平均:5.33 / 書評数:9
死との約束
平均:6.71 / 書評数:14
スタイルズ荘の怪事件
平均:5.92 / 書評数:37
五匹の子豚
平均:7.29 / 書評数:21
ナイルに死す
平均:7.88 / 書評数:40
ポアロのクリスマス
平均:6.55 / 書評数:22
メソポタミヤの殺人
平均:5.78 / 書評数:18
ABC殺人事件
平均:6.80 / 書評数:41
1956年01月
バグダッドの秘密
平均:5.00 / 書評数:3
ビッグ4
平均:3.80 / 書評数:15
茶色の服の男
平均:5.17 / 書評数:6
七つの時計
平均:5.29 / 書評数:7
ヒッコリー・ロードの殺人
平均:5.22 / 書評数:9
シタフォードの秘密
平均:5.42 / 書評数:12
書斎の死体
平均:5.50 / 書評数:12
葬儀を終えて
平均:7.15 / 書評数:26
1955年12月
ヘラクレスの冒険
平均:7.17 / 書評数:6
1955年11月
死への旅
平均:4.33 / 書評数:3
1955年10月
アクロイド殺し
平均:7.80 / 書評数:75
1955年07月
愛国殺人
平均:5.75 / 書評数:16
1955年06月
そして誰もいなくなった
平均:8.69 / 書評数:91
1955年04月
チムニーズ館の秘密
平均:5.43 / 書評数:7
1955年01月
エッジウェア卿の死
平均:6.22 / 書評数:18
1954年12月
ポケットにライ麦を
平均:5.93 / 書評数:14
1954年11月
アリバイ
平均:5.00 / 書評数:2
牧師館の殺人
平均:6.00 / 書評数:12
1954年10月
ホロー荘の殺人
平均:6.13 / 書評数:15
1954年03月
オリエント急行の殺人
平均:7.62 / 書評数:48
1954年01月
忘られぬ死
平均:6.00 / 書評数:9
1951年01月
ゼロ時間へ
平均:6.38 / 書評数:16
三幕の殺人
平均:6.24 / 書評数:21
白昼の悪魔
平均:7.08 / 書評数:24
予告殺人
平均:5.81 / 書評数:21