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[ 本格 ]
ハロウィーン・パーティ
エルキュール・ポアロ
アガサ・クリスティー 出版月: 1971年01月 平均: 5.40点 書評数: 10件

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早川書房
1971年01月

早川書房
1977年10月

早川書房
2003年11月

早川書房
2023年08月

No.10 6点 虫暮部 2024/01/11 12:50
 Trick or treat! じゃないの? アレは米国の風習? 日本人的な理解だと “こんなのがハロウィーン?” と疑問にも思うが、英国人による英国舞台の話だから嘘八百でもなかろう。

 犯人のキャラクターは気持悪くて魅力的。あと最後に殺され損ねた彼女も。
 但し、ストーリーや舞台の空気感とは合っていない。が、全編耽美世界にしないその齟齬、あんな思いも日常の言葉に回帰して行くあたりがクリスティっぽいとも思う。
 (現在の)第二の殺人は成り行きも描写も雑だ。“殺人は癖になる” って奴か。それとも作者は犯罪の低年齢化に対する警鐘を意図したのか。

No.9 5点 E-BANKER 2021/11/20 10:47
10月の末日は、今や日本人の年中行事の一つとなった「ハロウィーン」。ということで(少々遅れましたが)、本作をセレクト。
ポワロ物としては「カーテン」「象は忘れない」を残す後ろから三番目となる。つまり最晩期とも言える頃の作品。
1969年の発表。

~推理作家のオリヴァ夫人を迎えたハロウィーン・パーティーで、少女が突然に殺人の現場を目撃したことがあると言い出した。パーティーの後、その少女はリンゴ食い競走用のバケツに首を突っ込んで死んでいるのが発見された。童話的な世界で起こったおぞましい殺人の謎を追い、現実から過去へと遡るポワロの推理とは?~

イギリスのとある田舎の街、見た目とは異なりどこか陰のある人々、突然に起こる殺人事件・・・舞台設定だけを取り上げると、いかにもクリスティ作品という感じなのだが・・・
その牧歌的というか童話的な世界観に踊らされているためなのか、どうもスッキリしない読後感だった。
巻末解説の長谷川文親氏も「本書には初期作品にしばしば見受けられるような派手な仕掛けは期待できない。ついでにいえばポワロの導き出す結論も、かなりの部分が偶然に助けられたように感じられ、鮮やかさの面で物足りなさを覚える読者がいても不思議ではない・・・」と書かれている。
うーん。同感。
過去に起こった事件or事実というのも、何となく曖昧模糊としているし、それが現在の事件につながっているのはよく分かるのだが、有機的につながっているのが見えにくいというのか、わざとそうしているのか・・・?
さすがに、この頃のクリスティはプロットのネタ切れに陥っていたのかもしれない。鮮やかな仕掛けはもはや期待薄であり、これまでの手口を使いながら、いかにして作品を紡いでいくか。そうして生まれたのが本作ということか。
「動機」も見えにくい。ある登場人物の造形が大きく関わってくるのだが、それが子供殺しとどうもしっくりこないという気がした。

ということで、割合辛口の評価になってしまったけど、それもクリスティ作品への期待の高さ所以。
残り少なくなった作者(特にポワロもの)の作品なので、噛みしめるように味わっていきたい。
(ハロウィーンって本来のんびりした牧歌的なイベント、っていうか宗教行事だったはず。なぜ日本に来るとああいうどんちゃん騒ぎになるのかな?)

No.8 4点 レッドキング 2020/09/07 22:45
パーティーで、「むかし人殺しを見た」と自慢して殺された虚言癖の少女。容疑者はパーティー参加者数十人プラスα。「○○に○○ていた唯一の人物が犯人」てなロジックが、クイーン並みに極まっていれば見事に本格してたかもしれない。終盤までは「鏡は横に~」並みに退屈だが、真相解明ラストの味わいと犯人造形は悪くない。
※クリスティ自身のパロディの様な女流作家の他、さり気なく出てくるワキ役の若者二人・・「一人は肩まで髪を長く伸ばしフクロウのような眼鏡をかけ」「一人は頬ヒゲをはやしスペイン人風に」・・これ、69年のジョン・レノンとポール・マッカートニーのパロディではないか。

No.7 5点 nukkam 2016/05/18 19:25
(ネタバレなしです) 1969年発表のエルキュール・ポアロシリーズ第31作の本格派推理小説でタイトル通りハロウィーン・パーティーの最中に殺人が起こります。「第三の女」(1966年)と同じく本書でも回想の殺人を扱っていますが、どの未解決事件を追わねばならないかをまず絞り込まねばならない展開にはもどかしさを感じます。それにポアロの謎解き説明を聞くと現在の殺人だけでも十分犯人を特定できたのではという疑問もあり、いやに遠回りして解決しているような気がしました。ところどころではっとするような美しい描写があり、幻想的な雰囲気を醸し出しているのが印象的です。

No.6 5点 りゅうぐうのつかい 2015/10/25 10:17
クリスティーがこの作品で描きたかったのは、独特な犯行動機を持つ犯人像であったのだろうか。
ハロウィーンパーティーで起こった殺人事件と、被害者が目撃したという過去の殺人事件に関する関係者の取り調べが中心の話。本筋と関係のない事件が含まれていたり、不必要と思われる登場人物が出てきて、拡散しすぎ、未整理、冗長と感じる部分があった。
特にこれといったトリックが使われているわけではなく、ポアロの推理も根拠薄弱で、最後まで読んでも成る程と思うようなところはない。パーティーの主催者が花瓶を落とした理由も推測どおりであった。
ミステリ作家オリヴァ―は、作者自身なのだろうか。自作の登場人物に関して言及する箇所があり、興味を引いた。

No.5 6点 了然和尚 2015/06/11 13:53
読むに従ってパズルのピースが組み上がっていく見事な作品でした。まあ、各ピースが大きく絵柄もはっきりしているのでゴールが予測しやすいのですが。クリスティーの作品は比較的に別回答がありそう(カーは細かく別解を消していたりする)で、本作も、単独犯でも可能ではないか?(共犯者は殺されている事務員)とか殺人を見たのは殺された本人であっても成り立つやろ、とか思います。しかし、そのパーツを使って横溝的な隠された親子の因縁とかで締めくくられますが、ビジュアル的にもいい感じなので、本格評価としてマイナス1点のところ逆にプラス1点です。

No.4 6点 クリスティ再読 2014/12/26 20:06
評者はクリスティって言うと初期は「クィン氏」後期は「終わりなき夜に生れつく」が二大傑作だと思うようなマイノリティなんだけども、この作品はたぶんクリスティ本人も大いに気に入った「終わりなき~」を「もしポアロ物として書き直したらどうなるんだろう??」と思って書いたんじゃないかと推測する。要するに
1.犯人像
2.建築物(庭園)に対するこだわり
3.犠牲者的キャラ
4.副次的な共犯者を廃墟であっさり始末
5.イギリスの土俗的なオカルト風味(今風に言えばウィッカとか)
6.犯人は愛しているにもかかわらず殺す(殺そうとする)
とかいろいろ要素的な部分で共通性が多いように思う。

まあ純粋にミステリとして読むと、犯人による偽証から来るレッドヘリングが2つあって、1つは明白にヘンなので犯人の推測がついちゃうためよろしくないが、もう一つはすばらしい(がこれされると、推測しづらくなりすぎる...)。被害者に関するミスディレクションは想定内。当然そうでしょう。

クリスティ的な見所は年老いたポアロの内面描写がどんどん増えていってるために、ポアロというよりもサタスウェイト氏化してきていて、そこらへん「犯人は芸術家だが、探偵は批評家にすぎない...」というような妙な感慨がある。言ったら何だが初期のポアロって年若い女性作家がついつい書いちゃったぽいキャラだったのだが、それなりの熟し方をしているのがこの本の一番の興味だと思う。

総じてファンタジックな趣が強く、小説としての良さがミステリとしての良さを上回っている。クリスティ晩年らしい作品。ミランダって命名はテンペストからだよね....

No.3 6点 あびびび 2014/07/26 00:51
残り少なくなったのに、また安易にクリスティを読んでしまった。何冊か仕入れてきて、他の作品がもう一つの時は、ついつい手に取ってしまう。

この作品は79歳の時、一年間で一冊というペースを維持し、しかも読者にはクリスマスプレゼントの趣だったらしい。高齢のせいか?あまり切れ味はない。今までの手法を各種詰め込んで仕上がったような結末で、特に感想はないが、まあ平均作で、他の作家の駄作を読むよりは…という気がした。

No.2 5点 2010/08/22 19:54
現在の少女殺人事件から過去に起こった殺人を追跡調査していくというパターンです。まあ過去の殺人と言っても、まだ3年も経っていない程度ですので、『五匹の子豚』や『スリーピング・マーダー』みたいなことはありません。いくつかの未解決事件のうちどれが現在の殺人の元になっているのかというところが興味の中心。一方現在の事件も、1件だけにとどまりません。
半分も読まないうち、犯人の見当だけはポアロが最後に解説する手がかりからついてしまったのですが、事件の全貌はなかなか見えてきません。最初に殺される少女が殺人事件を見たことがあるといった言葉の本当の意味は意外でしたし、その過去の殺人も後から全体構成を振り返ってみるとひねってあることがわかります。
しかし、結末は何か今ひとつすっきりしないのです。ポアロの推理根拠に薄弱なところがあるからでしょうか。

No.1 6点 シーマスター 2008/10/29 22:40
クリスティ女史が79歳の時の作品です。
彼女の数々の名作のような派手さはなく、どちらかというと静のミステリですが、決して単調ではない構成がコンパクトに纏められた良作です。

ロンドン近郊の片田舎でのハロウィーン・パーティで起きた殺人事件に駆り出されたポワロが、歩き回って調査し、関係者達と会い、彼らの内面を老練に観察し、入り組んだ真実と犯人に迫っていく展開は年を重ねた女史ならではの味わいがあります。

スナップ・ドラゴン・・・・一度実物を見てみたいですね。


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アガサ・クリスティー
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五匹の子豚
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ナイルに死す
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ポアロのクリスマス
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1955年12月
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1955年06月
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アリバイ
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1954年10月
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忘られぬ死
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ゼロ時間へ
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白昼の悪魔
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