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[ 本格 ]
満潮に乗って
エルキュール・ポアロ
アガサ・クリスティー 出版月: 1957年01月 平均: 6.55点 書評数: 11件

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早川書房
1957年01月

早川書房
1976年07月

早川書房
2004年06月

No.11 4点 レッドキング 2020/02/04 23:01
アガサ・クリスティー十八番の二大トリック。
➀人間関係トリック・・・「あなたは人間関係に関心をもたれているわけですね?」「さよう・・・私の関心は、つねに、人間関係に向けられております」・・ポアロのセリフに暗示されているトリック。
➁キャラ一捻りトリック・・・プロット上、一番怪しい立場の人物のアクを一旦読者に印象付けて、その後にそれを薄めるか逆に誇張して幻惑させることで陰に隠してしまうトリック。
その十八番が、このいかにもな人々の遺産相続をめぐるいかにもな犯罪のミステリにも見事に展開。

No.10 6点 ボナンザ 2019/09/07 09:22
クリスティらしい小技が詰め込まれた一品。メロドラマ要素も盛り込まれているが、邪魔ととるか味わいととるかは人それぞれだろう。

No.9 4点 nukkam 2018/01/02 06:42
(ネタバレなしです) 第二次世界大戦中も安定した創作を続けていたクリスティー、戦時中の作品でも娯楽に徹した作品が多いのですが1948年発表のエルキュール・ポアロシリーズ第23作の本書は珍しくも戦争の影響が作品背景に見え隠れしている本格派推理小説です。戦中戦後の混乱を巧妙に織り込んだプロットではありますが、りゅうさんや青い車さんのご講評でも指摘されているように複雑に過ぎて読者が完全正解するのは無理ではと思わせる真相なのが辛いです。また本国イギリスでは誰でも知っているのでしょうけどアルフレッド・テニスンの「イノック・アーデン」(1864年)を作品内容の紹介もなしに物語に絡ませているのも個人的には感心できませんでした。せっかく築き上げた重く暗い雰囲気とミスマッチのような幕切れもシリーズ前作の「ホロー荘の殺人」(1946年)と比べると少々見劣りするように思います。

No.8 8点 青い車 2016/02/22 22:42
読み返してみると、事件のプロットがけっこう入り組んでいることに気づきました。派手さはないものの、大小のトリック、意図せぬ偶然が絡み、すべての真相を見破るのはかなり困難と思われます(アリバイトリックはさらりと描かれていますが、なかなか巧妙)。若い男女のロマンスはクリスティーが得意としたテーマで、何度となくやっていることなのですが、飽きずに読ませることに成功しています。今回はとりわけローリイの頼りなさ、優柔不断さが目立ちますが、僕は同性として現実の男ってこんなもんですよ、と言いたいです。爽快で微笑ましい結末も素晴らしい秀作。

No.7 5点 クリスティ再読 2015/08/16 22:12
この作品ほど「ポアロ、あんた邪魔!」って思えたものはないなぁ...

前半の終戦直後の混乱期を舞台にしたメロドラマが、結構「風と共に去りぬ」調で面白く読めていたのに、第二篇でポアロ登場となると、ありきたりの探偵小説になってしまう....表面を取り繕いながら相互に陰険な闘争をしかける2つの陣営の中で、対立を越えて結ばれる恋愛感情。メロドラマ視点で「どうなるの?」って思っていると、殺人によってメロドラマがストップしてしまうのが評者はすごい不満だ。
戦後のクリスティの小説的な充実に向けての試行錯誤なんだろうけども、探偵小説としての部分と小説の部分の乖離が激しくて、ミステリが大ブレーキとしか思えない失敗作だなあ...

デイヴィッドとローリィの間で揺れるヒロインって構図はそもそも「イノック・アーデン」の前半の関係だから、戦後の帰還兵について「イノック・アーデン」(しかも性別逆で)をしようとして、それに重ねて、あたりが当初の狙いだったのでは。
あ、ミステリとしてはまあまあ。証言は嘘だと対決すればいいのに?というあたりのロジックは素敵。だけど大枠の仕掛けと、殺人などの真相があまり密接に結びついていないので、殺人の真相が「軽く」感じられてしまう。名探偵よりもリン主人公で動くうちにわかってくる、あたりの話で充分だったのでは?

No.6 8点 了然和尚 2015/04/17 14:24
クリスティーらしく前半はゆっくり各人視点で進み、真ん中ぐらいで殺人が発生し、ポアロ再登場です。その後、終わりに近づくにほど、話の展開が加速し、意外な結末が一気に明かされます。この素晴らしいリスムの推理小説は交響曲を思わせて感動します。
トリックや真相については手がかりはよく示されていて本格ですが、犯人の決め手は不十分と思うのですが、それを感じさせない傑作ですね。
本作でのクリスティーの談義は、戦争(あるいは戦後)談義でした。(あの爆弾が落ちなければこの事件は。。。)第二次世界大戦後の高揚感の中で冷静に戦争の影響を語っています。そういえば、横溝先生の作品も戦後感がベースにあったなあとか思います。

No.5 8点 蟷螂の斧 2014/07/28 11:42
大富豪ゴードン・クロードが空爆で死亡し、莫大な財産は若き未亡人が相続した。前半は、当てにしていた遺産相続がなくなってしまったクロード一族の心理(あの未亡人さえいなくなれば・・・)がサスペンスフルに描かれています。やがて一族にとって有利な存在の人物が殺される・・・。動機、意外な真相、恋愛(複雑な心理)、アリバイトリックと盛りだくさんの作品でした。有名作品が多いので、その陰に隠れてしまったのか?・・・。佳作であると思います。                                                                                     (ネタバレ注意)1948年、日・米・英において同じモチーフを扱った作品が同時発表されていることが興味深いです。英「本作品」、米「○○との○○」(W.I)、日「○○○殺人事件」(S.A)

No.4 7点 あびびび 2012/07/25 01:34
書評を書いた方が、「これを読む人はクリステイーの中毒患者」みたいな記述があったが、まさにその通り。他の小説がつまらなかった時は、その口直しにクリステイーが欠かせない。

ある一族があり、その中に飛び切りの大金持ちがいて、皆の面倒を見てくれる。しかし旅先である若い女性と結婚し、空襲で不慮の死に遭遇。

ちょうど遺書を書き変えていた最中であり、遺産はすべてその若い女性が相続することになった。しかもそれを指揮しているのが自称・兄である…。今まで安楽に暮していた一族が望むのは当然若き未亡人の死であることは言うまでもない…。

こんな分かり切った設定でもクリステイーは見せ場を作るのだから凄い。

No.3 8点 りゅう 2011/11/22 20:46
 クリスティーの作品の中ではあまり有名な作品ではありませんが、ストーリー、真相の面白さ、緻密に計算された伏線など、良く出来た作品です。遺産を巡る家庭内の愛憎を扱った作品で、登場人物間の人間模様が丁寧に描かれています。ポアロが途中で「この事件はまともな型をしていない(辻褄があっていない)」と言って、スペンス警視に禅問答のような説明をするのですが、最後はきっちりと辻褄を合わせてくれます。非常に入り組んだ真相で、ポアロが途中で調査して判明したある事柄が隠されており、手掛かりも不足気味なので、読者がこの真相にたどり着くのは困難だと思いますが、伏線があちこちに散りばめられていて、真相説明でそれらが鮮やかに回収される手際は見事と言えます。

(完全にネタバレをしています。要注意!)
 冒頭のポーター少佐の爆撃時の思い出話、ライター、汽車の煙、デスクの上にあった写真、睡眠剤など、伏線に込められた意味を真相説明で知り、その巧妙さに感心しました。動機と犯人の逆転という真相が面白い。時系列で起こった出来事の必然性や意外性も面白く、デイヴィッドがロザリーンをアーデンに会わせないままロンドンに避難させた理由にも納得しました。
 一箇所不明なところがあります。ローリイはポアロに依頼してアンダーヘイの知り合いを探してもらい、ポアロからポーター少佐を紹介されています。これはローリイの芝居で、ローリイは元々ポーター少佐を知っていて偽の証言をするように依頼済みであり、ポアロがポーター少佐の存在に気付くことを期待してやったことです。しかし、ローリイはポーター少佐のことをどうやって知り、また、ポアロがポーター少佐を知っている(あるいはこれから知る)ことがどうしてわかったのでしょうか(ポアロがポーター少佐以外の別の知り合いを探し出す危険もあります)。
 また、ポーター少佐のある一言から、ポアロはローリイの芝居を見抜いているのですが、これは読者にはわかりにくいと思います。

No.2 7点 seiryuu 2011/01/14 19:51
あまり有名でない作品だけど、ミステリー度が高めで凝っている作品で好きです。
ラストは驚きの連続でした。
リンとディヴィットとローリイの関係も読み応えがありました。
最後のリンの言葉が意味深w

No.1 7点 2009/04/18 09:48
1948年に書かれた作品で、クリスティーにしては珍しく、大戦中と戦後の時代における経済的、心理的状況がかなり取り入れられています。爆撃による富豪の死が一応発端となっていますし、特に主役と言ってよいリンが本当は何を求めているのかという点も、戦争をめぐって描かれています。
ポアロが登場する短いプロローグの後、第1部の殺人が起こるあたりまではいかにものパターン展開なのですが、第2部に入ってポアロが再登場してからはさすがにミステリの女王の面目躍如といったところです。恋愛要素もうまく組み合わせて、意外な結末を劇的に構成してくれています。


アガサ・クリスティー
2018年07月
十人の小さなインディアン
平均:4.00 / 書評数:1
2015年01月
ポアロとグリーンショアの阿房宮
2002年02月
アクナーテン
平均:3.00 / 書評数:1
2000年09月
そして誰もいなくなった(戯曲版)
平均:6.50 / 書評数:4
1998年09月
マン島の黄金
平均:6.00 / 書評数:4
1988年05月
殺人をもう一度
平均:5.50 / 書評数:2
1985年03月
海浜の午後
平均:5.00 / 書評数:1
1984年05月
ブラック・コーヒー
平均:4.00 / 書評数:4
1982年12月
教会で死んだ男
平均:5.00 / 書評数:5
1981年10月
リスタデール卿の謎
平均:5.25 / 書評数:4
1980年10月
蜘蛛の巣
平均:6.67 / 書評数:3
1980年09月
ねずみとり
平均:4.83 / 書評数:6
1980年08月
黄色いアイリス
平均:5.50 / 書評数:4
1980年06月
愛の探偵たち
平均:5.25 / 書評数:4
1980年05月
招かれざる客
平均:6.40 / 書評数:5
検察側の証人
平均:7.24 / 書評数:21
1977年01月
ベツレヘムの星
平均:5.00 / 書評数:1
スリーピング・マーダー
平均:5.82 / 書評数:11
1976年10月
未完の肖像
平均:3.00 / 書評数:1
1976年04月
ひらいたトランプ
平均:6.15 / 書評数:13
葬儀を終えて
平均:7.15 / 書評数:26
1975年01月
愛の旋律
平均:5.00 / 書評数:1
カーテン
平均:6.78 / 書評数:18
1974年01月
暗い抱擁
平均:7.00 / 書評数:1
運命の裏木戸
平均:3.33 / 書評数:3
第三の女
平均:4.50 / 書評数:6
1973年12月
娘は娘
平均:6.00 / 書評数:1
1973年06月
愛の重さ
平均:6.00 / 書評数:1
1973年01月
春にして君を離れ
平均:7.00 / 書評数:10
象は忘れない
平均:5.25 / 書評数:12
1972年01月
フランクフルトへの乗客
平均:1.67 / 書評数:3
復讐の女神
平均:5.71 / 書評数:7
1971年01月
ハロウィーン・パーティー
平均:5.33 / 書評数:9
カリブ海の秘密
平均:5.90 / 書評数:10
1970年12月
親指のうずき
平均:5.50 / 書評数:4
1969年01月
バートラム・ホテルにて
平均:4.88 / 書評数:8
1968年01月
終りなき夜に生れつく
平均:6.73 / 書評数:15
1966年09月
死の猟犬
平均:5.71 / 書評数:7
1965年01月
複数の時計
平均:4.14 / 書評数:7
1964年01月
鏡は横にひび割れて
平均:6.62 / 書評数:16
1963年01月
謎のクィン氏
平均:7.36 / 書評数:11
1962年01月
蒼ざめた馬
平均:5.11 / 書評数:9
1961年01月
クリスマス・プディングの冒険
平均:5.90 / 書評数:10
1960年09月
死人の鏡
平均:6.33 / 書評数:6
1960年01月
ポワロの事件簿1
平均:5.00 / 書評数:1
ポワロの事件簿2
平均:5.00 / 書評数:1
おしどり探偵
平均:4.80 / 書評数:10
鳩のなかの猫
平均:4.71 / 書評数:7
パディントン発4時50分
平均:4.62 / 書評数:13
無実はさいなむ
平均:6.31 / 書評数:13
秘密機関
平均:4.12 / 書評数:8
1959年11月
パーカー・パイン登場
平均:6.43 / 書評数:7
1959年01月
火曜クラブ
平均:6.29 / 書評数:14
ポアロ登場
平均:4.83 / 書評数:12
なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?
平均:5.55 / 書評数:11
邪悪の家
平均:5.74 / 書評数:19
ゴルフ場殺人事件
平均:5.39 / 書評数:18
青列車の秘密
平均:4.75 / 書評数:12
雲をつかむ死
平均:5.23 / 書評数:13
1958年04月
マギンティ夫人は死んだ
平均:6.22 / 書評数:9
1958年01月
死が最後にやってくる
平均:6.00 / 書評数:9
動く指
平均:5.64 / 書評数:11
魔術の殺人
平均:4.25 / 書評数:8
死者のあやまち
平均:6.00 / 書評数:12
1957年01月
杉の柩
平均:6.79 / 書評数:14
NかMか
平均:6.00 / 書評数:9
満潮に乗って
平均:6.55 / 書評数:11
ねじれた家
平均:6.13 / 書評数:15
殺人は容易だ
平均:6.11 / 書評数:9
もの言えぬ証人
平均:5.33 / 書評数:9
死との約束
平均:6.71 / 書評数:14
スタイルズ荘の怪事件
平均:5.92 / 書評数:37
五匹の子豚
平均:7.23 / 書評数:22
ナイルに死す
平均:7.90 / 書評数:41
ポアロのクリスマス
平均:6.50 / 書評数:22
メソポタミヤの殺人
平均:5.78 / 書評数:18
ABC殺人事件
平均:6.80 / 書評数:41
1956年01月
バグダッドの秘密
平均:5.00 / 書評数:3
ビッグ4
平均:3.80 / 書評数:15
茶色の服の男
平均:5.29 / 書評数:7
七つの時計
平均:5.29 / 書評数:7
ヒッコリー・ロードの殺人
平均:5.22 / 書評数:9
シタフォードの秘密
平均:5.42 / 書評数:12
書斎の死体
平均:5.38 / 書評数:13
1955年12月
ヘラクレスの冒険
平均:6.86 / 書評数:7
1955年11月
死への旅
平均:4.33 / 書評数:3
1955年10月
アクロイド殺し
平均:7.80 / 書評数:75
1955年07月
愛国殺人
平均:5.82 / 書評数:17
1955年06月
そして誰もいなくなった
平均:8.68 / 書評数:90
1955年04月
チムニーズ館の秘密
平均:5.43 / 書評数:7
1955年01月
エッジウェア卿の死
平均:6.22 / 書評数:18
1954年12月
ポケットにライ麦を
平均:5.93 / 書評数:14
1954年11月
アリバイ
平均:5.00 / 書評数:2
牧師館の殺人
平均:6.00 / 書評数:12
1954年10月
ホロー荘の殺人
平均:6.06 / 書評数:16
1954年03月
オリエント急行の殺人
平均:7.65 / 書評数:49
1954年01月
忘られぬ死
平均:6.00 / 書評数:9
1951年01月
ゼロ時間へ
平均:6.41 / 書評数:17
三幕の殺人
平均:6.24 / 書評数:21
白昼の悪魔
平均:6.92 / 書評数:25
予告殺人
平均:5.81 / 書評数:21