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[ その他 ] 暗い抱擁 メアリ・ウェストマコット名義 |
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アガサ・クリスティー | 出版月: 1974年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1974年01月 |
早川書房 1974年10月 |
早川書房 2004年06月 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2016/06/27 21:57 |
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評者のウェストマコット2冊目。本作の面白味は、物語の中心人物であるジョン・ゲイブリエルが典型的な「クリスティの犯人キャラ」なことである。妙に率直なストレートさで見る人を欺くタイプでそこらへん女性にモテるところ。なので、本作は「クリスティの犯人がもし犯罪を犯さなかったら?」という思考実験みたいな作品であろう。
もちろん犯人っぽいキャラなので、周りを半ばダマしながら議員に保守党から立候補して、紆余曲折ありながらも当選するなどという完全犯罪をやってのける(苦笑、もちろん党への忠誠心とかゼロである)。本当にワルい奴なんだが、魅力もあるのは事実。一般に男性キャラのうまくないクリスティだが、ワイルドさとアタマの両方を備えた出色の好キャラだと思う。対するは植物的な雰囲気だが本当の意味での貴族であるイザベラ。で..天敵?とも思われるこの二人の間で何と「嵐が丘」しちゃうというびっくり展開になる。 まあクリスティっていうと、とくにポアロ物は嫌々書いてた...なんて話があるくらいで、本作とか読むと、ミステリを書いてて溜まったフラストレーションを、小説家本能に即して解放している、といった印象を受ける。ちょっとクリスティの舞台裏を覗いたような気になるな。というわけで、本作読むと、ミステリの二線級作品を読むよりも、よりよくクリスティのことが理解できるようになると思う。 |