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[ 本格 ]
鳩のなかの猫
エルキュール・ポアロ
アガサ・クリスティー 出版月: 1960年01月 平均: 4.89点 書評数: 9件

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早川書房
1960年01月

早川書房
1978年01月

早川書房
2004年07月

No.9 5点 虫暮部 2023/08/26 13:12
 まず中東の革命騒ぎで、この話の軸は宝石の取り合いだと示される。そりゃまぁこの件を後出しにしたら御都合主義だって言われるよね。
 だから読者にそういうイメージを植え付けるのは良いけれど、作者もうっかりそれに囚われちゃってる気がするのだ。
 学校内で連続する事件の描き方が妙にカラッとしてない? まるで教師も生徒も4章までを読んでいて、こういう背景があるんだと、だから自分がいきなり襲われることはないんだと、安心して “事件関係者” を演じているような感じ。作者も “本題は宝石だから、閉鎖社会のドロドロはあまり書かなくていいよね” との意識(無意識?)を反映した書き方になっている感じ。
 いや、でもそれが一部の動機についてはミスディレクションになっているから、全て作者の掌の上なのだろうか。

No.8 6点 E-BANKER 2023/07/23 14:14
クリスティの長編で51番目、ポワロ登場作では28番目、つまりは後期or晩年の作品ということ。
他の方の書評を拝見しても、あまり評判はよろしくないようで・・・
原題は""Cat among the Pigeons"" 1959年の発表。

~中東の王国で起きた革命騒ぎのさなか、莫大な価値を持つ宝石が消え失せた! 一方、ロンドン郊外の名門女子校、メドウバンクにも事件の影が忍び寄っていた。新任の体育教師が何者かに射殺されたのだ。ふたつの謎めいた事件の関連はなにか? 女子学生の懇願を受けて、ついに名探偵エルキュール・ポワロが事件解決に乗り出した~

「さすがに旨いもんだなぁー」というのが、読書中と読了後すぐの感想。
個人的にはそれほど悪い作品には思えなかった。評判が良くないというのも、作者のキラ星のような有名作品群との相対的な比較であって、名もないほかの作家が発表していたら、「へぇー」って具合に好意的に捉えていたかもしれない。

何より、舞台設定が魅力的。まさかクリスティがガチガチの学園ものを書くなんて・・・
それと、やはり“バルストロード校長”だ! こんな魅力的な(?)女性キャラ、そうはいないだろう。(今でいうなら「上司にしたい有名人」ランキングで絶対上位に入ると思う・・・)

で、本筋に戻ると、うん。この真犯人の「隠し方」が実にクリスティすぎるのが確かに難点かもしれない。
怪しそうな人物が数名いて、読者としても消去法でひとりずつ消していくつもりが、作者の絶妙なワナにかかって・・・というのがクリスティの定番なのだが、今回のアリバイ処理はまあちょっと雑かなというところもある。
まぁでも旨いですよ。読者のツボは十分に分かってますと言わんばかりのプロットだし。
でもファンとしてはポワロが冒頭付近から登場して巧緻極まりない犯人役とがっぷり四つの好勝負をみたいね。
(ポワロ登場の未読作もあと数編となってしまった・・・)

No.7 5点 レッドキング 2021/05/07 05:21
卓越した知性感性意志を持ち、冷静な判断力と強かな営業力政治力までも兼ね備えた、スーパーウーマン校長が運営する超高級女子校。女教師連続殺人が、遠いアラブでの宝石紛失事件と絡めて語られる。連続殺人は、犯人が○○となると推理難しいなあ。まして舞台が、屋敷の一族でなく学園にまで広がっちゃうとねえ。
※オリヴァて女作家が作者の「自虐自画像」ならば、あのバルストロードていう女校長、「理想自画像」てとこかな。

てことで、アガサ・クリスティー50年代の長編ミステリ全12作の採点修了したので
私的「50年代アガサ・クリスティー」ベスト3
   第一位:「予告殺人」
   第二位:「葬儀を終えて」
   第三位:「マギンティ夫人は死んだ」

No.6 5点 makomako 2016/12/04 08:35
 クリスティーにしてはこの作品はあまり出来がよろしくないと思います。本格物としてはこのサイトの書評でも述べられているように無理があります。ポアロが登場するのも半分以上話が済んだ後、しかも彼が話を聞いたらたちどころに解決してしまう。犯人のわかった理由は後付けで出てくるといったアンフェアさ。
 確かにこれでは誰が犯人でも成り立ってしまうでしょう。しかも彼女の長編の中でも長いほうのお話なので、途中で退屈してしまう。
 なんだか無理やり書き上げた作品のような気もします。
 大作家でもこういった駄作?があるのですね。

No.5 5点 クリスティ再読 2016/02/21 20:51
本作は「葬儀を終えて」のあとのポアロ物暗黒期の作品だから、ミステリとしての出来は良くない。昔読んだとき本当に退屈した記憶があるが、今回読みなおしたら、そんなに印象は悪くないのだ。
悪くない理由は、クリスティ本人がバルストロード校長のキャラを気に入っているのが伝わるところだね。「ヒッコリーロードの殺人」が学生寮の話で男キャラの苦手なクリスティだとどうにも困ったことを考えると、今回は女学校(教師もオール女性)で、それぞれのキャラの描き分けなど実はわりとうまくいっている。バルストロード校長とチャドウィック先生との間にほのかにエスな雰囲気(レズでも百合でもなくてね)が出てるあたり、小説としてはそう悪い感じでもないんだよ。「アップジョン夫人、だと存じますが(I presume?)」とか「殺人に対するマクベスとマクベス夫人の態度を比較せよ」という宿題とか、評者なんて小ネタにニヤニヤしてたよ。
けどまあ、ミステリとしてはホント見るところがない。これじゃ誰が犯人だって良いようなもの。ま、登場も後半になってからだしポアロが出るからって本格ミステリだけを期待するのがこの時期クリスティに対する無茶振りなのかもね。

No.4 5点 nukkam 2016/01/16 23:27
(ネタバレなしです) 1959年発表のエルキュール・ポアロシリーズ第28作です。本格派推理小説としての出来栄えですが、空さんがご講評で「ずうずうしい」とコメントされているのに私も賛同で、あの真相は読者に対してアンフェアな謎解きだと思います。国内本格派の作家でも似たようなことをやっているのを何度か読みましたが何度読んでも失望させられます。それでも誘拐事件の大胆なトリックは(過去の短編に似たようなアイデアがありますが)なかなか印象的だし、冷酷な犯罪物語に冒険スリラー色を加えて独特の味わいを出しています。

No.3 4点 了然和尚 2015/05/30 09:35
本格物として、いろいろと残念な点が多いです。一番気になったのは、一人称的に描写されている部分(本作は多視点になってますが)でその人が犯人であったことですかね。その直後に、別の犯人のアリバイ状況が語られているので、確信犯的なミスリードなのかもしれませんが、フェアプレー派から見れば大ブーイングでしょう。とってつけすぎの結末も余計です。

No.2 5点 あびびび 2012/12/23 15:15
ドロシー・セイヤーズの「学寮祭の夜」に似た設定。外国の王女も入学する名門校で殺人が起きる。それはある国の内紛時に持ち出されたダイヤモンドを巡っての事件だった…。

途中からポアロが登場するが、推理的にはある程度分かる部分があり、意外と言えるほどの犯人ではなかった。切れ味的にはもうひとつかも。

No.1 4点 2010/04/12 21:37
プロローグの後、最初のうちは中東の某国国王の死と彼の所持する宝石の数々の行方にまつわる話で、冒険スパイもの的な感じです。そこから一転、イギリスの名門女子校での殺人事件という古典的なミステリになってきて、後半ポアロがついに登場すると、後はもう解決に向かってまっしぐらです。
途中で校長が「この学校は型どおりの学校ではなかったけれど、そうかと言って、型破りを誇りにしてきた学校でもなかったのよ」と言うところがありますが、これはクリスティーの目指すところでもあったと思えます。まあ、今回は伝統と革新の二要素の融合がそれほどうまくいっているとは思えません。真犯人隠匿方法などずうずうしい手ですが、意外性のすっきり度は低めです。ポアロの謎解き段階に入ってからの展開のご都合主義もちょっと甘すぎる感じがしました。


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アガサ・クリスティー
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1955年07月
愛国殺人
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1955年06月
そして誰もいなくなった
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チムニーズ館の秘密
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1955年01月
エッジウェア卿の死
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1954年12月
ポケットにライ麦を
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1954年11月
アリバイ
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牧師館の殺人
平均:6.08 / 書評数:13
1954年10月
ホロー荘の殺人
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1954年03月
オリエント急行の殺人
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忘られぬ死
平均:6.00 / 書評数:10
1952年01月
シタフォードの秘密
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1951年01月
ゼロ時間へ
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白昼の悪魔
平均:6.96 / 書評数:25
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平均:5.77 / 書評数:22
1950年01月
アクロイド殺し
平均:7.78 / 書評数:76
1939年01月
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1937年01月
スタイルズ荘の怪事件
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