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[ 本格 ]
複数の時計
エルキュール・ポアロ
アガサ・クリスティー 出版月: 1965年01月 平均: 4.00点 書評数: 8件

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早川書房
1965年01月

早川書房
1976年06月

早川書房
2003年11月

No.8 3点 虫暮部 2023/10/28 13:52
 これはバーナビー・ロスのパロディ(盲人も登場するし)?
 わざわざ死体を運び指定の時間に発見させるメリットが判らないが、それも原本に書かれていたのだろうか。主犯は “発見者の知人” と言う立場なのだから、そんなことしなければそもそも捜査陣の視界に入らなかったのに。
 犯人と被害者をつなぐ糸はごく細い。自動車を使えるなら、遠くに捨てて来れば “余所の事件” として無関係でいられたのではないか。
 身許を偽装しても、そのごく細い糸を辿られる僅かなリスクは変わらない。偽装で共犯者を増やすデメリットの方が大きそう。

 もっと上手に書ければ “不可解な小道具が残された犯行現場” そして “余計なことをして自滅する犯人” パターンに対する批評になったかもしれないが……。

No.7 6点 nukkam 2022/01/11 01:22
(ネタバレなしです) 1960年代のミステリーはスパイ・スリラーの台頭がありましたが、大御所クリスティーも時流に乗ったのか1963年発表のエルキュール・ポアロシリーズ第29作の本書では秘密情報部員を登場させてポアロよりも登場場面を多くしています。それでも本格派推理小説の謎解きの方にウエイトを置いていますけど。第14章でポアロにミステリー評論めいたことをさせているのも本書の特徴ですが、紹介されている作家の約半分は架空の作家のようです。実在の作家名を出すと色々都合悪かったのでしょうか(笑)。ハードボイルドには非常に辛口ですけど、まあクリスティーの作風には合わないですよね。タイトルに使われている「時計」は死体を取り囲むかのように置かれていた時計を指すのですが、この謎解きがなーんだというレベルだったのは呆れたというより失笑ものでした。

No.6 4点 レッドキング 2021/05/09 07:34
仕事の依頼を受けて、盲婦人の家を訪れた派遣秘書が発見したものは、刺殺死体とあるはずのない複数の時計だった。婦人の家と両隣り・向い及び斜め両向い、都合六家の位置関係と人物描写から、「赤毛連盟」発展系期待したが、中途半端に・・ポアロの言う「極めて」て程ではない・・単純な真相だった。

No.5 2点 クリスティ再読 2015/10/13 21:41
死体の周りに時計がいくつも...というと往年の「七つの時計」とシチュエーションが共通するんだが、あっちも駄作でこっちも駄作。
でしかも、まずいところが「七つの時計」と共通してもいる。真相がどうにもショボくて、エンタメとしてどうよ、というレベルなんだよね。まあリアリティ重視の警察小説だったら、解決しない謎が多少残ったりしてもリアリティのための小道具で許せちゃうわけだが、本作は本格ミステリらしくどうだ!と謎を提示しておくにもかかわらず、その謎を魅力的に解決する、というミステリというよりも娯楽小説の肝心カナメを外しているわけだ...これはどうしようもない。

評者は「七つの時計」と連続してこれを読んだんだけど、クリスティの初期作の「七つの時計」と晩年の本作だと、約35年の時間が流れているわけで、「七つの時計」の舞台である侯爵の豪邸チムニーズ館から、本作の新興住宅街に至る、イギリスの郊外風景の歴史みたいなものにちょっとした感慨を受けるのである....本当はクリスティって、こういう郊外風景のクロニクルを描けた作家じゃなかったのかなぁ、と思うんだよね。クリスティの代名詞である「村の噂話」が開発によって希薄化していくさまを描いたら、本当に凄い小説になったのでは...

あ、あとポアロによるミステリ評は雑談レベル。本質的に批評家的センスのないクリスティだから、まともに取り上げる価値はないと思うよ。あと本作、ポアロ長編では唯一のウルフ=アーチー方式採用作だよね....(そういや「パディントン発4時50分」か)ミステリ評があるのは他人のやり方を借りてみました、ということかなぁ?

No.4 4点 了然和尚 2015/06/02 15:38
犯人が推理作家の未刊の作品ノートを参考に、自分の犯罪に利用したという一種の筋書き殺人のようですが、発想力が乏しかったのでなんとも意味のない(不可解ですらない)事件になってしまいました。そうか、この作品の評価が低いのはクリスティーが悪いのではなく、この犯人がだめだめだったんですね。犯人夫婦は過去に海外の遺産を手にいれたことや、姉の存在に関する矛盾など本格の手がかりを示されていますが、なぜか見逃してしまうんですね。この遺産の入手が計画的でなく成り行きの偶然だからかなと思います。成り行きに行えば問題のないものを、仕掛けを考えすぎて手がかりを与えてしまう、本格小説のキモですね。

No.3 5点 あびびび 2014/08/13 09:57
いつもどおり、犯人は以外で、クリスティらしい結末だったが、犯行現場にあつた複数の時計の意味があまりにしょぼかった。まして、その部屋に死体を置く意味が分からなかった。

それでも犯人については仕掛けも動機も意外さもクリスティらしさが見られた。

No.2 4点 sophia 2014/05/30 22:57
時計の意味が何かしょぼい・・・
たったそれだけのことかというガッカリ感があった。

No.1 4点 2010/01/17 20:24
これほどポアロの登場シーンが少ない作品は他にないでしょう。ミス・マープルものだと、そういうタイプもあるのですが。
犯人の意外性についてはクリスティーらしい企みがありますし、スパイものとの融合も悪くありません。しかし、スパイ部分であまりにも偶然すぎるところがあるのが気になりましたし、何と言ってもタイトルの複数の時計の意味はいただけません。途中、ポアロの口を通して語られるミステリ評の中に、伏線があると言えないことはないのですが。
ところでこのポアロによるミステリ評、ドイル、ルブラン、ルルー等大先輩作家は実際の作品を挙げて論じていますが、クリスティーと同世代以降の作家は、別の箇所でディクスン・カーの名前が出てくるくらいで、他はオリヴァー夫人を始め架空の名前になっています(たぶん)。シリル・クェインというのは、クロフツがモデルでしょうけど。


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アガサ・クリスティー
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