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[ その他 ] 未完の肖像 メアリ・ウェストマコット名義 |
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アガサ・クリスティー | 出版月: 1976年10月 | 平均: 3.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1976年10月 |
早川書房 1976年10月 |
早川書房 2004年01月 |
No.1 | 3点 | クリスティ再読 | 2017/08/07 20:31 |
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さて、評者のクリスティ評も大詰めに近づいている。残りは戯曲などだから、小説としてはこれがほぼラストである。本作はウェストマコット6冊の中でも、一番ミステリ的興味がないというか、クリスティ自身の自伝小説である。自分の生い立ちと、結婚とその破局までを描いた作品だ。なので「アガサ/愛の失踪事件」へのクリスティ自身の公式見解みたいなものという印象だ。
丁寧に自分の生い立ち・父母と祖母の思い出を綴っているので、他人の人生を覗く興味はあって、クリスティ最長編級(「愛の旋律」と「ナイルに死す」が並ぶくらい)であってもするすると読める。思い出話のせいか、キャラの区別は読んでいてつきにくいが、つかなくてもそう支障はない。別れた夫(要するにクリスティ大尉)であるダーモットは、クリスティがわりと犯人に起用したがるタイプの色男キャラ。性格がクールでドライのために、ヒロイン・シーリアの気持ちが分からなくて破局するのだが、小説の描写としては、別に筆誅覿面でも未練たっぷりでもなくて、あっさりとしたもの。拍子抜けしそうなほどだ。 どっちかいうと、ヒロインと求婚者たちを巡る「ご縁」みたいなものが、一番興味深いように思う。まあ評者なんぞは「何歳までに〇〇して」というような人生設計みたいなものを、御意見無用で仏恥義理しちゃった人間だから、どうこういう資格もないんだがね。 なので、ウェストマコット6冊と言っても、普通にクリスティのミステリが好きならば全部読む必要はない。「春にして君を離れ」「暗い抱擁」は必読だけども、「娘は娘」「愛の重荷」はできたら、レベルだし、本作と「愛の旋律」ははっきり読まなくてもいいようなものである。クリスティ自伝を読むような読者なら、自伝の別バージョンみたいに読めばいい。 |