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[ 本格 ]
ヒッコリー・ロードの殺人
エルキュール・ポアロ
アガサ・クリスティー 出版月: 1956年01月 平均: 5.20点 書評数: 10件

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早川書房
1956年01月

早川書房
1978年09月

早川書房
2004年07月

No.10 5点 虫暮部 2023/08/31 12:19
 ネタバレするけれども、結局、盗難騒動って何?
 はっきり書かれていないが、リュックサック破壊事件と言う “木の葉” を隠す為の “森” を、無関係な者を唆して作り上げた、と言うことなのか。
 しかしあれは実行犯が露見して気を引くところまで計画に含まれていて、すると “リュック事件は別” と言うことも明らかになるわけで、最終的にあまり意味が無いと思う。
 それとも、裏で進行中の違法行為とは無関係に、あんな行動を唆したと言うこと? (それは何かズルい……)

 あと、最後に従犯者が色々話しているが、あれが全て正しい保証は無いよね。要約すると “主犯と或る程度の情報共有はしてたけど、私はそんなに悪くはありません” と言っている。
 自分の罪状を軽くする為に犯行の主導権を相手に押し付けようとしているのかも。そのへんの曖昧さ、私は面白く感じたので、作者にはもっと意図的に突っ込んで(主犯にも供述させて)欲しかった。

 最後の事件のトリックは、単純だけど鮮やかで見事に引っ掛かった。

No.9 5点 レッドキング 2020/04/15 17:12
下宿館を舞台にした男女青春群像ミステリ・・と思わせて、アガサ・クリスティーにも「旧体制社会」以降を舞台にしたの書けるんだ・・と思わせて、ホワイダニット、ちとずっこける。最後になって、結局は「旧世界」ミステリの匂いが・・。まーた、あの手の犯人キャラトリックなのが、いかにもアガサ・クリスティーらしい。でも、あの婆さん、新世代の、60年代以降の若者文化にさえも、きっと「寛容」(ちと皮肉を含めながらも)な人だったんだろうな。ドロシー・セイヤーズみたいな気持ち悪い通俗的保守派臭がないのがいい。ので、点数オマケ付き。
※こういうマザーグース童謡の使い方はよいな。

No.8 6点 E-BANKER 2018/12/10 22:06
エルキュール・ポワロを探偵役とするシリーズとしては26作目に当たる作品。
(ポワロ物はだいぶ未読作品が少なくなってきたなぁー)
1955年の発表。

~外国人留学生が多く住むロンドンの学生寮で盗難騒動がつぎつぎと起き、靴の片方や電球など他愛のないものばかりが盗まれた。だが、寮を訪れたポワロは即刻警察を呼ぶべきだと主張する。そして、その直後、寮生のひとりが謎の死を遂げる。果たしてこれらの事件の裏には何が・・・。マザーグースを口ずさむポワロが名推理を披露する~

マザーグースは特段関係なかったな・・・
で、大ミステリー作家・クリスティ女史としては、本作程度の作品なら赤子の手を捻るほどに簡単にできたのではないか?
そう思わせる出来栄え。
別に酷いレベルというわけではないのだ。十分に旨いし、これを老練と言うのかもしれない。

紹介文のとおり、「不思議な盗難事件の裏側に隠された悪意」というのが本作を貫くプロット。
で、その悪意の隠し方が、もうさすがクリスティ。
何気なく書かれた物証や登場人物の台詞に伏線がふんだんに撒かれている・・・感じ。
中盤以降、伏線がつぎつぎに回収され、「悪意」が徐々に明らかになるやり方。
うん。やっぱり老練。その言葉がピッタリくる。

でもやっぱり他の方と同様、高い評価はできない。
登場人物が多すぎてごちゃごちゃしてるとか、終盤の盛り上がりが足りないとか、ポワロが軽すぎるとか、細かい点ももちろんあるんだけど、それ以上に作品の熱量の少なさがなぁ・・・
これがどうしても「小手先感」を出してて、イマイチ読む方も盛り上がらない結果になっているのだろう。
(ラストのサプライズも唐突で??だし・・・彼女と彼女が・・・関係ってね)
楽しめるか楽しめないかと問われれば、「楽しめる」と答えられる出来ではあるけど、評価はこんなもんかな。

No.7 6点 nukkam 2016/10/03 01:36
(ネタバレなしです) 1955年発表のポアロシリーズ第26作の本格派推理小説です。学生寮を舞台にした作品で、私はエリザベス・ジョージの「名門校殺人のルール」(1990年)を思い出しましたが描かれている世界が全然違いますね。暗く重いジョージに比べて本書はいかにもクリスティーらしく明るく読みやすい作品です。今回の犯罪の影にはぞっとするような悪意が隠されているんですが、それでも全体の雰囲気がさほど陰湿にならないのは(むしろユーモア溢れる場面さえあります)クリスティーならではです。そういうところが非現実的だと批判する人がいるのもまあわかりますけど、これがクリスティーの世界的な人気の秘密の一端ではないでしょうか。

No.6 3点 クリスティ再読 2016/01/02 22:12
一言でいうと「らしくない作品」。ミス・レモンに役が振られてるあたり、ドラマかなんか絡んだ企画物?とか疑いそうだ。クリスティだとさすがに戦後世代の風俗などまったく理解不能な世代だろうから、そもそもキャラ描写にリアリティを求めるのは無理ではあるが...なんで外人多数の学生下宿なんて設定を考えたんだろう??
まあ昔からクリスティっていうと男性キャラが下手で女性キャラが無類に上手な作家だけど、本作みたいなのは男性キャラが描けてないと面白みが薄いんだよね。コリンくんとかレンくんに至っては中盤から非常に影が薄いわけだし(クリスティって若い男キャラに萌えて書く人じゃないからねえ...ライバルのセイヤーズがウィムジー卿に明白に萌えてたけど、そういうのないでしょ。)。
ミステリとしては「こんな真相だったらイヤだな...」と第一感で思うようなのが真相(背景事件も殺人も)。なので評者は読後果てしなく盛り下がっていた。数少ない未読作品だったんだよ。
どうでもいい話:評者年末なので帰省したんだが、ふと見つけたアパートの名前が「グリーンウッド」。女性作家でも男性描写の上手い人は結構いるんだけどなぁと愚痴。

No.5 6点 了然和尚 2015/05/09 15:21
最初に提起される謎が短編的内容で、トリックも少なく全体に小粒ですが、楽しめました。複数犯人で組織犯罪っぽいところは少し残念です。黄金期の本格を読むと度々思うことですが、70年ぐらい前でも、世相的な物は変化してないなと感心します。(古臭く感じない)本作の犯人の青年のどうしょうもない感は、宮部みゆきの作品の犯人を思い出させたりしますね。
ところで、本作の興味深い小ネタとして、ミス・レモンの事件簿クロスリファレンスはその後完成したのでしょうか? 私も乱歩に習いトリック分類などやってみたいのですが、システム名は「レモンシステム」と命名したいです。

No.4 6点 あびびび 2014/04/05 19:52
学生中心の下宿屋で盗難事件が頻発。ミス・レモン(ポアロの秘書)の姉がそこに勤めており、ポアロは講演と言う形で様子を見に行くが、その後2度の殺人事件が起こり、事態は一挙に緊迫する。

確かに登場人物か多く、何度も登場人物の欄を見返したが、警察が個人面談をするようになってから人物像が明らかになり、事態が呑み込めてきた。最後の犯人のアリバイ作りは良くある手ではあるが、ある意味虚を突かれて感心した。

No.3 5点 HORNET 2011/01/09 18:20
<ネタバレありです>
 不可解な盗難事件からやがて物語は殺人事件へ。そうではないと思わせて最期に戻ってやっぱりそうだったパターン。筋書き的にはよいと思いました。

No.2 5点 りゅう 2010/03/05 17:25
 ポアロ登場作品としてはマイナーな作品。
 確かに登場人物が多すぎると思います。巻頭の登場人物一覧表に記載されている寮生だけでも11人(それ以外にも寮生が登場する)。外人の名前は憶えにくいので、頻繁に登場人物一覧表を見返しました。
 雑多な品物の盗難事件、モルヒネの入った瓶の移動、背後にある大きな謎などプロットは結構面白いと思います。しかし、盗難事件の動機、特に電球の盗難理由はいただけません。
 ちょっとしたトリックも使われているのですが、小粒感は否めません。

No.1 5点 2009/11/17 20:50
本作については、登場人物が多過ぎるという意見がよくあるようです。学生相手中心の下宿屋が舞台ということで、同じ環境、同年代の登場人物が多いため、名前とキャラクターを一致させるのが困難になるのでしょう。確かにわかりにくいです。
最初の奇妙な連続盗難事件の大部分についての真相は、ポアロが現場に乗り込むとすぐ決着が付いてしまいますが、この部分は書き方によってはパーカー・パインものの短編にもなりそうな感じです。
クリスティーにしては珍しく、全体の7割程度のあたりで、事件の裏に潜んでいたからくりを明かしてしまいますが、その後起こる第3の殺人でもう一ひねり犯人隠匿の工夫をしているところはさすがです。しかし解決部分については、推理そのものはきっちりしていてそれなりに意外なのですが、派手好みのポアロにしては犯人指摘に至る演出がずいぶん地味な感じがしました。


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アガサ・クリスティー
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