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[ 本格 ]
バートラム・ホテルにて
ミス・マープル
アガサ・クリスティー 出版月: 1969年01月 平均: 5.00点 書評数: 9件

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早川書房
1969年01月

早川書房
1976年11月

早川書房
2004年07月

No.9 6点 虫暮部 2023/10/06 13:05
 組織犯罪と殺人事件を強引に混ぜるのはともかく、そこにミス・マープルを絡ませるのは食い合わせが悪い。
 作者は敢えてその変なミックスを試したかったのだろうか。“ミス・マープルなんだから聡明な筈” との思い込みも相俟って、作者が動かし方に苦労しているような、ぎくしゃくした印象を受けた。
 “壮大な与太話” であるこのプロット、ノン・シリーズにして、事態を判っているんだかいないんだか判然としないお婆ちゃんがウロウロしているうちに巨悪と対決、みたいにすれば面白いのでは?

 あと、殺人犯に目を瞑ったのはまずいんじゃない? だって自分の金銭的利益の為の、結構短絡的な犯行だ。条件が揃えばまた繰り返す危険があると思う。

No.8 4点 レッドキング 2021/07/08 19:37
風格と利便性を兼ね備えた由緒ある「本物」のホテル。支配人から給仕・受付・メイド・ドアマンに至るスタッフも、建物・内装から午後ティ・マフィンに至るサービスも、全てが「本物」で、客も「ビューティフルピープル」オンリーの「本物」だらけ・・・が、「永遠に不変のもの」とは「既にして別のもの」であり、「いかにもそれらしいもの」に過ぎず、その美しきホテルの実相は・・・

No.7 5点 nukkam 2017/06/16 11:18
(ネタバレなしです) 1965年発表のミス・マープルシリーズ第10作の本格派推理小説です。プロットがちょっと風変わりで、殺人事件の謎解きはかなり遅めに開始されます。それまではロンドンの名門ホテルに宿泊したミス・マープルがホテルの雰囲気にどこか違和感を覚える場面が多く、どこかもやっとした展開です。その違和感の正体についてはスコットランドヤードのデイビー主任警部によって説明され、なかなか大胆な真相が印象的ではありますが推理としてはかなり粗いと思います。後味の悪さを残す幕切れはかなりのインパクトがあります。

No.6 5点 ALFA 2017/03/28 18:10
クリスティは「組織」を描くとどうしてこんなにリアリティがないのだろう。個人をあれほど生き生きと描くのに。
古き良き時代風のホテルの役割が面白いのと、セジウィックのキャラが魅力的なのでオマケ。

No.5 6点 りゅうぐうのつかい 2017/01/02 15:00
古き良きエドワード王朝の面影を残すバートラム・ホテル。そのホテルでの偶然の再会が契機となって起きる殺人事件。殺人事件が起きるのは、小説の3分の2以上が過ぎてからであり、それまでは周辺で頻発する強盗事件、牧師の失踪事件、列車強盗事件の調査が中心となって、物語は展開される。
本事件でのマープルの役割は探偵ではなく、事件の重要な証言者。強盗事件の謎を追うデイビー主任警部らの警察の調査が中心の話。最後まで読むと、マープルの役割が何とも皮肉なのが印象的。
バートラム・ホテルという舞台やセジウィックという冒険好きの女性の人物造形は良くできているし、エルヴァイラが一時姿を隠して自分に関する謎を調査しようとした理由にも説得力がある。
殺人事件の真相には二重のひねりがあるが、強盗事件の背景にある真相は大掛かりすぎて、リアリティーに欠け、全体の印象を損なっている。

No.4 3点 了然和尚 2015/12/22 08:21
5、6年前に読んで再読。あまり面白くなかった印象があったが、再確認。その割に不思議と犯人とかそこに至る展開とかはよく覚えていたりします。(不満すぎて印象が強かったかな)
内容は「ビッグ4」なみの駄作ということでおわかりいただけるかと。ちなみに、「ビッグ4」は完走すらできなかったので、評価不能でしたので、本作は最後まで読めるだけ上かな。


No.3 6点 クリスティ再読 2015/11/22 23:15
空さんの言うとおり、本作はマープル登場作だけど、名探偵ミス・マープルじゃないからね。「蒼ざめた馬」に近いタイプの小説だな。
でマープルが特別出演する理由は一番書きやすい「古きよき時代を懐かしむ」視点人物だからにすぎないわけだ。だから最後のほうで出てくる殺人はタダのオマケ。で、大掛かりな犯罪があるんだけど、「蒼ざめた馬」みたいな即物的リアリティは残念ながら、ない。だから失敗作...と言ってもいいんだが、それでもね。
というのは、こういう演劇的と言っても過言ではない「偽装」がクリスティのいままでの名作のトリックの根幹にあるわけで、そのような偽装が実はタメにするシミュラクルなんだ、ということを本作は明らかにしている、という点なんだよね。バートラム・ホテルは過ぎ去った大英帝国の繁栄の模造品に過ぎないが、それがタダのシミュラクルであるがゆえに、ホントウのノスタルジアとアメニティを提供してしまうわけである。真相暴露は幻滅(マボロシを滅する...)だが、幻滅ゆえに、それが滅び去ったことを確認するがゆえに、マボロシはまたさらに美しく輝き人を惹きつける...これがクリスティでなければ、きっと「奇妙な味」な短編で小粋に書いたネタなんだろうけど、クリスティなので真正面からの直球勝負(もういい加減な歳なのになんて覇気だ)。
最後に殺人の真相なんだけど、これも実は「幻滅」って話なんだと思う(あまりトリックに説得力がないが...)。マープルの断罪がネメシスシリーズ的な厳しさで印象的。
ちょっと思ったんだが、この幕切れってネメシスがもし三部作だったら、この殺人の真犯人が、トリの作品「女性の領分」への再出演する伏線だったのかも??

No.2 5点 2015/01/12 12:06
ミス・マープルものなのに、ジャンルとしては本格ではなく警察小説としてしまいました。
実際のところ、本作で中心となる事件は謎のグループによる多発する強盗事件で、途中には列車強盗の顛末が、強奪後の犯罪グループの動きまで含めて描かれているのです。そしてその事件を追っているのは、もちろんセント・メアリー・ミードに住む老婦人ではなく警視庁。上司からもおやじさんと呼ばれているデイビー主任警部が中心となって活躍します。
全体の7割ぐらいでやっと殺人が発生するのですが、どう見てもこの殺人、強盗団とは直接の関係はないのです。つまり2つの事件を並行して描くパターン、しかも強盗団事件だけでなくその殺人事件の真相も、ミス・マープルだけでなくデイビー主任警部も見破ってしまっているのです。というわけで、採点も警察小説としての点数です。

No.1 5点 江守森江 2010/09/13 05:27
クリスティ生誕120周年月間でAXNミステリーでは土曜日にミス・マープル特集が組まれている。
今回は、この作品だったのでドラマを観た後に図書館でおさらいした。
ホテル自体の謎、失踪事件、殺人事件と3つの謎があるがドラマ・原作共々ミステリーとしてはパッとしない。
一方で英国の観光案内ミステリー(国際的旅情ミステリー)だと捉えれば非常に雰囲気が良く描かれている(ドラマはやや古臭いが原作と優劣はない)
5点にしたが多分に旅情描写を評価してのものでミステリーとしては凡作。


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アガサ・クリスティー
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ゼロ時間へ
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