皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ことはさん |
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平均点: 6.26点 | 書評数: 260件 |
No.260 | 4点 | 空白の殺意- 中町信 | 2025/01/03 01:36 |
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これはいまひとつだった。なんといっても、高校野球という背景や、ラブホテルを舞台にした情事などの話の展開が、あまり好みでなかった。
警察も含めて、根拠もないのに「……としか考えられない」いう決めつけが多く、事件に対する試行錯誤が行われないのも、謎解きとしては残念。 途中、ある人物の独白が入るので、それについては、読者には事実だと担保できるが、登場人物にはわからないはずなので、「なぜ断定できるの?」 と思ってしまう。だから。その推定が覆されても、「いや元々根拠薄弱だったじゃん」と思って、意外性を感じない。 全体の仕掛けについて、カーのある作品をフィーチャーしているそうだが、かーのほうがよい。 それはxxxxの謎を解くためのキーだが、そもそもxxxxに焦点があたっていないので、そこを強調されてもなという感じがする。 |
No.259 | 7点 | 模倣の殺意- 中町信 | 2025/01/03 01:31 |
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よみやすいのはよいが、文章表現でいいと思えるところはないので、よくもわるくもプロット勝負。まあ、いつもの中町信作品だ。本作は、途中のプロット展開も飽きさせないので、なかなかよかった。
2つの語りが交錯する構成になっていて、そこはかなり好みだった。1つは誘拐事件で、もうひとつは剽窃事件。それぞれにアリバイ崩しの展開が盛り込まれているのが、鮎川好きを自認している中町信らしいところだ。(鮎川好きは、徳間文庫の「太鼓叩きはなぜ笑う」の解説で、熱く語っている) さらに、「2つの事件の絡ませ方」は、あの趣向も含めてきれいにきまっていて、これはよかった。「驚き」のインパクトは大きくないが、「あれはこういう事だったのか」と、いくつものエピソードがカチカチと嵌まってゆく「整理の快感」にすぐれていると感じた。 まあ、今から、中町信だからと、過度にインパクトに期待をして読むと、がっかりしてしまうかもしれないが、良作だと思う。 |
No.258 | 5点 | 泡の女- 笹沢左保 | 2025/01/03 01:00 |
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「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズのカバーに惹かれて、もう1冊。
本作の面白さは、捜査の道行きの部分だろう。「招かれざる客」の感想でも書いたが、鮎川哲也の鬼貫ものを思い出させるもので、なかなか楽しい。ただ、これも「招かれざる客」と同じだが、順調にいきすぎなのは、やや難点。 真相の提示や、解決編もスピーディで、すっぱりと終わるのは、「軽やか」と肯定的にみるか、「あっさりしすぎ」と否定的にみるかは、好みが別れるところと思った。 時代(1961)を考えると、読みやすいのは実に驚異的。なにしろ、烏山がまだ人家がまばらで、風呂を薪で焚く時代なのだから。 |
No.257 | 5点 | おしゃべり雀の殺人- ダーウィン・L・ティーレット | 2025/01/03 00:55 |
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解説で、第二次大戦前のドイツを、1936年当時に描いたことを称揚している。たしかに生々しい描写がいくつかあるが、それをもって本作を傑作とするのは、ちょっとちがうなぁと思う。
上記のような描写が少しはさまれるが、全体はヒッチコックの映画のようだった。いちばん近いイメージは「北北西に進路を取れ」かな。冒頭の「雀がしゃべった」というエピソードも、終盤にその謎は解かれるのだが、前半はヒッチコックが言ったマクガフィンとして機能する。 そして、次々と事件が起き過ぎて、読んでいる方は全体像がよくわからなくなり、謎を究明するモチベーションも低下してしまうので、これはやや失敗作かと思う。 あと、場面転換がわかりづらいところが多々あるのもマイナス。例えば、レストランに向かって歩き始めて、色々思考をめぐらした記述がつづいたあと、「テーブルについたら」とくる。「レストランに着いて」の一言があるだげで全然違うのにと思う。他にも、「家をめがけて走った」につづけて「机の鏡板を巻き上げ」とあり、家に入ったり部屋に入ったりの描写がなかったりするので、一読では戸惑ってしまった。 |
No.256 | 6点 | エロス- 広瀬正 | 2025/01/03 00:49 |
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ミステリーではない。SFというのも、ニュアンスが違う気がする。ファンダジーかな? 最近の異世界ものに近しい世界観かな。
面白さのポイントは、ノスタルジー。多分書かれた当時から見ても、過去となった戦前を描いているので、「今、読んで」だけではなく、当時もノスタルジーが面白さのポイントだったのではないかと想像する。 ラストにある趣向が存在するが、これは個人的には好きになれなかった。そんな簡単な話じゃないよねと感じる。 |
No.255 | 6点 | 創られた心- アンソロジー(海外編集者) | 2024/12/15 23:55 |
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副題に「AIロボットSF傑作選」とあるように、SFである。
しかし、その中の1作の「もっと大事なこと」は未来世界を舞台にしたハードボイルドで、SFミステリとしてなかなかよいので、登録してしまおう。事故のように見える財界の大物の死を、語り手の私立探偵が、スマート・ハウスとロボット執事に質問していくことで炙り出していくというもの。 真相は結末に近づくにつれ気づいたが、その見せ方はテンポがよく、真相の居心地の悪さを見事に盛り上げている。 |
No.254 | 7点 | 夏期限定トロピカルパフェ事件- 米澤穂信 | 2024/11/16 18:33 |
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再読なので、ふたりの対決としてみられた。結果、1回目より全然面白かった。例えるなら、ガニマール警部対アルセーヌ・ルパンというところか。
これも、初読時は「謎と解決」に期待していたから、「小粒過ぎる」と評価できなかったよ。ケーキのごまかしや、半の意味、場所当てでは、ちょっとなぁ。 小鳩くんと小佐内さんの立ち位置や関係性は、春期以上に掘り下げられ、ラストの落とし方も含めて、じつに面白い。夏秋冬はどれもいいなぁ。 発売当時はそんな言葉は知らなかったが、いま読むと、ふたりはアセクシャルかアロマンティックかもしれないと思った。 あと、いま本サイトを見ると、案外点が低いのね。まあ、初読時の自分の評価を思うと、これはしょうがないのかも。 アニメ(2024夏期)も見たので、ちょっとだけ感想を。 1話を「巴里マカロンの謎」からもってきて、「夏期」は4話と半分で描かれ、最後の半分は「秋期」のイントロ。2025春期で秋冬のアニメ化とのこと。やはり「謎と解決」に目がいってしまい残念。ポイントで描かれる小佐内さんのダーク表情はとてもよいので、そこは見どころ。でも、やはり、この話の面白さはふたりの心理戦なので、これを描くには小説に分があるよなぁ。 |
No.253 | 6点 | 春期限定いちごタルト事件- 米澤穂信 | 2024/11/16 18:32 |
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昔、読んで「日常の謎」が主と思っていたが、「日常の謎」のウェイトは半分だ。
例えば、「おいしいココアの作り方」のページ数でみると、40ページの話で、謎の検討と解明は20ページくらいだ。では、ほかは何かというと、最終話につながるフリと、小鳩くんと小佐内さんのキャラクター描写。 「謎と解決」だけみると、どうでもいいことを検討している感じで、あまり面白みは感じないが、ふたりの立ち位置や関係性は面白かった。初読時は「謎と解決」に期待していたから、「なんか違うな」と思ったが、今回はわかっていたので、楽しめた。 帯が手元に残っているが、「コミカル探偵物語」とあって、小鳩&小佐内コンビの面白さを表現するのに、試行錯誤した結果なのかなと想像する。成功している気はしないけど。 あらためて思い返しても、まったくもってストレートな「日常の謎」ではない。謎を名探偵が解いて「よかった、よかった」となっていないからだ。「羊の着ぐるみ」、「For your eyes only」、「おいしいココアの作り方」、「はらふくるるわざ」、「狐狼の心」。どれも小鳩くんの探偵活動は「意味がなかった」ことになっている。なんともひねくれた話だ。 アニメ(2024夏期)も見たので、ちょっとだけ感想を。 風景は美麗。主題歌はOP/EDとも、背景絵と共にとてもよい。小鳩&小佐内コンビのキャラデザは美形になりすぎ。だけど、これはアニメ化するにあたっては、しょうがないかな。でも、まとっている雰囲気や声と口調はピッタリ。特に、小佐内さん役の羊宮妃那さんはいい。なかでも「おいしいココアの作り方」の「ちっちゃい子?」の言い方はグッジョブ。「春期」は4話で描かれ(「For your eyes only」はアニメ化されなかった)、やはり「謎と解決」に目がいくので、地味過ぎる。 |
No.252 | 6点 | 清里高原殺人別荘- 梶龍雄 | 2024/11/05 00:02 |
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メインのアイディアはなかなか好み。いや、これは発表された新本格初期の時代に、もっと評判になっていてもおかしくない。
とはいえ、すごく面白いかといえば、そこまでではないかな。 心理描写と情景描写はあまりなく、文章はいまひとつ。体言止めが多くて、下書きのような感じさえする。例えば「朝食といっても、もう十時過ぎ。兼昼食の感じ」といった文がある。地の文で「兼昼食の感じ」って、どうなの? 視点人物は固定されているので、視点人物の心理描写を増やして、サスペンスを盛り込めていれば、かなり面白くなったのになぁと思う。 とはいえ、極めて個性的な作なので、これを絶賛する人がいるのもわかる気はする。 |
No.251 | 5点 | 十和田湖殺人事件- 中町信 | 2024/11/04 23:56 |
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1章では、事件の関係者が、まるで刑事の報告のように、事件の経緯を別の関係者に述べたりして、いろいろ違和感があった。2章からは、警察とのやりとりが主体になるので違和感はなくなるが、この辺が中町信の小説がうまくないところだと思う。
また、2章以降も、事件を起こし過ぎて構成が複雑になり過ぎていて、事件の全体像がなかなか整理できない。キャラクターの立ち方もいまひとつなので、誰が誰だかすっと入らないせいもある。この辺も、すこし演出を失敗しているように感じた。 ただ、解決で、ある人物のある属性を指摘し、いくつも伏線を拾い上げていくところはよかった。これはよく考えられている。 あと、作品とは別の話だが、「トクマの特選!」の装丁では、いつも表紙と同じ絵が口絵にあるのだが(通常同じだよね?)、本作は表紙と口絵で、女性の口元が違う。なにか意図があったのかな? それと、「トクマの特選!」の帯も手許にあるのだが、そこで予告されている3作目「炎上/榛名湖に沈めた過去」(榛名湖殺人事件のことだろう)は、結局、「トクマの特選!」が止まってしまったので、出されずに終わってしまった。装丁も含めて好きなシリーズだったので残念だ。 |
No.250 | 5点 | 灯台- P・D・ジェイムズ | 2024/11/04 23:36 |
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いままでのジェイムズ作品と比べると、書き込みの薄さを感じる。特に後半、捜査2日目の描写は30ページしかなく進展がみえないし、ダルグリッシュにトラブルがあって以降の書き込みは、駆け足といっていいくらいで、いつものジェイムズ調ではない。解説でも引用された、作中のセリフ「言葉が前ほどすらすらと出なくなっていました」は、確かに作者の現状の吐露だったのかもしれない。
まあ、とはいっても「いままでのジェイムズ作品と比べると」なので、これで普通くらいになったというところだろう。 また本作は、いつもの事件関係者のじっくりした描写から始まるのではなく、プロローグで捜査側3人の「事件に呼び出されるまで」の描写から始まるので、いつになく入りやすい。しかもプロローグは、それぞれのパートナー関係に重点がおかれていて、本作のテーマを暗示している。 1章では、事件関係者の恋愛/夫婦/パートナー/親子関係を中心に描写がすすむ。一族の長とその家族、作家と娘と娘の恋人、所長とその家族、事務長とその妻、医師とその妻、助手とそのパートナー。ここの各章はいつものジェイムズ節。ただ、章立てはいつもより少ない。 2章、3章と関係者への聞き込みで、さまざまなことがわかってきて、この辺の描写はジェイムズらしく、人間心理の綾を感じさせるが、最初に書いた通り、後半は書き込みが薄くなり、解決は唐突感があり、全体的には、後期作では下位になると思う。 ラスト・シーンは、ダルグリッシュとミスキンにフォーカスがあたり、明るい未来を予感させる描写になっている。作者85才の作とのことなので、ジェムズ自身、最後の作になることも想定していたのだと思う。最後の作になってもいいように、キャラクターたちに区切りをつけるため、このラスト・シーンにしたに違いない。 |
No.249 | 5点 | ツィス- 広瀬正 | 2024/10/09 23:10 |
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終盤の展開は、ちょっとどうだろう。これはありえないなぁ。意外性はあるが、納得感がない。風刺を含んでいるのかなぁ?
よい点は、シミュレートしようという意図は強いこと。ひとつひとつのエピソードはかなり具体的で、情景描写は細かい。とくに(きっと作者が好きな)銀座周辺は何度もでてくる。 ネットで感想を拾い読みした中では、「高等な童話」という評に共感した。 ラストシーン(最後の数ページ)に含みがあるが、自分の読みが正しいか、自信がない。(政府が意図的に便乗した? xxからxxをxxxため?) |
No.248 | 5点 | ローラ・フェイとの最後の会話- トマス・H・クック | 2024/10/06 21:27 |
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久しぶりに読むクック。
本作は、記憶シリーズと同じで、過去の事件を少しずつ周辺から語っていく構成。ミステリ的興趣としては「ホワットダニット」になる。 読者は、なにがあったかをまったく知らずに読みすすみ、登場人物たちは、表面的に起きたことは知っているが、そこにどんな事情があったかを知りたくて追求していく。 そういう構成なので、ミステリ的興趣は少なく、面白さのポイントは登場人物たちのドラマだ。記憶シリーズと比較すると、ドラマのインパクトがやや弱い。まあ、記憶シリーズが強すぎるのだが……。 記憶シリーズよりよい点は、本作、かなりわかりやすく区切りがつくので、読みやすい。連続ドラマに合いそうだ。あとは、ラストが記憶シリーズより明るい印象。そんなところなので、記憶シリーズのほうができがいいと思う。 |
No.247 | 5点 | 罰金- ディック・フランシス | 2024/09/08 19:13 |
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終盤、主人公がおちいる状況は最悪。(褒め言葉です)これは嫌だなぁ。ここはヒリヒリした。
それに、知り合いが自殺する導入はよい。これは引き込まれる。 しかし、それ以外が、いまひとつ。 1つは詐欺の話だが、これがバレずにできていたというのも、どうなのかと思うし、後半の悪役の行動は、ハリウッドのアクション映画ばりのバカ行動でしょう。そんなことしたってなんにもならない。 2つめの話は、主人公のプライベートの状況だが、最初に書いたように、終盤に主人公がおちいる状況をやりたかったための設定だと思うが、時代もあるが、今読むと、主人公の恋愛観(肉欲感?)がクズ。最後の2行は特に最低。 ほかには、群像劇をやろうとしてうまくいっていないのかな? 最後のレース・シーンで、前に少し出番があった騎手がでてきたりなどして、複数のキャラの動向がレースで区切りがつくようになっているのだが、前振りが弱くて印象に残らない。 フランシス作では、どちらかというと失敗作だと思うが、MWAをとっているのが不思議だ。 |
No.246 | 5点 | 酔いどれ探偵街を行く- カート・キャノン | 2024/09/08 18:59 |
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3、4作目は典型的ハードボイルド展開で、ラストは良い具合に哀愁があって、よかった。
それ以外は、アクションだけのものや、とりとめのないものもあり、全体的にいまひとつ。 あと、発表年が1960年代だが、読んだ印象はもっと古い時代のものに思えた。ハードボイルドは詳しくないので、想像になるだけだが、ネオ・ハードボイルド前夜と捉えるのがよいのかな? 他の書評にもある「マクベインは一人称の方が板についていると感じた」は同感。それはホープ・シリーズでも感じた。 |
No.245 | 5点 | 本所深川ふしぎ草紙- 宮部みゆき | 2024/09/08 18:47 |
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さすがに語り口はいい。会話だけでキャラクターがイメージできて、練達の語り。
ただストーリーは、定型的かな。そのためあまり高評価にならなかった。 このストーリーだと、現代の設定にしてしまうと映えなくて、時代物にするのでしっくりしている気がする。意図的な選択だとするとうまい。 |
No.244 | 6点 | 飛越- ディック・フランシス | 2024/08/26 01:23 |
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さらにつづけてフランシス。
本作のストーリーは、あまり紆余曲折なく、一本道だ。 前半は主人公の人生の悩みが主で、ネオ・ハードボイルドの作にあった、ライフ・スタイル小説の趣を思い出した。この辺の雰囲気も含めて、クリスティ再読さんの評で”ハイソで上品な「ロッキー」みたいなもの”とあるのは、実に的確に感じる。さすがです。 終盤、急展開の場面には驚いた。それからは一気呵成で楽しめたが、どうなったかわからないでおわるところがあるのは気になる。エピローグがあればいいのに。 |
No.243 | 5点 | 血統- ディック・フランシス | 2024/08/26 01:12 |
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フランシスをつづけて読む。今度は初期の頃の作を手にとる。
本作、ハヤカワ・ミステリ文庫「名門」の池上採点表では満点だが、失敗作だと思う。 主人公がある願望をもっている設定だが、それが実感をもつところまで掘り下げられないので、どうも惹きつけられない。 ストーリーは、あまり紆余曲折なく一本道で、簡単に犯人にたどりつきずきだし、主人公のピンチの場面も、定型のためハラハラしない。 ラストになると、主人公とある人物の関係に焦点があたるが、そこまで二人の関係を描いてきていないので(主人公と他の人物との関係のほうが丁寧に書かれていると思う)、胸に迫ってこない。 描写がよく、いいシーンもあるので、つまらなくはないのだが、それらをうまく活用できていないと思う。 あと、本作、冒険小説風味よりハードボイルド風味が強い。池上さんは、各種書評から、きっと冒険小説風味よりハードボイルド風味が好きだと私は思っているが、だから本作が好みにあって満点だったのだろうなと思う。 |
No.242 | 7点 | 反射- ディック・フランシス | 2024/08/26 00:55 |
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これはうまいなぁ。「写真の謎を解く」、「騎手としての進退」、「妹を探す」の3つの話が、主人公の人生の岐路に関わってくる。
それぞれの話は事件として直接つながるところはないのだが、3つの話とも「主人公の選択」への影響が感じられて、奥ゆきがある。 ミステリ-としてのシャンル的面白さより、小説としていい小説だ。 終盤、主人公が苦難にみまわれるところはフランシス印。これも主人公の決意に関わってきていい。 やはり、フランシスはこの時期のものが好みに合いそうだ。 |
No.241 | 7点 | 彼と彼女の衝撃の瞬間- アリス・フィーニー | 2024/08/26 00:30 |
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作風は、暗く、不安定なトーンで、リチャード・ニーリィを思い出した。
序盤は、ふたりの別々の視点から事件が語られていき、これがなにか裏がありそうで、深読みを促すのだが、読み終わってみると、あまり深読みしなくてよかった。この作品は、流れにのっていっきに読むほうがよいと思う。 おおくの章の終わりにフックをかけ、「これはこういうこと?」、「あの人が?」と匂わせてくる。匂わせた内容が違ったり、合っていたり、なかなか予想を絞らせない。なかには(フリが全く無いので「気づけるかっ!」というものだが)かなり意外な展開もぶち込んでくる。しかも、中盤から後半にかけて、これがどんどん加速する。流れにのれれば、かなり楽しめると思う。私はかなり楽しめた。 読み終わってから振り返ると、偶然が過ぎるところや、辻褄があわないように思えるところがおおいので、すこし減点。 あとは、ある人物の過去エピソードがきつすぎるので(こんな経験があったらトラウマ)、その手のものがだめな人はやめたほうがよい。 |