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ことはさん
平均点: 6.14点 書評数: 331件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.331 7点 ポー傑作選1 ゴシックホラー編 黒猫- エドガー・アラン・ポー 2026/06/07 21:55
ちょっと前に新潮社のポー短編集「ゴシック編」を読んだが、こちらも読んでみた。
新潮社の6作(「赤き死の仮面」、「ウィリアム・ウィルソン」、「落とし穴と振り子」、「黒猫」、「アッシャー家の崩壊」、「リージア(ライジーア)」)は、本集にはすべて収録されている。やっぱり、「ミステリを除いてポーから選ぶとすると、これになるよね」ということなのだろう。
本集は、詩の代表作「大鴉」もはいっていたり、解説が充実したりしているので、新潮版より、こちらがおすすめ。
ただ、(集英社の「黒猫 エドガー・アラン・ポー短篇集」とも5作が重なっているので、3冊で比較すると)、翻訳の好みは、集英>角川>新潮の順なので、集英社版が私のおすすめ。1つ翻訳を具体的に引用してみよう。「赤き死の仮面」のほぼラスト。
角川。「黒檀の時計の命も、浮かれ騒いでいた最後の者の命とともに果てた。三脚台の炎も消えた」
集英。「浮かれ狂っていた最後の一人の息が絶えるとともに、黒檀の時計も止まった。三脚台の篝火も消えた」
映像をイメージしたとき、集英社版のほうが、カット割りがわかる気がする(人、時計、三脚台とかわっていく)のが、好みのポイント。

No.330 8点 法治の獣- 春暮康一 2026/06/03 22:32
これは面白かった。「SFが読みたい!2022年版」で、国内1位という評価にも納得の出来だ。
内容は、異星の生命の「探索と発見」を描いた、同じ未来史に属する作品群で、どの作品も、その異星の生命の「社会の成り立ち」の説明があり、これが抜群に面白い。
同じように「社会の成り立ち」を描いた作として、本サイトに眉村卓の「司政官」の感想を書いたことがある。「司政官」は簡潔な描写でスケッチのような印象で、それはそれでよかったが、本作はそれと違い、じっくりと「社会の成り立ち」の細部まで書き込まれている。その内容が、意外性を備えつつも「ひょっとしたらあり得るかも」、「あったら面白いな」と思わせる魅力に満ちている。いやあ、この作者は追っかけよう。
ネット検索すると、野尻抱介の評で「描写が先、説明が後なので」と書かれていたが、まさにそのような作りなので、謎解きの妙味もある。ミステリ読みにもおすすめです。
他のネット評にあった「生物学にかなり振り切ったSF。 SFとは”ある架空の条件下での事象の観測”という箱庭遊びであると認識させてくれる1冊」という感想にもつよく共感した。
ただ、そういう「振り切ったSF」なので、物語を「人の喜怒哀楽」を主に読む人や、「理に萌える」感覚がない人には、まったく面白さがわからないのだろうなとは思う。読み人を選ぶ作だろう。

No.329 5点 貴族探偵- 麻耶雄嵩 2026/06/03 22:02
作風を思い切って言い切るなら、「推理問題をシチュエーション・コメディで調理した連作短編」。物語としての人間ドラマ的な面白さはほぼ皆無なので、それを割り切って読めば楽しめるが、割り切れない人にはつまらなく感じられると思う。
各作の寸感。
「ウィーンの森の物語」 構図は面白い。しかし、咄嗟の犯人の発想には無理がある気がする。
「トリッチ・トラッチ・ポルカ」 この仕掛けは好き。なので本集のベストは本作。しかし、やはり犯行方法は複雑すぎて、無理がある。
「こうもり」 この仕掛けは手が込んでるなと感心したが、明かされたときのインパクトなどはなく、演出が違うなという感じは拭えない。
「加速度円舞曲」 推理問題として作成しただけにみえる。事件はいろいろ無理がある。時間経過はとくにおかしい。
「春の声」 構図の反転がしたかったのはよくわかる。そこは面白い。でも偶然が過ぎるよね。
麻耶雄嵩の他の作には、ミステリの枠組みを意識的に揺さぶる尖った部分が多いのに、本作にはそうした魅力があまり感じられず、評価は低めです。
あと、タイトルが内容を表していないようなのは、どうなのかな。タイトルから作品内容を思い出せないのは、マイナスの効果しかない気がするのだが。

No.328 6点 ウィンダム図書館の奇妙な事件- ジル・ペイトン・ウォルシュ 2026/05/24 23:48
前情報から、イギリスのコージー風ミステリを想像していたが、実際にはかなり趣の異なる、妙な展開の話だった。
なにが妙かというと、メインと思われた冒頭の事件の犯人探しが、終盤にはメインではなくなり、第二の事件はあのように処理され、最終的には「xxはそのときxxxxxxxか?」という点にフォーカスが移っていくところだ。
ではつまらないのかといえば、そんなことはなく、描写が完結でサクサクすすむので、かなり楽しめる。
読み終わってから振り返ると、無駄なエピソードや登場人物がほとんどなく、緊密に関係しているのも好感触だ。
とくに、ただの雑談に見える「クリスマスの時期の雪」の話が、ちゃんと伏線として機能するのが、かなりセンスがよい。しかも、ここの伏線回収は、なかなか壮大感があって、きわめて魅力的。
2作目以降も読んでみるかもしれないが、ちょっとキャラ立ちが弱いので、読まないかも。どっちになるか微妙なところ。

No.327 6点 カナダ金貨の謎- 有栖川有栖 2026/05/24 23:14
安定の火村シリーズ。一時期の短編集は、あまりにも小ぢんまりとしていたが、近作はそんな感じはなくなり、なかなか好感触。
「船長が死んだ夜」 これは犯人当てとしてよくできている。手かがりが、「それが手がかりになるのか!」という意外性のあるもので、「気づいて良さそうなのに、気づけない(気づく人も多そう)」といったちょうどいい塩梅。火村シリーズの短編では、上位にくる作品だと思う。
「エア・キャット」 シリーズ・ファン向けのサービス的な小話。
「カナダ金貨の謎」 犯人視点を混在させることで、いい具合にサスペンスがでている。うまいなぁ。
「あるトリックの蹉跌」 ふたりの出会いが描かれる、キャラのファンには見逃せない作。でも小話です。
「トロッコの行方」 トロッコ問題はあまり関係ないような……。

No.326 6点 毒入りコーヒー事件- 朝永理人 2026/05/24 22:43
「謎と解決」に焦点を絞った良作だと思う。しかし、途中の推理手法がなかなか地味で、面白みには少々欠ける。クイーンと比較すると、やはりクイーンの推理は鮮やかさが抜けているなあ。どうやら私は、ロジカルなだけでは楽しめなくて、鮮やかさなどの別の要素が必要のようだ。
他にも、後出しでデータが提示されている感があり、推理が地味ならば、かわりに、フェアな謎解きにもう少し頑張ってほしかった。
説明不足の感もあるので、もうちょと丁寧に説明してもよかったと思う。そのせいか、ネットの感想でも(すべて読み終えてから書いているはずなのに)冒頭のシーンのふたりを、勘違いしているものがあった。

No.325 6点 倫敦スコーンの謎- 米澤穂信 2026/05/24 22:16
ユーモア成分が、今までの中でも多めだと感じた。本作では小鳩くんの語りに、かなりボケやツッコミが混ざっているのだが、これがじつに楽しい。小鳩くんと小佐内さんの会話も、いつも以上にボケとツッコミの感じがつよい。だから読みやすく、本作からシリーズを読み始めるのも、ありかもしれない。
ただ、謎はいつも以上に小粒で、「謎と解決」部分は期待しないほうがよい。総合して、番外編としては「巴里マカロンの謎」のほうが出来がよいと感じた。あと、「謎と解決」は各話で完結しているのだが、人間関係にはつながりがあるため、前から順番に読んだほうがよい。
以下、各話の寸感。
「桑港クッキーの謎」 結局のところ、「それはなんだったのか?」という回答は、かなりよい。
「羅馬ジェラードの謎」 最後に焦点を当てる場所をそこに持ってくるとは、いかにもこの作者らしい。
「倫敦スコーンの謎」 真相の推理は、なかなか説得力がある。しかし、「この謎をここまで検討する必要はあるのか?」とは思う。
「維納ザッハトルテの謎」 事件の裏にある意思が、作者らしくてよい。
全体をとおして、タイトルが謎に関わらない作があるが、かわりにテーマに関わっているので、これはこれで良いタイトル。相変わらずタイトルのつけ方はうまい。
最終作は、「夏期」につづくとみられる記述で終わるので、「これで隙間が埋まり完結」ということなのかもしれない。
2ndシーズンとして、京都編でも始まれば、絶対すぐ読むのだけど、もう本シリーズは書かれないのかな。そうだとしたら残念だ。

No.324 4点 乙女の悲劇- ルース・レンデル 2026/04/29 18:42
かなり退屈な読書だった。
メインの趣向は、途中からばればれだし、この趣向は先見性も評価できない。読後に少し考えただけで、日本作家の有名短編や、ホームズのある短編に、類似趣向があることを思いついた。
趣向以外にも、文章面でいろいろと引っかかった。ひとつひとつは些細な点だが、読書の流れがたびたび止まるため、全体としてはかなり減点。思ったことを列挙してみる。
まず、情景描写が少ないため、場面が絵として浮かばない。そのせいか、登場人物がいつどこにいるのかを読み逃してしまい、戸惑うことが何度もあった。たとえば、ウェクスフォードが急に家にいるように受け取ってしまったりする。ウェクスフォードについても、思考は描かれるが、感情はあまり描かれないので、キャラクターが立ってこない。捜査についても、物的証拠を検討することは少なく、関係者の状況や関係性を探るだけに終始している印象だ。そのため、犯人の特定も根拠薄弱に感じる。例えば、途中の家宅捜索も根拠薄弱で、それは「ウェクスフォードもダメ出しされるでしょ」と思う。発想の飛躍もあまりないので、ミステリ的カタルシスを感じない。
「ロウフィールド館の惨劇」につづき、今回もあまり好みに合わなかったので、これはもうレンデルは読まないかな。

No.323 7点 法月綸太郎の不覚- 法月綸太郎 2026/04/29 18:09
久しぶりの法月綸太郎の短編集。安定した面白さだ。
事件の進行をリアルタイムに追うのではなく、法月親子の会話などを通して事件の全体像がまとめて質疑されるので、短い紙幅の中でもかなり複雑な事件の構図が語られる。そのかわりキャラ立ちに割かれる記述は少ないので、キャラ読みはまったくできないが、謎と考察については極めて密度が濃く、それを期待するならば実に楽しめる。
ただ、短編集全体でみると、本人があとがきで書いているように、「思考のトラック」が狭くなっているのは、少し残念なところ。また、どれも複雑な構図を切り替える話なので、法月短編の代表作「都市伝説パズル」ように、“切れ味”によって長く記憶に残るタイプではない。(複雑すぎて忘れてしまう)
そのため、「新冒険」、「功績」のような”文句なしの好短編集”というわけにはいかないかな。
各短編の寸感。
「心理的瑕疵あり」 かなり変わった手がかりから、風変わりな構図を導き出す。あとがきによると、「犯人当てとして書かれて、当てた人がいた」とのことたが、当てる人もすごいな。
「被疑者死亡により」 この構図の切り替えには、かなり意表をつかれた。本集のベスト。
「次はあんたの番だよ」 ホラーテイストが法月作品ではめずらしい。この構図の切り替えも好み。
「平行線は交わらない」 綸太郎が、事件の考察の配信を検討するのは、ちょっと新鮮。展開は好みだが、動機は強引な気がする。

No.322 5点 それでも旅に出るカフェ- 近藤史恵 2026/04/19 19:51
まずは、本作はミステリではない。
前作と変わらないのは「”日本ではあまり知られていない世界のお菓子”を各話でフィーチャーしつつ、カフェの女性オーナーと主人公の交流を軸にしている」ところだが、日常の謎の要素がなくなり、人情噺となっている。ミステリではなくなってしまった。
するすると読めるが、人情噺の点でも、前作のほうがよかったな。また、物語に関係する海外の街についても『たまごの旅人』と重なる部分があり、少し残念。
続編があれば読むと思うが、もうミステリには戻らないな、きっと。

No.321 5点 ロウフィールド館の惨劇- ルース・レンデル 2026/04/19 19:22
昔、学生時代に読んだ。その頃の私は「謎と解決」以外に興味がなかったので、どうなるかが冒頭に明かされている本作はつまらなかった。
いまは謎解き以外の要素も楽しめるようになってきたので、今読むと、自分がどのように感じるのか興味があり、再読してみたのだが、ううん、やっぱりいまひとつだった。
なにが駄目だったのか自己分析してみると、冷静な三人称他視点の書き方が合わなかったのだと思う。現実感を増すために意図的に採用したのだと思うが、ルポタージュに近づけた文体なのだろう。これがどこかのれなかった。
終盤の捜査パートも、それまでと違いすぎて、とってつけたよう。
当時、評判になったのは、冒頭の衝撃からだろうが、そこにはやっぱりインパクトを感じるが、それ以外は刺さらなかった。

No.320 2点 A先生の名推理- 津島誠司 2026/04/07 03:03
今年になって2つも投稿があったので、我慢ができずに投稿だぁ。他書評に「一般に評価が非常に低いか、忘れられている作品」とあるように、低い評価の感想もぶち込みますよ。(これが一般の評価だよね? そうだよね?)
本作のどこが受け付けないかというと……。
・冒頭にあわらわれる事象を、登場人物たちが、なんの改めもなく「不可解だ」といいだす。
・その事象を「不可解」とするならば、最低限「こういうことではない」と確認する必要があるのではないか、と考えると、真相がまさに「こういうこと」
・もしくは、物理的にありえない「こういうこと」が真相という気か、と考えると、真相がまさに「こういうこと」
というわけで、悪い謎解きミステリの典型というのが私の評価。謎解きミステリは、「謎と解決」さえ整えれば一応成立するので、もっとも簡単に作れる小説だと思うのだけど、だからこそ「謎と解決」に対する評価はシビアであるべき。私の評価軸では、本作の「謎と解決」は文句なしに最低ラインです。
他書評に「ナンセンス小説」の評があるけど、そうなのか? そう見れたら楽しめるのか? そういう視点はなかったけど、うーん……私にはどうしても見直せないなぁ。
そういえば、収録作の「叫ぶ夜行怪人」は、「ミステリ-の愉しみ (第5巻)、奇想の復活」で、島田荘司からサンプルとして作家たちに配られた作品だった記憶がある。「奇想の復活」は、「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」、「どんどん橋、落ちた」、「重ねて二つ」、「バベルの塔の犯罪」などの初出でもあって、思い出すといい選集だったなぁ。

No.319 5点 トネイロ会の非殺人事件- 小川一水 2026/04/05 23:36
小川一水のミステリ系作品。でも、そこはSFを主戦場とする小川一水だけあって、SF的な味付けがある作品がおおい。どれもなかなかよくできているが、あまり琴線には触れなかった。
「星風よ、淀みに吹け」
個性的なSF的な舞台設定と、その設定だからできる仕掛けが凝っている。キャラの書き込みがもっとあれば面白かったかも。仕掛けだけが記憶に残る印象。
「くばり神の紀」
ある設定を導入しているのだか、そこから展開される説明は、やっぱり面白い。小川一水は、こういう「社会の成り立ち」の説明はお手の物ですね。ベストを選ぶなら本作。
「トネイロ会の非殺人事件」
状況設定は意表をついていて面白いが、いろいろ説得力がない。設定から必然的に登場人物もおおくなるのに、あまりページ数がないので、ひとりひとりのキャラ立ちに紙幅も使えず、群像劇として立ち上がってこないので、いまひとつ。解説に「良質な舞台劇のよう」とあったが、たしかに舞台にしたら面白くなるかも。説得力のなさは、役者の演技力があれば押し切れるし、キャラ立ちの弱さも役者の個性で補完できる。舞台化したら見てみたいな。

No.318 5点 教室が、ひとりになるまで- 浅倉秋成 2026/04/05 23:19
期待していたものと読み心地が違った。「伏線」が惹句として喧伝されていたので、謎と反転を期待していたが、読んでいて思い出したのは「ジョジョ」だった。”謎の能力をもつ敵と対峙し、敵の能力を見破ることで敵を撃破する”と書けば、ほら、本作と「ジョジョ」の両方にぴたりと嵌る。(と思ったら、解説でも言及されていいた。そりゃそうだよね)
「ジョジョ」の面白い作みたいに、対決の流れで細かな伏線と反転はあるが、なにか味わいが違うんだよなぁ。大きな構図の反転といったものでないからかな。
ミステリ的興趣以外では「素敵なクラス」での青春物だが、描かれる負の感情の部分が、身もフタもないという感じで、ここは私の好みでなかった。

No.317 5点 混戦- ディック・フランシス 2026/04/05 23:14
航空機のパイロットが主人公の作品。
よいシーンは、中盤の航空機のトラブルのシーン。ここは緊迫感がありハラハラさせて、フランシス作の中でも上位にくる好シーンではないかと思う。ラストもかなりインパクトがあり、なかなかよい。
しかし、ストーリー展開はひねりがなく、予想がつくし、恋愛描写についても、脇キャラも立ってはいるが、主人公の気持ちはよくわからない。語り口は安定のフランシス節なので、もっと共感できる部分があれば、かなり面白かったのにと思う。

No.316 5点 消えゆく光- マイクル・ディブディン 2026/04/05 22:38
奥付によれば本作は1993年の作品で、黄金時代ミステリを踏まえつつ(作中にも黄金期作品からの引用がある)、ひねって作ったミステリ。
章立ては3部構成で、後半、いくつもの反転を仕込んでいる構成は好みなのだが、キャラ立ちがいまひとつなので、あまり楽しめなかった。
もっと面白くできそうなんだけどなぁ。なんか残念。

No.315 6点 ときどき私は嘘をつく- アリス・フィーニー 2026/04/05 22:29
デビュー作ということだが、やはりフィーニーは最初からフィーニーだったのだな。フィーニーを読むのは3作目だが、「彼は彼女の顔が見えない」にも書いた下記の特徴が、本作にもほぼ共通している。
「登場人物はかなりしぼられている。章立ては細かい。章の切り替え毎に視点人物を切り替え、そこに続きが気になるような「引き」がある。視点人物の語りには、”信頼できない語り手”だろうかと思わせるところがある」
相違点といえば、「視点人物の切り替え」が「時間軸の切り替え」に変わっているくらいだろう。
本作については、タイトルから「ときどき私は嘘をつく」と言っているように、真正面からの”信頼できない語り手”に取り組んでいる。それをふまえて、いくつもの意外な展開を途中に仕込んで飽きさせない。
既読2作と比較すると、「引き」の点で本作はやや劣る気がする。そこは、デビュー後に作家として成長していった結果なのだろう。だから、試しにフィーニーを読んでみようというのなら、本作はすすめないかな。他のフィーニー作を読んで楽しめたなら、本作も楽しめるはず。

No.314 7点 エイレングラフ弁護士の事件簿- ローレンス・ブロック 2026/04/05 21:39
同じ枠組みの中で、いかにバリエーションをつけるかという、よい見本。つづけて読んでも飽きさせない。
ブロックの語り口がうまいこともあるよなぁ。例えば最初の話は、登場人物2人の会話シーンが2つあるだけなのに、まったく退屈しない。
まあ、それでも、1つ1つの話はワン・アイディア・ストーリーなので、採点はここまで。もっと高得点を付ける人がいても納得だけど。

No.313 5点 さよならダイノサウルス- ロバート・J・ソウヤー 2026/03/29 23:38
「ゴールデン・フリース」がよかったから期待していたが、これはのれなかった。
読み終わって振り返ると、現実には存在しない設定が次々と投入される点が大きいのだろう。終盤、ある一つの要素によって複数の状況が説明されるものの、そもそも現実にはない設定がいくつも絡んでいるので、わざわざ作り込んだ印象が強く、「なるほど」と思える納得感がない。前振りもよわいので、唐突さも否めない。
ソウヤーは、どうもプロット構築があまり得意ではないのかもしれない。

No.312 5点 パスコーの幽霊- レジナルド・ヒル 2026/03/29 16:14
Wikiによると発行年は1979年で、ダルジール・シリーズの5作目と6作目の間に発表されている。かなり初期の短編集だ。
本作に収録されている「パスコーの幽霊」と「ダルジールの幽霊」は、別の短編集「ダルジール警視と四つの謎」にも収められていて、しかも表題作「パスコーの幽霊」がほぼ半分を占めている。そのため、「ダルジール警視と四つの謎」を既読だと、未読部分が少なくてやや物足りない。
上記2作以外の残る5作は、どれもよくまとまった短編なのだが、必読といったものではない。以下、5作の寸感を。
「屋根裏のトランク」 「屋根裏のトランクから、ある想像が浮かんで……」という話。短編の見本のような話。
「リオデジャネイロの講演」 タイトル通り、ある講演を最初から最後まで描くという、書き方に凝った話。なかなか皮肉な味わいはヒルらしい。
「女権拡張論者の災難」 1979年当時はまだ一般的でなかった「ストーカー」という存在が登場する。サスペンスたっぷりで5作ではベスト。
「スノウボール」 解説によるとスノウボールは、日本語と同じように「雪だるま式に増える」という比喩に使われるとのことで、本作ではいろんな出来事が次々と転がる。「転がった先に……」といった話。どこか落語的な味わいがある。
「救出経路」 これも書き方に凝った話。タイトルから想像できるように、あるところに捕まった人の話。乙一のいくつかの話を思い出した。

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ことはさん
ひとこと
ホームズ生まれの、クイーン育ち。
短編はホームズ、長編は初期クイーンが、私のスタンダードです。
好きな作家
クイーン、島田荘司、法月綸太郎
採点傾向
平均点: 6.14点   採点数: 331件
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