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ことはさん
平均点: 6.34点 書評数: 222件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.222 5点 ジョン、全裸連盟へ行く- 北原尚彦 2024/03/09 21:42
イギリスのテレビ・シリーズ『SHERLOCK(シャーロック)』を元にしたパスティーシュ。
『SHERLOCK(シャーロック)』を見てから読むと、じつに特徴を捉えている。まあ、でも、『SHERLOCK(シャーロック)』自体が映像向きのプロットづくりなので、その特徴を捉えて小説化しても、ほどほど以上にはならなかったかな。

No.221 6点 ホームズ連盟の事件簿- 北原尚彦 2024/03/09 21:32
ホームズの脇役をフィーチャーした、よくできた短編集。ミステリ的な謎と解決にはみるべきものはないが、キャラクターはじつに楽しい。まあ、でも、ホームズの元キャラを知らないと楽しめないかもしれない。私はホームズ好きなので、十分楽しめました。
作品でよかったのは、ハドスン夫人が主人公の「読書好きな泥棒」。ミステリ的プロットは、ホームズのあの作品を元にしたものだが、本のネタに変換したのが、やっぱり本好きには面白い。
他には、レストレードの家庭が描かれていたりするところが楽しくて、全体にストーリーに関わらない描写に冴えがある。

No.220 5点 最後の希望- エド・マクベイン 2024/02/18 16:03
いつものウォレン視点に加えて、犯行側視点、キャレラ視点なども組み込み、ホープ視点がかなりすくない。事件も87分署物にありそうなもので、ホープがゲストの87分署物とみても違和感がないほどだ。シリーズても下位かな。
ホープ・シリーズをひととおり読み終わったということで、全体を概観。
大きく3期に分けられる。1期は、1から5作。2期は、6から8作。3期は、9から13作。
1期は、女に弱い主人公が、女と関わりながら事件を調査する物語。ホープのひとり語りで、ホープの私生活にもウェイトがおかれている。70年代後半に書きはじめられているので、同時期のネオ・ハードボイルの流れを組んでいるのだと思う。(マット・スカダー・シリーズの始まりが同時期) 個人的にはこの時期が好き。
2期は、人称を3人称にし、主人公と距離をとったため、1期の個性が薄れて、あまり特徴のないミステリになったと思う。
3期は、主人公の周りにサポートメンバーを追加し、キャラクター小説のウェイトを増した。それぞれ語りかたを工夫してあるので、面白さはある。
全体を通して評価すれば、リーダビリティがどれも高く、一定の面白さが保証されているところが最良。けれど安定はしているのだが、突出している作品はほとんどない。例外が5作目「白雪と赤バラ」で、これだけは抜群の傑作。
まあ、昔の記憶をたよりに書いているので、今読んでどう思うかは、保証できないのだが。1期を読んだのは20年以上前ばかりだしなぁ。再読してみようかな。

No.219 5点 寄り目のテディベア- エド・マクベイン 2024/02/18 16:03
今回、ウォレン、トゥーツは別行動。87分署でつちかったモジュラー型のスタイル。
メインの事件は、導入はなかなか魅力的で、すこしずつ新たな情報が明かされ、飽きさせない。この辺の手管は、さすがマクベインだ。
しかし、最終的に明かされる真相は、途中である程度、予想がつき、インパクトはない。標準作というところ。
ホープに関しては、前作の怪我の状況にもいろいろ触れられ、シリーズをキャラで追っている人には楽しめる。
最後の1行は、気がきいていて、ニヤリとさせられた。

No.218 6点 小さな娘がいた- エド・マクベイン 2024/02/18 16:01
構成が凝っている。
事件の内容から、ホープが普通に調べていく展開だったら、それほど面白くなかっただろう。ホープが撃たれて、シリーズ・キャラが並行して調べていく構成だから面白くなったと思う。この辺の語り方(誰の視点で何を語るか)は、さすがマクベイン。熟練の技を感じる。
どちらが先に構想されたかはわからないで、この構成にしたことで、シリーズ・キャラの内面が語られることになり、その部分がとくによい。
まあ、いいところを先に書いたが、事件のほうは、人間関係が複雑で見通しが悪いし、偶然がおおいし、謎と解決という点では物足りない。

No.217 7点 黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集Ⅰゴシック編ー- エドガー・アラン・ポー 2024/02/12 02:00
新潮社のポー短編集「ミステリ編」を読んだ勢いで、同じ新潮社のポー短編集「ゴシック編」も読んでみた。
ホラー系は、好みの真ん中というわけではないが、それでも面白く読める。今読んでも、演出に凝ってるように感じるのがすごいな。
目次を見ると、きいたことのある作ばかりで、ポーから選ぶとすると、(別冊にしたミステリを除くと)これらになるよねという作品。実際、集英社の「黒猫 エドガー・アラン・ポー短篇集」の収録作と比べても、本編集6作の内、5作が重なっている。
重なっている5作を拾い読みして比べると、全体的に集英社版のほうが好み。ポーで最も好きな「群衆の人」が集英社版には入っているのもあわせて、集英社版が私のおすすめだな。
今訳で好きなところは、いままで多かった”赤死病”を、”赤き死”としている点かな。”黒死病”と対比するための”赤死病”だったのだろうけど、”赤き死”とするほうがイメージ喚起力があっていいよね。

No.216 5点 モルグ街の殺人・黄金虫-ポー短編集Ⅱミステリ編-- エドガー・アラン・ポー 2024/02/10 19:06
久しぶりにポーを読む。ポーほどの古典になると、個々の作品の評価は難しいので、評価は編集を主にしたもの。
「モルグ街の殺人」は、いくら評価しても足りない、ミステリの原点だなぁと思う。今読んでも、伏線や展開が現代の作と見劣りしないのは、すごいよなぁ。
「黄金虫」は、何度読んでも良さがわからん。つまらなくはないが、なぜこんなに評価が高いのか、わからない。
アマゾンの評などにもあるが、たしかに翻訳はよくないと思う。「群衆の人」は、本サイトにも登録されている集英社の「黒猫 エドガー・アラン・ポー短篇集」で読んだときは抜群によかったのに、今回はいまひとつ。読み比べてみると、やっぱり集英社版がいい。
ひとつ、本新潮社版で意味が読み取りずらかった部分を拾い出して比較すると、こんな感じ。
・新潮社
「格好のいい連中は枚挙にいとまがないが、しかしこのところ大都市を騒がせている腕利きの掏摸の一味だということは、たちどころにわかってしまった」
・集英社
「見たところ威勢のいい連中もたくさんいたが、これは大都会にきまって出没するハイカラ趣味の掏摸たちであると、すくぐにわかった」
全体に、こんな感じで差異があるので、「群衆の人」は、ぜひ集英社版で読んでほしい。

No.215 6点 透明人間の納屋- 島田荘司 2024/01/03 15:01
さすが島田荘司。謎の盛り上げは実によい。不可能興味が半端じゃない。しかし、解決はあっけないもので、すこし物足りない。
全体の語りも、視点人物の終盤の感慨はよい感じだが、色々な要素を詰め込んでいて、すこしゴタゴタしている。まあ、そのゴタゴタ感も、島田荘司の味なのだけれど。
「ミステリーランド」叢書としては、(このシリーズには多いけど)あまり子供向けではないよね。

No.214 6点 半席- 青山文平 2024/01/03 15:00
よくできている。時事の風俗描写と思われるものが伏線になったり、シリーズを通して登場するキャラの使い方もとてもよい。
ただ、短くて、事件の説明から、即、解決で、あっけない感じはある。また、動機の解明が中心で、その部分は納得感はあるものの、ミステリ的な反転/意外性は大きくない。似た作風として、泡坂妻夫の作品を思い浮かべたが、そちらのほうが反転に大きな意外性ある。
私の好みのど真ん中ではないので、あまり点数は高くないが、これが好みの人もいるに違いない。

No.213 6点 盤面の敵- エラリイ・クイーン 2024/01/03 14:56
ミステリ的仕掛けは、いまひとつに感じるが、たぶん、狙いが刺さっていないからだと思う。
本作の発表は1963年。有名映画のxxxは1960年で、xxxxの「xxxとxxxxx」は1957年。EQMMの編集も行うクイーンが、これらの作を知らないことは考えられないので、本作はこれらを踏まえて書かれているはずだ。だとすると、これらに似たあの反転の仕方が狙いでなく、別の部分が狙いなのだと思う。想像では、真犯人の立ち位置が狙いなのだと思うのだが、それは私にはあまり刺さらなかった。
とはいえ、刺さる人には刺さるのかもしれない。例えば、本作を読んで、少し情報を検索したのだが、スタージョンの日本語Wikiに、ウィリアム・L・デアンドリアが本作を好きだったことが書いてある。デアンドリアには刺さったのだ。「だからあの作か!」と思う。
また、シオドア・スタージョンが書いたと知って読むと、シオドア・スタージョンの作風が見え隠れして興味深い。これも、スタージョンの日本語Wikiの記述だが、法月綸太郎の評価として”「孤独な魂に送られてくるメッセージ」というスタージョン的なモチーフが利用されており”とあり、とても腑に落ちる。
細かい描写が逐一記述されるのも、スタージョンらしさだろう。例えば、ウォルトの動きで、”製氷皿2枚をとりあげ、台所の裏のポーチに出ると、皿を手摺りにのせ、ドアに鍵をかけ、また皿をとりあげて……”と、長々と記述している。
他には、タイトルは、邦題より原題の方がよいと思う。邦題は1つの意にしかとれないが、原題はあいまいで、いくつもの捉え方ができそうだ。結末を知って原題を読むと、「Other Side とはあれか?」と思うところがあるし、登場人物がそれぞれ抱えている秘密も Other Side にあたるともとれる。
いろいろな読みができる力作で、スタージョン好きには特に興味深く読めると思うが、普通のミステリ的カタルシスをもとめると、肩すかしかもしれない。
ああ、それと、ハヤカワ・ミステリ文庫版の扉裏には「リーに捧ぐ」とある。いやいや、いろいろな読みができる献辞です。

No.212 5点 幸運を招く男- レジナルド・ヒル 2023/12/31 01:44
イギリスのヒルによる、モジュラー型・私立探偵小説。
ヒルは、ダルジールものでもモジュラー型といえる作品がいくつかあるので、お手の物。とはいえ、ヒル作品の読みどころは、キャラクターとその掛け合いにあるので、その点では少し物足りなかった。
ダルジールものは、長年書き継いでいるだけあって、くっきりとキャラが立っていて、掛け合いも実に楽しいのだが、本作ではいまひとつだ。作風をコメディにふっているため、ちょっと毒が足りないせいかもしれない。
ただひとり、辛辣な若い女弁護士のブッチャーは、とても好みだった。機会があったら、別の作品を読むのもいいかな。とはいっても、翻訳されていないものもあって、5作中の3作しか訳されていないんだよね。

No.211 6点 サクラオト- 彩坂美月 2023/12/31 01:42
初出を参照すると、時間をあいて書かれている。そのせいか、後の作にいくほど描写がうまくなっている。特に第5話の導入はなめらかな語りで、かつ、緊迫感があり、実にいい。
しかし、個々の作品のプロットについては、強引さが感じられ、現実感のある作風との違和感があり、少しのれなかった。強引さのため、(最終話で自身で書いているくせに)「キャラクターと行動に齟齬があります」という状態になっている。
例えば3作目では、普通の人に感じられる視点人物が、いきなり探偵役をつとめるので、二重人格かと感じられるほどだ。やはり、ホームズ/ワトスン・システムはよくできているのだと、実感した。
全体の仕掛けも効果はいまひとつ。丁寧に伏線がはられているが、それでも納得感が足りない。
文章表現は、よいと思ったので、作品はチェックしていこうと思う。ひょっとしたら、仕掛けと表現がかっちりはまった「これは好み」という作品を書いてくれるかもという期待はある。

No.210 2点 男は旗- 稲見一良 2023/12/03 13:11
最初の章は、かなり意外な視点人物で読み応えがあったが、すすむにつれて展開/描写がゆるくなり、迫真性がなくなる。それに替わって、SFやファンタジーのセンス・オブ・ワンダー感があるわけではなく、荒唐無稽な展開がだらだらすすんでいく感じで、うん、申し訳ない。私にはまったく、あいませんでした。

No.209 6点 女の顔を覆え- P・D・ジェイムズ 2023/11/25 00:56
最近、ジェイムズの後期作をつづけて読んだので、初期作はどう感じるかなと思って読んでみた。
(再読だったのだが、いや、完全に忘れていた。犯人すら思い出さない。初めて読む状態でした)
まず、後期作と比べると、やはり、読みづらい。読みづらさの原因は、第一に、3人称多視点だからと感じた。Aは思った、Bは思った、Cは思ったと、普通に続くところが多いので、見通しが悪くなっている。第二としては、状況の提示に強弱がないことだろう。雰囲気をつくる情景描写も、重要なデータ提示も、同じトーンで書かれるので、なかなか咀嚼に時間がかかってしまう。
そのため、読む時間は、結構かかってしまった。
(これは後期作も同じだが)ダルグリッシュのキャラが名探偵でない点も、読むスピードにドライブがかからない点だろう。ダルグリッシュからは、名探偵にあるひらめきや見事な着想がまったく出てこないので、名探偵というよりは有能な刑事だ。キャラクターの立ち位置で近いと感じるのは、マルティン・ベックかな?
他に、舞台設定がお屋敷なので、後期の社会的広がりと比べると地味な点も、後期作に軍配があがる。
途中、「やはり後期作の方が全然好きだな」と思ったが、解決シーンでかなり盛り返した。
被害者のキャラクターに見事に焦点があたる構成は見事だし、完全に作者の誤導に引っかかってしまったので、解決にはびっくりさせられた。1章のあれや、現場の状況から、真相を完全に眩まされてしまった。
ミステリ的な意外性ではかなり高得点だが、でも、やはり総合的には、後期作が好きかな。

No.208 7点 殺人展示室- P・D・ジェイムズ 2023/11/13 00:38
出だしの第1部では、例によって、事件発生前の関係者が、だいたいひとり1章かけて、じっくりと描かれる。濃密な描写でひとりずつキャラを立てていくのは、いつものジェイムズ節だ。
事件発生後の第2部では、事件関係者のひとりひとりを、ダルグリッシュ・チームのメンバーが訪ね歩く。ここは私立探偵小説のようで、なかなか楽しい。関係者が一堂に会する設定ではないので、ロンドンの街を訪ね歩くのだが、その街がそれぞれ個性があり、ロンドン探訪記の趣なのもよい。
ただ、前作までより、いくつかの点で、描写に緊密感がなくなっていると感じた。(ジェイムズの濃密な描写が苦手な人には、かえって読みやすいかもしれないが)
1つは、関係者を訪ね歩くときの日時が、明確でないこと。何人もの元を訪ねるのだが、同一日なのか、翌日なのか、昼か夜か、曖昧なところがおおい。また、登場人物の背景描写も、いつもより薄い。例えば、ベントン・スミスは今回が初登場だが、初登場のチーム・メンバーならば、いつもなら、どんな経歴かを数ページにわたって書いていたのに、今回はない。外見描写くらいだ。(まあ、ここは、描写が普通の作家並みになっただけだが)
今回、後半になって、ミステリ的興趣が強くなって、面白かった。2つめの事件の絡み方がジェイムズらしくなく劇的だし、ほぼ最終章で明かされる事件の経過には、犯人特定のロジックがさらりと書かれている。それも、クイーンならば、「なぜ逃げなかったのでしょうか?」と劇的にプレゼンテーションしそうなもので、ここは、かなり好み。
他、著者82歳のときの作品とのことだが、背景のクラブの話はそんな年齢を感じさせないもので、なんかすごいなと思う。しかも、これが「特別班に要請がきた背景と絡む」というのが終盤で明かされるのは、ちょっとした皮肉がきいていて、楽しい。
それにしても、思ったより、ダルグリッシュのプライベートの話がなかった。ほんの数シーンしかないぞ。もっとがっつりあることを期待していたのに。他レギュラー・メンバーについても、ミスキン警部も含めて、見せ場は少なめ。心理描写も、いつもより少ないのは、ちょっと残念。そういえば、「死の味」でいい味を出していたコンラッド・アクロイドが本作には顔を出すのは、ファン向けのサービスでしょう。

No.207 6点 神学校の死- P・D・ジェイムズ 2023/11/13 00:14
ここ数作、いつも書いているが、ジェイムズ作は作を追うごとに読みやすくなっている。章立ても細かく、ポケミスで10ページを超える章があまりないくらいで、もはや、重厚という感じはなく、描写が濃いというレベルだ。これなら、アンドリュー・ヴァクスのほうが、よほど読みづらいぞ。
他に、ダルグリッシュ視点の章がかなりおおくなっているのも、読みやすい要因だろう。6割ほどがダルグリッシュ視点ではないか?
ダルグリッシュ以外の視点の章も、捜査側視点の章と、事件関係者視点の章が半々で、ジェイムズ作品としては驚くほど捜査側視点で物語がすすむ。いままでは、事件の捜査と、関係者の群像劇が、半々といった作品が多かったが、本作は、すっかり警察小説の味わいだ。
事件関係者視点の章でも、いままでどおりに人物がみっちりと描写はされるのだが、(いままでのように事件とあまり関係ない心理的葛藤ではなく)事件をふまえての心理描写なので、ミステリ的興趣が濃い。捜査の展開としても、後半のある事実が判明するところは「おっ!」と思ったし、全体としてそうとう面白い警察小説になっている。
途中までは、「これは、ジェイムズ作でいちばん好きかも」と思ったが、最後がだめだった。警察小説だとしても、これはミステリとしての興趣がなさすぎる。これで少し減点。
他に特徴をあげると、本作ではダルグリッシュの視点がおおいだけでなく、ダルグリッシュについても、今までになく筆が費やされている。いくつか上げてみると、ダルグリッシュの自宅が紹介されたり、舞台がダルグリッシュが学生時代を過ごした場所だったり、そのためダルグリッシュの過去の回想シーンが(!)あったり、ダルグリッシュの詩があったりする。前作をふまえてのダルグリッシュの思いや、ダルグリッシュがチームのメンバーに思いをはせたりなど、心理描写もおおい。
本作以降の情報にふれてみても、本作以降もダルグリッシュの私生活は重要要素のようで、きっと、作者が80歳をむかえて、ダルグリッシュについて書きたくなったのだろうと感じた。
しかし、それにしても、本作のラストのダルグリッシュの行動は、唐突感がおおきい。交流シーンは、ほんの数回しかないぞ。
ひるがえって、ミスキン警部は、残念ながら出番が少ない。それでも、エピローグ前のメイン・ストーリーの最終シーンで見せ場があるのは、ファン向けのサービスかな。

No.206 5点 婚活中毒- 秋吉理香子 2023/10/21 19:04
婚活を絡めて、きっちりキャラクターをたてて、最後にはきれいに反転を決める。よくできた短編集。なのに、何故かあまり刺さらなかった。
ということで、刺さらなかった要因を自己分析してみた。
まず、キャラクターについて刺さらなかったのは、作品をコメディ・タッチにしようとして、キャラクターも少し戯画的になっているためだったと思う。「日常の謎」には好きな作品も多いが、私の場合は、それはキャラクターに共感できてこそだが、本作は戯画的になっているので、共感というより、一歩引いて眺めるようになっていたからだと思う。
反転については、新本格以降の「どんでん返し」というより、ヘンリー・スレッサー風の「ラストを気の利いた反転で締める」とというものだったからだと思う。ヘンリー・スレッサー風は、そんなに好きではないんですよね。
(もう、ヘンリー・スレッサーがわかるのも、年寄しかいませんね。違いをもう少し補足すると、新本格以降の「どんでん返し」は、伏線を丁寧に張り「これしかない」感を強く出し、物語全体のイメージを変更するものという感じ。ヘンリー・スレッサー風といったのは、そこまで伏線が強くなく、物語全体のイメージは変わるほどではないが、「あ、そういうことか」と物語がきれいに収束するといったところ)
私には刺さらなかったが、キャラクター/ストーリーとも、刺さる人には刺さると思うので、気になる人は読んでください。あと、リーダビリティは抜群です。

No.205 5点 シャーロック・ホームズの蒐集- 北原尚彦 2023/10/21 19:02
ホームズ・パスティーシュ。
よくできているんだけど、オリジナルの「冒険」から「帰還」までの話とは、何かが違う。なんだろう。テンポ? 会話?
「最後の挨拶」、「事件簿」と比べると、違和感はないかな。
作中では「詮索好きな老婦人の事件」がよかった。

No.204 5点 三つ首塔- 横溝正史 2023/10/15 20:38
まあ、まずは扇情的。事件がつぎづきと起こり、ひとつひとつが派手なので、細かいことを気にしないで読んでいるぶんには飽きさせない。乱歩のジュブナイルを、さらに扇情的にしたような読み心地。
しかし、ちょっと考えると、犯人が優秀すぎ、もしくは、都合が良すぎで、「これ、どうなの?」と感じてしまうので、全体を通しての構築感はない。横溝正史の有名作は、とても構築感があるので、ここはかなり違うところ。
また、トリックや意外性などもあまりないので、有名作と比べるとかなり評価が下がる。
(いま本サイトをみると、評価数の多い6作が、評価順でも上位6作で(評価数が少ないものは対象外としてだが)、この6作が代表作というのが世評なのだな。納得)
多分一番版が新しいと思われる角川文庫版で読んだが、本作品の巻末には、よくある「不当・不適切と思われる語句や表現が……」というのがあるが、語句や表現だけでなく、ストーリー展開やキャラクタなど、いまの新作では出版は駄目だろうと思われる部分も多い。ヒロインにあたる語り手がxxされるのなんて、ちょっとまずいよなあ。
なお、巻末の文は、「……一部を編集部の責任において改めるにとどめました」となっているので、手直しが入っているようだ。どれくらいの修正量かはわからないが、気になる方は、古い版にあたったほうがいいかも。

No.203 5点 赤毛のストレーガ- アンドリュー・ヴァクス 2023/10/08 00:08
プロットは極めてシンプル。普通の書き込みなら、200ページにも満たないんじゃないかな。ここまで長いのは、すべてのシーンをじっくりと書き込み、さらにプロットになくてもいいエピソードや日常描写も、たくさん書き込んでいるからだ。
本作を楽しむには、この濃密な描写を楽しめる必要があるが、私はよい読者ではなかったな。まあ、それだけではなく、読むタイミングも良くなかったなと思う。
原作が1987年に書かれているためだろう。作中の「強大な悪」と「虐げられる人」という社会構図が、かなりシンプル。同時代ならば、この濃密な描写から強い迫真性を感じたのかもしれないが、現代のもっと複雑な社会構図から照らしてみると、どこか現実感のない異世界のようにも思えるのだ。もっと早く読むべきだったな。

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ことはさん
ひとこと
ホームズ生まれの、クイーン育ち。
短編はホームズ、長編は初期クイーンが、私のスタンダードです。
好きな作家
クイーン、島田荘司、法月綸太郎
採点傾向
平均点: 6.34点   採点数: 222件
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