皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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ことはさん |
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| 平均点: 6.18点 | 書評数: 313件 |
| No.313 | 5点 | さよならダイノサウルス- ロバート・J・ソウヤー | 2026/03/29 23:38 |
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| 「ゴールデン・フリース」がよかったから期待していたが、これはのれなかった。
読み終わって振り返ると、現実には存在しない設定が次々と投入される点が大きいのだろう。終盤、ある一つの要素によって複数の状況が説明されるものの、そもそも現実にはない設定がいくつも絡んでいるので、わざわざ作り込んだ印象が強く、「なるほど」と思える納得感がない。前振りもよわいので、唐突さも否めない。 ソウヤーは、どうもプロット構築があまり得意ではないのかもしれない。 |
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| No.312 | 5点 | パスコーの幽霊- レジナルド・ヒル | 2026/03/29 16:14 |
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| Wikiによると発行年は1979年で、ダルジール・シリーズの5作目と6作目の間に発表されている。かなり初期の短編集だ。
本作に収録されている「パスコーの幽霊」と「ダルジールの幽霊」は、別の短編集「ダルジール警視と四つの謎」にも収められていて、しかも表題作「パスコーの幽霊」がほぼ半分を占めている。そのため、「ダルジール警視と四つの謎」を既読だと、未読部分が少なくてやや物足りない。 上記2作以外の残る5作は、どれもよくまとまった短編なのだが、必読といったものではない。以下、5作の寸感を。 「屋根裏のトランク」 「屋根裏のトランクから、ある想像が浮かんで……」という話。短編の見本のような話。 「リオデジャネイロの講演」 タイトル通り、ある講演を最初から最後まで描くという、書き方に凝った話。なかなか皮肉な味わいはヒルらしい。 「女権拡張論者の災難」 1979年当時はまだ一般的でなかった「ストーカー」という存在が登場する。サスペンスたっぷりで5作ではベスト。 「スノウボール」 解説によるとスノウボールは、日本語と同じように「雪だるま式に増える」という比喩に使われるとのことで、本作ではいろんな出来事が次々と転がる。「転がった先に……」といった話。どこか落語的な味わいがある。 「救出経路」 これも書き方に凝った話。タイトルから想像できるように、あるところに捕まった人の話。乙一のいくつかの話を思い出した。 |
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| No.311 | 5点 | ひらけ!勝鬨橋- 島田荘司 | 2026/03/29 15:45 |
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| 「屋上の道化たち」を読んだ勢いで、未読だった島田荘司のユーモア物を、つづけて読んでみることにした。
シチュエーション・コメディのつもりなのだろうが、老人の描き方がテンプレすぎるし、その状況も悲壮感が漂い、あまりコミカルに感じられない。悪役も型通りで魅力はないし、ぶつかる困難も目をひくものではないので、おすすめ点があまりない。 とはいえ、リーダビリティは高いので、移動時間などの空き時間にちょっと読む分には適当かな。そういう意味では、当時のノベルス向けとしては、需要を捉えた作品だったと思う。 あとは、いくつか気になった点を書いておこう。悪役が型通りだから気にならないが、終盤の主人公たちはやり過ぎ。悪役よりひどいことをしていないか? 島田荘司の作品中で、若い女性キャラが会話の語尾を伸ばすのは、本作が最初かもしれない。こんな初期からこの文体を使っていたのは、ちょっと意外だった。 |
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| No.310 | 5点 | 屋上の道化たち- 島田荘司 | 2026/03/29 15:23 |
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| 本作、銀行のシーンはシチュエーション・コメディのようにも見えるし、会話のテンポは漫才のようだ。明らかにコメディ・タッチを狙っているので、タイトルは、シンプルな「屋上」よりも、元の「屋上の道化たち」のほうが、どこかとぼけた感じがあってふさわしいと思う。
前半の複数視点で物語を進める構成は、場面の切り方や順番が実に巧みで、会話がやや冗長に感じられる部分があっても、「いったい何が起きているのか?」が気になり、グイグイ読ませる。流石、島田荘司。 後半、御手洗が関わってきて、あるものが出てくるところなども、少し不条理感があり、なかなかなよいのだが、ああ、駄目なのは真相。偶然の重なり合いだけなら私は許容できるが、「物理的に完全に無理なのはどうなの?」と思う。 真相に期待せず、島田荘司のやや独特なユーモアと、いろいろなものを入れ込んだような島田節のプロットを楽しむのが、吉でしょう。 |
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| No.309 | 5点 | 消滅世界- 村田沙耶香 | 2026/03/12 01:48 |
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| 村田沙耶香を読むのは3作目だが、共通した味わいがある。それは、”現実と少し違う世界を描き、「この世界もありなのかも?」と感じさせ、現実が代替できる可能性を示して、価値観を揺さぶる”ことだ。
今回は、真正面から性関係をとりあげ、恋人、夫婦、親子のあり方を問いかける。いま「そういうものだ」と思っている関係性が、ただの思いこみなのではないかと考えさせる。現実の皮を一枚だけ剥いだような、不穏で、でもどこか魅力的な世界観。 いやいや、まだまだ他の作品を読む気にさせてくれるなあ。近作はベストセラーにもなってるし、読んでみなくては。 ジャンルとしては、SF or ファンタジー or ホラーかな。ミステリとはいえない。ただ、早川の異色作家短編集風の味わいはあるので、その手の作が好きならば、楽しめるかも。 そういえば、本作は映画化したのだった。配信で見れたら、見てみよう。 |
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| No.308 | 9点 | 黄色い部屋の謎- ガストン・ルルー | 2026/03/12 00:03 |
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| 本作は10代の頃に読んで、滅法面白かった。当時はまだミステリ初心者だったので、この手のトリックの知識がなく、すっかり騙された。特に第2の事件は完全にミスリードされて、唖然とした。幸せな時代だった。
再読してみて驚いたのは、第2の事件をミスリードされた理由が、主人公の事件解明ですっかり説明されていることだった。これは、作者が「こうやって読者を騙そうとしましたよ」と、手の内を説明していると読めて、なかなか面白かった。 いや、やっぱり本作はいいなぁ。少年時代のワクワク感を思い出させてくれる。評価は、思い出補正抜きで、この点数。 「いやいや、いま読めば、それほどではないでしょ」という意見があるのは理解できるが、私の評価基準は「先行作に評価をふりかえる」なので、先見性を高く評価したい。 本作の発表は1907年。同時代の作を上げると、「空き家の冒険」でホームズが復活したのが1903年、ソーンダイクの初長編「赤い母指紋」が1907年、「ブラウン神父の童心」が1911年など。短編全盛の時代に、ここまで構築感のある長編をつくった(後続の作家が参考にしたであろう)ことををまず評価したい。長編を通して、不可能性を押し出してストーリーをドライブしたのも、本作が最初期の例だろう。 また、手がかりの提示が巧みで、黄金時代を先取りしている点も評価ポイントだ。黄金時代の作品は、絶対「本作のやり方を学習した結果」だと思う。具体的には、創元推理文庫「黒衣婦人の香り」の解説がじつによく説明しているので、多くの人にぜひ読んでほしい。 文章表現や展開が古くさいというのは、発表年を考えると当然で、マイナスポイントにはならない。(そこが駄目だという人は、そもそもこの時代のミステリ全部が駄目だと思うのだが、いろいろなところで、けっこうその辺が批判的に語られていて、本作ファンとしては残念だ) まあでも、現代のミステリをたくさん読んだ人が「いま驚けるか?」と言われれば、そんなことはなく、世評が低くなってしまうのは仕方ないよな。でもでも、こっちが先で、これを参考にして今のミステリがあるんだよと、強く強く推しておきたい。 |
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| No.307 | 7点 | 靴に棲む老婆- エラリイ・クイーン | 2026/01/19 01:55 |
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| 新訳版で再読。
なかなか良いところと悪いところが混在した読後感だった。 まず悪いところから書くと、世界設定になじめなかった。靴の屋敷や、すこしおかしな3兄弟の存在にはリアリティが乏しく、かといって別世界として十分に構築されているところまて達していないので、なんとも中途半端だ。さらに最初の事件では、「xxと知らなかったとしても、これはその場で逮捕でしょ?」という違和感がぬぐえず、半ばまでは作品に入れなった。 かわって良いところは、後半の手がかり提示と解決の展開で、何度もひねりがあり、かなり盛り上がる。銃を撃ったなどの、犯人の行動のいくつかは釈然としないが、それを差し引いても、クイーン作品の解決の展開で、上位にくる面白さだ。 採点は、良いところと悪いところ鑑みてこの点で。 あと、世界設定の違和感から、他のクイーン作品はどうだったかを考えてみたら、ちょっと面白いなと感じた。 クイーンはデビュー作から「劇場」を事件の舞台に選ぶなど、設定には結構凝る方だか、全作を概観すると、その舞台設定はいくつかの方向に分類できそうだ。 まず最も多いのは、ニューヨークを中心とした都市型の舞台だ。大勢が出入りする「劇場」「百貨店」「病院」などを舞台にした作品や、都市内部を移動しながら展開する物語がこれに含まれる。次に、地方都市を舞台にした作品群がある。「ライツヴィル」や「ハリウッド」など、ニューヨークよりも人間関係が濃密な環境を背景に物語がすすむタイプだ。そして、これらをより閉じた空間に収めた「クローズド・サークル」型の舞台も少なくない。特定の屋敷などを中心に展開するもので、「シャム」「スペイン」「最後の一撃」など、挙げてみると直感的な印象よりも多い。そして最後に、異世界的な設定に踏み込んだ作品がある。「帝王死す」や「第八の日」がその典型だ。 本作は、特定の屋敷設定と異世界設定のグラデーションで、だからなのか、世界設定を受け入れるところがスムーズにいかなかったのかもしれない。 |
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| No.306 | 5点 | シェイクスピアの誘拐- 笹沢左保 | 2026/01/04 00:13 |
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| リーダビリティは安定していて飽きさせない。ひとつひとつがすぐに読めるため、すきま時間に読むには最適だが、読み応えに欠けるぶん印象に残りにくい。有栖川セレクションでは最初の短編集だが、もしこれが最優秀作という位置づけなら、以降を積極的に読み進めたいとはあまり思えないかな。 | |||
| No.305 | 5点 | スミルノ博士の日記- S・A・ドゥーセ | 2026/01/04 00:12 |
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| もちろん、あの有名作との関連で読んでみた。
あの趣向は単なるネタの一つ程度だろうと想像していたのだが、実際には作品の根幹としてしっかり組み込まれていた。これは先行作として大いに評価したい。 ただ、1917年の作品にしては雰囲気がホームズ時代の諸作に近く、黄金時代の作品と比べるとやや古めかしく、物語運びもどこか行き当たりばったりに見える部分がある。現在に単独で読むには、魅力にかけるかなと感じる。 |
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| No.304 | 8点 | ゴールデン・フリース- ロバート・J・ソウヤー | 2026/01/04 00:09 |
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| たくさん物語を読んでくると、新鮮に感じる作品はなかなか出会えないものだが、これは実に新鮮だった。
恒星間宇宙船内で、船を制御するAIが殺人を犯す。しかも、そのAI自身が語り手という、かなり攻めた設定である。この「圧倒的に犯人が有利な倒叙ミステリ」という状況で、「探偵役がどうやって犯人を指摘していくのか?」という点が強く興味を引く。 さらに、語り手である犯人の“動機”が語られず、それ自体が物語を推進する謎として機能しているのも良い。作中で提示される「放射能」「燃料」「時計」といった疑問が、最後にはきれいに回収される点も見事だ。 終盤にはSF的なセンス・オブ・ワンダーも感じさせてくれ、SF作品としても魅力的だ。 「星を継ぐもの」と同じように版を重ねてもおかしくないSFミステリなのに、絶版とは本当にもったいない。激推しです。 |
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| No.303 | 6点 | 空白の起点- 笹沢左保 | 2025/11/24 00:02 |
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| 「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズで読んだ。
事件が明確になって以降、過去を手繰る筋立ては私立探偵小説のようだ。展開は堅実だが興味を引かれるものなので、一気読み。なかなか面白い。登場人物が少なく、必然的に犯人候補も少ないので、犯人は推定できる。そうすると、逆算からトリックも推定がつくのが、ちょっと弱みかな。 疑問だったのが、視点人物が冒頭だけ違うこと。特に効果があるようにも感じないのに、これはなぜだったのだろう。 |
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| No.302 | 5点 | Iの悲劇- 米澤穂信 | 2025/11/23 21:59 |
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| 連作全体を貫くテーマとして「地方自治の問題」が設定され、各短編にはいつものように謎と解決があしらわれている。謎と解決の部分は、相変わらずの米澤節で、やや小粒な印象だ。全体を通してのミステリ的趣向もあるが、あまりインパクトは感じなかった。
私は、米澤の「青春もの」以外は、どうも琴線にひびかないので、うん、まあ、この点で。まあ、完全に好みの問題だが。 でも、描写や展開がよいので、読みやすく、一気読み。小説としての質は高く、テーマ性と構成の確かさは十分に感じられる作品だった。 |
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| No.301 | 5点 | マニアックス- 山口雅也 | 2025/11/23 18:58 |
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| 1作目の「孤独の島の島」は、設定がよい。海岸に流れ着く物を収集するというのは、なにかロマンを感じるなぁ。
それ以外の作品も、山口雅也らしく収集癖や執着が大なり小なりモチーフになっているが、いかんせん構成が小話的で、あっけない。 山口雅也の作風が好きというのでなければ、あまり刺さらないんじゃないかな。 |
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| No.300 | 6点 | 風よ僕らの前髪を- 弥生小夜子 | 2025/11/23 18:44 |
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| 事前情報からは「学生が主人公の青春物」を想像していたが、全然違った。間違いなく、私立探偵小説の作りだ。
視点人物は20代半ばで、親戚の青年の過去を訪ね歩く。捜査の中心となるのはその青年の高校時代なので、青春物の雰囲気は少しあるが、それ以上に家庭の悲劇の色合いが濃い。捜査を通じて浮かび上がる全体像は、複雑に絡み合う事件と人間関係で構成され、ロス・マクドナルド作品を思わせる読み心地がある。 惜しむらくは、捜査が順調すぎて、色々なことが次々とわかりすぎるきらいがある。また、証言だけに頼り過ぎで、読んでいて虚偽である可能性を拭えないのも気になった。 いずれにせよ、プロモーションがよくなくて、ロスマク好きな人が好みそうなのに、そういう人には手に取ってもらえていないのではないかと思う。 あと、本作はハードカーバーで読んだが、カバーを外した装幀は作中のノートを模しており、なかなかセンスがよい。 |
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| No.299 | 7点 | 殺人出産- 村田沙耶香 | 2025/11/23 17:58 |
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| 「コンビニ人間」がよかったので、他の作も読んでみた。「コンビニ人間」でも、なかなか独特の世界観があったが、本作も個性的。いいなぁ、村田沙耶香。
表題作「殺人出産」はすっかりホラー。角川ホラー文庫に入っていても全然違和感がない。「10人出産すれば1人を殺すことが許される」という異様な世界設定が、完全に日常となっていると感じさせるのが見事だ。村田沙耶香はコンスタントに読もうと思わせる出来だった。 2作目「トリプル」は、性的な異世界設定で、共感できるところが全然なく、私にはとらえどころがなかった。 3作目「清潔な結婚」も、性的な異世界設定でだが、これはすこしわかる気がして楽しめた。短い小品なので破綻もなく、すっきり読める。 4作目「余命」は掌編。これも特殊設定で、設定だけなら既視感がある。しかし、この設定をこの短さで短編集の締めにすることに、センスの良さを感じる。 |
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| No.298 | 4点 | 緋の堕胎- 戸川昌子 | 2025/10/20 00:03 |
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| これは好みに合わなかった。
ちくま文庫で読んだが、帯に官能ミステリとあり、その言葉どおり官能描写が中心で、ミステリとしての興趣はほとんど感じられなかった。 官能描写も、私にはかなりグロテスクに映り、どうも馴染めなかった。ただ、作風には強い個性があり、これを好む読者もいるだろうと思う。 収録作の中では「塩の羊」がよかった。これも、物語上なくても成立する性的な設定があるので、そこが好みでないのだが、それ以外は、モン・サン・ミッシェルをモデルにした舞台や、明かされる構図などは、惹かれるものがあった。 |
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| No.297 | 7点 | 彼は彼女の顔が見えない- アリス・フィーニー | 2025/10/19 17:48 |
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| アリス・フィーニーは「彼と彼女の衝撃の瞬間」につづいて2作目の読了。
「彼と彼女……」は、リチャード・ニーリィのような陰鬱なトーンがあったが、本作はそれほどでもない。けれど、下記のようなところは同様だったので、これがフィーニーの個性と捉えてよいのかもしれない。 登場人物はかなりしぼられている。章立ては細かい。章の切り替え毎に視点人物を切り替え、そこに続きが気になるような「引き」がある。視点人物の語りには、”信頼できない語り手”だろうかと思わせるところがある。作品全体で大きな仕掛けがある。 本作の「大きな仕掛け」については、きっとわかる人も多いだろう。私も、かなり後半になってだが、想像がついた。それでもグイグイ読まされて、かなり面白かった。「引き」をつくるのがうまいからだろうな。 あと、これも「彼と彼女……」と同様なのだが、後から拾い読みしてみると「あれはおかしくないか?」という記述がいくつか見られる。もうこれは、作者が整合性より「続きを読ませる」方に意図的に振っているからだろうから、好きか嫌いかの好みの問題だな。私はいまは好感的にとらえている。 ただ、ラストの展開は好みでないので、「彼と彼女……」ほうが好きかな。 |
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| No.296 | 6点 | 後ろ姿の聖像- 笹沢左保 | 2025/10/19 16:22 |
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| 「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズで読んだが、有栖川のイントロダクションにあるように、前章はフォーマットに則った作りですすむが、中章、終章で、そんなふうに展開させるんだと思わされる展開になる。これも有栖川のイントロダクションにあるが、デビュー20年目の作とのことだが、安定を求めずに挑戦的なプロットなところはすごい。300ページ弱を一気読み。
まあ、登場人物が少ないから、仮説の選択の幅が広くないので、真相の構図は終盤にはおおよそ想像がつくのだが、これだけ一気読みさせられれば文句はない。特に、ラストシーンがタイトルに修練するのはよかった。 |
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| No.295 | 6点 | 人喰い- 笹沢左保 | 2025/10/19 16:19 |
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| まあ、ともかく次々と展開していく。1章「遺書」からはじまり、行方不明者の捜索につづき、なんと爆発が起こる。いやあ、豪快。島田荘司の諸作を思い起こした。
その後も、疑惑の焦点が絞られ、捜査をして、だめになって、とプロットは転々とする。それぞれの仕掛けや趣向は、前例がありそうだが、手数で飽きさせない。読み終わってから、改めて考えると「そんな迂遠なことするかな?」とは思うが、読んでいる間は、スピード感に惑わされて気づかないのは、さすがベストセラー作家。 |
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| No.294 | 5点 | たまごの旅人- 近藤史恵 | 2025/10/19 16:14 |
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| 単行本の帯に「日常の謎」とデカデカと書いていますが、これはほとんど詐欺です。なんの謎もない、普通小説です。いや、それは「この人はこんなことを考えていたんだ」といったところはあるけど、謎としてフォーカスは全然していないので、これを「日常の謎」としたら、すべての小説が「日常の謎」になってしまいます。
ということで、ミステリではないですが、読みやすさは、安定の近藤印。新人旅行添乗員を語り手にして、旅行記と人情噺をうまくミックスし、するすると読ませる。 旅行記の部分としては、アイスランド、スロベニア、バリ、西安と北京ととりあげて、ツアーで周る観光地を描写していく。人情噺の部分としては、「憧れていた添乗員」、「父と確執がある女性」、「ひとり息子の相手を気にする女性」、「嫌いな国に来た男性」といった人をとりあげる。最終話だけは構成が変わって、舞台は沖縄で、観光地は巡らず、人情噺の部分は、語り手自身となる。 見たことのある素材を熟練の技で料理して、最後には「いい話を読んだ」と感じさせる。 「孤独のグルメ」のゴローさんのように、「そうそう、こういうのでいいんだよ」と言いたくなる読み心地。うまいなぁ。 |
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