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[ 本格 ]
不自然な死体
アダム・ダルグリッシュシリーズ
P・D・ジェイムズ 出版月: 1983年03月 平均: 6.00点 書評数: 5件

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早川書房
1983年03月

早川書房
1989年08月

No.5 7点 レッドキング 2023/04/19 09:25
海を漂う小舟にはミステリ作家の屍体、屍体は「自然死」なのに両手首が切断されていた。詩人にして警視の探偵・その狷介な叔母・男女の文壇関係者達・不具者の秘書女・女流作家の姪・・半ば閉ざされた岬に住まう、一癖どころか三癖はある容疑者達。クリスティーどころかドロシー・セイヤーズでさえ、ここまで「人が悪く」はなかろうって程に辛辣で「純文学」なドロシー・ジェイムズの精神解剖描写。主役探偵どころか助役警部さえ、作者の残酷なペン先から逃れられない。殺人と手首切断の合理的「Why」に、文学的「何故?」が見事に融合、見事。

No.4 7点 人並由真 2023/04/18 09:09
(ネタバレなし)
 その年の10月。恋人デボラ・リスコーとの今後の関係に気を揉むアダム・ダルグリッシュ警視は、休暇を利用して、ロンドンから離れたモンタスミア岬に暮らす叔母ジェインのもとに向かう。すでに土地の人々の多くとはそれなりに面識のあるダルグリッシュだが、地元では作家モーリス・シートンが行方をくらましていた。やがて岬の周辺の海岸には、両手首を切断されたモーリスの死体を乗せたボートが漂着する。

 1967年の英国作品。ダルグリッシュものの長編第3弾。
 今回、ポケミスで読んだけど、当時の早川、これ、翻訳権独占してないんだな。ちょっと驚き。

 初期三冊の中では、良くも悪くも、一番フツーのミステリっぽい……ようなそうでないような。
 まあ、第二部のロンドンでの捜査パートなんか、いかにもプロ警察官が探偵役の英国ミステリ風なんだけど、妙にとんがった仕上がりぶりを感じる。ジェイムズのコアな筆致が、叙述対象のモチーフと化学反応を起こして、相応にヘビーな質感を生じさせたか。
 
 とはいえ終盤の、それまでの「タメ」を解放した盛り上げはかなりの迫力で、犯人像も相応に強烈。とはいえ、その辺が逆に、ジェイムズらしくない気もしないでもない。少なくともこの作品に関しては。
 
 しかし、うっかりすると読み落としそうになるくらい、さりげなく重い切ない叙述を忍ばせるあたりは、やっぱりこの作者らしい。

 ジェイムズの初期作品3冊のなかではさすがに一番落ちるんだけど、それでも6点はちょっと厳しすぎるということで、7点。
 まあ『ある殺意』は7点の上、こっちは7点の下、というところだ。

 最後に、地の文で、同じ登場人物の名前表記が、ときにファーストネーム、ときにハウス(セカンド)ネームになったりで、微妙にイライラさせられる。これって原文からそうで、邦訳がその辺のニュアンスを拾ってるのなら仕方ないけど。

No.3 6点 nukkam 2016/08/06 15:49
(ネタバレなしです) もとからスピーディーな展開を売り物にしている作者ではありませんが、1967年発表のダルグリッシュシリーズ第3作の本書では検死結果が判明するのさえ物語の半分を占める第一部の終盤になってようやくという大変遅い展開に悩まされます。ちなみに私の読んだハヤカワ文庫版の裏表紙の粗筋紹介ではその結果をフライング気味に紹介しており、これはこれで感心できませんけど。本書はジェイムズ作品としては短めなのがまだ救いです。次作の「ナイチンゲールの屍衣」(1971年)から巨大で重厚な作品が続くので本書に耐えられなかったらジェイムズ作品をこれ以上読むのはお勧めしません。第二部からはミステリーとして十分な盛り上がりを見せ、最後は派手と言えるぐらい劇的に締めくくられます。その気になればちゃんと書ける作家なのですが(笑)。死体の手首を切り落とす理由もよく考えられています。

No.2 5点 kanamori 2011/12/08 18:24
ダルグリッシュ警視シリーズの3作目。
”自然死に見せかけた殺人”を扱ったセイヤーズ「不自然な死」を意識しながらも、両手首切断という自然死を否定する死体を発端にもってきて、もう一段捻っています。その切断理由もまあ納得いくものです。
精緻な心情描写と重厚な筆致というジェイムスらしさは、半分を占める第1部までは覗えるのですが、休暇中で管轄外のダルグリッシュが本格的に捜査に乗り出した後半はやや駆け足ぎみかな。トリックはなかなか面白いのだけど、木に竹を接いだような感じを受けた。

そういえば、本日ついにメジャー挑戦を表明!・・・って、そっちは、ダルビッシュ(笑)。

No.1 5点 Tetchy 2009/01/11 13:44
題名はジェイムズが尊敬してやまないセイヤーズの『不自然な死』を意識してつけられたことは明らかだろう。
ボートに乗せられた両手首のない死体というショッキングな幕開けだが、その導入がこじつけのようになっている感じがするのが惜しい。

とにかくジェイムズの描写は今回も細微に渡るが、ページ数も少ないため、第2の殺人が起こってからは、残りのページで収めようといきなりバタバタするのが残念だった。
動機も至極当たり前なもので、これといって新味が感じられず。

導入として読むのにも以上のような小粒感があり、お勧めできない。
何作か読んで、興味が出たら、どうぞ。


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P・D・ジェイムズ
2012年11月
高慢と偏見、そして殺人
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不自然な死体
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