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[ ハードボイルド ]
女には向かない職業
コ―デリア・グレイシリーズ
P・D・ジェイムズ 出版月: 1975年01月 平均: 6.00点 書評数: 10件

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早川書房
1975年01月

早川書房
1986年02月

早川書房
1987年09月

早川書房
1987年09月

No.10 7点 みりん 2024/08/24 09:35
いかにも代表作ですみたいな顔をしておいてまさかの異色作だった。ダルグリッシュ警視がいつもは探偵役なのね…有名作からではなく、刊行年度順に読むのが吉と教訓を得た。読む速度と盛り上がりの両方ともに序盤はゆるやか、徐々に加速、終盤で最高速に。なるほど、すべてはエピローグでアレをやりたかったかがための布石だったわけか。秀逸なタイトルに感心してしまった。

<教訓メモ>
「お金のために結婚をするのはよくないよ、でも、お金のある人と結婚おし」

文庫本で370ページであるが、改行が異常に少なく、ねちっこい文章のためか体感は500ページほど。元ネタ学習のつもりで軽い気持ちで読むと、途中で投げ出したくなった。それもそのはずで、解説によるとP・D・ジェイムズは私のような初心者が手を出してはいけない典型的なマニア好み作家だそうだ。本作はジェイムズ作品群の中でも抜群に読みやすく、人気を博しているとのこと。全然読みやすくはなかったけどなあ(泣) 読みにくさを打ち消すほど面白かったからいいけど!

No.9 5点 文生 2020/08/30 15:53
22歳のヒロインが奮闘する女探偵ものの先駆的な存在として評価されている作品です。しかし、ミステリーとしての面白さはさほど感じず、けなげなヒロインの魅力込みでも可もなく不可もなくといったところではないでしょうか。

No.8 6点 レッドキング 2020/02/19 08:27
ドロシー・セイヤーズは、ほぼ食わず嫌いだが、ドロシー・ジェイムズは好きだ。
「母は、私が生まれて一時間しか、この世にいなかった・・」
「父は旅暮らしの詩人、アマチュア革命家・・」 
「(探偵は)女には向かない職業でしょうに・・」・・母親とは女には向かない職業である・・
あのダンディな警視探偵でなく、この若き女探偵こそシリーズ探偵にしてほしかったな。

No.7 6点 クリスティ再読 2019/10/01 14:07
本作を「ハードボイルド」と呼ばれると、評者は忸怩たるものを感じるのだが....まあ今時ハードボイルド文なことを要求もしないし、カッコつけなくてもいいし、ましてやオトコじゃないと...とか言う気はさらさらにない。それでも、御三家に向けられた「意識」とか「まねび」みたいなものがないと、評者はハードボイルド、とは呼びたくないな。本作は強いて言えば、エリンの「第八の地獄」をベース(たとえば前所長に対する想い)にしているんだろう。なので、これは「ハードボイルドとは別な流れから来たリアリズム私立探偵小説」だと思うんだ。そのくらい、「第八の地獄」がミステリ史上の重要作だと思うんだけど、過小評価されているのが残念だ。
で、言うまでもなく、女性私立探偵コーデリア・グレイ初登場。つまり、女性が書いて、女性に共感される、女性私立探偵という意味では画期的、と言っていいだろう。事件は有名科学者の息子の自殺の真相を解明して...という依頼。ケンブリッジの学生たちの間をコーデリアが回って調査するわけだから、そりゃ年も近くて当りの柔らかな女性の方が向いてるに決まってる。たとえば今「私立探偵」をググってごらん、結構リアルの女性探偵ひっかかるから。相談しやすくて頭ごなしな態度をとったりしないから、実はリアルじゃ「女に向いた職業」なのかもしれないよ(苦笑)。だから関係者の女性たちと、いろいろ共感しあうあたりが、一番の読みどころになる。そうしてみると、小説としては実に王道になるわけで、大鉱脈を掘り当てたようなものだ。ミステリとしては小粒だけど、しっとりした読み心地がある。
で...実はね、評者のジャンル投票は「クライム/倒叙」にした。このオモムキは読んだ人にはわかると思う。どうだろう?

No.6 5点 nukkam 2016/04/17 22:24
(ネタバレなしです) 1972年発表のコーデリア・グレイシリーズ第1作で、アダム・ダルグリッシュシリーズ第5作ですが、後者の出番は終盤のみでコーデリアがほとんど出ずっぱりのプロットです。22歳の若い女性探偵を主役にしていますが、感情をほとんど表に出さずに淡々と捜査を進めていて、まるで年齢不詳(笑)。アクションシーンなどないにも関わらず、一部でハードボイルドの女性探偵の先駆のように評価されるのも(私はハードボイルドをほとんど読んでないのですが)なんとなく納得です。謎解きとしてはそれほど凝ったものではありませんが、真相が明らかになってからの展開で読ませる作品です。比較的コンパクトな作品ですがそれでも重厚でじっくりした筋運びで読みやすくはないところがこの作者らしいです。

No.5 6点 蟷螂の斧 2015/05/19 19:56
独特の文章でやや読みにくいところもありましたが、22歳の世間知らずの娘のひた向きさ(ハードボイルドタッチ)は良く伝わってきました。

No.4 6点 あびびび 2014/02/20 01:07
タイトルが秀逸だと思う。この作品をずいぶん盛り上げている。どちらかというと、情景描写がくどく、重い感じがする作風で、少々飛ばし読みしても大丈夫だと思った。

主人公のコーデリア(探偵)は若くけなげで魅力的な女性だが、依頼人がなぜ事件を掘り返そうとしたのか、その心境がイマイチ理解できない。それは傲慢な男だったから…と言われればそれまでだが…。

No.3 8点 E-BANKER 2012/12/20 22:21
通算800冊目の書評は、現代英国女流ミステリーの第一人者である作者の有名作品で。
女性私立探偵コーデリア・グレイが活躍するのはわずか2作品しかないが、そのうちの1つが本作。
1972年発表。早川文庫、小泉喜美子訳。

~探偵稼業には女は向かない。ましてや22歳の世間知らずの娘には。誰もが言ったが、コーデリアの決意は固かった。自殺した共同経営者のために、探偵事務所を続けるのだ。一人になって最初の依頼は、大学を中退し、自ら命を絶った青年の自殺の理由を調べてくれという内容だった。さっそく調査にかかったコーデリアの前に、意外な事実が浮かび上がってきた・・・。英国本格派の第一人者が可憐な女性探偵のひたむきな活躍を描く!~

これはヒロイン小説だな。
もちろん悪い意味ではなく、良い意味で。
本作を手に取ったのは、最近読んだ真山仁の作品「マグマ」の中に登場する主人公の女性キャリアウーマンが本作を愛読書にしていたという設定のせいもある。
(「マグマ」で孤軍奮闘する女性主人公が、自身の姿をコーデリアと重ね合わせるという場面が何回かあるのだ)
本格ミステリーとしての「謎解き」そのものは、正直たいしたことはない。
青年の自殺の理由を追っているうち、コーデリアはある家族の秘められた関係に辿り着く。そして、一人の人物の理不尽な振る舞い(?)
を知ったコーデリアは、探偵役としてあるまじきある重大な決意をする・・・
という流れで、どちらかというと、米ハードボイルド作品のような趣すら感じる。

ただ、本作の味わいはそういったミステリーのプロットの部分にあるのではないだろう。
読んでいるうちに、なぜだか作品世界に惹き込まれていくいくような感覚。
これは、やはりコーデリアという魅力的なヒロインの存在に負うところが大きい。
終盤、事件のあらかたの型が付いた後で登場する“真打ち”ダルグリッシュ警視を前に、秘密が跡形もなく崩れ去る刹那。
そして、自身の死んだパートナー・バーニイ(ダルグリッシュの元部下なのだ)を想って感情を爆発させる姿・・・
やっぱり、読ませる小説なのは間違いない。

作者の真の作品はコーデリアもの2作ではなく、ダルグリッシュ警視を主人公にしたシリーズなのだろうが、これはこれで十分に楽しめる作品だと思う。
ということで、それなりの評価をしたい。
(早川文庫版の瀬戸川猛資氏の解説も一読の価値あり。このタイトルも実にいいね)

No.2 7点 Tetchy 2009/01/14 22:22
ハヤカワ・ミステリ文庫ではP.D.ジェイムズはこの作品から始まる。
というわけでオイラもこの作品から読んだので、最後に出てくるアダム・ダルグリッシュが誰だか全く解らなかった。

これをジェイムズの作風だと思われると大きな誤解が生じる。このコーデリア・グレイシリーズはジェイムズにとって突然変異のような作品であり、未だになぜ唐突にこのような女探偵物を書いたのか、解らない。

事件はシンプルで、実はどんなものだったか全然記憶に残っていない。
しかし若年22歳のコーデリアが奮闘するこの物語は、若い女性がいきなり社会の荒波にもまれながら、自分の立ち位置を常に確認し、懸命に生きていくその姿こそが本作の主眼であり、それが克明に私の記憶に刻まれている。
留意しておきたいのは、キンジー・ミルホーンやウォシャウスキーシリーズに何年も先駆けて本作が出ていた事。
これこそジェイムズの功績だと讃えたい。

No.1 4点 mini 2008/10/28 10:21
ジェイムズはこれだけしか読んでないか、もう1冊読んでいたとしても「皮膚の下の頭蓋骨」だけという人が多いようだ
つまりジェイムズはコーデリア登場ものだけ読んでおけばいい的な風潮が蔓延しているが、これは非常に良くない
ノンシリーズを除くとジェイムズは16冊もの長編が訳されているが、その内コーデリアものはたったの2冊だけで、残りは全てダルグリッシュ警視ものである
作者のメインのシリーズなのにダルグリッシュものは不当に無視されている感じだ、どうしても1冊だけ読むのなら中期以降のダルグリッシュ警視ものから選ぶべきだろう、P・D・ジェイムズの中でこの「女には向かない職業」1作だけを読んでも作者の特徴を知るという点で意味が無いと思う
「女に向かない職業」は初期の一部作品を除くと、ある意味最もジェイムズらしくない作品だからだ
どう考えても作者の本領はこれではないだろう
暗くて重くて憂鬱じゃなければジェイムズじゃないよ


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P・D・ジェイムズ
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