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[ 本格 ]
死の味
アダム・ダルグリッシュシリーズ
P・D・ジェイムズ 出版月: 1987年12月 平均: 7.20点 書評数: 5件

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早川書房
1987年12月

早川書房
1996年12月

早川書房
1996年12月

早川書房
2022年02月

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2022年02月

No.5 7点 レッドキング 2024/09/05 23:59
教会で惨死した前大臣と浮浪者。資産家だった大臣、狷介な老母、美貌で軽薄な後妻、後妻の浮ついた兄、後妻の愛人のヤリ手医師、大臣の慎ましやかな愛人、左翼活動家の実娘、娘の活動家仲間の男、曰くありげな家政婦、過去に不審死を遂げた使用人の二人の女、哀れな司祭、死体発見者の老婆と少年、そしてダルグリッシュ(どうもダルビッシュ言いたくなるなぁ)警視と女警部・・・ドロシージェイムズのいつもの重厚な音色が、妙に軽やかに変奏していて、最後には、脇役のはずの女警部が、サラ・パレツキー女探偵なみのハードボイルドヒロインしちゃって。ミステリ根幹はせいぜいアリバイトリックなんだが、そう思わせない位にミステリアスに引っ張ってくれる、さすが。1点オマケ。

No.4 5点 ことは 2021/03/14 15:09
他の方の記述にもでてくるが、確かにこれはジャンル分けするならば「警察小説」だ。
事件が起き、捜査が行われ、犯人がつかまる。しかし、ミステリ的興趣、謎に対する興味、謎を追う冒険感、謎が解けたときのカタルシスなどは無い。事件は警察の操作で解決される。
ミステリ観点からは否定的にみえるコメントになってしまったが、今まで読んだ(「死の味」以前の作品は、「罪なき血」以外読んでいる)ジェイムズ作品では、断然読みやすかった。
これは、間違いなく捜査側をチームとし、複数視点を導入したためだと思う。特にダルグリッシュは、捜査陣の視点からどうみえるかが書かれたことで、キャラクターイメージがくっきりしたと思う。検死医などについてもシリーズ・キャラにしようという目論見が濃いので、作者もかなり意図的に、捜査側をチームとして描こうとしていると想像する。
ただし、「警察小説」といっても半分だけで、残りは家庭内ドラマだ。
視点は三人称多視点だが、警察サイドでない視点が半分を占める。この部分、つまらなくはないのだが、やはりあまり好みではなかった。「警察小説」側だけで書いてもらえば、私の評価は上がるのだが、それだとジェイムズの個性が薄れてしまうしなぁ。
とはいえ、ミスキン警部は印象的なので(後続作の人物表をみると、シリーズ・キャラとして定着するようなので)継続して読む気にはなった。

No.3 8点 mini 2015/01/29 09:56
発売中の早川ミステリマガジン3月号の特集は、”追悼P・D・ジェイムズ”、もちろん昨年11月に逝去したP・D・ジェイムズの追悼特集である

未読が多い私の考えでは当てにならないが、思うにP・D・ジェイムズ作品を3期に分類すると、「ナイチンゲール」より前が初期、「ナイチンゲール」から「皮膚の下の頭蓋骨」まで、ダルグリッシュ警視ものに限定するなら「わが職業は死」あたりまでが中期、そして「死の味」以降が後期って感じになるのかなぁ
「死の味」は明らかにそれまでのジェイムズとは作風に変化が見られると思う
それまでは現代感覚を持ち込みながらも、どちらかと言えば悪い意味で黄金時代風本格派を引き摺っている感が有った
しかしこの「死の味」は良い意味で現代本格そのものになった感じがする
特に感じるのは警察小説風の味わいになった事で、以前のジェイムズ作品では、警察官が主役でも内容的には完全に本格派だった、チームワーク的な要素も希薄だったし
しかし「死の味」では、「わが職業は死」で登場した部下マシンガムや本作で登場の女性ケイト・ミスキン警部などとの連携の比率が高まっている
私は警察小説風への移行は良いと思う、なぜならジェイムズの資質に合っていると思うからだ、ジェイムズが黄金時代本格風に書いた「ナイチンゲール」や「黒い塔」は何となくちぐはぐ感が有ったからね
そして2つ目の現代本格風の要素が宗教テーマだ、上記の作では重厚ではあっても案外と宗教色は少なかった
しかし「死の味」ではこのテーマの濃さが増している
さらにもう1つの現代本格的要素が社会派的要素で、特にケイト・ミスキン警部の家族問題と警察内部の昇進問題との軋轢なんて現代感覚に溢れている
私が読んだ数少ないジェイムズ作品では最高傑作であろう

No.2 7点 kanamori 2010/07/24 17:22
アダム・ダルグリッシュ警視(長)シリーズの8作目。
教会で浮浪者とともに死体で発見された元国務大臣の死の謎を追っていますが、従来にも増して長大かつ重厚な捜査小説で、内容的にも読み終えるとぐったりとなる。
新たに女性警部をメンバーに加えていますが、コーデリアのような役割ではなく、シリアスな人間ドラマを助長させるような感じを受けました。重すぎて続けて読むのはちょっときついシリーズ。

No.1 9点 Tetchy 2009/01/30 22:44
重厚かつ濃厚とはまさにこの作品を指す。
実に読みでのある作品だ。
今回の特色はワンマンで捜査に当っていたダルグリッシュに仲間が登場することだろう。
というよりも今までなぜこういう設定が無かったのかが不思議だが・・・。
その中でも出色のキャラクターは27歳の若き女性警部ケイト・ミスキン。彼女自身に個人的なある事情を持っているというのが設定として映えているし、さらにそれが終盤になって痛烈に響くのがすごい。

ミステリとしても面白いが、事件の全容が解明された後に更なる人間ドラマが展開される。
よくもまあ、こんな物語を書けるものである。
ジェイムズの人間洞察の深さにはほとほと畏れ入る。
本作はダルグリッシュ警視シリーズでオイラの中では№1の作品だ。


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P・D・ジェイムズ
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