皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 孔雀の道 |
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陳舜臣 | 出版月: 1969年01月 | 平均: 6.33点 | 書評数: 3件 |
講談社 1969年01月 |
講談社 1977年07月 |
講談社 1979年12月 |
双葉社 1996年05月 |
No.3 | 5点 | クリスティ再読 | 2024/02/13 16:44 |
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ほぼ50年前のミステリになる。幼少時の事件の真相と母の真の姿を、日英混血の女性が追い求めるプロットによって、東洋と西洋の「比較文化論」めいたことをしようとしたストーリーになるわけだ。今更で読んでみると、古くなるのはそういう「比較文化論」めいた部分の方....協会賞同時受賞の「玉嶺よふたたび」の方は日中戦争を扱いながらロマンに軸を置いているので、意外に古くなりづらいけど、こっちの方が早々と賞味期限が来てしまうのは、何というかねえ。
まあ本作で興味深いのはこのヒロインの母の肖像、ということになるんだが、次第に明らかになるその奔放さが、今では逆に「そう珍しくもないや」と感じてしまうとなると、戦中の時代、それに出版当時の「新しい女」風の衝撃が感じ取られないことにもなるようだ。うん、この母の生き方に共感する部分は評者は正直薄い。 それでも手堅く書かれた母もの小説にミステリで味わいをつけて、またメロドラマを絡ませるという骨格は、わかる。少女小説風な甘口さというものか。 (けど評者、神戸はご縁があるので、登場地名の土地勘があって、そういうあたりが妙に面白く感じる。ご当地小説でもあるな) |
No.2 | 7点 | 雪 | 2019/05/01 22:50 |
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昭和四十三年。仏教研究者で信州小諸の寺の息子中垣照道は、インドから日本へと向かう船旅で印象的な二人の女性に出会った。一人はアメリカ人実業家の妻で、純血の日本女性であるランポール夫人。もう一人は日英混血児ローズ・ギルモア。一年あまりのインド滞在を終えた照道には、二人の女性が感じさせる故国の匂いが眩しかった。
二人と親しくなった中垣は、日本の灯をみはるかす甲板上で、ローズに亡き母についての調査を頼まれる。彼女の母親立花久子は病気ではなく火災で、終戦直後神戸で焼死したというのだ。睡眠薬を服用していたため逃れる事が出来なかったのだという。それと関係あるかはわからないが、太平洋戦争のはじまる一年まえイギリスの国際スパイ団が検挙されたマーシャル事件で、彼女の父サイモンも憲兵の取調べを受けていた。 中垣はローズの懇請を受け、友人である須磨の住職・島田の助けを借りて二十二年前の事件を探る。一方、扶桑女子大学の英語教師として赴任したローズは、隣室のフランス人女性クララ・ルッサンと知り合っていた。彼女が三十年以上も日本に滞在していると知りローズは水を向けるが、彼女は貝の様に口を噤み何も語ろうとはしない。 中垣とローズは戦前の神戸を知る人々を次々と尋ね始めるが、彼らが調査を始めるや否や、ルッサン夫人は自室で心臓をえぐられ刺殺されてしまう・・・ 「玉嶺よふたたび」と併せての第23回推理作家協会賞受賞作。1969年発表。前年には中編「青玉獅子香炉」で第60回直木賞受賞、さらにその前年には代表作「阿片戦争」完結と精力的な活動を続けており、作者が充実期にあったことが窺えます。 殺人自体はかなり早く起きますが「炎に絵を」以上にその後話が大きく動く訳でもなく、ゆったりとした筋運びで混血の女主人公が日本に抱く違和感と、亡き母の強烈な肖像が描かれる展開。過去のスパイ事件絡みの緊張感を含んだ人間関係は暴き出されるものの、ルッサン事件については最後まで音沙汰無しで、これどうなってんのと思ってたら最後にうっちゃりを食わされます。 過去の追跡過程で感じたいくつかの違和感が最後にきてピタッと嵌る、普通小説に近いタイプの作品。タイトルはおそらく愛に殉じた立花久子の人生そのものを指すのでしょう。地味ですが60年代の佳作のひとつです。 |
No.1 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2016/01/16 13:30 |
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(再読)裏表紙より~『英国人を父、日本人を母に生まれたローズ・ギルモアは13年ぶりで日本を訪れた。彼女が幼い頃、神戸の自宅で謎の焼死を遂げた母のことを知りたかった。戦前の日本でスパイ事件に関与したことのある父は、なぜか母について沈黙を続け通して他界した。国際色豊かな推理。昭和45年度日本推理作家協会賞受賞作。』~
スパイ小説やトラベルミステリーのスパイスを混ぜた叙情風味溢れる社会派ミステリーといえると思います。イメージとしては松本清張氏の「ゼロの焦点」あたりか?。本作の読みどころは、命の大切さを重んじるローズの前での犯人の独白と行動です。これは名シーンといえると思います。以下は余談です。著者の作品をミステリーとしてではなく手に取った理由が、中々思い出すことができなかったのですが、本作でやっと判明しました。「比較文化論」の好きな友人が奨めてくれたのが本作で、西洋文化との比較が随所に出てきます。 |