海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト

[ 本格/新本格 ]
炎に絵を
陳舜臣 出版月: 1966年01月 平均: 7.80点 書評数: 20件

書評を見る | 採点するジャンル投票


文藝春秋
1966年01月

文藝春秋
1977年06月

集英社
2008年10月

No.20 7点 パメル 2021/06/05 08:47
辛亥革命の時に、革命資金を横領したという罪に被せられた父の汚名を晴らすべく調査に乗り出した主人公が、トラブルに巻き込まれながら驚きの真相にたどり着く。
序盤はもたついた感があるが、中盤に入ると父の汚名に関する重要な資料を発見、重要人物ともいえる人物との関係が明らかになる。急にとんとん拍子になりスピードアップ。父の過去を探る旅と産業スパイという二つの軸に、同僚女性とのロマンスを絡めて展開するストーリーは、さまざまな仕掛けがほどこされサスペンスに富んでいる。後半に入り、事件の全貌が明らかになるにつれ、仕掛けが浮かび上がってくるという構成がお見事。
確かにご都合主義的なところはあるが、最後に真相が明らかになり、タイトルの「炎に絵を」の意味することが立ち上がるのが素晴らしい。

No.19 7点 メルカトル 2020/09/12 22:23
神戸支店に転勤することになった葉村省吾は、兄夫婦にある調査を依頼された。彼らの父は、辛亥革命の際に革命資金を拐帯したとされているが、その汚名をはらしてほしいというのである。父の記憶がほとんどない省吾は、あまり気乗りがしなかったが、病床の兄のたっての頼みとあって事件の調査を開始する。怪しい影に命を狙われながら、二転、三転、ようやくたどりついた驚愕の真相とは?風光明媚なみなと町を舞台に展開する、謎また謎の本格推理。
『BOOK』データベースより。

ミステリ作家が書いたこなれた感じは受けなかったものの、そのプロットの秀逸さは目を瞠るものがあります。無駄な前置きがなく、すんなり本題に入っていくのは好印象。しかし、犯人の目論見通りそう簡単に事が運ぶとは正直思えませんでした。結局犯人の狙い通り上手く話がレールに乗っていますが、ちょっとご都合主義な感は否めません。

最終盤に至って、真犯人像が見えてきます。まあこれは誰でも想定の範囲内ではないかと思います。でも、省吾の辿った道と事件の錯綜する真相は意外性に満ちており、それまでの伏線も相まって、こんな事になっていたとはと驚きを隠せませんでした。ただ、それが解き解されていく過程がそれほど外連味なく描かれているのは残念です。もう少しドラマティックに盛り上げられたのではないかとの思いが過るのは確かです。
それでも前評判通りの面白さであったのは間違いありませんね。

No.18 8点 じきる 2020/08/23 20:15
私が中国史好きなのもあって、恥ずかしながら陳舜臣には歴史方面のイメージしか持ってなかった。
こんな切れ味鋭い技巧を織り込んだミステリーも書けるんですね。

No.17 9点 クリスティ再読 2020/06/06 18:01
評者がこのサイトを見始めた頃、本作が国内ベスト5に入っていた記憶があるよ。評者とか「見識、だね」と思ってた...その後沈んじゃったのはもったいない。
誰だったかの戦後ベスト20に入ってるのを見た記憶があるし、協会賞を「風塵地帯」と最後まで争ったこともあって、評者は本作「隠れた名作」とは思ってないなあ。地味かもしれないが、歴史ロマンとどんでん返しを両立させた陳舜臣のミステリ代表作だと思っていたよ。この人の「受賞作」だって地味と言えば地味で、ドラマがしっかりし過ぎているので損してるのか?というくらいの、そういう作風じゃないのかな。
大掛かりな仕掛けがあるけども、その動機は家族愛から発する納得のいくものであるし、産業スパイ話も目くらましとしてうまく絡ませていると思うんだけどね。というか、殺人も最後の方にやっと出るわけで、ミステリの「話の作り方」として、「型にはまったやり方」ではない、市井人の生活の中で遭遇する話として、巧妙に作られているように感じる。評者に言わせれば、「ミステリの話の作り方のお手本」じゃないかと思うくらい。
本作を「隠れた名作」なんて呼ばなくて、「60年代の大名作」として今の読者の間でも有名であってほしいと願う。

No.16 8点 斎藤警部 2020/05/15 19:30
病で死期近い異母兄から..その妻を通じて雪辱を託された..若き日の父の汚名は…..中国辛亥革命の資金横領逃亡!! “遠くから彼をうごかしているものを振りきって、このそば近くにいるものを摑みたい。―――” あの「遺書」、つまりはそういうことかよ。。。殺人犯人はこの『表題』に気付いてないんだよね。。そう思って物語を見渡すと、深いねえ。。。。 悪玉の造形の複雑さに較べ善玉たちが単純に描かれ過ぎの気もするが、まあいいでしょう。このアンバランスな関係は本筋悪事と産業スパイ事件の間にも言えるが、後者も物語を面白く彩ってくれたわけだし、まあいいでしょう。 くすぐりのユーモアも興味を加速。「ああ、つまりムードがあるってことですね」…. それにしても大いなる⚫️⚫️。いくつもの大いなる家族愛。 ただちょっと、看過するに大き過ぎる偶然要素がある。。 “世間というものは、こんなふうにして、なにかかんじんなものを素通りして、都合のよい型のなかへ、すべてを投げ込んでしまう。” ラストでは何とも珍重すべき、良い意味で微妙な気分になりました。 この終わり方、爽やかと感じる人と、暗黒への第一歩と見る人と、分かれるようですね…………

No.15 7点 レッドキング 2018/07/05 17:45
歴史ミステリを主筋に、企業ミステリとラブロマンスを副筋に、サクサク話が進むのに目を眩まされて、後半一転「本格」して、最後に「え!真犯人それぇ?」と驚ろかされた。だって陳舜臣って、「中国の歴史」始め歴史小説の人だと思ってたもん。まさか「本格」するなんて思わなかった、油断した。

No.14 7点 ミステリ初心者 2018/04/01 10:52
 ネタバレをしています。





 結構古い作品にもかかわらず、かなり読みやすかったです。
 どんでん返しも楽しめ、伏線も多く読み返しても2度おもしろい良い作品でした。キャラクターの印象も初見とは180度ひっくりかえるんですね・・・怖いですね。
 個人的にもっとも気に入った点は、嫂が足をひねっていた点。

 以下、好みでなかった点。
 春名・植原などの別の事件も絡んでくるため、話が少々ややこしい。
 主人公が犯人の想定通り動いてくれるかは偶然が絡む。
 犯人には共犯が多く、すべてを推測するのは困難。
 上に書いたことと矛盾するようで申し訳ないのですが、伏線の過剰さで大体の真相が予想できてしまう。

 最近の作品は、ちょっとした叙述トリックの亜種が多いような印象です。この炎に絵をのような、叙述トリックを使われていないどんでん返しは価値が高いと思いました(もしかしたら、私の読解力が足りてなく、叙述トリックがあるのかもしれませんが)。

No.13 7点 nukkam 2016/06/17 13:26
(ネタバレなしです) 陳ミステリーの代表作と紹介されることも多い1966年発表の本格派推理小説です。探偵役としての特別な能力を持ち合わせていない会社員を主人公にし、産業スパイ小説要素が織り込まれているなど社会派推理小説風な部分もあります。戦前に中国革命軍から預けられた資金を横領したとされる父の無実を晴らしてほしいと病床の異母兄から依頼される事件の真相は案外と他愛もないものですが、絶妙なタイミングで新たな事件と謎を生み出すプロットで読者を飽きさせません。家族愛の描写と鮮やかなどんでん返しの謎解きの絡ませ方が見事で、小説と謎解きのどちらも楽しめる作品に仕上がっています。

No.12 6点 E-BANKER 2015/12/27 20:05
直木賞作家にして歴史小説の大家でもある作者の傑作ミステリー。
前々から読もう読もうと思っていた作品。
1966年発表。

~会社の神戸支店に転勤することになった葉村省吾は兄夫婦にある調査を依頼された。彼の父親は、辛亥革命の際に革命資金を略奪したとされているが、その汚名をはらして欲しいというのである。父親の記憶がほとんどない省吾はあまり気乗りがしなかったが、病床の兄のたっての頼みとあって事件の調査を開始する。怪しい影に命を狙われながら二転三転の末ようやくたどり着いた驚愕の真相とは? 風光明媚な港町・神戸を舞台に展開する謎また謎・・・~

なるほど、さすがに評判どおり端正に練られたミステリー・・・
そんな読後感。
典型的な「巻き込まれ型」探偵である主人公・省吾を軸として展開するミステリアスな事件の数々。
本筋である父親の汚名はらしに纏わる事件のほかに、自身の命が狙われる事件、自社の新製品に係る産業スパイなど複数の脇筋が複雑に絡み合う。
どのように一本に合流していくのか、と思いながら読み進めていた。

終盤はそれまでの若干まだるっこしい展開が一変。
激流に巻き込まれるようにスピードアップし、サプライズ感のある真相まで一直線に進んでいく。
2015年現在の目線で見ると、もちろん既視感はあるし、まぁ予想の範囲内ということにはなるのだが、発表当時はかなり衝撃的だったに違いない。
何よりもタイトルにもなっている「炎に絵を」だ。
ある人物が死の間際に放つ言葉なのだが、その意味が明らかにされるとき、人間の悪意があからさまにされる刹那!
これこそが本作一番の読みどころになる。

巻末解説を読んでると、本作は作者のミステリーとしては本流ではないとのこと。
乱歩賞受賞作をはじめ、他にも食指の動く作品もありそうなので、折を見て手にとっていきたい。
さすがに名作と言われるだけのことはあるね。
(やっぱり女って怖いということが改めて再認識されるよなぁー・・・)

No.11 9点 ボナンザ 2015/12/27 17:46
隠れた名作。
人物描写・展開・トリックとどこの部分にもけちの付けようがない。
中編二作も良作。

No.10 7点 いいちこ 2015/09/25 20:38
一見してミステリとしての緩さを装いながら、衝撃の真相に辿り着く騙しの技術は絶品。
作品の各所にご都合主義が散見される分、減点せざるを得ないが、必読の佳作と評価

No.9 7点 take5 2014/07/27 19:44
文章の量に対する人間の描き方がさすがです。効率が良い!
文庫のもう一作の方も面白いです。
自分の生まれる大分前に書かれた作品なので、それが書かれた時代や、更にその作品世界の時代に思いを馳せることも楽しめます。

No.8 8点 2012/02/26 18:42
古い作品だけどあまり違和感なく読めました。
伏線がうまくちりばめられて、最後に収束するのがいいですね。

No.7 7点 あびびび 2012/01/18 09:53
火曜サスペンスそのままの進行かなと思ったが、後半は衝撃の嵐?最終的な犯人には背筋が凍った。

途中、そんなにうまく計画にはまるのかな?と思ったが、ある程度のご都合主義には目を瞑りたい。作者が華僑だからというわけでもないだろうが、異色的な雰囲気があった。

No.6 9点 蟷螂の斧 2011/12/30 11:48
地味な小説と感じましたが、大胆なトリックが使われています。二重三重のどんでん返しもあり傑作だと思います。題名の意味は最後の最後に判明します。著者の作品は数十年前5,6冊読んでいましたが、本作品は未読でした。本サイトに感謝します。

No.5 10点 2011/11/10 13:32
今回は、E-BANKERさんに倣った、初の節目(250番目)書評です。

父の生前の汚名をそそいでくれとの病床の兄からの依頼を主人公の葉村省吾が受けるところから、物語が始まります。葉村家の歴史を背負って動き出す省吾。でも当の本人は明るく能天気なほどの好青年で、全く気負いはありません。前半では、この青年が探偵ごっこのように調査をしながら、読者を飽きさせない程度に話が進んでいきます。
ところが後半にさしかかるころ発生する突然の事件をきっかけに、省吾は葉村家にまつわる謎の渦の中に飲み込まれていき、最後は驚愕の真相へたどり着きます。
巻き込まれ型の素人探偵が真相へとひた進む、サスペンス性ゆたかな、この壮大な推理ドラマには興奮を覚えます。

陳氏の出世作『枯草の根』とくらべると、今までは、わずかな記憶だけをたよりに、かなりいい加減に、本書がすこし上と判断していましたが、今回の再読で結着を見ました。
本書に関し記憶しているのは、興奮して読んだことと、読後数年間、余韻がつづいたことだけ。筋については、主人公が必死にもがきながら謎を追う情景が記憶にあるだけでした。
でも興奮と余韻は記憶どおり、本物でした。
2年ほど前、ディヴァインの『兄の殺人者』を読んだとき、本書と似ているような気がしたのですが、実際はかなり違います。家族愛が背景にあり、兄が登場するという点では一致しますが、筋も、興奮の程度も全然違っていました。

主人公とその恋人の性格は記憶とは違ってとても明るく、意外な気がしました。彼らの性格と、謎の重苦しさや悲劇性とのギャップが本書の魅力の一つなのかもしれません。現代風な主人公や、柔和でゆったりとした物語の雰囲気は、陳ミステリーの特徴のようです。

No.4 9点 isurrender 2011/06/17 23:22
中盤までは、そんなに良い作品になりそうなオーラがなかったんですけど、終盤になって予想外の畳みかけに驚きました
古い作品とは思えない読みやすさもあって良かったです

No.3 7点 kanamori 2010/08/01 17:46
シリーズ探偵・陶展文が出てこないノンシリーズの本格ミステリでは本書が一番面白いと思った。
戦時中の中国の隠し資金といういつもながらのテーマと企業小説的なストーリーで、中盤まではあまりリーダビリティを感じなかったが、最後にとんでもないサプライズが待っていました。
主人公の行動などにご都合主義的なところがあるのが残念ですが、結末の真相を示唆する伏線も丁寧に張られており、よく練られたミステリという印象です。

No.2 7点 測量ボ-イ 2009/05/19 20:46
陳氏が書いた数少ないミステリの一つで、あまり知られて
いない作品ですが、これはなかなかの出来栄えです。未読の
方には是非お勧めしたいです。
評価7点か8点で迷いますが、内容的に少し話しが出来すぎ
ているきらいがあるので7点としました。

(2012.1.21 追記)
皆さんかなりの高評価です。
僕も決して低評価したつもりはないのですが(苦笑)。
「隠れたる名作」と言う評価ができるのではと思います。

No.1 10点 こう 2008/06/08 20:47
 今はミステリから離れてしまった陳舜臣最大傑作だと思います。
 年離れた異母兄から病死の間際に辛亥革命の資金横領したという父の汚名をはらしてほしい、といわれた主人公の弟が捜索をはじめたが、というストーリーです。
 40年以上前の作品で更に過去(1910年代)を探る話なので古さはどうしようもありませんが長さも手頃で非常に面白かったです。真相が暴かれたあとの最後にわかる「炎に絵を」、という意味が今では普通ですが40年以上前発表当初は衝撃だったと思います。
 主人公は神戸にたまたま転勤し転勤先の神戸で捜索しますが「神戸に転勤すること」は偶然でありもし転勤しなかったらトリックが成立しない点、また主人公が一旦真相を突き止める場面も明らかな偶然でありストーリー自体は蓋然性は低いです。また過去の戦争前後の話であるから成立する話で現代ではストーリー自体が成立しません。
 またサイドストーリーの産業スパイの話も不要かなと思います。
 ただそれらを踏まえても傑作だと思います。


陳舜臣
2002年06月
獅子は死なず
平均:6.00 / 書評数:2
1992年03月
神獣の爪
平均:7.00 / 書評数:2
1991年10月
銘のない墓標
平均:5.00 / 書評数:1
1991年06月
夢ざめの坂
1989年01月
紅蓮亭の狂女
平均:6.00 / 書評数:1
1987年12月
失われた背景
平均:5.00 / 書評数:1
1987年10月
幻の百花双瞳
平均:6.00 / 書評数:1
1986年11月
崩れた直線
平均:5.00 / 書評数:1
1986年09月
崑崙の河
平均:6.00 / 書評数:1
1985年09月
南十字星を埋めろ
1985年07月
桃源遥かなり
平均:6.00 / 書評数:2
1979年02月
小説マルコ・ポーロ
平均:5.00 / 書評数:1
1978年12月
燃える水柱
1978年01月
割れる 陶展文の推理
平均:5.50 / 書評数:2
1977年10月
虹の舞台
平均:5.33 / 書評数:3
1977年07月
方壺園
平均:6.75 / 書評数:4
1977年05月
闇の金魚
平均:5.50 / 書評数:2
1974年12月
秘本三国志(一)
1973年01月
長安日記
平均:6.00 / 書評数:1
柊の館
平均:6.00 / 書評数:3
1971年02月
北京悠々館
平均:5.67 / 書評数:3
1971年01月
六甲山心中
平均:5.00 / 書評数:1
1969年01月
青玉獅子香炉
平均:6.00 / 書評数:2
孔雀の道
平均:7.00 / 書評数:2
玉嶺よふたたび
平均:5.25 / 書評数:4
1968年01月
濁った航跡
平均:5.00 / 書評数:1
1966年01月
影は崩れた
平均:5.50 / 書評数:2
炎に絵を
平均:7.80 / 書評数:20
1964年01月
まだ終らない
平均:4.00 / 書評数:1
黒いヒマラヤ
平均:6.00 / 書評数:2
白い泥
平均:7.00 / 書評数:1
月をのせた海
平均:6.00 / 書評数:2
1963年01月
天の上の天
平均:4.00 / 書評数:1
1962年01月
弓の部屋
平均:5.67 / 書評数:3
怒りの菩薩
平均:5.00 / 書評数:1
三色の家
平均:6.00 / 書評数:3
1961年01月
枯草の根
平均:6.67 / 書評数:6