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[ 本格 ]
犯罪カレンダー (7月~12月)
エラリイ・クイーン
エラリイ・クイーン 出版月: 1962年01月 平均: 5.70点 書評数: 10件

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早川書房
1962年01月

早川書房
1979年01月

早川書房
2002年08月

No.10 5点 斎藤警部 2025/12/10 23:10
七月 墜落した天使 The Fallen Angel
歳の離れた兄と弟。 同じく夫と妻。 殺人未遂が続き、いきなりの未遂告白。 意外性の角度を変えてみたような、ちょっと意外な真相。 彫像を引き合いに、真夏の暑さを描写する素晴らしい表現があった。 6点

八月 針の目 The Needle’s Eye
海賊伝説を縁(よすが)のユルユル冒険譚に殺人をトッピング。 犯人像も犯人名指しに繋がる手掛かりもユルくて見てられない。 ネタバレにならないよう気をつけて言うと、犯行に及んだ瞬間の犯人の気持ちに、多少の面白みがある。 3点

九月 三つのR The Three R’s
夏季休暇から戻らない大学教授。 推理小説マニアの彼は、自分でも一篇ものしていたと言う。 やがて教授らしき死体と、彼の遺した件(くだん)の原稿が見つかった。 その内容は、当の事件をそっくりそのままなぞっていた! 短篇ならでは、小味の割に大反転。 何より、後からじわじわ来る 「動機」 の意外さは、不意討ちでした! 7点

十月 殺された猫 The Dead Cat
ハロウィーンの夜の殺人ゲームで、本物の死人が出た。 ゲーム上の犯人役は行方不明。 エラリーは居眠り中だった! 犯行には痴情が絡んだらしい。 光と音が決め手の暗闇不可能状況。 大味な伏線に、凡庸な結末。 人物描写は面白い。 4点

十一月 ものをいう壜 The Telltale Bottle
感謝祭の時節に、小味というより小粒なドラッグ捕物帖。 前半は人種/民族にまつわる興味深い背景が語られ、中盤にささやかな不可能興味も芽生えるが、羊頭狗肉の坂を滑り降り、最後は苦笑で締まる。 こういうのも時々は良い。  3点強

十二月 クリスマスと人形 The Dauphin’s Doll
クリスマス・イヴの日に、ルパンのような衆人環視巨大ダイヤモンド盗難事件が起こる。 ストーリーは愉しげで、その装飾は色鮮やかな煌めき。 不可能状況トリックは、作中でエラリーも堂々語る通り、ミステリよりはマジック向きの、明かされてガッカリ聞かなきゃ良かった系だが、年末くらい良いじゃないか。 5点

まあこんなもんでしょう。

No.9 6点 クリスティ再読 2025/03/22 14:49
皆さんと同様に、1~6月と比較すると、やや落ちるかなという感想。

いやそれでもラジオドラマ由来のミステリとしてのネタを、月ごとの風物詩に合わせて短編小説に仕立て上げる腕前の良さを楽しむという視点だと、そう悪くはないか、とも思える。評者何といっても、華麗なリーの文章が好きなんだ。

まあ、批判も多いだろう「三つのR」だけど、これって小説の通りに事件が起きる、というメタを扱ったプロットのわけで、クイーンに親しんでいるとアノ作品コノ作品と連想が働くという面白味がある。オチがつまらないから、それが問題なんだけども、楽しく読めることは確かなんだ。

そういう「楽しさ」という面では、クリスマス・ストーリーについて前説を長々と繰り広げる「クリスマスと人形」とかね、単純に楽しいお話。このシリーズではエラリーとニッキーがレギュラーで、準レギュラーで警視とヴェリー部長がでたり出なかったり。このシリーズだとヴェリーがコメディ・リリーフになることが多く、「クリスマスと人形」ではサンタに扮して、とても楽し気。
で、この「クリスマスと人形」に関しては、国名の頃に警視の下で捜査に当たった刑事たち、ヘイグストローム・ヘス・ピゴットといった連中が登場するのが、なんかとっても懐かしい。

No.8 5点 ことは 2025/03/09 18:11
再読。前半よりはやや落ちるかな。でもクイーン好きでないと、琴線には触れなさそう。
「堕落した天使」 このころのクイーンらしい人物配置だが、クイーンらしい推理やプロットのひねりはなく、平凡な作。
「針の目」 解決の推理のために誂えた舞台やストーリーといった感じで、緊密感が足りず、肝心の推理もクイズ的でいまひとつ。
「三つのR」 作中にミステリがでてきて、結末もなかなか楽しい。けれど、「犯罪カレンダー(1-12月)」で考えると、ちょっと……とは思う。
「殺された猫」 これも、解決の推理のために誂えた舞台やストーリーといった感じで、緊密感が足りないが、推理は本集で1番よい。
「ものをいう壜」 全体的にバタバタして、とっ散らかってる感じがする。趣向は、有名海外ミステリドラマの1作目を思い出した。
「クリスマスと人形」 クイーンらしさとは縁遠い「怪盗との対決」を楽しめれば、なかなかよい話。仕掛けは手品的。
解説の村上さんもよい。ラジオドラマを紐解いていて、充実している。

No.7 5点 レッドキング 2022/03/19 14:27
エラリー・クイーン第三短編集 後半(7月~12月)
   7月「墜落した天使」 ゴシック館での二重殺人完全犯罪を目論んだアリバイトリック。
   8月「針の目」 島を舞台に古の海賊財宝の宝捜し。これまたクイーン版「黄金虫」・・からの ・・・
   9月「三つのR」 被害者が書いた小説通りに進行する事件 、ん?どっかで読んだ事が・・からの・・・
  10月「殺された猫」 暗闇仮装パーティでの刺殺。迷路状態の床を難なく通れた人物は。
  11月「ものをいう壜」 コカイン密売とチェスタートン と告げ口する壜。
  12月「クリスマスと人形」 まるでルパンのような怪盗の宝石付き人形盗難予告と人物トリック。

No.6 5点 虫暮部 2021/01/04 11:56
 当時の米国のラジオドラマの位置付けは想像するしかないが、マニア向けだったわけではまぁないだろう。ファンの裾野を広げるようなライト・ユーザー向けのミステリ作品があるのは良いことだし、EQがその一翼を担った心意気も判る気がする。
 但し、“初心者もマニアも満足” な作品作りはなかなか難しいのであって、“雰囲気を楽しむ” 以上の名品は見当たらず。つい “くっだらねぇ~” と叫んでしまった話もある。

No.5 6点 nukkam 2016/08/22 00:13
(ネタバレなしです。上下巻合わせての感想です) ラジオドラマの脚本を小説化(ノヴェライゼーション)した12の短編を収録して1952年に発表された短編集で、探偵クイーンの助手役としてニッキー・ポーターが登場しています。原型であるラジオドラマは1939年から1948年にかけて放送されており、そこからセレクトして小説化するにあたり1月から12月までの各月を当てはめたようですが季節感を伴う作品になっているのは少ないです。元がラジオドラマ脚本のためかプロットがシンプルで読みやすい作品が多く、またレギュラー登場人物のキャラクターが小説世界と違っているのには違和感を覚えました(本書の方が軽目のキャラです)。トリックの再利用が気になる作品もありますが怪盗との対決が楽しめる「クリスマスと人形」、大胆な結末の「皇帝のダイス」、しっぺ返しが爆笑モノの「くすり指の秘密」あたりが個人的にはお気に入りです。

No.4 7点 E-BANKER 2015/02/26 22:20
早川文庫版の上巻とも言える『犯罪カレンダー(1月~6月)』に続き、下巻である本書を読了。
その月に因んだ事件を扱うというのが大前提であるが、あまり関係のないような話も混じっているような気もする・・・
それはさておき、エラリーとニッキー・ポーターのコンビが何とも微笑ましい。

①「墜落した天使」=7月。とある館で起こる殺人未遂事件を扱っているが、誰も撃てるはずのない空間で銃撃された不可能趣味が謎の本筋。いかにも犯人らしい疑似餌を取り除いていけば、真犯人に迫るのは容易だろう。
②「針の目」=8月。冒頭に“海賊と略奪された財産の物語である”と書かれている本作。これもいかにも怪しい人物が登場しているので・・・こうなるよなぁー。
③「三つのR」=9月。他の方も上巻に出てきた短編との類似性を指摘されているが、言われてみれば確かに・・・という感じ。でも個人的には好きな作品。ある人物の書いた筋書きどおりに殺人事件が起きるなんて、あの名作(「○の悲劇」)を想像させるではないですか??
④「殺された猫」=10月。10月31日の復活祭の夜、ある建物の13階に集まる男女。照明の落とされた部屋に突然上がる悲鳴。明るくなった奥の部屋から発見される刺殺死体・・・っていう魅力的な謎を扱う本作。シンプル・イズ・ベストとでも言うべきエラリーの解法が見事に決まるラスト! ということで短編の良さが詰まった佳作。
⑤「ものをいう壜」=11月。作中にチェスタトンの「見えない男」が引き合いに出されるなど、プロットに類似性が見られる本作。
⑥「クリスマスと人形」=当然12月。貴重なダイヤモンドを散りばめた人形。その人形がクリスマスイブの当日NYのデパートで展示されることに。しかしあろうことか大怪盗“コーマス”がその人形を強奪することを宣言した・・・って、まさかクイーンがルパンばりの怪盗ものを書くなんて! コーマスにしてやられたはずのエラリーが余裕たっぷりなのが「なぜ?」って気がした。

以上6編。
突っ込みどころは結構あるのだが、短編集としてトータルで評価するなら十分水準以上だと思った。
上巻から通しで読むと同種のプロットに飽きがくるのかもしれないので、上下分けて読む方がベターかもしれない。

エラリーとポーター、そしてクイーン警視のやり取りはやっぱり魅力的だな。
時折登場するヴェリー部長刑事がすっかり道化役となっているのも面白い・・・(笑える)
(個人的ベストは④だが、③や⑥も好み。あとはイマイチかな。)

No.3 6点 2011/09/14 21:34
クイーンの歳時記事件簿も後半になると、その月ならではというところが怪しい作品も出てきます。
7月は、夏である必要さえないような事件です。『新冒険』の某作品を連想させるところもありますが、こちらの方が自然だと思います。さらにクイーンには珍しいタイプのトリックも使われていて、まあまあの出来。
8月の宝探しは、殺人を絡めた上ひねりもあって、2月より好きです。ただしこれも8月でなくてもいいでしょう。
がっかりしたのが、9月の二番煎じ。これは上巻収録作の方が暦にちなんでいました。
10月は前半6作も含めた中で、最も気に入っている作品。クイーンらしいロジックが鮮やかです。ただし、現実的にはその状態を保っておくのは非常に困難ではないかという弱点はありますが。なおこの10月と11月は、他の作品とは違い、もったいぶった前口上がありません。
12月はやはりクリスマス。真相はすぐ見当がつきますが、怪盗による人形盗難が起こるまでの過程はなかなか楽しめました。

No.2 6点 Tetchy 2011/03/30 21:40
前作『~カレンダー<1月>~<6月>』で久々に初期の知的ゲーム的面白さを堪能でき、本書においても同様の愉悦を期待したが、いささか失速感があるのは否めない。作品に瑞々しさがなく、作者クイーンの息切れが行間から聞こえてきそうだ。

そしてこの両短編集は趣向的、内容的にも対を成しているように感じた。
一番顕著なのは先の短編集に収録されている4月の「皇帝のダイス」とこちらの9月の事件「三つのR」の近似性だ。他にもキャプテン・キッドの隠した財宝の在処をキッドの暗号から探り当てる「針の目」は2月の事件「大統領の5セント貨」でエラリイがジョージ・ワシントンが隠した遺品を当てるという、歴史上の人物が残した暗号にエラリイが挑戦するという図式が共通している。さらにネタバレになるが「マイケル・マグーンの凶月」と「クリスマスと人形」も犯人が依頼人だったという点で共通している。

あえて個人的ベストを挙げるとすると「殺された猫」か。ストーリーに溶け込ませた何気ない描写が最後に犯人特定のロジックの決め手となるとは思わなかった。こういう無駄のない作品を読むと本格ミステリの美しさを感じる。

しかしクイーンが意外とヴァリエーションのないことに気付かされた、ちょっと寂しい読後感だった。

No.1 6点 monya 2010/10/11 23:18
1月~6月よりこちらの方がミステリとして良いかも。
どっちにしても私は大好きだ。
裏組織から怪盗まで、短い話の中でクイーンが走り回る
時々往年の推理の冴えをのぞかせるのも良し
クイーンが好きなら買って損は無いでしょう


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