皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] エラリー・クイーンの冒険 エラリイ・クイーン |
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エラリイ・クイーン | 出版月: 1958年01月 | 平均: 7.16点 | 書評数: 19件 |
東京創元社 1958年01月 |
東京創元社 1961年06月 |
東京創元社 1961年06月 |
東京創元社 2018年07月 |
No.19 | 7点 | じきる | 2023/02/14 11:33 |
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粒揃いの短編集。ロジックそのものよりも、アイディアや小説作りを含めてのバランスの良さに魅力を感じました。 |
No.18 | 6点 | レッドキング | 2022/03/13 06:51 |
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エラリー・クイーン第一短編集。各タイトル「~の冒険」は略。
「アフリカ旅商人」 クイーン教授による3人の学生への犯人当てロジック現場実習講義。8点。 「首吊アクロバット」 絞殺された女曲芸師。便利な諸凶器差し置いて、何故に手のかかる殺し方を・・6点。 「1ペニー黒切手」 高額奇貨切手の盗難事件。ホームズ「青いルビー」をダミーにしたツイスト真相。6点。 「ひげのある女」 模写油絵の夫人肖像にヒゲが・・のダイイングメッセージ、この意味は如何に・・4点。 「三人の跛の男」 跛の男が三人も揃った誘拐団。「完全に同じサインは偽造」て長編ネタ思い出す。5点。 「見えない恋人」 誰もその恋心に気づかなかった恋する殺人者のトリック。6点。 「チークタバコ入れ」 連続殺人を犯してまでしてタバコ入れを盗む目的は何・・4点。 「双頭の犬」 カー風味に「黒猫」「まだら紐」「バスカヴィル」調味料加わり(でも犯人殺さなくたって・・) 7点。 「ガラスドーム付き時計」 宝石と時計のダイイングメッセージ・に見せかけた・・4点。 「七匹の黒猫」 次々と黒猫を購入した猫嫌いの老女。踏み込んだ屋敷には黒猫の惨殺屍骸が・・6点。 「いかれたお茶会」 何故その闇夜に夜光塗料時計は鏡に映らなかったのか(アリス擬えが楽しく)・・7点。 ※第一篇が白眉。で、全体で(8+6+6+4+5+6+4+7+4+6+7)÷11=5.7272…、おまけして6点。 |
No.17 | 6点 | makomako | 2021/04/11 12:38 |
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エラリークイーンの短編がぎっしる詰まった作品集です。
氏の精緻な構成は短編にも十分活かされていると思います。事件の提示、登場人物が現れる、意外な展開といった一発トリックがいかにうまくいっているかということになりますが、評判の高い(様です)「ガラスの円天井付き」などは私には合いませんでした。誕生石など全然興味がないもののお話なので。 でも全体としては十分楽しめました。 |
No.16 | 5点 | 虫暮部 | 2020/02/15 12:17 |
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読みながら思ったこと(順不同)――
・こういうプロットは他にも読んだことがある(クイーンの作品の方が元ネタなのかもしれないが)。 ・文化に基づく習慣を根拠に性別を推測するのは強引。 ・誰一人引っ掛からない偽の手掛かり、って単なるページ稼ぎでは。 ・詐欺行為のカムフラージュに窃盗/強盗/不法侵入を行うのは、捕まるリスクを増やすだけでは。 ・七匹も買われる前に何か変だと思わないものか。店員が“買ったものをどうしようと御客様の自由ですから”と言うキャラクターならともかく。 ・殺人現場を調査中のエラリーは、何故“偶然、ドアノブを拭いて指紋を全部拭きとった”のか。下手すると証拠隠滅。 しかし、突っ込みどころの無い作品が優れていると言うわけでもなく、一番面白かったのは、手掛かりがわざとらしい「ガラスの丸天井付き時計の冒険」。巡らした策が却って首を絞めている、余計なことしなきゃよかったのに、と普通なら言うところだが、ここでは犯人のミスに説得力が認められていいね。 |
No.15 | 10点 | 名探偵ジャパン | 2019/08/25 17:04 |
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本格ミステリ短編集のマスターピースとも言える重要作品ながら、初訳から実に60年近くもの年月が経って、2018年にようやく新訳が出ました。国名シリーズが十年前くらいに角川から新訳が出たりしたのに比べると、この動きの遅さは異常ですが、とにかく喜ばしいことです。
内容について、今さらどうこう言うレベルのものではないのですが、もしミステリ作家を志す人がいて、「何か勉強になるいい本ない?」と聞かれたら、私は迷わず黙って本書を差し出すでしょう。 クイーン作品が優れているのは、謎の提示と解決だけでなく、その間に「説得力のある推理」がきちんと組み込まれていることです。それをやるためには、きちんと「手掛かり」を余すことなく出しておかなければならず、かつ、それが出てきた途端に読者にトリックがばれてしまうような、安易なものでは意味がありません。この辺りのさじ加減がクイーン作品は実に絶妙で、読んでいて「すぐに分かった」と拍子抜けすることも、「分かるかこんなもん」とか「確かに『書いてあった』けどさあ……」と、もやもやを感じることもまずありません。 これは恐らく、作者が読者に、謎を「解かせまいとしているか」それとも「解かせようとしているか」の違いなのではないでしょうか。「本当は解いてもらいたくないけど、本格だし『フェア』を貫かないといけないから、かなり遠回しに書いておこ。これで文句ないだろ」という、「フェアであることのアリバイ」として手掛かりが書かれた本格は、どうしても「もやもや」が残ってしまいます。作者がドヤ顔で、「分からんかったやろ! でも確かに『フェア』に手掛かりは書いてたもんね! バーカバーカ」(言いすぎ 笑)と読者に喧嘩をふっかけているような作品も散見されます。そこへきて、クイーン作品は大人です。「ここに注目してくれれば解けたのですけどね」と、やさしく教えてくれるような感じです。そう言った意味では、冒頭作の「アフリカ旅商人の冒険」は(これが一番最初に収録されていることも含めて)実に象徴的です。 本格ミステリは「作者と読者の知的勝負」ですが、それは一方がマウントを取って相手を戦闘不能になるまでボコボコに殴りつける「リアルファイト」ではないはずです。新訳で本作を読み直してみて、古き良き、この短編集のような余裕のある大人な本格ミステリがもっと増えてくれるといいなと思いました。 ちなみに、本書評をもって私の書評が300に達しました。せっかくの記念なので、何かビッグタイトルをと思い本作を選びました。 今後ともよろしくお願いいたします。 |
No.14 | 10点 | HORNET | 2019/07/07 20:33 |
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ロジカル・ミステリの「うまみ」を短編として凝縮したような作品集。
意味深な伏線を仕込みながらじわじわと結末に向かう長編もそれはそれで楽しい。短編はロジックに特化して、削ぎ落された純粋なパズラーぶりがたのしい。堪らない。 短い尺でありながらも、現場の状況や情報から考えられる可能性を挙げ、不可のものを一つずつ潰していく丁寧さには揺るぎがない。他の人は気にならない犯行の瑕疵に気を留め、そこから真相にたどり着く様は期待通り。私としては「三人の足の悪い男の冒険」「見えない恋人の冒険」「チーク煙草入れの冒険」「七匹の黒猫の冒険」が、エラリーが何をどう切り崩すのか見当がつかなくて、その分後半を嘆息しながら読んだ。 新本格の作家たちがこぞって崇拝するクイーンの魅力が凝縮された贅沢な一冊だと言いたい。 |
No.13 | 9点 | ことは | 2019/02/01 12:29 |
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平均点はいまひとつですね。やはり短編集は高得点は難しいのか。
友人にすすめたら「教科書みたい」といっていましたが、謎解きミステリの典型を体現しているからだと思います。 「シャーロック・ホームズの冒険」と並んで、謎解きミステリ短編集の基本図書ということで、この点。 |
No.12 | 7点 | Tetchy | 2018/12/20 23:47 |
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旧訳版では収録されていなかった「いかれたお茶会の冒険」と序文が収録された、完全版であると知ったため、改めて入手して読むことにした。
従ってそれ以外の短編については感想は書かず、ここでは未読作品である「いかれたお茶会の冒険」とその他旧訳版との相違や当初気付かなかったことについて述べていきたい。 さてその「いかれたお茶会の冒険」はエラリーが友人のリチャード・オウェン邸に招かれたところから始まる。 邸の主人の失踪事件が本書のメインだが、正直この事件の犯人は読者の半分は推測できるに違いない。そしてその動機も読んでいると自ずと解る、非常に安直なものだ。 しかしそこから死体の隠蔽方法、更にエラリーの犯人の炙り出しが面白い。 そして犯人は早々に解っているものの、それを特定する証拠、そして死体の隠し場所が解らないエラリーは奇妙な贈り物を贈って周囲の動揺を誘い、大鏡の裏の隠しスペースをそれら贈り物から暗示させ、死体を見せることで犯人の自白を強要するのだった。 この贈り物に隠されたメッセージが『鏡の国のアリス』に出てくる歌の一節でこれが大鏡の裏に隠しスペースがあることを示唆している。即ちアリス尽くしのガジェットに満ちた作品なのだ。 そしてエラリーが企図した奇妙な贈り物を贈って不安感を煽る趣向は成功している。なぜなら読んでいる最中に私もこれら奇妙な贈り物の真意が解らず、何者がどのような真意で行っているのか解らず不安に駆られたからだ。 派手さはないがクイーンの見立て趣味とまた犯人を特定するためには罠をも仕掛ける悪魔的趣向などが盛り込まれた作品でエラリーがロジックのみでなく、トリックも施すことを示した作品だ。 今回この「いかれたお茶会の冒険」以外は再読だったが、改めて読むとクイーン作品のリアリティの無さに再度苦笑せざるを得なかったと云うのが正直な感想だ。 さて冒頭にも述べた旧版との比較をここからしてみよう。 まず「アフリカ旅商人の冒険」ではエラリーを大学に招いた教授の名前が旧訳版ではアイクソープ教授となっているのに対し、本書ではイックソープ教授と表記が改められている。 “イッキィ―退屈でつまらないと云った意味”、“イック―いやな奴という意味がある―”といった洒落が出ていることから恐らくはこちらが正しいのだろう。 また旧版とはタイトルが若干変えられているのもあり、冒頭に挙げた未収録作品だった「いかれたお茶会の冒険」は当時は「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」となっている。このキ印という言葉、2018年の今ならばほとんど死語だろう。「きちがい」の隠語として使われていたが、今となってはそんなことを知る人も少なくなり、また「きちがい」もまた差別用語となっているから、変えざるを得なかったのだろう。 また「三人の足の悪い男の冒険」も旧版では「三人のびっこの男の冒険」だったが、これも同様に「びっこ」が差別用語に指定されていることによる改題だろう。 しかしようやく完全版の刊行となったことは喜ばしい。旧訳版を読んでから9年経っていた。 信ずればその願いは通ず。9年は長かったとは思わない。いつまでも待つぞ、こんな風に望みが叶うなら。 |
No.11 | 8点 | nukkam | 2018/07/22 05:24 |
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(ネタバレなしです) 1934年発表のエラリー・クイーンシリーズ第1短編集の本書は日本では半世紀以上前から創元推理文庫版で読むことができたのですが、大いに残念だったのは米国オリジナル版が11作を収めていたのに対して10作しか収めていなかったのです(理由は別のアンソロジー文庫版に問題の1作が収められたのでダブリ回避で削除されたようです)。その不満は2018年に新訳の創元推理文庫版で全11作を収めて出版されてようやく解消されました。初期のクイーン長編(つまり国名シリーズ)は文章が味気なく無駄な表現が多くて読みにくいのですが、本書の短編は(短編としては詰め込み過ぎの感もありますが)それらの欠点が目立ちにくくなっており、しかもクイーンならではの本格派推理小説の謎解きはしっかり楽しめますので入門編としてもお勧めです。不気味な雰囲気の「双頭の犬の冒険」、猫嫌いなのに毎週1匹ずつ猫を買っていく人物という謎が魅力的な「七匹の黒猫の冒険」、推理合戦が楽しい(呼吸する時計の推理には感銘しました)「アフリカ旅商人の冒険」が私の好みですが他の作品も負けず劣らずの高水準で、粒揃いの短編集です。 |
No.10 | 7点 | クリスティ再読 | 2018/01/22 22:36 |
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パズラーの短編集、というとどう長編とは違うメリットを見出すのか、が工夫のしどころなのだが、この短編集だと個々の短編の内容以上にまとまりの良さみたいなものを感じる。「~の冒険」という題名の付け方はホームズ物を連想させるわけで、ある意味ホームズ・オマージュの決定版を目指して書かれた、と見ることもできよう。
それぞれの話の膨らませ方・味の付け方にいろいろヴァラエティがあって、楽しめるのがいいところである。個人的には「見えない恋人の冒険」が田舎町を舞台にした後年の作品を連想させて、そういう田舎町ならではのストーリーとトリックなっているのがいいところだと思う。松本清張風のリアリティのあるトリックなのでは。「双頭の犬」や「七匹の黒猫」の怪奇趣味とか、クイーンにしては意外な持ち味だったりするのも佳い。何やかや言って「短編集としての短編パズラー集」という面では、その精華といったもののように感じる。 まあだから「新冒険」だと「神の灯」というキラーコンテンツがあって、「神の灯」ありき、になりかねない作品集なんだけど、「冒険」は全体のまとまりで楽しむものなのだろうね。 |
No.9 | 8点 | 青い車 | 2016/02/27 23:31 |
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偽の手がかりを散りばめ短篇で多重推理を実現した『アフリカ旅商人の冒険』。チェスタトンとポウのオマージュ的な謎の設定が魅力の『首つりアクロバットの冒険』と『一ペニイ黒切手の冒険』。小噺的な遊び心があふれる『ひげのある女の冒険』。シンプルなトリックが効果的に機能した『三人のびっこの男の冒険』。銃弾をめぐる推理が面白いストレートな逸品『見えない恋人の冒険』。シンプルでキレのあるロジックが冴えわたる『チークのたばこ入れの冒険』。オカルト趣味なようでいて異色の解決を見せてくれる『双頭の犬の冒険』。ダイイング・メッセージに先鋭的なアレンジを加えた『ガラスの丸天井付き時計の冒険』。もっとも不可思議な謎を突き詰めた結果おぞましい真相が現れる『七匹の黒猫の冒険』。
エラリー・クイーンの持ち味、論理的解決が短い中にも詰まった好篇がそろっています。特に『ガラスの丸天井付き時計の冒険』がお気に入り。長篇『シャム双子』と同様ダイイング・メッセージをひねりにひねった作品ですが、意外なところが犯人の落とし穴となった皮肉さがたまりません。 |
No.8 | 8点 | 斎藤警部 | 2015/12/22 12:46 |
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これは読んでて大変に楽しかった。こだわりの論理構築が事件の突飛な不可思議性とカラフルに絡み合い、最初から最後まで実に美味しく味わえる。意外な真相、意外な真犯人に軸足置いたストーリープランも嬉しい。たとえば無双の切れ味で魅了する初期ホームズ物とは違う、好ましい安定感が底に敷かれた本格短篇集だ。だいたい、題名眺めてるだけでわくわくして来ちゃうでしょ。
アフリカ旅商人の冒険/首つりアクロバットの冒険/一ペニイ黒切手の冒険/ひげのある女の冒険/三人のびっこの男の冒険/見えない恋人の冒険/チークのたばこ入れの冒険/双頭の犬の冒険/ガラスの丸天井付き時計の冒険/七匹の黒猫の冒険 (創元推理文庫) |
No.7 | 7点 | ロマン | 2015/10/20 16:18 |
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十編からなる短編集。謎自体が魅力的だっのが『七匹の黒猫の冒険』猫嫌いのお婆さんが毎週一匹おなじような黒猫を購入するという、地上から30センチだけ浮いたような、奇妙なお話。それを解き明かすエラリイの論理、発想は、こちらもいちいち現実感が薄い。なのに、やっぱり、手がかりから一番現実的に推論するとそれしかないから、奇妙な味わいがある。また、謎の真相=犯人ではなくその二つをきちんと論理で繋いでいるところが好印象。『アフリカ旅商人の冒険』はロジックが美しかった。三人の学生たちの間違い推理も愉しい。 |
No.6 | 5点 | ボナンザ | 2014/04/08 17:20 |
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はちゃめちゃの会は乱歩のアンソロジー収録。念のため。
クイーンといえばアイディアよりも論理性というイメージが強いが、この短編集では違う一面も見られる。 |
No.5 | 6点 | ミステリーオタク | 2012/09/12 23:28 |
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「キ印ぞろいのお茶会の冒険」が一番ゾクゾクして面白かったけど最近の本では割愛されているのかな? |
No.4 | 6点 | E-BANKER | 2012/01/28 00:01 |
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名探偵E.クイーンが大活躍する作品集。
短編になり、ますますロジックの冴えた作品が並んでるなあという印象。 ①「アフリカ旅商人の冒険」=エラリーが大学の教授となり、3名の学生に探偵術を指南するという趣向が面白い。学生が示した解答を全て退け、エラリーが解き明かす解答は、まさに「意外な真犯人」っていうやつ。 ②「首つりアクロバットの冒険」=他に手っ取り早い殺害方法があるにも拘わらず、無理やり首つり殺人という方法を選んだ謎。ロープの結び目という1つの事象から全てが解き明かされる。 ③「一ペニイ黒切手の冒険」=こちらは、ホームズものの名作「六つのナポレポン像」を思い起こさせるプロット。貴重な古切手が盗まれるが、ばら撒かれた証拠は全て○○○だったということ。 ④「ひげのある女の冒険」=これは一種のダイイング・メッセージもの。それはいいのだが、この真相はあまりにもリアリティがないのではないか? いくら隠ぺいしたとしても、普通気付くよ! ⑤「三人のびっこの男の冒険」=殺人&誘拐現場に残った3人分の靴の跡。しかも全てが「びっこ」のような跡だった・・・。真相は短編らしい逆転の発想。ありがちといえば、ありがちだが。 ⑥「見えない恋人の冒険」=本作のエラリーはなかなかアクロバティック。墓あばきにより、死体の検分を行った結果、「意外な真犯人」が判明する。これは切れ味のあるロジックが決まった作品。 ⑦「チークのたばこ入れの冒険」=殺人現場に残された「たばこ入れ」から導かれるエラリーの明快なロジック。これも「意外な真犯人」というプロットなのだが、ちょっと分かりにくい印象。 ⑧「双頭の犬の冒険」=旅の途中のエラリーが事件に巻き込まれていく様子がなかなか面白い。ただ、中身そのものはあまり感心しないが・・・ ⑨「ガラスの丸天井付き時計の冒険」=これもダイイング・メッセージものだが、やや変化球気味。「閏年」をテーマにしたロジックがなかなか珍しい。ただ、そこまであからさまなことするかなぁ・・・という疑問は残る。 ⑩「七匹の黒猫の冒険」=猫嫌いのはずの老婦人が、なぜか毎週黒猫を1匹ずつ買い求める謎。これは「謎」としてはかなり魅力的。 事件は殺人&殺猫(!)事件に発展するが、これもラストは「意外な真犯人」が華麗に指摘される。 以上10編。 さすがにクイーンは短編になってもクイーンってことかな。 どれも徹底したロジックが特徴的ですが、何となく「ロジックのためのロジック」というような作品も混じっている印象。 まぁ、でも読者が推理していくには楽しい作品が揃っているので、そういう意味ではやはり読む価値有りでしょう。 (①⑩が中ではお勧めかなぁ。ダイイング・メッセージものはちょっといただけない気がした) |
No.3 | 6点 | ミステリー三昧 | 2011/04/10 01:51 |
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<創元推理文庫>エラリー・クイーンの短編集です。
どれも1つの「なぜ」「どうして」に対してロジックの積み重ねていきながら犯人を導き出すといったシンプルな構成になっています。バラエティに富んだ短篇集とは言い難いですが、あくまでフーダニットに拘ったエラリー・クイーンらしい作品と言えます。私的には傑作と呼べる作品はなくて、どれも並みの範疇ですが『双頭の犬の冒険』と『七匹の黒猫の冒険』は頭1つ分、評価が高いです。『双頭の犬』は普段とは違うオカルトめいた雰囲気とフーダニットの意外性、『七匹の黒猫』は「なぜ1匹ずつ黒猫を買うのか」という問いから導き出されるロジックが優れていました。ロジックの飛躍度は10篇中で最も高く、また長編の『フランス白粉の謎』と同じプロットでありながら、結論が綺麗に決まっていました。 |
No.2 | 8点 | Tetchy | 2009/03/24 20:15 |
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エラリー・クイーンが活躍する短編集。しかし短編ながらもその謎とロジックは全くレベルを下げていない。いやむしろ短編だからこそ一切の無駄を排しており、さらにロジックに磨きが掛かったような印象を受ける。
また短編の中にはそれまでの長編の雛形ともいうべき作品が見られる。 例えば冒頭の「アフリカ旅商人の冒険」では複数の推理合戦というトライアル&エラーの趣向が盛り込んであり、これは国名シリーズでは『ギリシア棺の謎』と同じ趣向である。「一ペニイ黒切手の冒険」では稀覯本の紛失と高額な古切手を巡る切手収集家の事件という設定は『ドルリイ・レーン最後の事件』と『チャイナ・オレンジの謎』を思い浮かべるし、「ひげのある女の冒険」の1つの屋敷の中で展開する遺産相続の軋轢でぎくしゃくする金持ちの子供らの息詰まるような関係、そして突然訪れる火事などは、名作『Yの悲劇』を思わせる。 「見えない恋人の冒険」で出てくる墓掘りシーンは『ギリシア棺の謎』を思い出した。また『フランス白粉の謎』でクイーンが試みた、最後の一行で犯人の名が明かされるという趣向は本作では「チークのたばこ入れの冒険」と「七匹の黒猫の冒険」と2作で使われている。しかし『フランス白粉~』ではこの趣向に無理を感じたが、この2作では短編であるゆえにスピード感があり、引き締まって演出効果が良く出ている。 特に「三人のびっこの男の冒険」、「見えない恋人の冒険」、「チークのたばこ入れの冒険」、「ガラスの丸天井付き時計の冒険」、「七匹の黒猫の冒険」の諸作でみられる不可解な謎、各所に散りばめられた証拠・証言の提示ならびにそれらから解明されるロジックの美しさは実に素晴らしく、これらが収められている後半では出来が尻上がりに良くなっている感じがした。 『シャーロック・ホームズの冒険』はオールタイムベストに必ず選出されるのに、なぜ本作は上がらないのか、実に不思議だ。もっと評価されていい短編集だと声高に云いたい。 |
No.1 | 7点 | 空 | 2009/03/14 12:52 |
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短い中に推理の競い合いの趣向を取り入れた最初の『アフリカ旅商人の冒険』が、解決もきれいにまとまっていて、続く作品の期待を高めますが、次の凶器になり得る物が現場にいくつもあったという謎の『首つりアクロバットの冒険』はいまひとつです。ドイルの『六つのナポレオン胸像』パターンをひねった『1ペニー黒切手の冒険』もおもしろいですが、切手の隠し場所は無茶に思えます。まあ、M.B.リーが切手収集を趣味にしているだけに、あり得ることを確認して書いたのかもしれません。『見えない恋人の冒険』が犯人のトリックも手がかりもよくできた傑作。『双頭の犬の冒険』も謎解きは単純ですが、雰囲気はあります。 |