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[ 本格 ]
三角形の第四辺
エラリイ・クイーン
エラリイ・クイーン 出版月: 1969年01月 平均: 4.11点 書評数: 9件

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早川書房
1969年01月

早川書房
1979年09月

No.9 5点 HORNET 2024/08/13 20:29
 大実業家・アシュトン・マッケルの息子デインは、父親の信じられない秘密を知ってしまった。それは、同じアパートメントのペントハウスに住む有名服飾デザイナー、シーラ・グレイと道ならぬ仲になっていたことだ。義憤に駆られたデインは、シーラに接触するが、あろうことかデイン自身もシーラに恋してしまう。そしてある日真実を問い詰めようとしたデインは、興奮するうちにシーラの首を絞めてしまった。危うく正気を取り戻したデインは手を放し、シーラは助かるのだが、デインが立ち去ったすぐ後に、シーラは何者かによって銃殺されてしまった―

 父子が絡んだ男女問題のストーリー、それなりに面白かった。問題は、シーラを殺害した真犯人は誰か、という本作の核だが・・・。デザイナーという職業をうまく題材にして、関わった男性たちを辿るという仕掛けはまずまずだったと思う。ただ、それを経たうえでの最後の真相(いわゆるどんでん返し)はちゃちな仕掛けだったと言わざるを得ないかも。それだったら、どんでん返しなく当初の解決の方がよかったような気もしてしまった。

No.8 5点 虫暮部 2020/11/03 11:38
 物語中盤の構成要素を思い返すと、もっと展開を楽しめそうな気がするが、何故か凡作。最後のどんでん返しは不要じゃないかなぁ。恋人を探す意外な手掛かりは面白いんだから、そこで止めておいたほうが良かったのでは。どっちにせよ凡作だけど。

 ところで、271ページの食品の名称は多分、ニッシュ → クニッシュ(knish、例外的に k も発音する)、トーチラ → トルティーヤ(tortilla)、ですね(修正されてる?)。

No.7 4点 レッドキング 2020/08/18 22:19
あれ?今クイーン読んでんだよな?ってな位に、こじゃれたフランスミステリ風味サスペンスで話が進み、お!クイーンで久しぶりの7・いや8点?て期待させといて、終盤で、おい!ミステリ十戒の「爺やはイカン」に触れるだろが!3点まで急降下か・・と思わせて、アガサの二大十八番の一つにダミー返しして、結果4点。
アガサの「女の恨みって怖いわよ」に、クイーンは「いやあ、実際に手を出しちゃうのは圧倒的に男だし」と返歌。ま、女は心の底にため込んじゃうってことね。

No.6 5点 ことは 2019/08/12 14:48
ン十年ぶりの再読。
以前の記憶では、クイーン長編38作中で、これと「真鍮の家」が最低評価2作でした。
再読してみて、事件が起きるところまで、なかなかそそられる状況設定で面白かったですが、その後は(皆さん書かれていますが)警察が無能すぎる、ラストの決め手も弱いなど、弱点だらけで、お勧めできません。
しかし、クイーン好きとしては、ラストの決め手のクイーン好み感や、説得力の弱いドンデンなども楽しめたので、最低評価からは脱却。(「最後の女」「心地よく……」のほうが下かな?)
4点と迷った5点

No.5 4点 ボナンザ 2019/01/14 19:07
クイーンの作品だと思わなければそれなりに楽しめるかもしれないが、謎解きの態をなしていないのはいかんともしがたい。

No.4 3点 クリスティ再読 2017/02/26 09:47
確か横溝正史だったと思うけど、作家の実力は最高傑作と同様に最低の作品によっても推し量れる...なんてことを言っていた記憶があるが、本作あたりがクイーン正典の中での最低作くらいになるんだろうね。執筆はリーじゃなくて何作かライターをするデイヴィッドスン。
実は本作、小説としてはそう悪くないし、次々と焦点の当たる容疑者が切り替わる構成(まあ裁判モノにしちゃうと捜査当局に軽率感が出るので?だが)も悪いわけじゃない。なのでデイヴィッドスン頑張ってる感はある。問題は、ダネイが担当したはずの謎解き部分である。
被害者が現時点で付き合っていた男の名前がわかれば、それがすなわち犯人だ、というのはいかにも論理が飛躍しすぎているわけで、そりゃ「なぞなぞ」だよ。まあそれだけならともかく、ひっくり返した真相は、被害者視点での犯行描写から推し量られるタイムテーブルと整合性がない(来訪者多すぎで時間的余裕がない。パズラーで神視点3人称はあまり宜しくないように評者は思う...)。さらに悪いのは、エラリーの推理のベースになった証拠が最後に何の伏線もなくひっくり返される(おい!)...というわけで、本作の戦犯は全面的にダネイである。
とはいえ、クリスティの最低作である「ビッグ4」とか「フランクフルトへの乗客」だとホント小説の態をなしてないから、クイーンは「最低作でもまあ読めるからマシ」ということか。

No.3 4点 nukkam 2016/08/17 15:18
(ネタバレなしです) 1965年発表のエラリー・クイーンシリーズ第27作で、「第八の日」(1964年)を代作したSF作家のエイヴラム・デイヴィッドスン(1923-1993)が書いたとされる本格派推理小説です。「第八の日」が時代は現代ながらも一般社会とは異なる社会を描いていたところがSF作家らしい発想だと思いましたが、本書はそういう意味では普通の作品です。マッケイ家の家族のきずなに影を落とした人物が殺され、殺人容疑がマッケイ家の人々の間を転々とするプロットです。全く無駄のない展開で終盤までなかなか読ませます。問題は結末であまりにもお粗末です。最初の推理説明もそれほど魅力的ではありませんが読者に全く提示されていなかった手掛かりでのどんでん返しには更にがっかりしました。

No.2 4点 Tetchy 2012/03/02 22:52
今回のエラリイは安楽椅子探偵。映画のエキストラの一員としてスキーで滑っているシーンを撮影中に事故に遭って入院をした状態で推理にあたる。

3人のマッケル一家だけが容疑者であるという非常に登場人物の少ない事件。そんな事件でもクイーンはロジックを開陳させてみせる。それは彼の十八番であるアナグラムである。このアナグラムが実にシンプルであるがゆえに解決が困難な事件に光明を投げかける。
しかし物語はそのエラリイの鮮やかなロジックで解決した後、また別の真相が控えている。この辺は実に上手いミスリードだろう。
そしてこの作品でも探偵の能力の限界をエラリイは見せつけられてしまう。

正直に云って私はこのどんでん返しの前の真相の方が好きだ。作中でチェスタトンの「見えない男」を仄めかす記述があり、また犯人が逮捕された後にも事の真相を告げる新聞を読んだ読者は気が抜けたようになった、などという自嘲めいた記述もある。つまり作者クイーンがこの真相を気に入らなかったような節が見られる。

他作家の手によるクイーン作品だが、結局は当時クイーンが取り組んでいた人の心理の謎を主体にした真相を選ばせている。本作は逆にそれがバランスを欠いているように感じてしまった。

No.1 3点 2010/03/09 21:06
プロットはやはり主にダネイが考えたのでしょうが、実際の執筆はエイヴラム・デイヴィッドスンの手になる、骨折のため入院中のエラリーがベッド・ディテクティヴにチャレンジする作品です。しかしその結果は…
三角関係のそれぞれの辺を構成する登場人物たちに順番に容疑がかかっていくという発想自体は、悪くないとは思うのです。しかし、最初の容疑者はともかく、その後もただむやみに逮捕を繰り返していくだけのクイーン警視の捜査ぶりは乱暴すぎます。
それに、こういう展開ならば最後にもっと鮮やかな意外性ある解決(たとえばクリスティーのようなタイプの)を用意してくれないとすっきりできません。エラリーを登場させないで、最後までデインの視点を中心にして構成していった方がよかったのではないかという気がします。


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