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[ 本格 ]
間違いの悲劇
エラリイ・クイーンもの ほか
エラリイ・クイーン 出版月: 2006年01月 平均: 6.00点 書評数: 10件

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東京創元社
2006年01月

No.10 6点 ◇・・ 2022/09/23 18:28
短い中にも二転三転、プロットは目まぐるしくどんでん返しをし、万華鏡さながらの様相を呈する。
物語の主題は現代的だが、普遍的な人間性に裏打ちされている。神聖さと俗っぽそが混じった独特の手触りがある。

No.9 7点 レッドキング 2022/05/27 15:07
エラリー・クイーン第七短編集。 て言っても、中編一とダネイがリーに送った長編プロットと、あとは・・おまけ
  「動機」 小さな町で起こる連続殺人、文学少年ー酒場亭主ー権力老嬢・・被害者の「環」の構成が見事。8点
  「結婚記念日」 毒殺のダイイングメッセージはポケットから取り出したダイヤだった・・3点
  「オーストラリアから来たおじさん」 これ、もちっと真剣に考えれば分ったなあ!(>_<) 5点
  「トナカイの手がかり」 そりゃ、その名まで来れば一目瞭然だが、そこまで至るわけないじゃん。1点
  「三人に学生」 んなもん、知るか!(せいぜい、「すいへいりーべは~」にしてくれ)1点
  「仲間外れ」 ん、odd?  「クリスティー」「クイーン」「カー」でならば、即座に四通りは出るぞ。 1点
  「正直な詐欺師」 ん、5%? 今の我が国からみたら天文学的数字に見えるぞ・・3点
  「間違いの悲劇」 愚者達を操るラスボス、利という近代的合理を超えた最古にして最新の動機。7点
あまりにもあんまりなので、全体点数は巻頭中編とラスト梗概に対してのみ。

No.8 6点 虫暮部 2021/03/30 12:26
 「動機」は凄く良い。こういうノン・シリーズ作品をもっと書いていれば、探偵エラリーの苦悩でブルーにこんがらがった後期にも、そこから自由な佳作をもう少し遺せたのではないだろうか。

 未発表のシノプシス。読みたがる人はいるし、商品性があるのは判る。しかし明確に未完成なものを刊行して“このネタはEQが唾付けてました”と主張しちゃうのはどうなんだろう。

No.7 5点 E-BANKER 2021/03/08 16:26
~クイーンの既刊短編集に収録されていない中短編七編と未完成長編の梗概からなる、最後の「聖典」作品集である。単なる落ち穂拾いではなく、優れた作品や興味深い作品が揃っているので、ミステリファンには格別な贈り物になるに違いない~という作品。原書は1999年の発表。

①「動機」=とある田舎の村で起こる連続殺人事件。若き副保安官が必死に動機&真犯人を突き止めようとするが・・・。いわゆるミッシング・リンクがテーマと思われるのだが、うーん。クイーンにしてはぼやけた作品かなぁーと感じた。雰囲気は確かにあるんだけどね。
②『クイーン検察局』での3編。いずれも短いながら、どこかにキラリとした輝きがある(ほんの少しだけどね)のは、さすがというところか。中では「結婚記念日」が一番だと思うが、「トナカイの手がかり」もトリビア的で好き。
③『パズル・クラブ』での3編。これはアシモフの「黒後家蜘蛛会」を思わせる設定。他の3人がエラリーに向けて推理クイズを出題し、エラリーがあっという間に真相を見抜くというパターン。3編ともワンアイデアで大したことはないのだが、それはクイズですから・・・
④「間違いの悲劇」=これこそが本作の白眉。本作に纏わる詳細は他の方の書評を参照していただくとして、これはやはり「もったいない」というのがまず最初の感想。梗概というレベルでもここまで「読ませる」ストーリーを編む力量はクイーンということなのだろう。テーマとなっている「操り」についても、それ自体がうまい具合にミスリードを誘うようになっていて、それだけにラストのサプライズが嵌まっている。もちろん、国名シリーズでの鮮烈なロジックは期待すべくもないけど、ちゃんとした作品にならなかったのが返す返すも悔やまれる。

以上、〇編?
中味はもちろんだが、巻末の有栖川有栖氏の本作発表についての経緯がなかなか興味深い。かのE.クイーンの作品を”おこす”なんていうことになれば、自作品を発表する以上に大変なんだろうな。

それはともかく、期待以上に楽しむことはできた。クイーンの未読作品も残ってはいるんだけど、その手の入りにくさもあって、どうしても後回しになっている現状なのだが、やはり避けては通れないと再認識した次第。
やっぱり、ミステリー界の巨人、いや巨星だな。クイーンは。

No.6 5点 クリスティ再読 2020/02/16 15:48
作品にならなかったシノプシス「間違いの悲劇」を含む、落穂ひろい作品集である。中では「動機」が面白い。「ガラスの村」で「九尾の猫」事件が起きたような...犯人の動機も動機だし、探偵役もあか抜けたエラリーじゃダメで、やや泥臭いメロドラマで正解だと思う。これだけ50年代の油が乗った頃の作品で、なぜか収録漏れしていたもののようだ。
でダイイングメッセージを中心にしたパズルが3つ、パズルクラブのパズルが3つ、でどれも一種の「解釈学」みたいなもの。でいうと「仲間はずれ」は名前だけを分析しただけでも、3つのモノを2:1に分けるやり方は、いくつでも考えられてしまうから、正解なんてないんだと思うんだよ...
で問題の「間違いの悲劇」。どうも皆さんドルリー・レーンの四大悲劇に関連付けたがり過ぎてるように見受けられるんだが、このタイトルは、シェイクスピアの「間違いの喜劇」のモジリでクイーンは付けていると思うんだよ。ドルリー・レーンもクイーンたちにとっては40年も前の話なんだからねえ。「推理の芸術」が暴露したところによると、「最後の悲劇」でバーナビー・ロスが「終わった」のは単に出版社とのトラブルが原因で、しれっと5作目を書くプランがクイーンの二人の中にはあったらしい。名探偵なんて復活するのが昔からの定番(苦笑)。本人たちよりもファンの方がコダワリを持ちすぎているように感じるんだよ。事実、この梗概から小説化するのを試みた有栖川有栖が寄せた「女王の夢から覚めて」も、訳者の飯城勇三の解説も、ドルリー・レーンの話なんて一つもしていない。最終第4期のエラリー・クイーン作品として、見るべきだと思うんだよ。
内容については、これがちゃんと小説になっていたら、プロットの綾もいろいろあって面白かったのでは?とは思う。公序良俗に反する○○ってのを、エラリーがちゃんと承知しているのにニヤリ。ミステリはご都合的に使い過ぎているからね。ただし、これを「小説」と思って読もうとすると、黒人劇作家ディオンの役割がまったく不明だし、R.D.レインに結びつけられた「今日の世界の狂気」もよくわからない...有栖川氏が小説化をあきらめたのも、まあ仕方のないことではないかなあ。
第4期のクイーンって、小説の中での「犯人の機能」に工夫があって、犯人像がオーソドックスじゃない作品が多いから、本作もそういう路線の中で捉えるべきなんだろう。クイーンは最後まで、クイーンらしかった。

No.5 6点 ボナンザ 2018/11/02 21:58
クイーンの残った短編集だが、残り物とは思えない発見がある。巻末で有栖川が語っていた企画が実現していたら面白かっただろうが、夢は夢のままの方が余韻があるか。

No.4 7点 あびびび 2015/10/08 11:32
最初の「動機」と、表題作の「間違いの悲劇」の2編はなかなか興味深かった。動機はあの長さでしっかり収まったが、間違いの悲劇は、もう少し色付けして、一冊の名作が出来上がりそうな可能性を秘めた作品だったと思う。

殺人事件からにじみ出る人間の苦悩に、エラリー・クイーンが落胆する様は、読み手にもしっかり伝わってきた。

No.3 4点 nukkam 2014/10/22 18:59
(ネタバレなしです) 作者の死後の1999年に発表されており、それまで単行本化されなかった中短編が収めたものです。珍しいのは「間違いの悲劇」で、これは小説ではなくシノプシス(梗概)です(粗筋みたいなものでしょうか)。こんな未完成品まで出版されるのはさすが巨匠ならではですね。とはいえ(創元推理文庫版で)80ページを越えており、しっかり結末まで書かれています。しかも推理が結構丁寧で、もしこれが長編本格派推理小説として完成していれば後期作品の中ではかなりの出来映えになったのではと思われます。エラリーの登場しない中編「動機」は推理はやや粗いですがサスペンスに優れています。短編「結婚記念日」(米版では未収録)とショート・ショート5作は平凡です。残り物の寄せ集め的であることは否定できず、クイーンの熱烈なファン以外は読まなくても問題ないかなと思います。

No.2 7点 Tetchy 2013/07/01 19:42
表題の未完成長編のシノプシスにクイーンの未収録短編作品も織り込んだ贅沢な一冊。

さてそんな作品集の始まりはノンシリーズの「動機」から始まる。町の住民が次々と殺されるが犯人は一向に解らない。捜査が難航して苦悩する副保安官が無差別殺人、通り魔的犯罪としきりに零すのはミステリとして殺人事件を扱っているが実は世に蔓延る殺人事件の大半はこのような動機やトリックなどとは無縁の、動機なき犯罪が多いのだという一種の皮肉めいたメッセージなのかもしれない。

その作品以降続くのは「クイーン検察局」シリーズの未収録短編と「パズル・クラブ」シリーズ。どちらも推理クイズと大差ない読者の挑戦状を挟んだ小編ばかりだが、全編通して多いのはダイイング・メッセージ物だということだ。玉石混交の感は否めないが、よくもまあこれほど考え付いた物だ。

そして注目の表題作。これは前にも書いたがクイーンの代表作『~の悲劇』の題名を継ぐ作品だけあって、その真相は二転三転し、読者の予断を許さない。しかもその真相には後期クイーン問題も孕んでおり、読後の余韻は『九尾の猫』や『十日間の不思議』に似たものがある。作品として完成していれば後期の代表作の1つになっていたのかもしれない。

題名は犯人が犯したある間違いからこの事件は起こったというエラリーの慨嘆から来ている。しかしそもそも世の中の犯罪全てが間違いから起こった悲劇ではないか。つまりこの題名は犯罪そのものが「間違いの悲劇」なのだという作者からのメッセージだと読み取った。

またよく考えてみると『~の悲劇』の題名がついた作品でエラリーが活躍するのは本作だけである。深みあるテーマとこの題名。もしシノプシスだけでなく、作品として完成していたら貴重な作品となっていただろう。

No.1 7点 2011/03/21 10:26
最初に収められた中編『動機』は、田舎の小さな町(ライツヴィルよりだいぶ小さそう)を舞台に、名探偵エラリーの登場しない作品ですが、ミッシング・リンク・テーマを不自然でない形にまとめあげた秀作です。田舎町の雰囲気もよく出ています。ある意味リドル・ストーリーなのですが、あいまいな感じの残らないすっきりした解決になっていると思いました。
途中のショート・ショート6編は最後の1編を除き(ダイイング・)メッセージものですが、中ではホックが代作した『トナカイの手がかり』がよかったと思います。
そして最後に控えるのが、ダネイがリーに送ったままの形の長編『間違いの悲劇』梗概。タイトルからしても、レーン4部作を想起させますし、シェイクスピアをモチーフにしたところも特に『レーン最後の事件』との共通点があります。さらにこれは単なる偶然ですが、梗概の状態というのが『Yの悲劇』のヨーク・ハッターが書いた小説梗概を連想させます。ただし本作の方がはるかに細かい点まで書き込まれていて、人物造形も本編でこそはぶかれていますが、最初に置かれた登場人物紹介でかなり説明されています。
プロット、トリックについては、クイーン60年代以降の作品の中ではベストと言い切っていいほどの出来ばえで、ミスディレクションもなかなかのものです。最終的に小説化されなかったことが本当に惜しまれます。


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