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[ 本格 ] 最後の一撃 エラリイ・クイーン |
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エラリイ・クイーン | 出版月: 1958年01月 | 平均: 4.75点 | 書評数: 8件 |
早川書房 1958年01月 |
早川書房 1977年07月 |
No.8 | 7点 | Tetchy | 2021/08/25 00:20 |
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本書は元々エラリイ・クイーンシリーズに一区切りをつけるために書かれた作品だと云われている。そのためか本書はクイーン作品史上、解決に至るまで最も永い時間が掛けられている。事件の発生から27年後になってようやく事件の真相が明らかになるのだ。しかし物語の発端としてはそのさらに25年前から始まる。それはエラリイ・クイーン自身が生まれた年だ。そう、本書はエラリイが生まれてから1957年当時に至るまで、本書刊行が1958年であるからほぼリアルタイムでの作家生活の道のりと共に歩んだ事件なのだ。
この時まだエラリイは処女作『ローマ帽子の秘密』を刊行したばかりの駆け出し探偵作家なのだ。この事件は彼にとって2番目の、実質的には最初の殺人事件であると書かれている。 つまり作家デビュー間もないクイーンに探偵役を担わせ、刊行前年に解決に至る設定を盛り込んでいることからクイーンの作家生活の裏側で本書の事件もまた進行していたことが明らかにされているのだ。そしてそれは新人作家エラリイが登場することから原点回帰的な印象をも受ける。 本書の謎は大きく分けて6つある。 1つは双生児として生まれながら、取り上げられた医師の子として育てられたジョン・セバスチアンの弟の行方。 2つ目はジョン・セバスチアン25歳の誕生日を祝うクリスマス・パーティに訪れた謎のサンタクロースの正体。 3つ目は12夜に亘って行われるクリスマス・パーティに毎夜届けられるメッセージカードとアイテムの意味。 4つ目はそれらを贈る人物は一体誰なのか? 5つ目は図書館で亡くなっていた謎の老人の正体。 6つ目は最終夜にジョン・セバスチアンを殺害したのは一体誰か? あと本書では出版関係の仕事に携わる面々出てくるせいか、やたらと1930年当時の小説などに登場人物たちがやたらと触れているのが目立った。 それだけでなく、1957年に至るまでの時事についても触れられ、さながらクイーン作家生活の追想のような様相を呈している。 そんな意欲作であった本書は最後まで読むに至り、いささか肩肘が張りすぎたような印象を受けた。 時代が、世相が起こした事件であった。そしてそれはそのまま作者クイーンが歩んできた道のりでもあった。彼が作家生活を振り返ったときにそれまでの歴史的出来事を物語に、ミステリに取り込むことを思いついたのが本書だったのではないか。 しかしこの本書の最後の一行に付された“最後の一撃(フィニッシング・ストローク)”に私は気負いを感じてしまった。 作者のミステリ熱と読者の私の謎解きに対する熱に大いに温度差を感じた作品であった。 確かに力作である。後期の作品においてこれほどの仕掛けと演出とそして複雑なロジックを駆使しただけにクイーンコンビの本書にかける意欲がひしひしと伝わった。やはりクイーンはとことんミステリに淫した作家であったのだ。 初心忘れるるべからず。 本書はそれを自らの肝に銘じた作品ではなかっただろうか。 |
No.7 | 4点 | HORNET | 2021/08/11 16:40 |
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クリスマス休暇の12日間、毎晩謎の人物からプレゼントとカードが届けられ、その内容が次第に不穏なものになっていく・・・という展開自体は面白いのだが、なんといっても結末が△。隠れた双子の存在という明らかに「偽」と分かる誘導もあざとかったが、最大の謎であるカードに隠されたメッセージについては、あまりにも凝りすぎている上に、知識に拠るところが大きすぎて…。こういう「分かる人は分かる」みたいなのじゃなく、「気付いてみれば、誰にも分かるはずだった」盲点を突くのが本式じゃないかと思うのだが。 |
No.6 | 3点 | レッドキング | 2021/01/04 22:16 |
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今年「最初の一評」は「最後の一撃」。ホワイトクリスマスに集う12人の男女と突然現れた謎の刺殺死体。探偵を挑発するかのような、容疑者Aを指示する十二枚のカードとニ十個の贈り物。探偵は自分への操りと見限り、犯人の指示を拒否する。だが、そうした操りの拒否自体が犯人の目論んだ真の操りだったとしたら・・・露骨に双子ネタ振っといて○○○オチって、深夜ドラマ(「時効警察」だったか)で○○○オチってのあったが、あそこまで行くと大いに楽しめた。あの記号のオチは・・非アルファベット語国民としては・・あまり面白くなかった。 |
No.5 | 6点 | 虫暮部 | 2020/10/11 10:53 |
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非常に不自然な殺人計画。しかも、想定外の展開をしたにもかかわらず、軌道修正せずにのんびり最終日まで引っ張っている。
足止めを喰らい標的が逃げられなくなったのは○。それを殺す前に自分が検挙されるリスクは×。この計画の最終日は“この日のうちに殺さないと意味が無い”と言うリミットなんだね。自身に対するプレッシャーとしては有効? と言った犯人の気持の揺らぎが事件からまるで感じられずがっかり。 ――しかしそれは真相を知った後に思うことである。読んでいる最中は、作り事めいた状況に対応を決めかねる面々の微妙にイヤな感情を孕んだパーティーを楽しめた。その人がその人であることをどうやって証明するのか問題も◎。 |
No.4 | 4点 | クリスティ再読 | 2017/06/19 23:35 |
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評者のクイーン読み順は結構ネラってこういう順にしているわけだけど、「ローマ帽子」直後に起きた設定のこの事件が、執筆リアルタイムの27年後に解決するというタイムスパンの長さが特徴の作品である。本作でクイーン合作は一旦引退となり、5年後の再開後もしばらくリーが執筆できないという状況を見ると、本作で「ローマ帽子」を回顧するのも、クイーンのキャリア全体に対するグランフィナーレめいた狙いがあったわけである。そういう大きな仕掛で見たときに、それなりに傑作とはいかなくても、クリスティで言えば「カーテン」みたいな問題作、みたいなものになって欲しかったんだろうな...しかし本作の知名度から分かるように、完全に外してしまっている。
後期らしく固執的なテーマがあるんだが、それが「12」というのがそもそも外す原因。12日間かけての12回の不吉な贈り物...というだけで、プロットが相当間延びしたものにならざるを得ない(6回くらいにしておけばイイのに)。読んでいて妙に弛緩した雰囲気が漂う。これがクイーンの同世代のアメリカ人だったら、作品の中で言及される出来事とか小説とかでノスタルジアに浸るとかあるんだろうけども、さすがに評者もそれはムリだ。(レックス・スタウトの処女小説は何か前衛小説みたいなものらしいね...) 真相もミステリとしてちょっと微妙。というのは「贈り物の秘密のメッセージが指し示す犯人像が、あまりに注文通りなので、エラリイはそれが自分に仕掛けられた罠なのか疑心暗鬼になって公表しなかった」という推理の経緯を、1930年篇でうまく示すのができていないから、1957年にそうだと言われても斜め上に滑った感じで...どうにも困る。で、そういう贈り物のメッセージなら「分かって分からない」ような絶妙なものでないとハマらないけども、実際はちょっと専門知識が要るようなものだからムリ筋としか言いようがない(そりゃ日本のやり方と共通した記号こそあるけどね)。 ホント言うとね....身元不明な被害者なんていうと、「これはJ.J.マック殺人事件かしら?」なんて評者は妙な期待をしてしまったのだ。グランフィナーレなんだから、何かメタなネタを仕込むとかしてもよかったのかもね(作者=犯人をしようとした、という説がEQFCに載ってる)。評者は(探偵)エラリイと(筆者)クイーンの違いと混同に関心があるから、本作で(探偵)エラリイが小説「ローマ帽子」を無邪気に書いたことになっていると、「何か仕掛けが?」とか勘ぐってしまうのだ... あと時系列だと「ギリシャ棺」が「ローマ帽子」以前のエラリイ探偵譚だけど、本作では忘れてるみたいだ。やれやれ。 |
No.3 | 5点 | 空 | 2011/12/12 22:40 |
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クイーン作家暦30年目にして30冊目の長編で、そのことについては作中の名探偵兼作家のエラリーも疲れたとぼやいています。本作で長編創作を打ち切るつもりであったことは、タイトルも含め、はっきりうかがえます。結局クイーン名義長編が再開されるのは、M・リーが監修(内容確認)しただけの作品を除けば5年後になります。
そんな私小説的なため息も聞かれる本作の事件が起こるのは1929年で、エラリーは長編第1作を発表したばかりという設定です。国名シリーズの設定とは完全に矛盾していますが、作品相互間の矛盾はクイーンにはよくあることで。 作者がこれまで何度も書いてきたミッシング・リンク系プロットです。謎のふくらませ方はさすがですが、複雑化しすぎて、かえって不自然でキレが悪くなっているだけのような気がします。経験を積まなければ見破れない真相とも思えません。それより隠されていた過去の秘密が、いんちきっぽいとは言え意外な感じがしました。 |
No.2 | 5点 | monya | 2010/10/11 22:57 |
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途中まではかなり期待を抱かせてくれる作品。
鮮烈なイメージを残す発端の事故、幾つも散りばめられた謎、若きクイーンの姿、ちょくちょく登場するクイーン警視とヴェリー部長刑事! しかし、最後の解決編がどうにも物足りない 専門的な知識が必要な為フェアじゃないだけではなく、論理のアクロバットもあまり無い 題名にもなっている最後の一撃も物足りない それでも最後まで夢中に読ませてくれるのはクイーン一流のプロットか |
No.1 | 4点 | ロビン | 2008/11/12 23:13 |
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読み逃していたクイーンの最後の長編。ようやく手に入れることができた。嬉しい。
が、まいったなぁ。この作品をラストにすべきでなかった。 確かに構成に関しては、「中年になったエラリイが、『ローマ帽子』の頃の解決できなかった事件に、三十年のときを超えて解決をもたらす」という集大成的に仕上がっていて、もちろんその出来も……と期待したのに。 最初の被害者が殺される必然性がないこと、わざわざあんな面倒くさいレッド・へリングを施したのにそれがさほど利いていないこと。論理的ではあっても(?)、あんなのはフェア・プレイじゃない。 自分の中のクイーンを取り戻すために、久しぶりに国名シリーズでも読み返してみようかなぁ。 |