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[ 本格/新本格 ]
りら荘事件
星影龍三シリーズ/別題『リラ荘殺人事件』
鮎川哲也 出版月: 1958年01月 平均: 7.47点 書評数: 68件

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光風社
1958年01月

小説刊行社
1960年01月

春陽堂文庫出版
1961年01月

KADOKAWA
1976年01月

講談社
1992年03月

東京創元社
2006年05月

KADOKAWA/角川書店
2015年06月

光文社
2020年10月

No.68 5点 ALFA 2024/07/19 08:20
新版で再読。猛烈に殺されて、「誰もいなくなり」そうな展開。これだけたくさんの殺人につじつまを合わせて着地しているので、パズラーとしては楽しめる。

一方、小説としては評価できない。
まず構成。犯行はクローズドサークルスタイルだが設定は閉ざされていない。だから「なぜ逃げない?」となる。そもそも極端に仲の悪い同士が合宿する必然性は? 人物造形は外見中心でキャラクターは立ってこない。
そして文体。ユーモアは空回り、修飾や比喩表現は時代性を差し引いても不適切。「醜女」「白豚」「ホッテントット」等、読む方が居心地悪くなる。これはもう作品の品格に関わるだろう。
そしてあの「美白」。古い都市伝説めいたものはあるがエビデンスは全くない。重要なトリックに使うのはルール違反。

作者は本格の大家とされているが、むしろ「ミステリーパズルの名手」とすべきではないか。

No.67 7点 take5 2024/07/15 10:05
新装版のリラ荘事件で読みました。
久しぶりに読んで覚える既視感は、
その後の作品が鮎川大先生の影響を
多分に受けているからでしょうし、
(色盲の作品は平成でもありますね)
トランプの下りは、大先生も先人の
影響を受けているのが分かります。
ミステリー系譜の早い位置に存する
とても重要な作品と言えるでしょう。

私が一番心に残ったのは、砒素です
美白に砒素という事がさらっとあり
これは現代でもいけるのか?興味あり
星影先生のキャラも立っていてよき。
いずれにしても昔の人は推理小説に
新星現ると確実に思ったでしょうね。

No.66 8点 ぷちレコード 2024/07/07 22:31
秩父にある山荘に集まった8人の芸大生グループ。メンバーの間に複雑で厄介な人間関係が渦巻く中、トランプ札とともに男の死体が見つかり、学生たちは連続殺人事件に巻き込まれていく。
探偵の星影龍三が真相を語るや否や、複数の企みが絡み合う事件の構造が浮かび上がり唖然とさせられる。そしてこの物語に奥行きを与えているのが、若者たちの青春とその終焉のドラマだ。男女間の恋愛を巡る駆け引きと、芸術家としてのプライドの衝突。半ば狂乱的な学生たちの日々は、事件の解決とともに虚しい結末を迎える。優れた謎解き小説であると同時に青春小説としても優れている。

No.65 7点 みりん 2023/04/06 21:27
事件後の警部さんの処遇が気になります。

No.64 8点 バード 2021/11/23 19:26
(ネタバレあり)
細かい点まで練られており、館物のお手本+αの出来と感じた。
個人的に気に入ったギミックは

・トランプによる殺人順誤認 : 自分は複数人での犯行を連続的な事件と誤認させる目的でトランプを使っていると思ったので、この使い方はシンプルながら上手いと思った。最後は逆に利用されてしまったが・・・。
・色盲に関する伏線 : 新規性は薄くとも上手く機能した仕掛けと思う。それで殺された彼は気の毒だが。
・ココアへの毒の仕込み方 : 砒素の性質は知らなかったが大胆にやったなぁ。これは現場にいたら疑えないだろうね。現実的かどうかはさておき良いトリックだ。

あたりである。また、初心者にも勧めやすい読みやすさも加点ポイント。
最後に気になった点であるが、流石に人殺しすぎじゃないかとは思った。あれだけ容疑者が減ると消去法である程度犯人が分かってしまうからフーダニットの点が苦しかった。と軽く苦言を呈したが、余計な容疑者候補を増やして作品を無駄に太らせるくらいならこれで良かった気もする。本書は伏線回収やハウダニットの点で十分良いと思えたので。

No.63 8点 okutetsu 2021/09/13 23:15
これだけ多くの殺人が起きて、多くの謎があるのにキレイに解けていくのは気持ちが良かった。
作中のありとあらゆる細かな描写に伏線が含まれていて二回読み返したくなる作品だった。
毒殺の手段と最後の殺人の真相に不満というか疑問はあるが、それを考慮しても名作だと思う。

No.62 7点 じきる 2021/04/25 16:08
派手さはないし、今読むと古く感じるところもあるが、数多くの謎が論理的に明かされるのはやはり読んでいて気持ちいい。
これぞ本格、と言うべき一冊。

No.61 8点 Kingscorss 2020/09/09 14:57
最初に書かないといけないのは、自分が読んだのは講談社文庫1992年版です。あとがきに書いてあったのですが、旧版から新版ではかなり書き足しや推敲があって面白さが全然違うらしいです。見分け方は8章が『暑い街で』なのが新版、『由木の出京』が旧版らしいです。作品名の違い(りら荘事件、りら荘殺人事件)では見分けられないらしいので注意。今回自分が拝読したのは新版です。

いや、素晴らしかった。これぞ本格という醍醐味を存分に味わった。一番すごいと思えたのは、最後まで中だるみがなくのめり込んで読めた点。新版で推敲済みだからか、ほぼ冗長な部分がなく、最後の最後までこんなに没入して本を読んだのは久しぶりだった。

トランプを使ったトリックや心理的伏線等もすばらしく、それら一つ一つでも一本短編ミステリーかけるぐらいなのに、贅沢に全てを無理なく融和させている、本格のお手本のような作品。しかも全く古さ(60年前だよ…すごすぎ)を感じさせない手腕はさすが御大、鮎川哲也だと感心しました。

当然、それはちょっとやりすぎじゃない?ちょっと犯人の機転が効きすぎじゃない?動機としてそれどうなの?なんで〇〇なの?等、本格に必ずついて回る非現実的乖離問題はもちろんあるが、他の本格に比べれば全ては大分現実的であると感じ、とくにアンフェアなものもなく、テンポよく最後まで読み進めれます。かなり最後の方までガンガン事件が起きるが、その反面、全く事件の全容が見えてこず、これどうやって着地するの?と不安になりますが、みごと気持ちよく謎が氷解します。

日本ミステリー史に確実に残るである名作なので未読の方、旧版の方しか読んでない方は是非(新版の方を)読んでみて下さい!

最後にひとこと。二条さん… (ノД`)シクシク こんなピエロ今まで見たことないよ… いいキャラしてたよ… あんた…

No.60 6点 葉月 2020/09/07 22:00
よくオールタイムベストなどでも見かける作品ということもあり、よくも悪くも傑作なのかと思っていたのですが、小綺麗にまとまった作品でした。カードのトリックなど見どころも多く、楽しめたことは楽しめたのですが、もっと派手な作品を想像していた分少しがっかりしました。

No.59 7点 モンケ 2019/10/15 07:02
学生男女七人(プラスα)の屋敷内連続殺人ものですが、途中から犯人が変わってしまうパターンだともうお手上げですね、犯人当て。サロメとかリリスって日本女性とは思えないネーミングセンスが楽しいです。鮎(ずっと鰊だと誤記憶してた)のトリックは面白かったですが、一つ二つ、密室トリックか大技トリックがほしかったですねえ。

No.58 7点 もち吉 2019/07/24 08:49
好感の持てるキャラクターが少なく、探偵にも魅力が乏しい、というのがこの作品の難点だと思うが(シリーズもののようなので他の作品を先に読んでいれば印象がまた違うのかも知れないが)、全体としてはかなり魅力的な作品である。
動機周りは特にお気に入りだ。

No.57 9点 mediocrity 2019/02/26 15:16
まず大学生7人という数は絶妙です。これ以上多いと覚えられません。登場人物の性格、外見描写がくどいくらいですが、シリーズ物でないならこのくらいくどくてちょうどよい気がしました。全ての登場人物の個性がはっきりしています。
また随所に散りばめられたユーモアが作品に花を添えています。読んでいて何度もクスッとしてしまいました。
綾辻作品の大学生には何だか色々と違和感を感じたのですが、この作品ではそれを感じなかったのは時代が離れすぎているからでしょうか。

さてストーリーですが、8割読み終わった時点で何も解決していません。そしてやっと探偵登場。遅い!てっきり2人の刑事が協力して解決するものだとばかり思っていました。
この作品ではかなりの人数が殺されるのですが、大小様々なトリックがこれでもかというばかりに贅沢に使われます。量産作家ならこれだけで5冊くらい書けそうです。特に「最初から想定されていた殺人」に使われたトリックの数々は驚愕でした。

気になった点は、最初の殺人の事実がちょっと偶然すぎるのと、いくらなんでも行きずりの殺人が多すぎること、トリックの数に比して、謎解きがあまりにも駆け足すぎることくらいでしょうか。(先に書いたように探偵登場が遅く、そこから更に色々と準備をしてからやっと謎解きが始まるので)

No.56 10点 フランコ 2018/01/10 15:42
何度読んでも楽しめる。伏線の数々、細かなトリックの効果的な積み重ね。パズラーとして最高度の作品でしょう。

No.55 4点 虫暮部 2017/10/30 12:39
 非常に強い既視感。勿論それは鮎川哲也の子供達の作品を沢山読んだせいであって、本作のほうが元ネタである(だからと言って、今読んでがっかりした気持が帳消しになるわけではない)。ミステリとは形式に縛られたスタイルであるとまざまざと感じた。“人間が描けていない”との評は本書にこそ贈られるべきではないか。ポンポン殺し過ぎだ。刑事があまりに牧歌的&無能である点はまぁ大目に見よう。

No.54 7点 ねここねこ男爵 2017/09/21 13:35
これでもかこれでもかと『推理小説によくある光景』を詰め込んだサービス精神旺盛トリック大盤振る舞いな作品。
『殺人現場に置かれたスペードのエース!』これですよこれ。
かなりたくさん殺されますが、一つ一つにそれなりに説得力を持たせてあるので違和感はなく楽しく読めます。
特に推理小説読み始めという人にものすごくおすすめ。

あと、初読時は「犯人を当ててやろう」とか思わず素直に楽しむことをすすめます。

(以下その理由 ネタバレ風味)
フェアであることを念頭に置いて書かれているため、『連続殺人の現場に次々置かれるトランプの謎』をまじめに推理するとかなり早い段階で犯人が分かってしまいます。そうすると「ああ、だからこの場面を描くことでこいつが怪しまれないようにしているのか」と思ってしまい興ざめです。

No.53 8点 2017/07/02 06:48
時代を感じさせますが、数々の伏線の回収は見事でした。

No.52 8点 名探偵ジャパン 2016/12/09 12:13
次々に殺人が起き、どんどん容疑者が少なくなっていく展開は、「これ、どう始末をつけるんだ?」と読者が心配するレベル。
山荘が舞台とはいえ、外部から頻繁に人が出入りし、警察も捜査を行えるという、ゆるい館。
舞台が整うまでは、ちょっと今の感性ではついていけない学生たちのあれやこれやで退屈に感じますが、ひとたび事件が起きたらもう、ジェットコースターです。
登場人物が多いですが、覚える暇もなく、いや、覚える必要のないくらいにどんどん死んでいくので問題ないです。この作品のキャラクターは、死に方とトランプの絵柄で覚えましょう。
そして最後に名探偵星影龍三が暴き出す、「もう、とにかくやばくなったら殺せ」主義で重ね尽くされた連続殺人の真相は、驚きと納得の連続です。これだけミステリが氾濫した現代に読んでも「これはやるなあ」と思うのですから、本作が初刊行された当初に読んだ読者は、さぞ驚いたのではないでしょうか。
歴史的価値だけじゃない。現代にも十分通用する、早すぎた本格の傑作です。

No.51 8点 パメル 2016/06/30 01:19
連続して行われる殺人事件 
その殺人方法がそれぞれ異なり必ず死体の傍らにはトランプのカードが置かれている
もうそれだけでワクワクが止まらない
真相に至る伏線も多く張られておりフーダニットとして完成度が高い
ただ中盤以降は刑事たちが監視下でありながら殺人事件が繰り返されるという
無能ぶりに辟易されるが十分楽しめる作品

No.50 8点 青い車 2016/04/27 23:20
 大トリックこそないものの、いくつものアイディアを複合させたパズラー好きにはたまらない作品です。毒殺トリックやトランプ、ペンナイフ、数字のメモといった小道具を駆使した謎解きには職人芸を感じさせます。伏線の張り方も丁寧(橘の釣果など)で、難易度は高いものの読者にも十分推理可能。特にトランプのトリックはこちらに自然と先入観を持たせる効果があり秀逸です。ただし、探偵・星影龍三がどうしても好きになれないこと、山荘ものにしては警察の導入もあるため切迫感が乏しいこと、期待していたほどのインパクトある技が見られなかったことなど不満もあります。

No.49 9点 ロマン 2015/10/21 07:03
日本の古典ミステリの著名作。名前は至る所で聞いていたのですがようやく読めました。山荘の連続殺人もの(非クローズドサークル)なのだがが、諸々の謎の作り方が物凄く巧み。なぜ犯人はトランプを現場に残していくのか?という大きなものを始め、実に様々な謎や疑問が散りばめられているが、これが一つ二つ解け出すと連鎖反応のように一気に他の答えに結び付く。この辺り傑作だと言われる所以はよく分かった。


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