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[ 本格/新本格 ]
人それを情死と呼ぶ
鬼貫警部シリーズ
鮎川哲也 出版月: 1961年01月 平均: 7.35点 書評数: 20件

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東都書房
1961年01月

KADOKAWA
1977年02月

角川書店
1977年02月

光文社
2001年07月

No.20 6点 ミステリ初心者 2019/01/22 22:24
 ネタバレをしています。

 遼吉を殺す動機を持った容疑者にはアリバイがあり、捜査が難航する…実は…という犯人の狙いはこれまでに見たことがなく、新鮮でした。
 また、森山殺しにおける、犯人達のアリバイトリックも楽しめました。
 これは違うかもしれませんが、社会派や男女の愛憎の小説のように見せかけた本格は、何か作者からのメッセージなのかも…?

 自分は、この本における仕掛けを、まるで見抜けませんでした。
 ほんの妄想レベルですが、情死に見せかけた死体が白骨化していたことから、2体の死体の殺された時間が大分違うんではないか?ということ。本筋の情死は偽装であることから、タイトルの"情死"は誰か別の人物同士である→犯人男女ペア→共犯の可能性…この2点ぐらいでした;;

 以下、好みでなかった部分。
 やはり、共犯は好みではありません。また、森山殺しにおけるアリバイ工作も、ややリスキーだと思います。

No.19 6点 パメル 2017/11/07 00:58
汚職問題といった社会的な題材が扱われているが、単なる社会派の作風にはなっておらず、あくまでも本格志向の鮎川氏らしい作品であるといえるでしょう。
この作品も作者が得意としているアリバイ崩しの系列に属しており、捜査の進展につれ容疑者が絞られるが、その人物には鉄壁のアリバイがあるという設定で、これをどう崩していくのかが楽しみになってくる。
また女性が一種の探偵役として大きな役割を演じているが、これがなかなか魅力的。
ただアリバイ工作は、あまりにも偶然性に支えられていて危うい感じが残念。

No.18 8点 ねここねこ男爵 2017/10/04 21:37
時間、場所、人を一挙に誤魔化す離れ業のアリバイトリックとして有名な本作。それだけで必読かと。

松本清張が推理小説の非現実的な面をディスり手本を見せてやると執筆した「点と線」へのカウンター。

No.17 8点 クリスティ再読 2016/11/08 20:53
昔は鮎川哲也っていうと、評価はほぼ鬼貫ものに限られていて、遊戯性の強い「りら荘」あたりもあまりイイ評価をされていないイメージがあったが、最近はちょっと逆転している感じもあるなぁ(「憎悪の化石」が逆に沈んだね)。で本作も昔は評価の薄い作品、ってイメージだったが、最近評価が高いようで本作が好きな評者は何かうれしい。
まあ本作は鮎川哲也版の「点と線&ゼロの焦点」。鮎哲なんでアリバイ崩しは完備だが、かなり危うい橋のアリバイトリックよりも、動機とからんだ全体の構図の部分での工夫が素晴らしい。なので本当はこれ、ホワイダニットで読んだ方がいいと思うよ。「点と線」を意識してさらにそれを捻っていることになるから、社会派からイイ刺激を受けたと読むのがいいんじゃないかな(けど、松本清張だって結構なトリックメーカーだよ...)。
であと本作「ゼロの焦点」なロマン味があるせいか繰り返しTVドラマになっており、鮎川哲也では稼ぎ頭のありがたい作品だ(Wikipedia だと6回もカウントできる)。評者は雪の降りしきる中消えていく夫婦...って見た記憶がうっすらあるな。読んでいて本田が米倉斉加年の声で再生されて仕方ないんだが、と思ったらそれは77年の佐久間良子主演の土曜ワイド劇場のようだ。鬼貫誰だったんだっけ。個人的には長門裕之だったらドンピシャだった気がするんだが...

No.16 9点 青い車 2016/08/04 12:38
 『黒いトランク』『りら荘事件』も良かったですが、仕掛けの切れ味は本作はそれらにも勝ると思います。鬼貫警部の出番が少なく、彼絡みの見せ場が少ないという不満もどうでもよくなるほどでした。
 終盤に差し掛かるまでは単純なアリバイ崩しものかと思って読んでいました。容疑者の的も絞られ、さほどインパクトもなく締めくくられるのではないかと。しかし、最後の最後の逆転は見事!犯人の意外性でなく、犯行の意外性で魅せる傑作でした。すばらしいのは、ただ驚かせて終わりではなく犯人側のドラマもしっかり描いてみせたところで、本格推理の良さに加え物語としての深みもあります。印象的なタイトルの付け方もトリッキーかつ美しく、迷いなく鮎川作品でいちばんに人に薦めたい作品です。

No.15 7点 あびびび 2016/05/08 00:06
鬼貫警部に粘り腰がなかった(笑)。作者は時々、鬼貫が決してスーパーンマンではないことをに示しているが、これは松本清張を意識した作品と言うことで、最後の心中がいかにもそれっぽい。

しかし、清張は清張であり、鮎川哲也は鮎川哲也である。アリバイ工作は苦笑するしかなかったが、意外性のあるおもしろい作品で、あっという間に読んでしまった。でも、それほど自分向きではなかったかも知れない。

No.14 7点 斎藤警部 2015/08/10 19:01
(ちょぃとネタバレ)

物語の半ば頃、犯人がどの方向にいる人物かふと勘付き、目の前の光景がグイーンと90度ずれる様なシビレる感覚を得ました。(180度の感覚じゃない所がニクい)

露骨に社会派ミステリへの果し状の様な結末の反転ぶりですが、松本清張の短篇にもこの様な騙しの一篇が有った様な、無かった様な。。

多くの方が言及される通り、ラストシーンが美しく印象的ですね。
私には二冊目の鮎川長篇でした。この辺から氏がだんだん特別な存在になりつつありました。

No.13 5点 E-BANKER 2014/11/13 22:42
1961年発表。鬼貫警部シリーズの長編作品。
当時隆盛を誇った社会派ミステリーのプロットを取り込み、特に松本清張の出世作「点と線」を強く意識した作品となっている。

~人は皆、警察までもが河辺遼吉は浮気の果てに心中したと断定した。しかし、ある点に注目した妻と妹だけは偽装心中との疑念を抱いたのだった・・・。貝沼産業の販売部長だった遼吉はA省の汚職事件に関与していたという。彼は口を封じられたのではないか? そして彼が死んでほくそ笑んだ人物ならば二人いる。調べるほどに強固さを増すアリバイ。驚嘆のドンデン返し。美しい余韻を残す長編~

他の方の書評は好意的な意見が多いようだけど、個人的には今ひとつパッとしない作品という印象が残った。
確かに心中事件という煙幕を張り、終盤に事件の構図そのものをひっくり返すというプロットは見事。
さすが鮎川哲也というべき手練手管。
紹介文どおり、余韻を残すラストもなかなかの味わい。

なのだが、如何せん本格ミステリーとしての出来栄えとしては素直に高評価できない。
特に途中で起こる管理人殺人事件のアリバイトリック。
あるひとりの人物の錯誤に頼ったトリックなのだが、これは相当弱い!
(アリバイトリックのよくある手としては「場所の錯誤」なのだろうが、この「○○の錯誤」は著しく綱渡りだと思うのだが・・・)
フーダニットについても最初から明々白々過ぎでは?
巻末解説では芦辺拓氏が擁護してますが、ここまで分かりやすいと「犯人探し」という、読者にとって本格ミステリー最大の興味を自ら放棄しているようにも見える。

あと加えるなら、鬼貫警部の出番少なすぎ!
他の刑事(or素人)の捜査→頓挫→丹那刑事の捜査→行き詰まり→鬼貫警部の再捜査→解決、というのが本シリーズの王道なのだが、今回は素人が頑張りすぎだな。シリーズファンにとっても満足いくものではなかった。

冒頭に触れたとおり、本作は「点と線」のヒットを相当意識して書いたフシがあるが、二つを読み比べると、鮎川好きの私でも「点と線」に軍配を上げざるを得ないと思う。
嫌いな方も多いかもしれないが、本シリーズは「時刻表」と「鬼貫警部の丹念な捜査行」が必須なのではないかと感じた次第。

No.12 8点 ボナンザ 2014/04/07 15:23
ストーリーといい、トリックといい文句なし。
安心して読めるでき。

No.11 8点 いいちこ 2014/03/20 17:56
プロットが抜群
犯行動機を巡る人間ドラマや印象的なラストシーンもよい
トリックに無理を感じるのが唯一の瑕疵

No.10 6点 蟷螂の斧 2014/02/07 17:18
あとがきに『600枚の長編を書き下すよりも、わずか数字の題名を考えるほうが困難である。』とあります。その通り、本題名は秀逸ですね。ラストでその深い意味が分かるというものです。読書中は、動機、アリバイよりも、なぜこの題名なのか?の方に興味をそそられました(笑)。

No.9 7点 りゅう 2011/12/13 19:03
 本作品では鬼貫警部は後半になるまで登場せず、心中で死んだとみられる人物の妹である由美が活躍します。由美の洞察力や行動力がなければ、犯人の策略どおりに終わっていた犯罪です。消え入りそうな、かすかな手掛かりをたぐり寄せながら真相に迫っていく捜査の過程は読み応え十分です。犯人の策略は巧妙ですが、その割には不注意なところもあり、結果的にはその不注意さで墓穴を掘っています。最終的には、当初の事件の見掛けとはかけ離れた意外な真相が明らかになります。人間ドラマとしても良く出来ていて、特にラストが印象的です。二重の意味が込められたタイトルも秀逸。ただし、作品全体としては地味な印象で、読者が謎を解くようなミステリでもないので、この程度の評価にしておきます。


(完全にネタバレをしています。要注意!)
 犯行目的を錯誤させる犯人の策略は、手が込んでいて実に巧妙です。一方、管理人殺しの際のアリバイトリックは、危険性が大きく、うまくいくとは思えません。寒参りの老人に扮するなどして、2日間にわたって偽装工作を行なっているのですが、近隣住民に2日間ともに現場を目撃される可能性があり、その場合は不審者がいたことを逆に印象付けることになりかねません。

No.8 6点 nukkam 2010/07/15 20:11
(ネタバレなしです) 松本清張の大ヒット作「点と線」(1958年)を強く意識して書かれた1961年発表の本格派推理小説です。鬼貫警部シリーズ第5作でありますが彼が登場するのは後半からだし、真相に限りなく近づきながらも事件の締めくくりには出番がありません。この作者は読者の感情に訴えるような文章を書くのは得意でないと思っていましたが、本書の哀愁溢れるエンディングには驚かされました。何度か映像化されたというのも納得できます。

No.7 8点 isurrender 2009/09/22 13:28
社会派を嘲笑うかのような本格
トリックも上手いし、名作です
でもちょっと衝撃に弱いかな

No.6 7点 測量ボ-イ 2009/05/27 19:45
汚職に巻き込まれたサラリーマンが殺される、という設定で
氏らしからぬ社会派っぽいプロットですが、なかなかどうし
て、立派な本格推理小説です。
アリバイもの、時刻表ものは嫌いなので鮎川作品は読まない、
という方はこれをどうぞ。

No.5 9点 myk 2004/11/20 21:16
本格VS社会派という論議が意味のないことを示している傑作

No.4 9点 myk 2004/11/20 21:16
本格VS社会派という論議が意味のないことを示している傑作

No.3 8点 ギザじゅう 2004/08/10 01:43
鮎川哲也初期の傑作!
事件やそれにまつわる登場人物も非常に丁寧に書き込まれているのは、好印象。
さらに、このアリバイトリックも非常に楽しめたのだが、何と言っても強烈な印象を残すラストのシーンと、このタイトルは秀逸。先に述べた登場人物なども、この美しい物語を成立させる、重要なファクターでもある。
見逃しがちだが、『黒いトランク』『黒い白鳥』『憎悪の化石』に決して見劣ることは無い。

No.2 7点 由良小三郎 2003/01/06 17:37
汚職事件に巻き込まれていた商社員の男性が失踪し、数ヶ月後箱根の山中で女性の遺体と一緒に白骨となって発見される。心中だとおもわれる状況に疑問をもった、男性の妹が真実を調査するというストーリです。本格の巨匠の作品らしく、ストーリは2転3転します。本筋でない方向へひっぱっていっておいて、「こんどはこっちかよう」という感じです。誰が犯人かの部分の後に真犯人のアリバイくずしがあって、すっきりしてないと感じるか、サービスだと思うかが評価の分かれ目かとおもいます。個人的には、「後ヅケ」というか、後からいろんな真実が出てきてツジツマあわせる話はいかんと思うわけで、この作品はあまり名作ではないと思いました。随分古い小説ですが、読みにくさはありませんでした。

No.1 8点 tenkyu 2001/07/23 21:24
中篇バージョンとは比較にならない程、面白かった。社会派を出汁に使いつつ、本格推理としての転回と展開。そして、氏ならではの結末。よかったです。


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鮎川哲也
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1961年01月
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