[ 本格/新本格 ] 偽りの墳墓 鬼貫警部シリーズ |
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鮎川哲也 | 出版月: 1963年01月 | 平均: 6.89点 | 書評数: 9件 |
![]() 文藝春秋新社 1963年01月 |
![]() 毎日新聞社 1972年01月 |
![]() 角川書店 1979年09月 |
![]() 光文社 2002年12月 |
No.9 | 5点 | クリスティ再読 | 2020/12/25 08:08 |
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そんなにいいかなあ....
一応時刻表は出てきて「証明」みたいなことに使われるけども、アリバイトリックは別なやり方で、やや肩透かしに感じている。コントロールしきれない部分も大きいからね。しかもこのトリックは一般性のあるもののせいか、評者はあまりロマンを感じなかった。 トリックというものを、「事件固有の特質によるもの」か「汎用性のあるアイデア」と区別してみると、評者は「事件固有の特質」の方のがずっと面白くも感じる。まあだから、こういう汎用トリックの作品には「味付け」がもう少し欲しいとも思うんだ。 前半の話と後半、それに中盤の瀬戸内海行きあたりが、テイストが全然違う話で、相互に関連が薄いのが、ストーリーとしても弱いように感じる。鮎哲さん堅物だから、男女関係のドロドロに妙味がないんだな....本作不倫話が多いんだけど、作者がそれに反発しているタッチが目について、不潔感を感じてしまうのはどうかと思う。 鮎哲でもきっちりロマンが立ち上がる作品がいろいろあるわけで、本作あたりは熟成がやや足りないかな、という印象を受ける。良い点は作りが丁寧、というあたりだから、「職人技」ではあるんだけどもね。 |
No.8 | 5点 | nukkam | 2017/10/25 12:23 |
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(ネタバレなしです) 1962年発表の短編版(私は未読です)を長編化して1963年に出版された鬼貫警部シリーズ第7作の本格派推理小説です。時刻表や地図が登場するのはこのシリーズらしいのですが単なるアリバイ崩しプロットではありません。重要そうに思えない証拠品で容疑者が顔色を変えたのはなぜかとか、嘘らしい証言だが何のためにそんな嘘をつくのかわからないとか、結構ひねりのある謎が用意されています。しかしりゅうさんのご講評でも指摘されているように、第一の事件の謎解きと第二の事件の謎解きのつながりが弱く、どこか間延びしたプロットに感じられるのは長編化の問題点かもしれません。また鬼貫警部の登場場面が最後の2章だけの上に、斎藤警部さんのご講評で指摘されているようにアリバイトリック説明のかなりの部分が犯人自白によるものという締めくくりも本格派としてはどこか消化不良に感じられました。 |
No.7 | 8点 | 斎藤警部 | 2016/12/30 23:09 |
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長篇諸作の中でも深みと渋みが際立つ、黒光りの力作。
真相暴露の扉が重くてなかなか開かないんだ、これが。 出だしから旅情たっぷり、その澄んだ空気に決して寄りかからない厳然たるサスペンスと謎の迫撃ぶりが頼もしい。本格流儀で絶妙に錯綜したストーリー。そして社会意識鋭い『ある偏見』への異議申し立て。 (←この社会派事項が今となっては時代がかった話に聞こえるのは素晴らしい進歩の証し。) アリバイ粉砕がね、最後犯人の自白で一気にもたらされるという構図はね、折角鬼貫警部がいるのにちょっとアッサリし過ぎの感有りですよね。しかもそのアリバイ偽装の核心にちょっとイージーなナニが。。だもんで力んでも9点までは押し上げられませんが、中盤の剛健さを味わうだけでも幅広く本格ミステリファンに薦めたい、魅力の一冊です。 |
No.6 | 8点 | あびびび | 2016/07/25 01:41 |
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鮎川氏の作品は、ほとんど同じ流れで、印象の薄い作品は見分けがつきにくい面もあるが、この作品はアリバイトリックが秀逸だった。
一枚の紙切れから、そこまで推理し、事件を終わらせる鬼貫警部の手腕はお見事と言うしかない。 舞台は浜名湖の舘山寺温泉。何十年間か前に、鷲津から船に乗って舘山寺温泉まで行った経験があるので、そのリアルさは半端ではなかった。その印象も影響しているかも知れない。 |
No.5 | 7点 | ボナンザ | 2014/11/08 15:48 |
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中期の代表作の一つ。同じテーマを使っても清張と鮎川でこうも違う。
二転三転する謎の提示も魅力的で、アリバイものが好きな人は是非読んで欲しい。 |
No.4 | 6点 | りゅう | 2011/12/18 13:18 |
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警察の紆余曲折する捜査過程を読者が追いかけていく作品で、警察小説の要素が強いと感じました。作中ではハンセン氏病のことも扱われていて、社会派的な要素も盛り込まれています。容疑者が二転三転し、それに伴って謎も次々と変容していく作品で、作者らしく、読者を混乱させています。
時刻表がいくつか出てくるので、時刻表をもとにアリバイトリックを考察する作品なのかと思いましたが、さにあらず、あっさりと容疑者のアリバイの確定に使われているだけです。 ある人物が何に驚いたのかという謎から真相に迫っていく過程が面白く、アリバイトリックもそれを成立させる条件を誤認させる巧妙なものですが、見せ方がそれほどうまくなく、すっきりとその面白さが理解しにくい感じがしました。また、前半部と後半部のつながりが弱く、くっつけて長くしただけの印象を持ちました。 |
No.3 | 6点 | E-BANKER | 2010/07/10 21:53 |
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鬼貫警部シリーズ。
もともとは短編だったのを加筆修正した作品。(鮎川氏にはお馴染みのパターンらしいですが・・・) 2つの殺人事件(?)が出てきますが、最初の事件の方は、ある「病気」との絡みの中であっさり解決。 問題は第2の殺人の方に・・・ということで、いつもの「アリバイトリック」の登場となります。 今回はいつものようにストレートな「時刻表トリック」ではなく、まさに捜査者(=読者)をミスリードすることで成立する種類のトリック・・・ 人間ではなく、○○○の移動を欺瞞させる手口はなかなか鮮やかと言えるかもしれません。 ただ、何となくストーリー自体の盛り上げ方が今ひとつのような気がして(犯人があまりに自明)、この程度の評価になりました。 |
No.2 | 9点 | 測量ボ-イ | 2009/05/22 21:36 |
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(ネタばれ有!)
鮎川氏らしい手の込んだアリバイトリック。色の酷似した 2つの婦人服という小道具を巧みに用いています。 事件の謎解きに直接は関係ないですが、捜査の過程でらい 病(ハンセン氏病)が絡み、時代を感じさせます。 私見ですが、鮎川作品の中でも屈指の名作です。 |
No.1 | 8点 | ギザじゅう | 2005/03/05 15:57 |
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『偽りの墳墓』(光文社文庫)
鬼貫警部シリーズ だれが犯人なのかの引っ張り方が、他の作品よりも徹底している。そのためサブトリックがなかなか多く、非常に面白い仕上がりになっている。特に電話番号のミスディレクションは上手く、ある病気が登場したときの話の展開もまた面白い。 ただし、ラストのアリバイトリック論議がやや短くも感じたのは残念。 |
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