皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
もち吉さん |
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平均点: 7.00点 | 書評数: 17件 |
No.17 | 8点 | 有限と微小のパン- 森博嗣 | 2019/09/18 20:19 |
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良い意味でいつもと同じ感じなのでシリーズのファンなら間違いなく楽しめるだろう。
他の作品でもそうだったが、普通のミステリーでやられたら総スカンも致し方なしなトリックが、この作品のテーマの中でやることで大きな意味を持ってくる。いつもながらつくづく巧妙だと思う。 まぁ、アンフェアと言われればアンフェア。何がアンフェアかって一番は芝池刑事の登場ですよ。あれで演技という線はまず消えますから、普通。ミスリードにしてもちょっとスマートではない。中盤くらいの香奈芽との会話の中でトリックの肝に通ずる大ヒントはあるがまぁ到底気付けないだろう。 あとは香奈芽の存在意義。もう少し物語に絡んで来るのかなと思ったが後半は完全に空気となってしまって残念。 あ、そうそう、真犯人の動機がはぐらかされてこの物語の単なる脇役な扱いになってしまった点は普通にマイナス。真賀田四季の仕掛けた壮大なシナリオをただ利用しただけとはいえ、2人も殺害してしまった人間なのだしもう少し掘り下げていただきたかった。まぁメインで描きたかったのが犀川×真賀田四季なのは明らかではあるのだがそれにしても、ねぇ(笑) なにげに反町愛のキャラが好き。個人的には影のMVPと呼びたい(笑) |
No.16 | 9点 | 幻惑の死と使途- 森博嗣 | 2019/09/03 23:00 |
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やられましたね。イリュージョニストという設定を本当に上手に生かしている傑作。この著者のこういうやり口は好きです。 |
No.15 | 8点 | 容疑者Xの献身- 東野圭吾 | 2019/08/27 08:48 |
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映画のほうは見たことがあったので内容はほぼ分かっていたが、普通に楽しめた。アリバイを作るために新たな殺人をするというのはやはりインパクトがある。せっかくのトリックも明かし方が下手だと台無しになってしまうがこれは本当によく出来ている。 |
No.14 | 10点 | 悪意- 東野圭吾 | 2019/08/04 11:05 |
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構成の妙が光る大傑作。
全貌が分かってみれば意外にもシンプルな構図、ではあるのだが、そこはストーリーテリングには定評のある東野先生、右へ左へと匠に誘導しながら物語に引き込んでいく。読者は加賀と同様に何度も騙されることになるだろう。 この作品に関しては真相も十分に期待に沿うものだったが、特にタイトルでもある「悪意」とそこへの焦点の当て方は秀逸だったように思う。凡百の作家であればその手前の「論理的な答え」を結末として満足してしまったはずだ。そこから一歩踏み出して人間の本質を抉るような「悪意」の存在に言及した場面こそが、実はこの作品のハイライトであり、この書を傑作足らしめた必要不可欠な部分なのだ。 |
No.13 | 3点 | 蒲生邸事件- 宮部みゆき | 2019/07/31 19:32 |
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ストーリーを作るのはうまいけど文章はうまくないなぁというのを改めて感じてしまった一作だった。
序盤はかなり退屈したが、特に「~~だけれど。」の言い回しの異様な多さには辟易した。1ページに1回は出てくるんじゃないか? いつものことながら会話や心情表現の文章がどうもしっくりこない。結構現代風な俗な文章を書きたがるが本来そういうのは苦手な作家なのではないだろうか?そういう意味で文語中心の時代小説に定評があるのは頷ける。そっちのほうが向いているのだと思う。 あとは、主人公の感情をいちいち書きすぎるのも冗長に感じる要因のひとつだろう。 ほとんど全ての登場人物に人間臭さというか所帯じみた感じを受けるのは良し悪しだろうが、自分としてはあまり好みではない。凡人は現実世界で見飽きているしわざわざ小説でまで凡人を見たいとは思わない。 出来事の非日常だけではなく、人間性についてもある程度の浮世離れは必要だと思うな、個人的には。 |
No.12 | 7点 | 姑獲鳥の夏- 京極夏彦 | 2019/07/30 22:10 |
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ミステリーという部分に関してはなかなか評価しづらい作品だ。
少なくとも、作者の謎掛けに対して頭を悩ませながら正答を予想するような作品ではないし、そういう作品を求める人には全く価値のない作品かもしれない。自分は別にその辺りに強いこだわりはなかったのでまぁ問題なく楽しめた。 物語に一応関係してくるとはいえやたらと薀蓄が多いのでそこは多少気になったが(なるほどと得心するものもあったがハッキリ言うと大半は退屈だった)、全体としてはかなり好きな部類といって良い。特に秀逸だと思ったのはプロローグの短文で、それだけでこの作品の出来が予感できるほどのものだった。 京極夏彦はなぜか難しそうなイメージがして避けていたが、この作者の作品への興味を持たせるには十分な出来だった。 |
No.11 | 5点 | 魔球- 東野圭吾 | 2019/07/26 13:32 |
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読了後の感想としては「微妙」という感じだったが、その一番の原因は、序盤のいくつかの謎が読者の興味を惹く非常に良く出来たものであったのに対して、その真相が期待を下回ってしまったその落差にあるように思う。よくよく思い返せば、うまいと思う部分も多いし、伏線もしっかり練られていて全体としてはそんなに悪くない物語なのだが。
まぁ、自分の求めてたものとは違ったということで。 |
No.10 | 3点 | フリークス- 綾辻行人 | 2019/07/24 13:29 |
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自分は綾辻氏の作中作の文章はわざとらしすぎてあまり好きではないのだが、この本は悪いことに3作ともが作中作をメインとした作品となっていたため、このような評価になってしまった。
まぁこの作品に限らず、大抵いつも「メイントリックの解明に至るまでがもったいぶりすぎで冗長」という印象を受けてしまって、そこがいまいち、氏の文章を好きになれない部分なのかなぁという気はする。氏の発想自体は面白いだけに、文章が好みに合わないせいで楽しめないのは残念だ。 |
No.9 | 7点 | りら荘事件- 鮎川哲也 | 2019/07/24 08:49 |
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好感の持てるキャラクターが少なく、探偵にも魅力が乏しい、というのがこの作品の難点だと思うが(シリーズもののようなので他の作品を先に読んでいれば印象がまた違うのかも知れないが)、全体としてはかなり魅力的な作品である。
動機周りは特にお気に入りだ。 |
No.8 | 5点 | Another- 綾辻行人 | 2019/07/20 13:05 |
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メインのトリック等は面白いのだが、序盤から中盤にかけてはかなり退屈に感じてしまった。伏線がちりばめられているにしても、だ。
そもそも氏の文章があまり好きじゃないというのが大きいのかも知れない。 一部中途半端なSF要素が混じっているが、その設定が本当にこの物語に必要あるのか?というと、かなり疑問に感じた。 メイン部分以外の出来、というのは綾辻氏の永遠のテーマだろうな。 |
No.7 | 6点 | クリムゾンの迷宮- 貴志祐介 | 2019/07/19 14:25 |
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ページ数はそれなりだが会話が多く文字数的にはかなり少ないので、あっという間に終わってしまった。内容としては文句なく面白い故に、もう少し長い作品として読みたかった。この話なら上下巻に分けて書くくらいの長さでも良かったのでは。特に某友さんとのシーンがあれで最後というのはちょっとあっさりしすぎかなという気がしたね。
総じて、大人には少し物足りなく感じるかもしれないが、ティーンネイジャーには超おすすめの作品である。 |
No.6 | 9点 | 占星術殺人事件- 島田荘司 | 2019/07/18 19:31 |
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結論から言えば、評判通りの面白い作品だと思った。
特に、地理関連の記述が事細かにリアルに描かれているために、奇想天外な事件にも関わらず常に一定のリアリティを感じることができる点は非常に素晴らしい。 冒頭の手記部分に関しては色々思うことはあるが、結局の所フィクションなので全然許容範囲である。少なくともこの作品の雰囲気作りを担い、作品の方向性を指し示すものとして大きく寄与している。 ただ、島田荘司作品でいつも感じることだが、おそらくは完璧主義であるゆえの、「語りすぎ」がこの作品でも少し気になった。この作で言えば、御手洗の演説の部分はまぁ仕方ないとしても、ラスト部分の犯人による事件の詳細の長々とした補足は完全に蛇足だと言える(やるにしても心情の描写をメインにもっと短く出来たはず)。読者の想像で補える部分は、敢えてつまびらかにしないという選択肢もあるのではないか? あとは、考え過ぎというか、事件を複雑なものにしようとしすぎて、解答編も含めてクドく感じてしまう部分はある。もう少しシンプルにやってもいい気がするが・・・。この辺は好き好きか。 苦言のようなものも述べたが、結論は冒頭に書いた通り「面白い」である。推理小説として以前に、小説として面白いと思わせてくれるのは島田荘司の好きな部分である。自分にも、島田荘司の文章力の5分の1でもあればもう少し良いレビューが書けるのだが・・・なぁ。 |
No.5 | 10点 | らせん- 鈴木光司 | 2019/07/11 09:19 |
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前作リングとは違い、ホラー色は薄れ、SF色の強い作品になっている。とはいえ、後半、女の正体が明かされる場面のような、展開が読めているにも関わらずぞっとさせられるような描写力はさすがである。
個人的にはリングよりもらせんのほうが好きかもしれない。いや、だいぶ好きだ。これはあまりに面白すぎる。 一番感心したのは暗号を解く過程の描写、そして何よりウィルスの「実物写真」を掲載してしまった所だ。これは怖すぎる。SFチックな作品に少なくないリアリティを付与するための本当に秀逸なアイデアである。 |
No.4 | 10点 | リング- 鈴木光司 | 2019/07/11 08:54 |
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文章が、好きなんだな。
無駄な心情描写とかせず、基本的には淡々と情景とセリフの描写だけで進んでいく感じが。 映画化、ドラマ化などもあったが、まぁ小説を先に読んだ者から見たら、あんなのは全くの論外だったね。自分が監督するとしたらどうか、と考えると、到底面白い物が作れるとは思えないので、あれだけヒットするだけのものを作れたことにはリスペクトしているが。 この作品を書いている時にはすでに続編の「らせん」も構想されていたわけだが、にもかかわらず、この作品だけでもちゃんと一個の作品として完成しているのがすごい。前情報がなければ続編がある作品とは誰も思わないだろう。ちなみに「らせん」のほうも、リングを読んでなくても一作品として楽しめる作りになっている。すごい。さらに話の視点もリングとらせんでは全く異なっている。同じ世界なのに。うーんすごい。 数々のメディア展開によって全国民にネタバレしてるも同然の作品で、ここまで読ませる技量は、疑いようもなく本物と言うしかないだろう。 |
No.3 | 4点 | クロスファイア- 宮部みゆき | 2019/07/11 08:14 |
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楽しめたかどうか?で評価するとこの点数だが、決してそこまで悪い作品と思っているわけではない。好みの話だ。
女性作家にありがちな、人間の感情の機微まで事細かに逃さず描いていくスタイルというのが、自分はどうも苦手だ。ファンタジーにリアリティは求めない。人間の醜い部分は必要以上に見たくない。これは完全に好みの問題だろう。 唯一明らかな難点を挙げるならば、「組織」がいかにも少年漫画にでも出てきそうな安っぽい感じがしてしまったことだろうか。「組織」が絡んでくるまでは結構面白かったのに・・・。最初のコンタクトが電話というのも安易だし、行動や思考もありきたりでこれは大減点。 あと、「痩せぎすの男」という表現を2人の別人に対して使っているのも、自分的にはどうかな?と思う。仮に全く同じような容姿の人間だったとしても、特に重要な意味がない限り小説的には同じフレーズを当てはめるべきではないと思うのだが。 |
No.2 | 9点 | すべてがFになる- 森博嗣 | 2019/06/17 18:45 |
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ミステリーに求めているものの違いによって、評価が分かれると思います。敢えてリアリティ、実現可能性、整合性には目を瞑って読むことができる人にとっては面白いと思います。ミステリーというよりどちらかと言えばファンタジー寄りな内容ですからね。ストーリー設定や描写はかなりよく出来ていると思いました。
この作者は初めて読みましたが、他の作品も読みたくなりました。 |
No.1 | 6点 | 奪取- 真保裕一 | 2019/05/19 21:26 |
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興味を引く出だしから、薀蓄を絡めて上手に展開していき、ジジイが登場したあたりまではとても面白く読めた。が、如何せん長過ぎる。序盤は興味深かった薀蓄もあれだけ続けられると流石に追うのが億劫になってくる。ただ、そのディテールへのこだわりようこそがこの小説の価値でもあるのだろう。
文体に関しては、自分はあまり好きではなかったが、難しい題材にもかかわらずここまで取っ付き易い作品に仕上げたのは流石と言わざるを得ない。 最後に、作者がこの作品で描きたかったテーマと違うことは分かった上であえて言えば、個人的には、真剣な偽札作りよりも序盤の路線で1作品書き上げてほしかった。 |