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[ 本格/新本格 ]
出雲伝説7/8の殺人
吉敷竹史シリーズ
島田荘司 出版月: 1984年06月 平均: 6.27点 書評数: 26件

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光文社
1984年06月

光文社
1988年04月

(株)南雲堂
2008年01月

No.26 7点 みりん 2023/08/15 15:49
虫暮部さん(名前出して申し訳ありません)のおっしゃる通りで犯人はヒジョーに不可解な偽装工作をしていると言わざるを得ません。普段、物語の整合性・矛盾というものに鈍感で何でも受け入れてしまう私ですら今作はさすがに変だと感じました。

が、これは好きな作品になりました。
まず、首無のバラバラ遺体が7つの終着駅で部位ごとに見つかる。もうこれだけで読む推進力になるのに更に胴体には「五穀の起源」の見立てが施されている。出血大サービスです。でも時刻表は思考停止するので無視無視♪
「八岐の大蛇伝説」について巻き起こる学術的な対立がまあ面白い。そしてこんな見立てをしたのも8つに切り刻んだのもすべては犯人の学術研究由来の憎悪であるというのが良い。ラストの犯人を追い詰めるトラップもそれに心を揺さぶられた犯人という皮肉も最高でした。
「学術研究は成果なんて出さなくても楽しければ良いんだ」という前向きなメッセージもいただきました。


ということでミステリとしては大きく減点、それ以外の要素で大きく加点としこの点数にします。

No.25 7点 2021/08/16 09:53
バラバラ殺人を扱った、抒情1/8トラベルミステリー超大作。
吉敷竹史シリーズの第2作です。
読者にとっては、犯人探しはほどほどですが、仕掛けを存分に楽しむことができます。
冒頭で、バラバラにされた人体各部が7つの駅で発見されます。なぜ頭部は見つからないか、犯人はどうやってばらまいたか、その謎解きがメインです。

吉敷は地道で現実的な捜査をやっているようにも思えるが、よく読めば、それほどでもない。堅実そうな鉄道ミステリー要素も、超ド派手事件に引っ張られ、現実感はほとんどないといってもいい。
でも、社会派と本格派とがこんなふうに滅茶苦茶に融合すれば、なぜかひっかかりなく読めてしまう。島田氏のストーリー運びのうまさによるものでしょう。
突っ込みどころは多々ありそうですが、そんなことは忘れさせるほどの花も実もある作品にはちがいありません。

最後にひとこと。
時刻表、地図、簡略路線図など図面が豊富なのは個人的には好みですが、残念ながら謎解きには全く生かされませんでした。

No.24 3点 虫暮部 2020/11/11 11:00
 何か変だ。 
 そもそも被害者が身許不明なら犯人は疑われない。しかし一応アリバイ工作をしておく。するとアリバイ工作のせいで(大豆と麦)被害者の身許が割れた。
 恣意的に要約すればそういう話だ。非常に不自然な犯行計画だ。余計なことしなければ良かったんじゃない?
 動機が怨恨なので、“死体に穀物を添える” とか “路線図でヤマタノオロチを描く” とかはその恨みの象徴であり犯人はどうしてもそれをやりたかった、みたいな雰囲気だが、そんなことはどこにも書かれていない。これは重要なことなので “文脈から読み取れ” では通らない。ことミステリの場合、きちんと記述してあることが重要(な事柄もある)と私は思う。
 死体のばら撒きは身の安全の為の手段だった筈が、いつのまにか目的みたいになっていないか。
 犯人にたった一言 “それをやりたかったんです” と言わせてくれれば、強引にでも納得したのになぁ。

No.23 6点 ボナンザ 2019/02/17 10:08
このシリーズならではの地味ながら大技のトリックが炸裂する。一方でこの後の作品につながるうんちく披露も。

No.22 6点 いいちこ 2018/09/05 09:32
提示された謎の不可解性、(フーダニットの要素は皆無なので)ハウダニットの意外性、その論理的な解明プロセス等、著者の本格ミステリの基本がしっかり抑えられた作品。
一方、犯行計画自体は非常に綱渡りで難易度が高く、そのフィージビリティは大いに疑問。
真相解明の決定打となった鉄道運行に関する犯人の不知も、これほど緻密な計画を策定した犯人像に照らして違和感が拭えず、現地警察の捜査で判明しなかったというのも無理筋に近い印象。
また、最終盤の犯人への罠も、あれほど鮮やかに犯人が騙されるかというと疑問が残る。
以上、骨格は堅牢であるが、細部の甘さを減算してこの評価

No.21 7点 斎藤警部 2016/08/22 12:26
バラバラ屍体のパーツは七つの駅に送られたが、頭部だけが見つからない。。。。「占星術」を連想させずにおかないトリックの数学的美しさへの予感も嬉しい、神話と怨念に裏打ちされた大殺人絵巻。トラベル・ミステリーの風情は期待しなくてよい。

No.20 6点 バード 2014/08/07 17:46
しばらくミステリから離れていたのでリハビリとしてこの本をチョイスした。結論から言ってしまえばリハビリとして調度よかった、難しい謎過ぎずまたかといって複雑すぎないいい塩梅だったと思う。

しかし派手な事件の始まりに対してトリックは地味目というか良くも悪くも及第点といった感じ。出雲の言い伝えの部分に関しては深追いしすぎず小説への取り入れ方としては良かった。(最近の御手洗シリーズなどでは余計な話にページをさきすぎてる気がするので。)

No.19 4点 nukkam 2012/06/17 10:04
(ネタバレなしです) バラバラにされた女性の死体が7つの駅で発見されるという衝撃的な事件の起きる、1984年発表の吉敷竹史シリーズ第2作です。犯人の正体は中盤頃には判明しており(推理としては粗いと思いますが他に有力容疑者がいません)、アリバイ崩しの本格派推理小説となっています。複数の駅と路線が登場し、時刻表、路線図、駅や車両の配置図なども豊富に揃えており、いかにも「鉄道ミステリ」の雰囲気が濃厚な作品です。推理は丁寧だしトリックも細かいレベルまで考えてはいますが、そもそも犯人がここまでする必要があったのかという点に関しては疑問が残りました(結構綱渡り的なトリックだと思います)。

No.18 6点 HORNET 2011/09/18 22:08
 吉敷竹史シリーズ。山陰地方を走る6つのローカル線と大阪駅に、流れ着いた女性のバラバラ死体が。なぜか首はついに発見されなかった・・・。
 犯人は作中でほぼ確定し、路線・時刻のトリックを解明するハウダニット。とはいえ、時刻表のややこしさを単純化する配慮が要所になされ、割とややこしくて面倒臭いという感じはなく読み進められた。
 「天才肌の名探偵」御手洗潔と対照的な、地道で泥臭い吉敷竹史のキャラクターがよく出ている。よって、ストーリーの展開もまさに地道な捜査をそのままなぞるようだが、それが分かりやすい。トリックの妙もさることながら、犯人をあぶり出す最後の過程も趣向が凝らされていて、メイン以外にも謎解きが楽しめる作品と言える。

No.17 5点 まさむね 2011/01/29 11:54
島田氏らしい派手で猟奇的な事件と,いわゆる時刻表アリバイトリックとが,うまく融合してますね。
古事記とかの勉強にもなったし(笑),まぁ楽しめました。

(以下,未読の方は注意)
でも,精密なトリックを計画した犯人が,結構単純な2つのミス(胴体を置いた位置の件&ラストの騙されっぷり)で捕まっちゃってるところに違和感が。
特に1個目のミスは,警察なり国鉄なり,もっと早く気付こうよ…読者にも早く開示してよって思いましたね。

No.16 6点 spam-musubi 2010/09/13 17:36
動機がはっきりしていて犯人が誰かはほぼ明示されているような
ものなので、How done it1点に焦点を当てた物語。

新大阪駅で犯人のアリバイ工作が綻び始めるあたりの展開は
とても面白い。が、結末(最後の1ピースが出てくるあたり)は
微妙。あれを読んでそこまで犯人が思い詰めるだろうか…

No.15 5点 seiryuu 2010/08/02 10:35
関係者の現れ方が強引で人間関係が単純だなと思った。
時刻表トリックは苦手なのですが、これはわかりやすくて楽しめました。

No.14 6点 vivi 2010/01/14 01:21
時刻表のアリバイものは苦手なのですが、
地の文を読んでいけば、状況は分かるので、
そんなに苦にはなりませんでしたし、
大体思ったとおりの解答だったので納得しました☆

犯人と吉敷の対決が結構見ものでしたね。
特に、最後のところはかなり好きです♪

No.13 5点 ZAto 2009/10/18 12:38
謎解きが充実すればするほど、肝心の物語が迷走していた感は拭えない。
首なし死体による被害者不特定の事件であるにもかかわらず、
通報によって早々に容疑者が浮かび上がり、マスコミからも追求されていくという流れは、
時刻表ミステリーについて精緻に描き込まれているのに比べるとかなり荒っぽいのではないか。

No.12 8点 りんちゃみ先輩 2009/10/04 09:42
久しぶりに読んだ時刻表もので楽しめた。被害者、犯人以外の登場人物をもっと深く描写すれば、犯人捜しのおもしろさもあったのだろうが、この物語は犯行手段に重きを置いたのだろう。動機に関しては被害者ではなく犯人に同情してしまった。吉敷一人で解決した事件、他の捜査陣は何をしていたんでしょう?

No.11 8点 E 2009/08/15 16:58
列車トリック!!時刻表苦手ですが、とても面白く読めました。
緻密で列車を大きく使ったトリックに感嘆。
タイトルがぴったりだと思いました。

No.10 7点 E-BANKER 2009/07/28 22:35
吉敷刑事シリーズの第2作目。
今回の舞台は、山陰地方と寝台特急「出雲」!
~山陰地方を走る6つのローカル線の終点と大阪駅に女性のバラバラ死体が流れ着くという大事件が発生、なぜか頭部だけは発見されず。捜査の結果、被害者の女性は死亡推定時刻に「出雲1号」に乗車していたことが判明するも、容疑者には鉄壁ともいうべきアリバイが・・・~

寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁に続く、吉敷刑事分数シリーズですが、猟奇的な殺害方法や不可能状況といった、初期島田作品に共通のガジェットが本作品でも多く取り入れられています。
列車を使ったアリバイトリックというと、好き嫌いの分かれる分野かもしれませんが、やはり島田流トラベルミステリーは一味も二味も違うというべきで、バラバラ殺人の必然性とアリバイトリックをうまい具合に処理しています。
ただし、この設定も今は昔。登場した列車やローカル線の大部分は今は消滅しているのが悲しい・・・
事件の背景として引用される「ヤマタノオロチ」伝説へのなぞらえ方も見事に嵌っていて、水準以上のミステリーに仕上がっています。
(本作までの吉敷はキャラがはっきりしてませんね。その分、次作「北の夕鶴」での吉敷の変身振りに驚くことに!)

No.9 7点 simo10 2009/05/23 21:32
トラベルミステリらしく時刻表に従ったアリバイトリックです。
しかしそこは大胆な仕掛けと凄まじい猟奇的事件で、やはり島田ワールド全開です。
主要登場人物がかなり限定されており、非常に人間関係がわかり易いです。
表題の意味もなるほどの一言。

No.8 8点 測量ボ-イ 2009/05/16 10:41
島田氏のトラベルミステリでは一番好きな作品です。
作品中に時刻表を挿入し、バラバラ死体を方々の駅
にバラまいた過程が推理できるようにしてもらえたら
尚良かったです。

No.7 6点 2008/12/16 21:37
派手な猟奇殺人を扱ってはいても、かなりまともなトラベル・ミステリという感じですが、共犯者が殺人自体も行ったのではないかという説に対する反証が、意外に記憶に残ります。個人的には、アリバイを作るために共犯者を使う設定は、何でもできそうという気がして好きになれないのですが(クリスティーのような意外な共同正犯は別です)、偶然が関与しているとはいえ、このような明快な反証があれば、納得できます。
動機にもなったヤマタノオロチ伝説の起源に関する論考もおもしろかったですね。


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